Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強中の社会人ブログ

第63回気象予報士試験振り返り~実技1:移流による気温変化率

 

今回は,第63回気象予報士試験の実技試験について振り返ってみます。ただし,すべての問題を説明するのではなく,一般知識の理解があれば点数が取れる問題について解説していきたいと思います。

一般知識がどのように実技試験に活用されているかを知るという目的もありますし,実技試験から一般知識を振り返るという意味もあります。

 

なお,気象業務支援センターから過去5年分の問題が公開されておりますので,そちらもご参考にしてください。

気象予報士試験 (jmbsc.or.jp)

 

 

単位

下は第53回一般知識で出題された,水平移流による気温の時間変化率を問う問題です。

どのように計算すれば良いかを考えてみます。

問題(第53回一般知識より)

ここで問題を解くときに重要なのは「単位」です。計算問題で単位をちゃんと理解せずに,とりあえず数字を掛けたり割ったりしてしまう方が少なからずいるようですが,単位さえ理解できれば,あとの見通しがスッキリすることがよくあります。

ここからは単位についておさらいしておくことにします。

 

単位には国際単位系(SI)という標準規格となる7つの基本単位があります。

時間の長さの基本単位は「秒(s)」,距離の長さの基本単位は「メートル(m)」,質量の基本単位は「キログラム(kg)」,温度の「ケルビン(K)」,電流の「アンペア(A)」,明るさの「カンデラ(Cd)」,物質量の「モル(mol)」。

一般的に,これらの基本単位を組み合わせてさまざまな単位は表現できます。

 

例えば,加速度の単位は「メートル毎秒毎秒」で  \rm{m}/\rm{s^2},重さ(質量×重力加速度)*1の単位は「ニュートン(N)」で  \rm{N} = \dfrac{\rm{kg} \cdot \rm{m}}{\rm{s^2}},圧力(重さ÷面積)は「パスカルPa)」で  \rm{Pa} = \dfrac{\rm{N}}{\rm{m^2}}= \dfrac{\rm{kg}}{\rm{m} \cdot {\rm{s^2}}} という感じ。

 

そして,加速度に時間をかけると「メートル毎秒」という単位となり,速度が算出されることが分かりますし,速度に時間をかけると「メートル」となって,距離が算出されることも,単位の掛け算や割り算から理解できるのです。

 

今回の問題では気温変化率を求め,その選択肢の単位はいずれも「℃/h*2となっていることから,1時間当たりに何℃気温が変化するかを求めればよいということですね。

 

 

移流による気温変化率

改めて冒頭の問題を眺めてみます。

 

問題文で与えられているのは風速と距離と気温,角度ですので,これらの単位をうまく用いて「℃/h」になるように組み合わせれば良いわけです。

すると

 

  ℃/h = ℃/km × km/h

 

という感じで辻褄を合わせられそうです(分子と分母で「km」の単位が消える)。「℃/km」は1km当たりに何℃気温が変化するかなので,これは気温の傾度です。「km/h」は1時間当たりに進む距離,すなわち速度です。ここでの速度は,風の速度が当てはまります。

上記のことに意識すると,移流による気温時間変化率温度移流という)は以下の式で求められます。

 

移流による気温時間変化率(温度移流)

  (気温の時間変化率) = ー(風向に沿った温度傾度)×(風速)

※気温が上流側で高く風がそれを運んでくると気温は上昇,逆に上流側が低い気温は低下します。マイナス符号はこの関係を示します。

 

注意するのは,温度傾度は「風向に沿った」値を用いる点です。例えば,風向が温度傾度に対して垂直の向きであれば,気温は変化しません。また,風速0なら移流も温度変化もないこともこの式から理解することができます。

 

この式を用いて,問題を解いてみましょう。

風向に沿った温度傾度は  \dfrac{2}{40} (℃/km)となります。等温線と風のなす角度が45° という設定にはなっていますが,この問題では,「風向に沿った温度傾度」の算出に角度の情報は必要ないので,引っかからないようにしましょう。

また,風速は 5(m/s)ですが,km/h にしなければいけないので,

  1 m/s = 3.6 km/h

であることを考慮して,風速18(km/h)となります。

そして,風は低温側から吹いているので,マイナスです。


以上の結果から,

 

  (気温の時間変化率) = ー  \dfrac{2}{40}(℃/km)  × 18(km/h)= ー 0.9(℃/h)

 

で,ー 0.9(℃/h)で④が答えになります。

 

 

下に類題を載せておきます。ちなみに,下の問題の場合は,「風向に沿った温度傾度」を算出するために角度の情報が必要になります。ぜひトライしてみてください。

問題(第62回一般知識より)

 

 

実技1 問1(2) 移流による気温変化率

これまでの気温変化率の計算について頭に入れたうえで,ここからは,第63回気象予報士試験の実技1で出題された問題を見ていきましょう。

ちなみに,私はこの計算問題だけで10分近く費やして,無駄に時間をかけてしまった記憶があります。

というのも,一般知識では風速はm/sの単位で与えられることが多いですが,実技試験では天気図上で風速がノットという単位で表現されており,計算には単位をきちんとそろえて計算する必要があるため,途中で非常に混乱してしまったのでした。

 

図3 を⽤いて、850hPa ⾯における温度移流に関する以下の問いに答えよ。ここで、地点A は 図3(下)で北緯34°東経116°付近にある⿊丸、地点B は同図で北緯33°東経125°付近にある⿊丸を指す。


① 地点A および地点B における850hPa ⾯の温度移流の種類を簡潔に答えよ。

② 地点A と地点B のうち、850hPa ⾯の温度移流がより強い地点を答えよ。そして、そのように判断した理由を40 字程度で述べよ。

③ 地点Bにおける850hPa⾯の移流による気温の変化率を、地点Bの⾵と6℃と15℃の等温線を基に求め、正負の符号を付して1℃/h 刻みで答えよ。

 



①まずは地点Aと地点Bの温度移流の種類を答えさせる問題。

6℃以下の領域を青く,15℃以上の領域を橙色に塗ってみました。

点Aでは寒い方から暖かい方に風が吹いているため,寒気が入ってきます。一方,点Bでは暖かい方から寒い方に風が吹いているので,暖気が入ってきます。

よって,

地点A:寒気移流, 地点B:暖気移流 が答えになります。

 

 

②AとBの地点の温度移流が強い地点がどちらかを答え,その理由を述べさせる問題。

まず,式から,温度移流の強さは,「風向に沿った温度傾度の大きさ」と「風速」に比例します。

 

移流による気温の時間変化率(温度移流)

  (気温の時間変化率) = ー(風向に沿った温度傾度)×(風速)

 

図から,地点Aと地点Bでは30ノットと同じなので,風速だけに着目すると両地点で差はありません。そこで,移流の強さを比較するためには風向に沿った温度傾度を知る必要があります。

 

では,各地点の風向きに沿った温度傾度を解析してみることにします。

上図は,風向に沿った6℃と15℃の等温線間の距離を,赤い線分で示した結果です。

このことから,温度傾度は等温線が混みあっている地点Bの方が大きいことが分かります。

 

よって,温度移流が強いのは,地点B

その理由としては,地点Aと地点Bともに風速は同じだが,地点Bの方が風向に沿った温度傾度が大きいから とでも書いておけばOKかと思います。移流の強さは「風速」と「風向に沿った温度傾度」に比例することを理解していれば,各地点でそれぞれの値を比較するように記述してやればいいのです。

 

 

③地点Bの気温変化率を計算させる問題。

前置きが非常に長くなりましたが,今回のメインディッシュです。

 

地点Bに吹く風の速度は30ノットであることは,図から読み取れるとおりです。

ここで,

 

  1ノット = 1海里 / 1時間

  1海里 = 1.852 km

 

であることは基本として押さえておかなければいけません。すなわち,

 

  1ノット = 1.852 km/h

 

よって風速は,30ノット=55.5(km/h) ・・・()  となります。

 

 

では,温度傾度はどうでしょうか。問題文では,6℃と15℃の等温線に着目しなさいとありますから,風向に沿った6℃~15℃の等温線間の距離を測定します。

その結果,距離は6mmでした。

実際の縮尺に直してやると,緯度10度分が約1110km(天気図で4cm)に相当しますので,地点Bの温度傾度は,

 

  (温度傾度)= \dfrac{15-6}{1110×\dfrac{0.6}{4}} \dfrac{6}{111}(℃/km) ・・・(

 

 

式()()より,

  (気温の時間変化率の大きさ) =  \dfrac{6}{111} × 55.5   =  3(℃/h)

 

地点Bは暖気移流のため,気温が上昇する方向に進むのでプラスの符号をつけて,

地点Bの気温変化率は,3 ℃/h が正解となります。もちろん,海里で単位をそろえて計算しても同じ結果が得られます。

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【参考】単位を「海里」でそろえて計算する方法

 

  ℃/h = ℃/海里 × 海里/h

 

緯度10度分が600海里に相当しますので,地点Bの温度傾度は,

 

  (温度傾度)= \dfrac{15-6}{600×\dfrac{0.6}{4}} 0.1(℃/海里)

 

風速は30ノット(=30海里/h)なので,

 

  (気温の時間変化率の大きさ) =  0.1 × 30   =  3(℃/h)

 

地点Bは暖気移流のため,+3 ℃/h が正解

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この問1(2)の①~③の3問が正解していたら10点がもらえました。第63回気象予報士試験の実技の合格点はおよそ60点だったので,この3問が取れていると,残り50点を稼げば合格になるわけです。そう考えると,こういった,学科一般の知識をきちんと頭に入れて使いこなせるようになることが,非常に重要になることが分かりますね

特に注意すべきなのは,風速はノットでそろえるのか,km/hでそろえるのか,それともm/s で計算するのか,単位をきちんとそろえないと計算結果がおかしくなってしまうので,単位を理解することは非常に重要なのです。

 

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

 

 

*1:重さ=力」であり、「重さ≠質量」であることには注意が必要

*2:1℃も1Kも大きさは同じなので,ここは「℃」で単位をとることで問題ない

第63回気象予報士試験振り返り~一般知識②~

 

前回からの続きです。第63回予報士試験の一般知識を振り返ります。

 

なお,問題については,気象業務支援センターから公開されておりますので,そちらからご覧ください。

気象予報士試験 (jmbsc.or.jp)

 

 

第9問 台風

【正解】②

 

【解説】

基本的な台風の知識について問われました。

 

(a)台風は熱帯から亜熱帯の海洋上で発生する強い熱帯低気圧の呼称です。海面水温が26~27℃以上の比較的温度が高い海域で発生します。

台風の発達メカニズムは第2種条件付き不安定CISK:Conditional Instability of the Second Kind)と呼ばれ,対流雲発生に伴って放出される潜熱による地表面での気圧低下と,地表面での風の吹き込みによる収束と上昇気流の発生という,お互いがお互いの力を増強させる方向性で発達することが知られています。

よって,選択肢の記述は正しいと言えます。

 

(b)動径成分接線成分についての理解が求められます。

まず,動径成分というのは,中心からの方向に対してどれだけ近づいたか,あるいは離れたかを表す成分のことで,ベクトルを分解したときに中心から見てまっすぐな方向のベクトル成分になります(下図赤矢印)。

一方,接線成分は,円の軌道に沿って動いている成分のことです(下図紫矢印)。

台風のまわりを吹く風は,摩擦の影響を考慮しなければ傾度風とみなすことができます。しかし,地上から約1kmまでの大気境界層では地表面との摩擦の影響が大きく,風は台風の中心に向かって,円の接線に対してやや内側(低圧側)に傾いた方向に吹くことになります。

このため,地上との摩擦を無視できる自由大気では台風周辺の傾度風に動径成分は現れませんが,大気境界層では摩擦の影響で動径成分が無視できないほど大きくなります

よって選択肢の記述は正しいといえます。

 

尚,気象予報士試験では,台風の風の接線成分について聞かれることもあり,その接線成分の鉛直断面図は下の図のようになっています。濃い色が風速が大きいことを表しています。

この図から,台風周辺の風の接線速度は大気境界層の上の約2kmあたりで最大となることが分かります。そして,台風中心に近づくにつれて接線速度は大きくなり,遠ざかると小さくなります。台風中心から約100kmあたりで接線速度が最大になると言われています。こちらも同時に覚えておきましょう。

 

(c)上で述べたように,台風周辺に吹く風は,自由大気では傾度風とみなすことができます。低気圧周辺の傾度風は,

  低気圧性の傾度風:(気圧傾度力)=(遠心力)+(コリオリ力) ・・A

という式で書くことができます。

 

一方,地衡風は下のように表せます。

  地衡風:(気圧傾度力)=(コリオリ力) ・・B

 

ここで問題文から,A式とB式の気圧傾度力は同じであるということですので,A式のコリオリ力は,B式のコリオリ力に比べて小さい必要があります。コリオリ力は物体の移動速度に依存しますので,傾度風の風速は地衡風のそれと比べて小さくなる必要があるのです。

よって誤りであることが分かります。

 

まとめると,(a)正,(b)正,(c)誤 であるので,正解は②になります。

 

 

第10問 中層大気の風の分布・温度風

【正解】①

 

【解説】

温度風の関係から,高度の上昇とともに東風成分が増加する地点を問うものです。温度風には以下の特徴があります。

  〇北半球において,温度風ベクトルの右側は高温域,左側は低温域となる

  〇南半球では温度風ベクトルの右側で低温域,左側で高温域となる。

よって,北半球か南半球か,またその地点の左右どちらが高温域かを考えたら答えは見えてきます。

 

まず,問題の図で,どちらが北半球か南半球かを理解しましょう。

ここで着目するのが成層圏で,夏半球の成層圏上部は冬半球に比べて気温は高くなります。これは夏の極では太陽が沈まずに白夜となり,太陽放射を一身に浴びることができるためです。

成層圏上部は地上約30~50kmであり,気圧に直すと約10hPa~1hPaになります(気圧が10分の1になると,高度は約16km上昇する)。

このことから,図の左側が夏極(1月のデータなので南半球),右側が冬極(同,北半球)であることが読み取れるのです。

 

あとは温度風の関係を適用すると以下の図のようになります。

(A)地点Aは南半球に位置します。南半球では温度風ベクトルの左側で高温域,右側で低温域となるので,温度風ベクトルは緑色の矢印の方向に吹きます。これは東風ですので,高度の上昇とともに東風成分が増加します。

 

(B)地点Bは北半球で,極側で気温が低くなっています。北半球では温度風ベクトルの右側で高温域,左側で低温域となります。温度風ベクトルは水色の矢印の方向に吹き,西風ですので,高度の上昇とともに西風成分が増加することになります。

 

(C)地点Cは南半球です。極側で温度が低いので,温度風ベクトルは水色の矢印として表現できます。これは西風ですので,高度の上昇とともに西風成分が増加します。

 

よって,東風成分が増加する地点はAのみで,①が正解です。

 

 

第11問 エルニーニョ現象

【正解】③

 

【解説】

基本的なエルニーニョの知識があれば問題なく解くことができます。

 

エルニーニョ現象とは,太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなる現象のことです。

平常時(エルニーニョが起こらないとき)は,東南アジア側に暖かい海水があり,ペルー沖ではウォーカー循環に伴う東風が吹いて,湧昇水や寒流の影響で水温が低い冷水を赤道域へと広げるように働きます(下図)。

よって,平常時はアジア側で海水温が高く,そのため積乱雲も発達しやすくなります。アジア側(ダーウィンなど)では上昇気流により気圧は低くなり,一方太平洋東側(タヒチなど)は下降気流により気圧は高くなります。

 

一方,エルニーニョ現象が発生すると,東風が弱まり冷水が赤道域に広がらず,逆にアジア側の暖かい海水が流れ込みます(下図)。

この結果,アジア側では海水温が例年より冷たくなり,対流活動は不活発になります。アジア側(ダーウィンなど)では気圧は高くなり,太平洋東側(タヒチなど)は気圧は低くなるのです。

 

以上を踏まえて選択肢を眺めます。

(a)正。エルニーニョ発生時はアジア側で対流活動が不活発になり,降水量が例年に比べて少なくなります。

 

(b)誤。エルニーニョ発生時は,ダーウィンで気圧は高く,タヒチで低くなります

 

(c)誤。エルニーニョ発生時は,東風は弱まります

 

よって,③が正解。

 

 

 

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ここからは気象法規についての問題です。これは考え方うんぬんよりも,ただ単に頑張って覚えてくださいとしか言えません。私も頑張って覚えました。特に過去問から類似問題が出題されていますので,とにかく過去問を当たってください。

一応簡単に解説を載せておきます。

 

第12問 予報業務の変更

【正解】③

 

【解説】

(a)予報業務の目的又は範囲の変更は,気象庁長官の認可が必要です。届け出だけでは対応できません。誤。

 

(b)これは正解。予報業務の廃止は,廃止した日から30日以内に気象庁長官への届出が必要です。

(予報業務の休廃止)
第二十二条 許可を受けた者が予報業務の全部又は一部を休止し、又は廃止したときは、その日から三十日以内に、その旨を気象庁長官に届け出なければならない。

 

(c)事業所の名称を変更する場合には報告書を提出しなければいけません。誤。

ChatGPTによると,届出と報告書提出は以下の違いがあるようです。

  • 届出 = 「○○します/しました」と“通知”するだけの行為。行政庁は形式をチェックするだけで,基本的に許可・不許可の審査は行いません。

  • 報告書の提出 = 「○○の結果はこうでした」と内容を詳しく知らせる行為。行政庁(あるいは委任者)が内容を評価・把握・監督するために求めます。

 

よって,(a)誤,(b)正,(c)誤 であるので,正解は③になります。

 

 

第13問 気象予報士の設置

【正解】⑤

 

【解説】

(a)気象予報士自身が直接届ける必要はなく,予報業務許可事業者が届ける必要があります。誤。

(b)定番問題であり,単純な知識問題。

気象予報士の設置の基準)
第十一条の二 当該予報業務のうち気象又は地象の予想を行う事業所ごとに、次の表の上欄に掲げる一日当たりの現象の予想を行う時間に応じて、同表の下欄に掲げる人数以上の専任の気象予報士を置かなければならない。
一日当たりの現象の予想を行う時間
人員
八時間以下の時間
二人
八時間を超え十六時間以下の時間
三人
十六時間を超える時間
四人

 

2 法第十七条第一項の許可を受けた者は、前項の規定に抵触するに至つた事業所(当該抵触後も気象予報士が一人以上置かれているものに限る。)があるときは、二週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置をとらなければならない。

その事業所が現象の予想を行う時間に応じて設置する専任の気象予報士の数は決められています。例えば,12時間の現象の予想を行う場合には3名以上の人員がいないといけませんよ,ということです。誤。

 

(c)これも定番問題。上の法律内容から,2週間以内に必要な措置をとらなければならない。誤。

 

よってすべて誤りで⑤を選びます。

 

 

第14問 予報と警報

【正解】④

 

【解説】

警報なのか,特別警報なのかを読み取ります。警報と特別警報では,各機関の役割が変わるためです。

(a)今回は(特別警報を除く)警報なので,各機関の役割は下の図のようになります。国土交通省海上保安庁の機関が省略されてますが,警察庁消防庁などと同じ対応です。

義務となるのは,気象庁による住民および各機関への伝達,NHKによる住民への放送

第十五条 気象庁は、気象、地象、津波、高潮、波浪及び洪水の警報をしたときは、政令の定めるところにより、直ちにその警報事項を警察庁消防庁国土交通省海上保安庁都道府県、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社又は日本放送協会の機関に通知しなければならない
2 前項の通知を受けた警察庁消防庁都道府県、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の機関は、直ちにその通知された事項を関係市町村長に通知するように努めなければならない
3 前項の通知を受けた市町村長は、直ちにその通知された事項を公衆及び所在の官公署に周知させるように努めなければならない
4 第一項の通知を受けた国土交通省の機関は、直ちにその通知された事項を航行中の航空機に周知させるように努めなければならない
5 第一項の通知を受けた海上保安庁の機関は、直ちにその通知された事項を航海中及び入港中の船舶に周知させるように努めなければならない
6 第一項の通知を受けた日本放送協会の機関は、直ちにその通知された事項の放送をしなければならない

よって,都道府県は努力義務(「努めなければならない」)なので,「しなければならない」という表現は誤りです。

 

(b)予報業務許可者は,利用者に警報事項を迅速に伝達することを求められますが,義務ではありません。よって「努めなければならない」という表現は正しい。

 

(c)これもややこしいですが,気象庁が予報や警報を「しなければならない」のか「することができる」のかは,その目的によって違ってきます。

気象業務法を読むと,以下のように記載されています。

(予報及び警報)
十三条 気象庁は、政令の定めるところにより、気象、地象、津波、高潮、波浪及び洪水についての一般の利用に適合する予報及び警報をしなければならない

2 気象庁は、前項の予報及び警報の外、政令の定めるところにより、津波、高潮、波浪及び洪水以外の水象についての一般の利用に適合する予報及び警報をすることができる


第十四条 気象庁は、政令の定めるところにより、気象、地象、津波、高潮及び波浪についての航空機及び船舶の利用に適合する予報及び警報をしなければならない
2 気象庁は、気象、地象及び水象についての鉄道事業、電気事業その他特殊な事業の利用に適合する予報及び警報をすることができる

第十四条の二 気象庁は、政令の定めるところにより、気象、津波、高潮及び洪水についての水防活動の利用に適合する予報及び警報をしなければならない

よって,「航空機及び船舶の利用に適合する予報及び警報をしなければならない」のであって,「することができる」と書かれている記述は誤りです。

 

(d)上の警報事項の伝達の流れで示したように,「国土交通省の機関は、直ちにその通知された事項を航行中の航空機に周知させるように努めなければならない」のであって,義務ではありません。誤り。

 

(a)誤,(b)正,(c)誤,(d)誤 であるので,正解は④になります。

 

 

第15問 災害対策基本法

【正解】④

 

【解説】

受験していて,さすがに細かいところ突いてきたなと思った問題。災害対策基本法の中身をちゃんと読み込んでいる方はほとんどいないのでは。

 

良心的なのは,誤っている選択肢をどれか一つ見つけなさい,という形式になっていること。さすがに出題者側も,それぞれの正誤まで問うのは正答率が低くなりすぎると判断したのかもしれません。

 

さて,問題ですが,災害対策基本法では,中央防災会議は,1年ごとに防災基本計画について見直し,必要があれば修正しなければいけないと定められています(第34条1項)。よって,「5年ごと」と記載されている(d)だけは明らかに誤りです。正解として④を選びます。

 

災害対策基本法については下記にそれなりに詳細に調べて記事にしていますので,ご参考にしてください。

 

 

さいごに

以上で,一般知識の振り返りは終了です。

私は第2問の計算ミス,第7問の直方体の長さの見落としから,2問不正解で合計13点でした。

 

ちなみに,私の一般知識の解き方は以下の通りです。これは,過去の試験での失敗から導き出した,私にとって最も精神的負担が少ない解答方法です。

 

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まずは記憶が新しいうちに,気象法規関連の問12~15を先に解きます。単純な知識問題から取りかかることで,頭をウォームアップさせる意図もあります。ただし,この段階ではマークシートには記入せず,問題用紙に各選択肢の〇✕や正解と思う番号をメモするだけにとどめます。

次に,問1~11についても同様に〇✕をメモし,正解だと思う選択肢をチェックしますが,やはりマークシートには記入しません。

その後,問1からもう一度解き直し2周目に入ります。もし,1周目の考え方の誤りに気づいたら,該当する問題にチェックを入れます。1周目と2周目で答えが変わった問題については,3周目として再検討します。時間的余裕があれば全問題に3周目の見直しを行い,最終確認します。

このようにして,最終的に納得のいく解答を得てから初めてマークシートに記入します。マークシートも塗りミスやズレがないか3回ほど確認します。

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最初からマークシートを塗らないのは,一度正解と塗りつぶした解答を消して変更する際の心理的負担が大きく(後ろ髪を引っ張られながら答えを修正する経験が多々あった,もしかしたら変更前の選択肢が正しいかもという動揺も大きい),それが試験中の集中力を乱す原因になるためです。

共感される方がいらっしゃたら,ぜひ試してみてください。

 

ただ,2周目・3周目する時間的余裕がないよって方は,1つ1つ確実にマークシートに記入した方が良いです。

大切なのは,自分にとって最も負担が少なく正解数を稼ぐ方法を見つけることです。

 

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

 

 

第63回気象予報士試験振り返り~一般知識①~

 

今回は,今年の1月に実施されました第63回気象予報士試験の一般知識について振り返っておきます。私も今回受験して,結果は13点で,合格点を取れていました。

出来る限り丁寧に解説をつけたつもりですが,あくまで個人的にこうやって考えたら良いのではないかということを記述してのであって,間違いもあるかと思います。内容に誤りや修正等あればご指摘ください。

 

なお,問題については,気象業務支援センターから公開されておりますので,そちらからご覧ください。

気象予報士試験 (jmbsc.or.jp)

 

 

第1問 地球大気の組成

【正解】②

 

【解説】

今回,学科一般を受験したとき,問1(a)の選択肢が,私にとって本科目の中で一番迷った問題となりました。

(a)乾燥大気の組成は以下の通りです。

  • 窒素 (N₂): 約78%
  • 酸素 (O₂): 約21%
  • アルゴン (Ar): 約0.93%
  • 二酸化炭素 (CO₂): 約0.042%
  • その他: ネオン,ヘリウム,クリプトン,水素,キセノンなど

窒素と酸素だけで99%,アルゴンで0.93%と,3種類の気体だけで99.9%を超えるのです。意外にも二酸化炭素は0.1%にも満たず,0.042%(=420ppm)となっています。よって選択肢は正しい記述になります。数字を覚えていない人にとっては難しい問題だったと思いますし,覚えていれば難なく解ける容易な問題だったと思われます。私は数字をちゃんと覚えておらず,ここは結構悩み,結局賭けに出ました。

 

(b)地上から中間圏界面(高度約80km)までの範囲は大気成分組成はほぼ一定であり,窒素と酸素がほぼ80% : 20% の割合で含まれています。選択肢の記述は正しいといえます。

 

(c)まず「混合比」という言葉を理解していなければいけません。混合比というのは,湿潤空気を水蒸気と乾燥空気に分割して,乾燥空気の質量に対する水蒸気の質量のことを指します(単位は g/kg あるいは kg/kg)。すなわち,乾燥空気(1kg)に対して何グラムの水蒸気を含んでいるかを示した量です。よって,混合比が大きいというのは,乾燥空気に含まれる水蒸気量が多いということです。

空気の平均分子量は,空気を構成する各気体の分子量とその体積分率に基づいて計算されます

  空気の平均分子量 =  M_1x_1 + M_2x_2 + M_3x_3 + ・・・

  (ただし,  M_i:その気体の分子量,  x_i:その気体の体積分率)

例えば乾燥空気の平均分子量は,窒素の分子量は28,酸素は32,アルゴンは40,二酸化炭素は44であるので,

  乾燥空気の平均分子量 =  28×0.78 + 32×0.21 + 40×0.0093 + 44×0.00042

             =  28.95

となります。

乾燥空気に水蒸気が含まれると,水蒸気の体積分率は上がると同時に,乾燥空気の体積分率は下がります。水蒸気の分子量は18と軽いので,水蒸気が多ければ多いほど,空気の平均分子量は小さくなります

よって,選択肢の記述は間違っていることになります。「混合比が大きいほど,平均分子量は小さくなる」,が正しい記述です。

 

これらの結果より,(a)正,(b)正,(c)誤 で②を選べばよいのですね。

 

 

第2問 比湿

【正解】①

 

【解説】

こちらは計算問題ですが,「比湿」という言葉を理解していないと解くことができません。

比湿とは,湿潤空気1kgに含まれる水蒸気の質量のことです(単位は g/kg あるいは kg/kg)。つまり,湿潤空気の質量に対して,何グラムの水蒸気を含んでいるかを表した量です。混合比は乾燥空気1kgに対する水蒸気量ですが,比湿は湿潤空気1kgに対する水蒸気量であるという点で異なります

 

比湿は一般的に以下の数式で近似できます。ちなみに混合比も下の式で近似できますので,比湿も混合比も,定義こそ違えど,値としてはほとんど同じになります。

 

    比湿の近似式(混合比も下の式で近似できる

     比湿 =  0.622×\dfrac{e}{p}

     (ただし,  e:水蒸気分圧,  p:気圧)

     単位は,g/g(あるいは kg/kg)

 

これらを理解した上で,問題文を眺めてみます。

(A)比湿は,湿潤空気(乾燥空気+水蒸気)に含まれる水蒸気の質量のことですので,湿潤空気の質量(990g + 10g = 1000g = 1kg)に対して水蒸気が10gであることを考慮すると,

    比湿A =  10(g/kg)=  0.010(g/g)

 

(B)空気中に含まれる水蒸気圧は,飽和水蒸気圧と相対湿度の積で求まります。

    空気中の水蒸気圧

     (空気中水蒸気圧) = (飽和水蒸気圧)×(相対湿度)÷ 100

温度14℃で相対湿度75%の空気の,飽和水蒸気圧は(表の値から)16hPa であることが分かりますので,その水蒸気圧は 16hPa × 0.75 = 12 hPa ですね。

これを比湿の近似式に代入して計算してやると,

    比湿B =  0.622×\dfrac{12}{700} = 0.01066(g/g)

となります。

 

(C)露点温度という言葉の理解が重要です。露点温度とは,その空気を圧力一定の下で冷やしていったときに凝結が起こる温度であり,その水蒸気圧が飽和水蒸気圧となる温度のことと言い換えられます。

よって,「温度20℃,露点温度16℃」とは,「温度20℃,(16℃の飽和水蒸気圧に相当する)水蒸気圧18hPa」と表から読み取れるのです。

あとは比湿の近似式に代入して計算してやると,

    比湿C =  0.622×\dfrac{18}{900} = 0.0124(g/g)

 

以上の結果から,比湿A < 比湿B < 比湿C で①が正解。

比湿,露点温度などの言葉の理解と,計算式の単位をきちんと理解する必要があります。

私は比湿Bの計算を,0.0166と計算ミスしてしまい,②を選んでしまって誤答となっていました。見直しするなら,計算からちゃんとやった方が良いですね。

 

 

第3問 気温減率

【正解】④

 

【解説】

受験したとき,何を問いたいのか今ひとつよく分からないと感じた1問。

 

まず,気温減率には,平均気温減率乾燥断熱減率湿潤断熱減率などがあります。

 

平均気温減率は,観測に基づいた大気の気温プロファイルの統計平均値であり,「空気塊が上昇したときどうなるか」ではなく,「その場で大気がどういう状態にあるか」を表すものです(たとえば国際標準大気での6.5℃/km)。

一方で,乾燥断熱減率と湿潤断熱減率は,空気塊の断熱上昇・下降を考えるときに用いられるものであり,未飽和であれば乾燥断熱減率,飽和していたら湿潤断熱減率を考える必要があります(乾燥断熱減率は10℃/km,湿潤断熱減率は5℃/km)。

 

上記のことを頭に入れて問題を解いてみましょう。

まず,山にぶつかる前の上空1200mの空気の温度は,30-6×1.2=22.8℃ です。この問題では,平均の気温減率が6℃/km で設定されています。

 

山に沿って上昇・下降するとき,水蒸気の凝結は起こらないということなので乾燥断熱減率(10℃/km)を考慮して,気温の変化は

  22.8-10×0.3+10×1.5=34.8℃

より④が正解となります。

平均気温減率の値を示しているのであれば,乾燥断熱減率と湿潤断熱減率の値も示してほしいと試験を受けていて思いました。問題文で与えられない数値を使って解答するのは,出題の仕方がフェアじゃないと思っていて,個人的にはこういう問題は好きではないです。これは第62回試験の一般知識の問2にも言えることです。

 

ちなみに,試験問題の状況のように,降雨を伴わないフェーン現象を「ドライフェーン」といいます。

 

 

第4問 霧の種類

【正解】③

 

【解説】

これは単純な知識問題。霧の名前を覚えていないとどうしようもありません。

代表的な霧は以下の5つです。

  • 放射霧:放射冷却により地表付近の空気が冷やされる
  • 移流霧:暖かく湿った空気が冷たい地面や海面の上を移動して冷やされる
  • 蒸発霧:暖かい水面からの水蒸気が冷たい空気中で凝結する
  • 上昇霧(滑昇霧):空気が斜面を上昇し断熱冷却される
  • 前線霧:前線に伴う降水が蒸発し,空気が湿って飽和する

 

移流霧と蒸発霧の違いは混乱しやすいので,よく問われる点であるように思います。蒸発霧は(お風呂や温泉のように)暖かい水面から蒸発した水蒸気が上空の冷たい空気に急冷され,凝結することで発生します。一方で,移流霧は,冷たい海水に冷やされた暖かい空気中の水蒸気が凝結してできる霧です。

前線霧というのはあまりピンとこないかもしれませんが,前線(主に空気が暖かい温暖前線付近)の接近に伴って雨が降り湿度が上がったところに,冷たい空気が入ることで凝結して霧ができます。

上記を踏まえて,選択肢を眺めてみましょう。

 

(a)この記述は蒸発霧のことを言っていますので,誤りです。蒸発霧と移流霧の空気と水面の温度の関係については覚えておきましょう。

 

(b)放射霧は放射冷却によって地表付近の空気が冷やされて発生しますので記述は正しそうです。しかし,気象予報士試験では,本質部分とは逸れる箇所を問うようなトラップがあったります。念のため,「放射冷却」という説明もチェックしておきます。

放射冷却とは,地表から熱が外に放出されるときに,地面が冷える現象を指します。昼は太陽からの熱を受けるので地面は暖められる方向に進みますが,日没後は冷却が進みます。冷たい空気は密度が大きく地面付近に溜まって冷えますが,風が強いと空気がかき混ぜられて冷たい空気が滞留されづらくなります。また,雲があると,地表面からの熱が雲によって反射され,再び地表面へと放出されて空気は冷却しづらくなります。よって,放射冷却は,雲がない晴れた日の夜間の,冷気が滞留しやすい風が弱いときに強まると言うことができます。

以上のことから,放射冷却についても正しく,放射霧の説明としても正しいので,文句なく正しい記述となります。

 

(c)空気が斜面に沿って上昇すると,断熱膨張により空気は冷却されます。冷やされると水蒸気が凝結して霧ができるのです。これが上昇霧です。露点温度とは凝結が起こる温度ですので,「露点温度以下に下がって生じる」という記述も正しいです。

 

これらの結果より,(a)誤,(b)正,(c)正 で③が正解。

 

 

第5問 地球放射

【正解】⑤

 

【解説】

(a)太陽からの放射を太陽放射(短波放射),地球からの放射を地球放射(長波放射)といいます。物体はどんなものでも温度があり,その温度に応じて熱を放射しています。

ウィーンの変位則を用いると,放射強度が最大となる波長を導き出すことができます。

 

    ウィーンの変位則

       \lambda_{max} = \dfrac{2897}{T} \rm{\mu m}

      (ピーク波長: \lambda_{max},黒体の絶対温度 T

   

太陽表面温度は約5800K,地球表面温度は約288Kであるので,上記の式から

  太陽放射(短波放射)のピーク波長: \dfrac{2897}{5800}≒0.5 \rm{\mu m}

  地球放射(長波放射)のピーク波長: \dfrac{2897}{288}≒10 \rm{\mu m}

となります。

可視光の範囲は約 0.38 μm ~ 0.78 μm,赤外光(赤外線)の範囲は約 0.78 μm ~ 1000 μmですので,太陽放射は主に可視光域に,地球放射は主に赤外域に入ります。そして,水蒸気や二酸化炭素などの分子は,赤外線を強く吸収しますが,可視光はほとんど吸収しないという特性を持っています。一方,酸素や窒素は可視光・赤外光のどちらに対しても吸収が非常に弱いことが知られています。

この事実から,地表から放射される赤外線を吸収し,大気中に熱を閉じ込める「温室効果」をもつ気体は水蒸気と二酸化炭素であるという考察も可能で,酸素や窒素は温室効果ガスではありません。

以上を踏まえると,選択肢の記述「長波放射は主に二酸化炭素と酸素によって吸収される」という表現は間違いとなります。正しくは,「長波放射は主に二酸化炭素水蒸気によって吸収される」ですね。繰り返しになりますが,二酸化炭素も水蒸気も長波放射を吸収するから,温室効果ガスになり得るのです。

 

(b)こういうのは図を描きましょう。

上で説明したように,短波放射の多くは可視光で構成されており,これは人間の目で感知できる範囲です。一方,長波放射は赤外線であり,人の目では見ることができません。

宇宙から青く輝く地球の映像を見たことがある方も多いと思いますが,私たちの目に地球が輝いて見えるのは,可視光が地球から出ているためです。これは,地球が太陽からの光を反射していることによるものです。

太陽からの短波放射エネルギーを100とした場合,地球はそのうち30を短波放射のまま反射します(この反射する割合が,いわゆる地球のアルベドです)。この反射された光を受け取ることで,宇宙飛行士には地球が青く見えるのです。反射の内訳としては,雲などの水滴によるものが約20,地表面によるものが約10とされています。宇宙から地球の映像で雲や陸地が見えるのも,これらの物体が太陽光を反射しているからです(もし地球の大気の上端で太陽光がすべて反射されてしまうと,私たちは雲や陸地などを視覚的に捉えることができません)。

 

ここで,エネルギーのやりとりを考えると,(エネルギーの一時的な出入りはあるものの)地球システム全体としては,長期的に見て入射と放出がつり合った平衡状態にあります。

地球の熱の出入りを見たとき,地球が太陽からエネルギーを吸収したならば,最終的には同じ分を赤外線(長波放射)として宇宙へ放射し平衡状態を保つ必要があります。

具体的には,太陽放射として地球に100のエネルギーが入射し,そのうち30は反射されて戻りますので,残りの70が地球に入ることになります。そしてその70は,赤外線(長波放射)として地球から宇宙へと放出されることで,地球の温度は一定に保たれることになります。

 

上記のことを踏まえると,選択肢の「地球の大気上端から外向きに射出される長波放射量は,地球大気上端に入射する太陽放射量にほぼ等しい」という記述は誤りです。「地球の大気上端から外向きに射出される長波放射量(ここでは70のエネルギー)は,地球大気上端に入射する太陽放射量(100のエネルギー)の約70%になる」必要があります。

太陽放射と地球放射については以下の記事をご参考。

 

(c)ステファン・ボルツマンの法則を考えます。

 

    ステファン・ボルツマンの法則

       I = \sigma T^4 

      ( I放射エネルギー  \sigmaステファン・ボルツマン定数  T:温度

 

この式は,単位面積当たりに黒体から放射されるエネルギーは,温度(絶対温度)の4乗に比例する,というものです。よって,熱を放射する物体の温度が低いと放射エネルギーは小さくなり,温度が高いと大きくなります。

 

ここで,選択肢は「背の高い積乱雲の雲頂から放射される長波放射量は,その周囲の海面から放射される長波放射量よりも大きい」とありますが,これは明らかに誤りとなります。雲の雲頂温度の方が,周囲の海面温度よりもはるかに気温が低いためです。

 

(a)誤,(b)誤,(c)誤 で⑤が正解。

 

 

第6問 相対渦度

【正解】②

 

【解説】

渦度(相対渦度)とは,ある局所領域における回転の度合いを表すものです。渦度を理解することで,低気圧(あるいは高気圧)の位置や盛衰,強風軸の位置,風のシアーなどを理解することができますので,気象解析に重要なのです。

そして渦度(ζ:ゼータという記号で表現されることが多いようです)は以下の数式で表現されます。尚, \Delta V_x \Delta V_y はそれぞれ風の  x成分 と  y成分の速度の変化量, \Delta x \Delta y は局所領域の  x方向 と  y方向の距離です。

 

    渦度ζを求める式:

        {\zeta} = \dfrac{\Delta V_y}{\Delta x}  - \dfrac{\Delta V_x}{\Delta y} 

 

渦度の計算方法については以下の記事を参考にしてください。

 

 \Delta x = \Delta y = 2000(m)であることを念頭に,地点A,B,Cの渦度を求めてみます。

(A)渦度を計算すると以下の通りです。 

     {\zeta_A} = \dfrac{0}{2000}  - \dfrac{0}{2000} = 0

 

(B)渦度を計算すると以下の通りです。 

     {\zeta_B} = \dfrac{4}{2000}  - \dfrac{-5}{2000} = \dfrac{9}{2000}

 

(C)渦度を計算すると以下の通りです。 

     {\zeta_C} = \dfrac{0}{2000}  - \dfrac{-4}{2000} = \dfrac{4}{2000}

 

よって, {\zeta_A} {\zeta_C} {\zeta_B} で②が正解。

 

 

第7問 連続の式

【正解】④

 

【解説】
本問ですが,収束・発散と上昇流・下降流の状況を理解するためには連続の式(質量保存の式)を理解しておく必要があります。ある空間に,空気が出たり入ったりしますが,このときその空間に入ってくる空気量と,出ていく空気量は等しく,空間内の空気の質量は常に一定である,というのが連続の式の意味となります。

 

この問題では,風速は提示されているものの,風が吹きつける側面や上面の面積が示されていません。

そこで,下の図のように,まずは一番下の直方体に着目して考えてみることにします。

この直方体に入ってくる空気量と,出ていく空気量を考慮して,連続の式が成立するための条件を見つけていきます。

 

    流入・流出する空気量

     (体積流量) = (風速)×(風と垂直な面の面積)

 

であることを理解しつつ,流入方向をプラス,流出方向をマイナスとして,

  側面からの空気流入量:+5 × 側面積  S

  側面からの空気流出量:-4 × 側面積  S

  上面からの空気流出量:-0.5 × 上面積  U

です。

このとき,空間に入ってくる空気量と,出ていく空気量が等しい,すなわち連続の式が成立するとして,以下の式を立てます。

 5 × 側面積  S - 4 × 側面積  S - 0.5 × 上面積  U = 0

 

これより, 側面積  S :上面積  U = 1 :  2 という面積比になる必要があると求まります。すなわち,上面積  U = 2S  ですね。

 

ここで,下段から上段の3つの直方体を合わせたものを1つの大きな直方体とみなして,その大きな直方体に出入りする空気量を考えると,流入方向をプラス,流出方向をマイナスとして

  側面からの流入量:

   5 × 下段側面積  S + 5 × 中段側面積  S + 4 × 上段側面積  2S =   +18S 

  側面からの流出量:

   -4 × 下段側面積  S - 3 × 中段側面積  S - 5 × 上段側面積  2S = -  17S 

  上面からの体積流量:

   求める風速  v × 上面積  U =  2vS

 

よって,  18S - 17S + 2vS = 0 

この式を解いて,   v = - 0.5 (m/s)と求まり, 直方体上面で風は  0.5 (m/s)の速さで流出していると分かるのです。

 

よって,上向き(ここでは正方向)に  0.5 (m/s)であるので,④が正解ですね。

 

 

【別解】

もう少し丁寧に,ひとつひとつの直方体に分けて計算しても同じ計算結果を得ます。

まずは下段の直方体。この直方体の連続の式を考えることで,側面積  S :上面積  U = 1 :  2 が得られます。

 

次に中段の直方体に着目。直方体上面からの体積流量をとりあえず上向きに  x (m/s)とします。底面では,下段から 0.5 m/s で空気が流入します。

この直方体にも連続の式を適用すると,
 5 × 側面積  S - 3 × 側面積  S + 0.5 × 底面積  2S x × 上面積  2S = 0

より,  x = 1.5(m/s)と求まります。

 

最後に,上段の直方体も連続の式を考慮してみましょう。直方体上面からの体積流量をとりあえず上向きに  y (m/s)と設定しておくことにします。また,底面では,中段の直方体から   x の風速,すなわち 1.5 m/s で空気が流入します。

 4 × 側面積  2S - 5 × 側面積  2S + 1.5 × 底面積  2S y × 上面積  2S = 0
より,  y = 0.5(m/s)と求まります。同じ結果が得られました。

 

私は受験したとき,上の解法と下の解法をどちらも適用して見直しをしたのですが,面Bと面C間の距離が  2H と2倍になっていることを失念して計算してしまい,結局⑤を選んで間違いとなっていました。これもしょうもないミスですが,見直ししたのに気づけなかったのは実力不足ですね。

 

 

第8問 ジェット気流の緯度高度分布

【正解】⑤

 

【解説】

こちらは天気図などを日頃から眺めていれば正解に辿り着けますが,そういう習慣がないと高度や緯度の数字の感覚がつかめず苦労するかもしれません。

(a)下は200hPa(高度約12km)の天気図ですが,ジェット気流を表す矢羽根が明瞭に確認できます。これがジェット気流の軸です。すなわち,ジェット気流の軸は500hPa(高度5500m)よりももっと上空に現れます。


(b)こちらも天気図を確認してみましょう。

下は冬(1月)の上空200hPaの風速を色付けしたものです。日本列島付近にジェット気流の軸となる濃い帯があります。南側に亜熱帯ジェット気流,北側からは寒帯前線ジェット気流が蛇行して合流しているような形になっています。

一方,下のように,夏(8月)はジェット気流の軸は北側に移動します。北海道付近を進んでいる帯が亜熱帯ジェット気流です。真夏は,太平洋高気圧に押される形になりジェット気流は北上します。

 

赤道付近は1年を通して気温は概ね一定していますが,冬は極付近で非常に寒くなり寒気が南下します。このため,冬は半球の南北の温度差が大きく,夏は小さくなります。

ジェット気流は南北の温度傾度が大きいところにできるので,暖かい空気と冷たい空気がぶつかるところを考慮すると,冬は南側に,夏は北側に発達すると考えられます。

 

(c)寒帯前線ジェット気流と亜熱帯ジェット気流の3か月平均の緯度分布についての問題です。

寒帯前線ジェット気流は,特に冬は傾圧不安定波に伴う温帯低気圧の移動や発達などに強く関連しています。そして,寒帯前線ジェット気流は蛇行しやすく,また蛇行の振幅が大きくなりやすいという特徴があります。蛇行が大きいということを考慮すると,寒帯前線ジェット気流の軸は不明瞭になりやすいと言えます。蛇行の振幅や波長が軸の平均的位置に拡がりをもたらすためです。

 

一方で,亜熱帯ジェット気流は,寒帯前線ジェットよりも低緯度側でほぼ定常的に吹いています。定常的に存在しているので,軸の平均的位置は比較的明瞭といえます。

 

(d)貿易風についての説明で,これはその通りで解説することもありません。

 

これらの結果より,(a)誤,(b)誤,(c)誤,(d)正 で⑤を選ぶのが正解です。

 

前半部分はここまで。次回に続きます。

 

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

 

 

気象予報士登録

 

先日,気象予報士登録申請書を気象庁長官に提出し,無事に手続きを完了しました。これで「気象予報士」と胸を張って名乗れるようになります。

 

 

気象予報士の登録申請

気象予報士試験に合格しても,自動的に気象予報士になれるわけではないことは,一般知識の気象法規で勉強しています。

気象予報士となる資格)
第二十四条の四 試験に合格した者は、気象予報士となる資格を有する。
第二十四条の二十 気象予報士となる資格を有する者が気象予報士となるには、気象庁長官の登録を受けなければならない。
 
(登録の申請)
第二十四条の二十二 第二十四条の二十の登録を受けようとする者は、登録申請書を気象庁長官に提出しなければならない。
 前項の登録申請書には、気象予報士となる資格を有することを証する書類を添付しなければならない。

気象予報士になるためには,登録申請書を気象庁長官に提出して,登録を受ける必要があるのです。しかしながら,その期限は定められておらず,試験合格後すぐに申請される方もいれば,合格後も必要になってからでないと申請されない方も少なからずいるらしく,人によってさまざまなようです。

私も当初は,年内のどこかでやればいいかぐらいに思っていたのですが,日々に忙殺されて登録がどんどん後回しになる怖さ(喫緊で資格を必要としていないので,いつまででも伸ばせる),資格として有していることに越したことはないという思い(気象予報士資格を有して損する点が見当たらない),そのうち万が一にも気象業務法などが改定されて何もしてないうちに登録できなくなるかもしれないという杞憂(妄想)などが頭に浮かんで,早いうちに気象予報士登録申請をしておこうという風に気が変わりました

 

戸惑った登録手順

気象予報士の登録申請には,「オンライン申請」と「書面による申請」の2つがあるのですが,今回私はオンラインでの申請を選択しました。ラクそうだから。

しかし,e-Gov(イーガブ)という行政運営のアプリを自宅PCにインストールして使用することになるのですが(2.アプリのインストール | e-Gov電子申請),これがなかなか使いづらい。

氏名,住所,合格証明書番号といった必要事項を記入したは良いものの,最後に内容確認のボタンを押すと,「証明書がありません」と表示されて,そこで数十分ほど膠着状態になりました。証明書って何の証明書?ネットとかを見ていても,多くの方はここで脱落して書面での申請に切り替えるようです。

結局は,カードリーダー(過去に個人的に購入したものが自宅にあった)にマイナンバーカードを差し込みながら入力すると,うまく進むことが分かり,マイナンバー設定時の英数字パスワード(署名用電子証明書のPINコード)を入力することで解決。自動的に電子証明書(確実に本人であることを電子的に証明するもの)が認識され,無事申請できました。手数料振込も,インターネットバンク経由でe-Gov上で済ませます。

ちなみに,オンライン申請だと手数料が2900円で済みますが,書面申請だと3600円取られるので,e-Govの使いづらさに目をつむることさえできれば,デスク上で完結しますし700円分のお金が浮くのでオンライン申請もまぁアリかとは思います。躓きさえしなければ30分~1時間もあれば申請できるはずです。

ただし,合格証明書のコピー身分証のコピーの添付が必要なので,スキャナーがなければいけない点や,Authenticatorなどの認証システムをスマホに入れないといけない点(私は普段使わないGoogleのものを用いたが使い方にやや戸惑った),手数料振込のためのネットバンクの口座カードリーダー(2025年4月現在iPhoneからではできないようだ,Androidは可能らしい)やマイナンバーおよびそのパスワードも必要になるので,身近に機器がないとか,最近のテクノロジーにはついていけないとか,逆に面倒くさいとかいう方は,書面で申請した方が余計なストレスは少なく済むと思います。

 

オンライン登録についての具体的な操作については,以下のサイトに詳しく書かれておりますので,分からない点が出てきたら参考になると思います。

 

それにしても,国がオンライン化を積極的に推し進めているのであれば,このe-Govというアプリケーションは,利用者目線での使いやすさについてもう少し本気で考えた方がいいと思います。たしかに手数料はやや安いものの,審査が特別に早くなるわけでもなく,操作性も良いとは言えず,これではいつまで経ってもオンライン申請は普及しないかと(公表はされていませんが,ネットを見ていてもオンライン申請の割合は低いと思われます。おそらくせいぜい2割程度じゃないかと)。

とはいえ,使う人がいなければ改善も進まないでしょうから,私たちが積極的にチャレンジする姿勢も必要かもしれませんね。今後試験に合格された方で,急ぎでなく,必要な機器も揃っているという方は,ぜひオンライン申請にトライしてみてください。特に,引っ越しが多い方や,近い将来苗字が変わる予定がある方は,今後のためにオンライン申請を一度経験しておくのも良いかと思います。そして,多くの人が書類で申請する中,自分だけオンラインで申請したということで,ちょっとした話のネタになるかもしれませんよ。知らんけど。

 

額縁の購入

登録手続きが完了すると,気象庁から気象予報士登録通知書が届くようなので,額縁だけ事前に購入しておきました。合格者の皆さんはだいたい額縁に入れて飾っているようです。

だいたい1000円から3000円程度が相場のようですが,せっかくの証書であるので,あまり安物の額縁に飾るのもどうかと思って,3000円程度のものを選びました。

「尺七大(約310mm×約220mm)」じゃないと通知書が入らないということなので,額縁の大きさには注意が必要です。

とりあえず,これで準備は万端のはず。あとは気象予報士に登録されるのを待つのみです。

 

気象予報士

通常は申請をしてから,だいたい2週間くらいで登録が完了するようです(3週間待っても何も通知がこない場合は問い合わせしてください,とのこと)。

私は4月も半ばになってオンライン申請を行いました。このタイミングは試験に合格した方たちの中では遅い方なんでしょうかね。真ん中くらい?

 

e-Gov上では審査の段階(到達・審査開始・審査終了・手続終了の4段階)が表示され,徐々に気象予報士に近づいているんだなと実感することができるので,その点は書面申請とは異なる点かもしれません。

 

e-Govで申請した日から2週間と少し経って,気象庁から気象予報士登録通知書が届きました。通知書は茶封筒に入って一般郵便としてポスト投函されていました。簡易書留か何かで丁寧な扱いを受けて届くもんだと思ってましたが,意外とあっさりしたものなんですね。

一方でこのとき,e-Govの画面は「審査開始」の状態のままだったので,「審査終了」してから通知書が届くわけでもなさそうです。

 

封筒には通知書(型崩れしないように厚紙も同封されている)のほかに,登録手続き完了の小冊子が入っていました。住所を変更したら速やかに届出することや,登録抹消の届出について記載されています。

 

何かの拍子で汚れてしまうリスクを可能な限り回避するために,通知書はすぐに額縁に格納します。ネットの情報通り,尺七大の額縁にピタリと収まりました。

この登録通知書は再発行されないため,通知書を紛失したら二度と入手することができません。保管といった意味でも,他書類と一緒にクリアファイルに格納するよりかは,額縁に入れて部屋に飾っておく方が確かに良いのかもしれませんね。

 

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というわけで,このたび正式に気象予報士となりました。

昨今の気候変動に伴って,気象災害が頻発することが予想される中,気象を予測できるというスキルを有していることは大きなメリットになるものだと信じています。

そしてこの資格は生涯有効であるというのですから,気象について一定の知識と技術を有した者という一つの証明を与えられた中で,生涯にわたって天気を楽しめるということは,私自身の人生を豊かにしてくれるものにもなり得るでしょう。

 

試験合格後は机に向かって勉強することがほとんどなくなりましたが,勘を鈍らせないように日々少しだけでも気象について勉強するよう心がけていきたいとは思っています。

 

参考図書・参考URL

以下のWebサイトを参考にさせていただきました。

 

 

2025年4月の気象関連ニュース

 

毎月恒例の,個人的に興味をもった気象関連ニュースをまとめてみました。

 

 

2025年3月の世界平均気温は観測史上2番目の暑さ

まずは地球温暖化問題。

今月8日,「コペルニクス気候変動サービス」から,2025年3月の1ヶ月間の世界平均気温について発表がありました。その内容は以下の通り。

  • 2025年3月は観測史上2番目に暖かく、2024年の3月よりも0.08°C低く、2016年に3番目に暖かかった3月よりも0.02°C高かった。

  • 1850年から1900年の産業革命前の3月の平均値よりも1.60°C高かった。

昨年3月(史上最高気温)に続く観測史上2番目に位置する暖かい3月だったということですね。

下の図を見ても,2025年が高い値で推移していることが分かります(Surface air temperature for March 2025 | Copernicus)。

 

パリ協定では,産業革命以前に比べて世界の平均気温の上昇を「1.5℃まで」に抑えるという目標が盛り込まれていますが,2025年3月も1.60℃高かったということで,2025年に入って3ヶ月連続で1.5℃の壁を超えてしまいました。

この分だと,今年も記録的な暑さが持続することが予測されます。温暖化の臨界点が近づく足音が聞こえてきそうです。

 

桜前線の通過

今年も桜が満開となり,そしてすぐに散ってしまいました。恒例の春の光景です。

関東や近畿,九州では,多くの地点で昨年よりも数日早い開花となったようで,概ね平年並みの開花であったそうです(さくら開花予想2025)。

さくら開花前線

余談ですが,現在桜の代名詞となっている「ソメイヨシノ」は,江戸時代に品種改良され,明治時代に現在の名前が冠され,終戦後に全国に広がったそうで,意外とその歴史は浅いことを最近知りました。

毎年春に美しく花を咲かせる桜を残してくれた先人たちに,ただただ感謝するばかりです。

 

奈良で落雷

こちらはなかなかショッキングなニュースでした。

4月10日,奈良市にある学校のグラウンドに雷が落ち,部活動をしていた生徒6名が病院に搬送されました。

当時は雷注意報が発令されていたようですが,雷鳴もなく,強い雨が降り始めた直後の1発目の雷が不運にもグラウンドに落ちたことで,フィールドにいた学生さんが被害に会われたとのことです。

www.asahi.com

 

後から振り返れば学校側を責めることもできるかもしれませんが,当時の状況を考えると,直前のタイミングで落雷を予測し,血気盛んな学生さんたちに部活動を中止させるのが難しかっただろうということも理解はできます。

雷による人的被害に会う確率は100万分の1以下であることを考慮しても,まさか自分が被害に遭遇するとは考えもつかなかったでしょう。

 

ただ,今回の出来事を通して,雷の怖さについて改めて真剣に考え直さなければならないと強く感じさせられたというのが,多くの方の共通した意見ではないでしょうか。

万全を期して,雷注意報が発令されている際には建物内に避難するなど,私たち自身が意識的な行動を心がけるのが重要ですね。

 

デジタルアメダスアプリの全国運用開始

4月25日,気象庁スマートフォンなどで気象状況を確認できる「デジタルアメダスアプリ」の全国運用を開始しました。

www.jma.go.jp

これまで北海道を対象に試験運用がなされていたようですが,表示方法などいろいろと改良を重ね,ついに全国に拡大することとなったとのこと。

気象衛星ひまわりとレーダー観測を組み合わせることで,(点ではなく)面による詳細な情報が得られることが特徴だそうで,いろいろな場面での活用が期待されているようです。

 

早速私も,スマホにアプリをインストールしてみました。

画面は,(気象庁の資料を引用して)下のような感じです。

画面もそれなりに見やすいですし,直感的な操作で分かりやすい。使いやすさについていろいろ検討を重ねた努力の跡が見られます。

雷注意報や熱中症警戒アラートなどについても通知設定ができ,現在地で災害が起こるおそれがある場合には通知が届くようになっています。今後の改良の余地はあるとは思いながらも,ひとまずインストールしたアプリを継続使用していこうかなと。

 

お出かけのときには,このアプリが活躍するかもしれません。

 

出典

 

 

雷から身を守る方法

 

2025年4月10日,奈良市にある学校のグラウンドに落雷があり,学生6名が重軽傷を負う事故が起こりました。当時は雷注意報が発令されてはいたようですが,雷鳴もなく,強い雨が降り始めた直後の1発目の雷が不運にもグラウンドに落ちたことで,近くにいた学生さんが被害に巻き込まれたとのこと。

今後は,事故原因の詳しい調査と再発防止策の検討が進められていますが,果たしてどのように行動していたら事故を防げたのでしょうか。

今回は,この機会に「雷」について深掘りして学んでいくことにしました。

 

 

 

そもそも雷とは何なのでしょうか。どのようにして発生し,その威力はどれほどで,身を守るためにどう行動すればいいのでしょう。

これまで生きてきて,何度も雷光を目にし,雷鳴を耳にしてきたにもかかわらず,いざこうした問いを投げかけられると,意外と分からないことが多いと気づかされます。

さらに,身を守るためにどのような行動を取ればよいのかについては,世の中にさまざまな誤った情報が出回っており,何が正しくて何が間違っているのか混乱してしまいがちです。

そこでここでは,雷について正確な知識を整理し,理解を深めておきたいと思います。

 

雷ができる原理

まずは雷がどのように発生するか,そのメカニズムを見ていきましょう。と言いたいところではあるのですが,実は雷が発生するメカニズムについては未だによく分かっていないというのが現状のようです。

 

最も一般的に受け入れられている雷の発生メカニズム仮説によると,雲(積乱雲などの対流雲)の中にある微粒子や水,氷の粒がぶつかることで摩擦などによって帯電して,プラスの電荷を帯びた小さな氷粒は雲の上層に,マイナスの電荷を帯びた大きな氷塊は雲の下層にたまり,雲の中に上層と下層で電位差(電圧)が生まれるためだと説明されます。

 

電位差が十分に大きくなると,電気的バランスを取ろうと電荷が一気に移動します。これが「放電」です。

このとき,積乱雲の中(あるいは隣り合う積乱雲の間)で放電が起こることがあり,これは雲放電と呼ばれます。たまに雨なども降らず,雲の中がただ光っているだけの光景を見ますが,これは雲の中で放電が起こっているためです。

 

一方,雲と地上の間で放電が起こることもあり,これは対地放電,いわゆる「落雷」と呼ばれます。

通常,空気は絶縁体ですが,電位差が非常に大きくなると絶縁が破れ,放電が起こることがあるのです。

 

1回当たりの雷のエネルギーは15億 J(ジュール)と推定されているようで,家庭用電力量の2ヶ月分に相当するというのですから(はれるんランドより参照),落雷のエネルギーがいかに甚大であるかが理解できます。

 

落雷の種類

落雷には,直撃雷側撃雷歩幅電圧などがあります。他にもあるようですが,ここではこの3つを紹介しておきます。

 

直撃雷とは,(その名前の通り)直接人体へ雷が落ちる現象です。

家庭用コンセントの100万倍の電圧と数千アンペアの電流が体内に流れ,心臓の筋肉が一気に収縮して停止したりすることで,多くの場合死に至ります。それでも致死率は80%程度のようで,20%程度は生存する(ただし重症を負うことは免れない)というのですから,逆に生命の逞しさを感じずにはいられません。

 

側撃雷は,高い物体に落ちた雷が,途中でその物体から人体へと飛び移る現象です。

雷というのは,一番通りやすいラクな経路を通って地面に落ちるという性質があり,例えば樹木に落ちた雷は,より電気抵抗の少ない人体に途中で経路を変えることがあります。直撃雷に次いで死亡率が高く,側撃雷を受けた人のおよそ70%程度が死に至るとされます。

 

歩幅電圧とは,雷が落ちた直後,地面に流れる電流が作り出す電位差によって感電する現象です。

雷が地面に流れ込むと,電気は地面全体に一瞬で拡がろうとしますが,地面には電気抵抗があるため,落雷地点から離れるほど電圧が減っていきます。もし,落雷地点の近くに人が立っていて,その左足の地面が1000V,右足の地面が800Vであれば,歩幅電圧はになり,この200Vが体内を通ってしまうと,人体に危険な影響を与えます。ただ,歩幅電圧の死亡率は低く,ほとんどが軽傷で済むようです。

 

直接雷に打たれた場合に人間の体がどうなるかは,下の動画をご参考にしてください。

 

雷から身を守る方法

雷から身を守る方法については,昔からいろいろな伝承や言い伝えなどがありますね。たとえば,「雷が鳴ったらヘソを隠せ」「ベルトなど身に着けた金属を外せ」「木のかげに隠れろ」「ゴム製の長靴は電気を通さないので安全」など。ヘソを隠すのに効果がないことは明白ですが,ベルトを外したり,木の下に隠れることはホントに意味があるのでしょうか?

ここからは雷から身を守る方法について考えていきます。NHKのサイト(雷(カミナリ)対策 落雷から身を守る 注意点は? - NHK)を参考にしています。

 

気象庁からの警報・注意報をチェックする

今回奈良で起こった落雷も,過去に起きた落雷事故(土佐高校サッカー落雷事故*1長居公園落雷事故*2)も,多くの場合は雷注意報が発令中に起こったものでした。

 

気象庁からは,雷注意報雷ナウキャストといった,雷に関する気象情報を発表しているので,これらをチェックして今後の落雷の可能性を事前に把握しておくことが重要になります。

www.jma.go.jp

 

ちなみに,雷注意報は,落雷による災害発生のおそれがあると気象庁が判断した場合に発表され,事前に雷による被害を想定して注意を促すためのものです。注意する点としては,「雷警報」というものは存在しないので,注意報だからと言って侮ってはいけません。

一方,雷ナウキャストは,雷の激しさや発生の可能性を1km単位で解析し,1時間先までの予測を10分ごとに更新するもので,リアルタイムに近い雷の活動状況を把握するための情報です。

それゆえ,雷注意報が出た時は落雷のリスクが高まっていることを表し,屋外での活動を控えましょう。特に,雷ナウキャストで活動度2以上は落雷の危険があり,直ちに安全確保の行動をとる必要があります

 

屋内や車の中などに避難する

とは言っても,どうしても出かけないといけない用事があって,外出中に突然雷が鳴ってきた際には,どのような安全確保の行動をとればいいのでしょうか?

 

まず,場所が都会で,近くにデパートやビルや駅などがある場合には,屋内に避難します。万が一,建物に落雷したとしても,電気は壁を通って地面に流れるので安全です。

一方で,雨が降るとビルや家の軒下で雨宿りしがちですが,落雷時に壁を伝って流れてきた電流が人に飛び移る側撃雷の危険があり,安全ではありません。

 

そして,車やバス,電車や飛行機の中なども比較的安全です。金属でできた車体の表面を通ってタイヤから地面へと電気が逃げるためです。ただし,濡れた窓や車内の金属部分に触れていると,そこから感電する可能性もあり注意が必要だと言います。

野外フェスやキャンプ,花火大会など外にいるときでも,雷が鳴ったらすぐに会場を離れる決断をしましょう。

 

落雷リスクが高まる手荷物は手放し,木に近づかない

アウトドアですぐに逃げ込める場所が周りにないときは,どのような点に気を付ける必要があるのでしょうか。

 

まず,雷は最も高い場所に落ちやすいという性質があるので,ゴルフクラブや釣り竿や金属バットなどを高く突き出してしまうと,そこに落雷する可能性が高くなるので絶対にやめましょう。傘をさすのも,その分背が高くなり,傘の先端が避雷針のような状態になるため危険です。落雷のリスクのあるものは手放して,身を守る行動をとることを最優先します。

また,雨が降っていると,どうしても木の下に避難したくなりますが,万が一近くの木に落雷した場合,側撃雷によって人体に電流が飛び移ったり,地面からの電流が流れてきたりする可能性があり非常に危険です。木の下の雨宿りの際に落雷で死亡する例は後を絶たないと聞きます。木から少なくとも4mは離れるようにしましょう。

 

ベルトなどの金属部分に雷が落ちやすいという話もありますが,こちらはさまざまな実験から否定されています。雷に打たれた人の,金属に触れていた部分がひどい火傷を負っていることが多かったため,それが誤解の元になっているようです。逆に直撃雷では,スマホなどの金属が含まれる製品を身につけていた方が人体に流れる電流を減らす効果(ジッパー効果)が報告されているようですが,金属を身に着けていれば必ず起こるわけではないので,そこまで期待できるものでもないようです。

 

さて,手荷物を手放し,高い木から離れて避難しようにも,近くに逃げ込める場所が見当たらない場合には,電線を見つけるのが効果的であるようです。

電線は避雷針に近い役割をするため,その下は,屋外でも相対的に安全性が高い場所になります。ただし,電線の下でも,鉄塔や電柱に近い場所は側撃雷によって人体に電流が飛び移る可能性があるため,数m以上は離れることが推奨されます。あくまで他の手段がない場合の例外的な対応にはなりますが,命を守る行動としては,何もしないよりは遥かに有効です。

 

最終手段は「雷しゃがみ」のポーズをとる

周りが開けた場所で,逃げ込める建物もなく,電線なども見当たらないような絶望的な場合には,最終手段として「雷しゃがみ」の体勢をとる方法があります。

www.youtube.com

 

雷は最も高い場所に落ちやすいという性質があるので,まず姿勢を低く保ちます。できるだけ姿勢を低くしたいなら,その場で寝そべることも有効に思えますが,近くに落雷した場合,地面を伝ってきた電流が心臓を通りやすくなるため危険なポーズであるようです。

そして足はそろえます。これによって,歩幅電圧による左右の足の電位差をできるだけ小さくすることが期待できます。

さらに,接地面積を少なくすることで,体内に流れ込む電流量を最小限に抑えるためにつま先立ちをするのが有効です(ただしつま先立ちは安定性が悪いので無理をする必要はない,転んだら本末転倒)。

最後に,爆風で鼓膜が破れるのを防ぐため親指で耳の穴を塞ぎ,残りの指で頭を抱え下げる体勢をとると,雷しゃがみの完成です。

 

このとき絶縁体のゴム製靴の方が良いかという疑問もありますが,雷のような巨大な電圧の下にあっては,ゴム製品だろうがその他の絶縁体であろうが,ほとんど意味をなしません。そもそも雷が鳴った時に,すぐにゴム革靴を準備できるような状況がなかなか考えづらいかと思います。

 

まとめ

以上をまとめると,以下のように整理できるかと思います。雷をきちんと理解し,きちんと恐れることが重要ですね。

  • 雷注意報や雷ナウキャストをチェックし,雷の危険が迫っているようなら外出を控える。「雷警報」は存在しないので,注意報でも十分に警戒する必要がある。
  • 外出時に雷鳴が聴こえてきた場合には,速やかに屋内に避難する。
  • 車やバス,電車,飛行機の中も比較的安全。ただし,濡れた窓や金属部分に触れると感電の危険がある。
  • ビルや家の軒下での雨宿りは側撃雷の危険があるので避ける。
  • 雷は高い場所に落ちやすいという性質があるため,ゴルフクラブや釣り竿や金属バットなどの落雷リスクのある手荷物は手放し,傘などはささない。
  • 木の下の雨宿りの際に落雷で死亡する例が後を絶たない。木からは少なくとも4mは離れる。
  • 避難できる建物が見当たらない場合には,屋外でも相対的に安全性が高いとされる電線の下に逃げ込む。ただし,鉄塔や電柱からは十分距離をとる。
  • やむを得ない場合には,「雷しゃがみ」の体勢をとる。
  • 身に着けている金属を外したり,ゴム製の靴を履いたりすることは,落雷の被害を抑えるほどの効果はない(むしろ金属製品を身に着けていることで体内の電流量を減らす効果が報告されているが,これもあまり期待できるものではない)。

 

今回いろいろ雷について調べてみると,知らないことも多かったので,今後の防災を考えるうえで非常に有用な内容を知ることができました。

 

参考図書・参考URL

下記の文献やwebサイトを参考・引用・使用させていただきました。

 

2025年3月の気象関連ニュース

 

今月の個人的にピックアップした気象関連ニュースについてまとめてみました。

 

 

2025年2月の世界平均気温は観測史上3番目の暑さに

先月2025年2月の世界平均気温が「コペルニクス気候変動サービス」という気象情報機関によって発表されました。

この機関の公式サイトがいろいろな図が載っていて結構面白いので,ご興味あれば見てみてください。

 

その発表を要約すると以下のようになります。

  • 2025年2月は観測史上3番目に暖かい2月だった。
  • 1991年から2020年の2月の平均値より0.63°C高く,気温は13.36°Cだった。
  • 1850年から1900年の産業革命前の2月の平均値よりも1.59°C高かった。

 

パリ協定では,産業革命以前に比べて世界の平均気温の上昇を「1.5℃まで」に抑えるという目標が盛り込まれましたが,2025年2月は1.59℃高かったということで,2025年1月に引き続いて2ヶ月連続で1.5℃の壁を超えてしまったことになります。

 

1年間を通しても,2025年は暑い年になりそうだと予想されているようで,地球は沸騰化に向けて着実にその歩みを進めていることを感じさせます。

 

世界の海氷面積が史上最少に

こちらも地球温暖化に関連したニュース。

 

米国立雪氷データセンター(NSIDC)が発表したところによると,北極と南極の海氷の合計面積は過去最少となったそうです。

下の図(NSIDC, Arctic sea ice hits record low maximum extent for the year | National Snow and Ice Data Centerより引用)は先日2025年3月22日の北極の海氷の衛星画像ですが,1年の中の極大面積に達したと考えられているものの,その面積は(当時最小を記録した)2023年を下回って過去最少となりました。

 

This NASA blue marble image shows Arctic sea ice extent on March 22, 2025, when sea ice reached its maximum extent for the year. Sea ice extent for March 22 averaged 14.33 million square kilometers (5.53 million square miles), the lowest in the 47-year satellite record.

図に引かれたオレンジ線が1981年から2010年までの30年間の海岸線の中央値ですが,北極の海氷が失われていることが読み取れます。

海氷は,太陽からの放射を宇宙空間に向けて反射して,地球を冷やす役割を担っていますが,海氷面積が小さくなることで温暖化が加速するという負のフィードバックループアイス-アルベドフィードバック)に陥ることが懸念されます。

実際,北極域や南極域では他の地域と比べて実に4倍もの速さで温暖化が進んでいるといいます。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

国内で山林火災相次ぐ

国内に目を向けると,相次ぐ山林火災が大きなニュースとなっていました。

まずは先月2月26日に発生した岩手県大船渡市で起こった山林火災に始まります。2900ヘクタール(だいたい東京23区のうち1区分の面積)を焼き,死者1名,171件の住宅が全焼する結果となりました。

3月23日には,愛媛県今治市岡山県岡山市でそれぞれ山林火災が発生今治市は442ヘクタール(東京ドーム100個分)を焼き,近隣住民には避難指示が出されました。岡山市でも565ヘクタールを焼失し,県内記録上,最大規模の火災となったといいます。ただし,今なお火種は燻り続けている可能性があり,完全に鎮火したとは言い切れない状況ということで注意が必要です。

さらに国内だけでなく,お隣の韓国でも大規模な山火事が起こり,死者30名に達するほどの最悪の災害となっています。

 

このような日本や韓国で同時多発的に山林火災が起こった理由の一つとして,気候変動の影響があると考える研究者もいるようです。

 

1950年から1986年までの過去の期間と,直近の期間でデータを比較したところ,山林火災が起こった地域周辺の気候は,気温は最大2度上昇し,雨量は最大3割減少,風速は最大1割ほど強まっていることが分かったというのです。雨が降らずに乾燥気味で,風が強いため火が広がりやすくなっているということですね。

地球温暖化の影響で大規模火災が起こるリスクが高まるのであれば,今後も継続した山林火災が日本国内で起こることが予想され,我々はなお一層の注意を払って,火を取り扱う必要が出てくるかもしれません。

 

南岸低気圧接近で東京で雪

3月上旬には,南岸低気圧の影響によって東京では1週間に複数回の雪を観測しました。

下は3月4日21時の地上天気図ですが,東京の現在天気が雪になっていることが分かりますね(赤丸で囲った記号)。

また,関東平野周辺では気圧の尾根(紫色の線で表示)も見られ,関東地方では下層に寒気が流れ込んだことで,重く冷たい空気によって地上気圧が高くなっている様子も見て取れます。

その後,3月8日夜からも東京は雪となり,1週間の間に複数回の雪となりました。

 

気象予報士試験に合格

最後は個人的ニュース。年始に受験した第63回気象予報士試験に無事合格しました。

合格証明書を目にしたときはあまりピンときませんでしたが,少しずつ嬉しさのようなものは感じられるようになってきました。

weatherlearning.hatenablog.jp

合格してからは,机に座って気象の勉強をすることがほとんどなくなったのですが,来月からは,これまで書ききれていなかったり飛ばしたりした分野についての記事を少しずつ書いていこうと思っています。

 

出典

 

気象予報士試験合格までの軌跡③

 

今回で最後です。気象予報士試験に合格するまでの軌跡です。ご興味ございましたら。

 

 

実技のスピードと精度の向上

 2度目の試験結果が不合格と判明した2024年10月半ば,再び気象の勉強を再開した。専門知識には合格しており,心持ち余裕が少しばかりあった。とにかく年末までの2ヶ月程度は,実技試験について精度を高めようと意識した

 前回試験までの時点で,過去6年ほどの実技試験を2周していたので,3周目を実施することになる。このとき意識したことは以下の4点。

①制限時間とスピード

実技試験は75分という短い試験時間の中で,大量の図表の処理を求められるため,悠長に取り組んでいたら確実に時間が足りなくなる。これまでは時間を計測せずに実技試験を解くことも多かったのだが,この時から制限時間をあえて厳しめに設定して,時間内に解ききることを目標とした。過去問も3周目となると,これまで解いたことのある問題なので,(忘れはするものの)内容についても真新しいものはない。それをだいたい65分程度の10分余裕をもって解ききるという負荷をあえて自分に課した。

②図の読み取り精度

例えばエマグラムの自由対流高度の読み取りや,雲頂の気温,トラフの位置など,それぞれ10hPa,2℃,1°ズレたりすることが良くあった。正直これまでは,この図の読み取りは「だいたい」でやっていたのだが,ここの図の読み取り精度を向上させることを意識づけた。どういう解析をすれば模範解答の結果に近づくのかを試行錯誤した(それでも,第63回試験の実技の模範解答と比較して私の解答は10hPaほど雲頂高度はズレたりしている)。個人的に大事だと思ったのは,「だいたい」という曖昧な基準ではなく,自分なりの解析方法を確立しておくこと。自分軸があったら意外と自信につながった。

③自身の記述のクセ

2周した過去問の答案用紙はすべて保管していた。3度目の解き直しをすると,過去3回分のデータの蓄積があるので,同じところで躓いていたり,同じような記述をしていたりと自分自身のクセが見えてくる。模範解答のようなスッキリと書ける記述を,回りくどく説明していることも多く,そういった場合には「定型句」のような“型”として,模範解答の言い回しをそのまま覚えてしまった(例えば,「山岳の○○側斜面で,空気塊が地形に沿って上昇する」や「風速は低気圧の××側で相対的に強く最大30ノットで,●●側で最大10ノットと弱い」など)。

④ノートを用いた丁寧な復習

何度も言っているが,ノートをつけることは学習する上で非常に効率的だと思う。図をペタペタ貼ったりして,天気図の見方を覚えて,時間があるときにパラパラ復習もしていた(下写真が私が実際につけていたノート)。

新しい問題を解きたくなるが,同じ問題を複数回解いてそれを完璧までに仕上げる方が,実技の精度を高めるという目的には合致した方法だと思う。



一般知識のやり直し

 一般知識に関しては,第60回,第62回と,過去に受験した試験でいずれもあと1点足りない状態だった。これを,私なりには,「基本的な理解は概ねできているが,詰めが甘い状態」だととらえた。ただ,過去2回一般知識が不合格だったこともあり,一般知識については苦手意識を持つようになっていた。

 ここで,『らくらく突破(一般知識編)』をもう一回やり直すことも考えたが,それだと結局同じ轍を踏みそうなので,これまでとは全く別の本で一般知識をやり直すことにした。

 『一般気象学』(東京大学出版会,小倉義光著)

 気象学の名著と名高い本だが,とりあえず購入していたものの,とっつきにくそうだったので本棚にしまわれたままになっていたのだ。結果的には,この本のやり直しが私には非常にプラスに作用した。

 他の参考書では得られない情報や視点を学ぶことができたし,内容が非常にロジカルで理論的なので,流れとして頭に入る。これまでブログをノート替わりにしていたが,ここで『一般気象学』用のノートを準備する。

 勉強を始めたのは,2024年12月下旬。試験のおよそ1ヶ月前 (もっと前に始める予定だったが,体調を大きく崩して1週間寝込むというトラブルがあり年末挽回した)。年末の休暇を使って,2週間ほどで読了してノートを仕上げた。内容も思っていた以上に難しくはなく,サクサク読み進められた。

 これに加えて気象法規についても丁寧に整理しなおした。この分野は,本当にただの暗記なので,『ユーキャンの気象予報士』というコンパクトな問題集などをつかって何度も見直した。試験の前日,当日試験会場に向かう電車内は,点が取れる気象法規だけを繰り返し復習していた。

 

第63回気象予報士試験と合格

 一般知識の試験が終わったときの感想は,過去2回と比較して解きやすいと感じられた。問題が簡単になったのか,直前に一般知識を一から勉強しなおして自分自身のレベルが上がったのかは,今でもよく分からない(おそらく両方だろう)。

 如何せん,これまで一般知識で2度落ちていることを考えると,どこかしらでミスなどしている可能性も考えられたが,心の中では今回は大丈夫そうだという手応えはあった(それでもやはり怖くて合否を見るまでは自己採点できなかった。また,本番は13点だったが,落とした2問はしょうもない計算ミスだった。どれだけ勉強しても,どれだけ見直ししても,本番でミスは出るものだと考えて試験に臨んだ方が良いという学びがここにある)。

 

 一方,実技試験は手応えは半々だった。実技1は試験が終わったときに「キツイかも」と思ったが,実技2は個人的には会心と思える出来であり,試験終了後の陶酔感が心地よかったことを思い出す。

weatherlearning.hatenablog.jp

 それでも実技の合計は合格点に届いてないだろうと思っていたので(手応え的には40%の確率で合格,60%で不合格というイメージ),合格だと知ったときは本当に安心した。喜びという感情よりもホッとした感情の方が大きかった。

 というのも,そろそろ先の見えない勉強を続けていくことに負担を感じ始めており(もともとは気象について詳しくなりたいと思って始めた勉強が,目先の試験に合格することに目標が変わってしまって,気象を楽しく学びたいという本来目指した形から乖離が生じ始めていることに気がついた),どこかで試験勉強に区切りをつけたいなと考え始めていたからだ。

 

 結果的には,およそ2年の勉強期間で,少しずつ勉強してきたことが,試験合格という一つの形として現れたことで報われたような気がした。

 

モチベーションの維持

 結果的に合格をもぎ取れたワケだが,これまでの軌跡を振り返って思うに,勉強を続ける上で何より重要なことはモチベーションを維持しつづけること。そして,正直それは,どんなものでも良いと思う。

 私のモチベーションは,気象について詳しくなりたかったというのが根本にはあるが,他にも,このブログを通して資格試験勉強を開始したことを公に宣言したので,「やっぱ試験難しいので諦めました」とか言っちゃったらカッコ悪いなぁと思って勉強を続けてきたところもある。また,単純に気象予報士の資格を持っているとカッコいいから。とにかく勉強が続けば,理由なんてなんでもいいのさ。

 

 ちなみに,芸人のあばれる君も気象予報士を目指しているようで,その理由が素敵すぎたので以下に引用しておく。

diamond.jp

夢としては、夕方のニュースでお天気お兄さんとして、きっちりとした自分の見解を基に天気を予報して外し、翌日に土下座で謝るという流れをやりたいのです。当たったら当たったでそれは嬉しいですし。その壮大なコントのために、コツコツとやらなくてはならないのです。

 

さいごに

 ということで,3回にわたって私のこれまでの勉強を振り返ってみました。少しエラそうな文章になってしまったかもしれませんが,当時(あるいは振り返りの中で)感じたことや考えたことを正直ベースで書いてみました(当然,記憶は完璧ではないので,一部で補正がかかってるかもしれません)。

 また,あくまで私はこういう風に勉強に取り組んだのであって,この方法が良いと押し付けているわけでも決してありません。参考にできる点や反面教師にできる点が少しでもあったのであれば,ご自身の勉強に反映させていただければ幸いです。

 この2年間,仕事の傍ら,時間が空いたら少しずつ勉強してきましたが,社会人をしながら資格を取得することの大変さを知ることができました。また,私は気の向くままに勉強をしてきたわけですが,結局は趣味の範囲を超えるものではなく,この資格が今の仕事に活用されるかというと,何一つ接点がないというのが事実ではあります。

 それでも気象の世界が新しく自分の中に広がったので,この勉強を開始して本当によかったと思います。

 

 最後に一つ言えることは,独学で合格したという事実に価値はほとんどないということです*1。独学でも合格しなければ意味がないですし,スクールや通信講座でも合格したら勝ちなのです。ですので,本気で将来気象予報士になりたい,気象予報士試験に合格したいと思っている方は,独学よりもスクールや通信講座に通って,プロの方に添削や指導を受けた方が,確実ですし早いと思います

 誰の相談も受けずに我流でここまで来た私は,未だにトラフや前線の引き方は今一つよくわかっていないというのが正直なところです(苦笑)。

 

 

(参考)2年間の勉強でかかった諸費用

受験料:3万3200円也*2

参考書代:約4万円也*3

プリンターインク代:約5千円也*4

印刷紙代:約1500円也*5

文房具代:約7千円也*6

試験会場までの交通費:約3千円也*7

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

合計:約9万円也

 

もっと少ないと思っていましたが,独学でも思っていた以上にお金がかかっていました。

 

 

*1:敢えて独学の良いところを挙げるとすれば,自由気ままに勉強を進められること,お金を安く済ませられること,参考書以外に頼るものなく合格できたという一瞬の満足感が得られること笑,くらいです

*2:免除科目なし11400円を2回分と1科目免除10400円の合計

*3:購入したはいいが,ほとんど使用しなかった参考書・問題集もいくつかあったのでそこは無駄遣いしたなぁと感じる。だいたい新品購入だが,古本やメルカリなどを使うともっと安上がりかも。ただし専門知識は内容がどんどん書き変わるため,最新版を入手するのが良い。尚,本金額には趣味範囲の科学読物や図鑑などは含めていない

*4:実技試験を印刷するために何本か購入。正規のインクを使うと値段もバカにならないので,廉価な互換インクカートリッジでケチった

*5:気象予報士試験のためだけに1000枚以上印刷していることが判明。驚きでしかない

*6:ノート代,筆記用具代,過去問保管ファイル代などが含まれる。ディバイダという文具も買ったが一度も使わなかった

*7:ここは住んでいる場所によりけり。私は試験会場まで電車で1時間程度で着くような場所に住んでおり費用は安く済ませられるが,四国や北陸や東海,南九州,北海道などにお住いの方は交通費だけでかなりかかるはず。その辺りは気象業務支援センターの方も,もう少し融通を利かせてもよいのではと感じる

気象予報士試験合格までの軌跡②

 

前回からの続きです。人生で初めて受験した気象予報士試験はすべての科目で不合格となりました。その結果を受けて,再び机に向かいます。

 

 

実技試験への着手

 第60回試験結果の不合格通知を受けて,自己採点した結果は一般10点,専門9点という結果だった。それぞれ合格点まで,あと1点,あと2点であった。これをもう少しと見るか,まだまだ遠いと見るかは人それぞれだと思うが,私の場合は,この結果を,ある程度基礎的なところは固まってきたと楽観的にとらえた

 問題は次のアクションをどうするか。学科試験が9点,10点のところを合格点の11点まで上げることと,まだ勉強したこともない実技試験の問題に着手して新しいことをイチから学び始めることとを比較すると,どちらが学びとして伸びしろがあるかは明らかだった。私は学科はそっちのけで実技を始めることに決めた。

 今振り返ってもこの判断は正しかったと思っており,実技試験は学科の基礎の上に成り立っており,逆を返せば,実技試験を解くことは学科試験についても学び直しができるということでもある。さらに,学科の知識がどのように実際の気象解析で応用されているのかが実技を通して明らかになるので,早めに実技に着手することで,学科を勉強するモチベーションも湧きやすいと思う。

 

 気象予報士試験の受験から2週間程度はゆっくり過ごした後,再び机に向かって実技勉強を開始した。勉強を再開して間もなく,次回の気象予報士試験の受験受け付けが開始されたが,当時の状況を鑑みても,そんな中途半端な状態で合格するはずもないと判断して第61回気象予報士試験はスキップすることとした(これも賢明な判断だったと我ながら思っている)。

 そこから2023年末まではある程度高いモチベーションで実技試験の勉強を進めることができた。やったことは主に過去問を解くことと,その分野に紐づく学科などを復習すること。

 

中だるみの時期に

 2024年になって年が明けると,1月下旬ごろから2~3ヶ月ほど中だるみ期間が続くことになる。仕事で遅くなる日も多く,そこから勉強なんてとても出来る状況ではなかったため,とにかく帰宅してからは勉強は一旦置いておいて,十分な休息に充てることが多かった。

 例年,夏の予報士試験(8月末)のあとは,結構早めに冬の試験(1月末)が回ってくるが,冬の試験から夏の試験までは少し間が空くため,ここは中だるみしやすい時期ではないかと思う。特に,私の場合は次の試験まで1年間空くことになり,これまでの勉強を振り返ってみても,ここのダラダラしている時期が一番ツラかった。何もしないのはさすがに心が焦るので,この時期に気象法規について土日に1時間ほどブログを書いて,とりあえず前に進んでいる気になったような暗示を自分にかけていたように思う。

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 2024年4月ごろからは,できるだけ早めに帰宅するようにライフスタイルを少し変え,時間的・精神的余裕がある日には帰宅後に実技試験を1題解いて,その週のどこかで振り返りをするという習慣を徐々に体に覚えさせた。

 2024年5月ごろからは専門知識についてもノートにきちんとまとめながら,情報を整理していった。このノートをとることっていうのは重要なポイントだと思っており,ただ問題を解くためのマルバツ用のノートではなく,ちゃんと要点を整理するノートをつけることで,ある程度頭に知識が定着したように感じる。

 

2度目の気象予報士試験の受験

 2024年8月になると,とりあえず過去5~6年ほどの実技試験をだいたい2周し終わっていた。何となく記述の仕方も理解はしてきたが,いまひとつピンとこないまま第62回気象予報士試験を迎えることになった。

 

 試験が終了したときの手応えは正直あまりなかった。1年前も同じく手応えがなかったが,手応えが変わらないということは,この1年で理解度がほとんど進化していないということと同じような意味合いを帯びる。

 ただ一点,実技試験については前回試験時よりも飛躍的に成長していることを感じた。前回受験したときは質問の意味すら分からず白紙も同然だったが,今回はとりあえず解答欄はほぼすべて埋めることができた。

 ただ,目の前の問題を解くことに必死で,問題の状況を脳内で時系列追って整理することが難しかった。目で文章は追えてはいるものの,何が起こっているのか大きい視野で捉えることができていなかった。

 

 1ヶ月半後に試験結果が返された。

 一般知識は不合格,専門知識は合格。実技試験は学科で不合格なので採点されず。

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 自分の手応えとも概ね合致するような結果だったので,喜びや悔しさなどはあまり湧いてこなかった。この1年間は実技試験メインに据えて勉強を重ねてきたため,学科はやや疎かになっていたのは事実だった。ただ,専門知識はノートを用いて整理していたのがプラスに働いたようだ。

 自己採点してみると,専門知識は11点(もしくは12点),一般知識は9点だった。この年の合格点はいずれも10点だったことから,一般知識は2年連続で1点に泣いていることになる。世の中では得点源とされる気象法規は必ず1問間違えがあった。この辺りは克服する必要があると感じたと同時に,一般試験に対する苦手意識がこのとき芽生えた

 また,気象予報士試験では学科の両方に合格しないと,そもそも実技試験は採点すらされないため,実技が合格点に達しているかは正確には分からないが,手応えから考えると,まず間違いなく落第点をとっていると思っていた。すなわち,実技試験は昨年よりもはるかに理解度が高まったとはいえ,まだまだ克服すべき課題は山積みなのだ。

 

 気象予報士試験後から1ヶ月間は試験勉強から離れて日常を過ごしていたが,不合格通知を受け取ってまもなく,再び机に向かって少しずつ勉強を始めた。

 

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ここまで2回目の気象予報士試験の結果までの軌跡でした。次回は合格までを描いていきたいと思います。

 

 

気象予報士試験合格までの軌跡①

 

先日,3回目の受験にして第63回気象予報士試験に合格したことを報告しました。

 

今回は忘れないうちに,これまでの私自身が合格するまでの流れを少しばかり振り返っておきたいと思います。読み物として読んでもらっても良いですし,勉強の参考にしてもらっても良いですし,反面教師にしてもらっても良いので,ご興味あればお付き合いください。

 

 

はじまり

 きっかけは知り合いの方が気象予報士になったと聞いたことから始まる。噂には合格率が数%の難関資格と聞いたことはあったが,気象予報士試験って特に何の経験や条件もいらずに受験することができるんだな,と心の中で思ったことを覚えている。しかしその時は,なら私も気象予報士試験を受けてみようという気分には1ミリたりともならなかった。これまで気象というものに興味をもったことがなかったのだ。

 しばらくして私が気象学を勉強することになったのは,本屋でウィンドウショッピングしながら,たまたま資格取得コーナーの前を通り過ぎた際に,ふと頭の中に先の出来事が思い出されて一冊の参考書を手にとったからだ。

  『イラスト図解 よくわかる気象学』

 パラパラと頁をめくっていくと,数式が多めだが,意外と難しくなさそう。高校は理系クラスに所属し,数学と物理が割と得意だったので,その辺りは親和性が高そうだと,なんとなく直感が働いた(ただし,大学は理系に進んだものの,数学も物理にも縁のない分野を専攻し,勉強もほとんどしなかったため,高校数学・高校物理でほぼ理解がとまっている)。

 その一冊を購入して帰宅。結局一週間もしないうちに本を読み終えてしまった。そして「気象学って思っていた以上に面白いな」って思ってしまった。それがすべてのはじまり。

 

学習スタイルの確立

 その体験を受けて,少しずつ気象学の勉強を開始することになる。今考えると,別に勉強するのが気象学である必然性なんてなかったように思う。たまたま手に取ったのが気象学の本だっただけで,あのとき仮に「建築学」や「地政学」の本に面白みを感じていたら,もしかしたらそっちの方向性で勉強を進めていたかもしれない。全く知らない世界を学ぶことで,自分の視野が広がるような感じがして,それは結局なんでもよかったのだ。

 

 さて,少しばかりちゃんと勉強してみるとするか,と思ったは良いものの,果たしてこの勉強を継続していけるのかが不安になる。別に飽きたら止めてもいいのだが,最初から諦めること前提で勉強を始めるのも癪なので,社会人がどのようにして勉強しているのかをとりあえずググってみた。スクール通学,通信講座,独学などがあるようだ。

 会社終わりや休日にスクールに通ってお勉強なんて絶対無理。通信講座があるようだが,お値段がどこも高い。おそらくZ会みたいなものなんだろうけど,中学時代にZ会から届く教材が机の片隅に束となって溜まっていたことを思い出した。おそらく向いてない。

 で,結局は独学で勉強するのが最も私に合っていると判断。せっかく学びたいことがあるワクワク感を,スクールや講座を受けることにより生じる勉強への義務感で潰したくないなと考えたためだ。ちなみに,このときの私は,「気象について詳しくなりたい,日々の気象を予測できるくらいにはなりたい」のであって,気象予報士試験の受験は本気では考えていなかった。そういう意味でも独学で十分だと思っていた。

 ただ,参考書を眺めて勉強しても,単調ですぐに飽きが来るだろうことは予想できた。そこでブログを通して勉強内容を発信しようと思いつく。アウトプットを通して頭の整理もできるし,間違っていることを書いたら,もしかしたら詳しい人が指摘してくれてフィードバックももらえるかもと期待したからだ。

 

気象予報士試験受験への芽生え

 2022年12月から気象の勉強を開始。会社の年末年始の休暇ともかぶっていたので,ここで一日1~2時間程度は気象の本を読み,ブログで勉強内容をまとめていた。社会人になって机と向き合う習慣なんか一つもなかったので,慣れるまで苦労したことは記憶している。最初の方は机の前に座るのもキツかったので,寝転びながら勉強していた。

 物理と化学については学生時代に学んだことをある程度は記憶していたが,地学はまったく習った記憶がなく,台風の回転方向が時計回りなのか反時計回りなのか,前線とは何なのか,警報と特別警報は何が違うのか,何も知らない状況からのスタートだった。

 年が明けて2023年になると,仕事もはじまって平日はほとんど勉強せず(できず),土日のどちらかにまとめて数時間勉強して,ブログで勉強した内容を発信・整理していた。

 

 そして,少しずつ勉強リズムも掴み始めた2023年3月ごろに,気象予報士試験の受験を真剣に考え始める。そこそこ勉強が継続できているという手応えもあった。また,それまで気象について詳しくなりたい,という漠然としたゴールを持っていたものの,どこまでやったら満足できるかが自分の中で非常に曖昧だった。気象予報士資格がなくても気象に詳しい人は世の中にたくさんいると思うが,気象予報士試験に合格できる人は,気象についてある程度の知識をもっているはず。そう考えると,気象について詳しくなりたい,という目標は,気象予報士試験に合格することとほとんど同義のように感じられた。

 そこから,(気象予報士試験合格を目指す人が一度は思い描くように)「半年程度の勉強で一発合格!」という華々しい妄想を描くわけだが,実技試験の問題を購入してみてその夢は儚く散ることになる。「社会人の傍らの勉強で,あと数か月でコレを仕上げるのは無理だな。。」

 とりあえず2023年6月に一般知識の教科書を一周。たまに過去問にも手を出したが,基本的には教科書中心だった。今から思えば,過去問をもっと中心に据えて勉強しても良かったようにも思う。ただ,勉強開始当初は気象予報士試験を受験することは本気で考えていなかったので,過去問研究が遅れたのはしょうがない点もあったと思う。また,ブログで勉強内容を発信して自分の知識蓄積に活用していたものの,きちんとしたノートをとっていなかった。これも試験を受験する立場に変わると,裏目に出た。やはりノートに自分の手で考えを整理することは重要だ。デジタルよりもアナログの方がはるかに記憶の定着が良いと思う。

 本格的に予報士試験の受験を決意した後の2023年7月から8月にかけては,半分以上残っていた専門知識をとにかく詰め込む。夏休みが数日取れたので,そこで1日4〜5時間くらい勉強した。それ以上の勉強は私には無理だった。

 

初めての気象予報士試験

 2023年8月,人生初の第60回気象予報士試験に臨む。実技試験の対策は結局手が回らず,一発合格できる確率はこの時点で限りなくゼロに近かった。そのときの受験報告は以下を参考。

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 試験中に問題を解いていて厳しいものがあったが,一方で全く分からないわけでもなかった。もしかしたら学科試験がどちらも合格できているかもしれないし,不合格かもしれない。そんな絶妙な手応えだった。答え合わせは怖くてできなかった。

 一方,実技試験は答案用紙の一枚目以外はほとんど白紙同然だった(白紙だと点数は確実にゼロなので,とりあえず何か書いておいた)。それほどまでに何も分からなかった。

 

 試験が終わって合格発表までの一ヶ月間はあまり勉強に身が入らなかった。勉強している中で,解答の間違いに気づくのが怖かったというのもあるし,試験の解放感をもう少しだけ味わいたかったというのもあった。

 

試験結果の返却

 10月になると結果が発表された。オンラインでも見れるようだが,私は結果をハガキで知った。ドキドキしながらハガキを開いたものも虚しく,どちらも「否」とだけ書かれていた。自分を否定されたようで,少し悲しくなった。

 学科がどちらも合格しているかもしれないという,少しの期待は心のどこかにあったのだが,残念ながら現実はそう甘くはなかった。

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 ということで,初めての気象予報士試験はひとつも合格することはできずに,全滅という結果に終わった

 

 後日,自己採点をした結果,一般10点,専門9点だった。どちらもあと1,2点で合格点だったという,これまでの勉強時間を考慮してもそれなりに善戦している結果だった。

 次の試験では合格を掴み取ろう。そう思って再び勉強を始めるべく,机に向かった。

 

 

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ここまでが人生初めて受けた気象予報士試験の結果までの道のりでした。長くなりそうなので,次回に続きます。

 

気象予報士試験でお世話になった参考書・ウェブサイトの紹介

 

今回,第63回気象予報士試験に合格したことを受けて,これまで私がお世話になった参考書やウェブサイトを感謝の意を込めて(本音で)紹介させていただこうと思います。

すでに気象の勉強をしている方にとっては馴染みのものとは思いますが,これから気象学の勉強を始めようと考えている方は参考にしていただけたら幸いです。あくまで私見であることはご留意ください。

 

 

使用した参考書・問題集

まずは私の勉強の上で役に立ったと思う参考書や問題集です。

 

①『イラスト図解 よくわかる気象学』(一般知識・専門知識・実技)ナツメ社

おそらく最初にこの本を手に取らなければ,気象の勉強を始めようとは思わなかったと思います。とにかく気象勉強の入門者に分かりやすく書かれており,イラストなどを用いて視覚的にも理解しやすい内容になっています。
勉強を開始したての当時の私のような,気象について何の知識もない方にとっては,この本から入るのがオススメ

ただ,気象学の大きな枠組みを理解できる一方で,気象予報士試験で問われる細かい知識は網羅しきれていない点も多いため,他の参考書と併用しながら使用するのが良いのではないでしょうか。

『実技編』に関しては,過去試験の良問が選抜されており,解き方・考え方も詳細に解説され,小冊子となっていて使いやすい点からも,他の実技試験の解説書に比べて優れていると個人的には感じています。

 

②『らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト』(一般知識・専門知識)技術評論社

こちらは気象予報士試験に特化した内容となっており,先に紹介した『イラスト図解 よくわかる気象学』では網羅されなかった細かい知識も解説されます。そのため『イラスト図解~』とこの『らくらく突破』の2冊を私は並行して勉強していました。

気象予報士の勉強をしている人はほぼほぼこのテキストを使っているのではないかと思うほど,メジャーな参考書と思います。専門知識については,他の参考書に比べて内容が一段濃いため,とても重宝していました。

『実技編』もありますが,類書と比較して特筆する点はなかったので割愛させていただきます。

 

③『一般気象学』 東京大学出版会

名著です。世の中でバイブルと支持されているのも頷ける,気象学の名著です。ただ,気象の勉強を始めた当時の私がこの本を最初に手にしていたら,確実に挫折したと思います。出てくる数式などもそれなりに高度なため,ある程度気象学の知識をもったうえで臨まないとついていけなくなるかなと。大学の教科書として使われている本のようですので,文字多めで堅苦しさは否めません。

私の場合は,とりあえず購入はしていたのですが,積読状態となっており,私が気象予報士試験に合格した第63回試験の1ヶ月ほど前から,一般知識の勉強の際に初めて本を開きました。内容は高尚で,気象予報士試験で出題される問題も,この著書の図が引用されていることも少なくありません。

この本を一周したことで,私が苦手意識を感じていた一般知識について,一段レベルが上がった感覚はあります。

一般知識の勉強には最適ですが,専門知識や実技についての内容はほぼ記載されていない点には注意が必要です。

 

④『気象予報士試験精選問題集』 成山堂

気象予報士試験精選問題集 2024年版

精選問題集というだけあって,過去に気象予報士試験で出題された良問がピックアップされます。個人的には10個の凡庸な問題を解くよりも,良問と呼ばれる問題を1つ解く方が学ぶことが多いと考えているので,この問題集は積極的に活用しました。

試験前の1~2ヶ月ほど前から学科分野の最終確認の位置づけとして使っていました。一方,実技のページは過去問の答え合わせに解説を読む程度の使い方でした。学科はたしかに良問が揃っている印象はありますが,実技はここ最近の問題をとりあえず載せといた感が強くて,『イラスト図解~』の実技編をやった方が,解説も詳細で学びが多いと感じます。

 

⑤『ユーキャンの気象予報士 ユーキャン自由国民社

ユーキャンの気象予報士 これだけ!一問一答&要点まとめ 第4版【赤シート付き】 (ユーキャンの資格試験シリーズ) | ユーキャン気象予報士試験研究会,  ユーキャン気象予報士試験研究会 |本 | 通販 | Amazon

持ち歩きやすいので,通勤時や寝る前のベッドなどで,時間がとれるときは1日数十分程度眺めてました。過去問が一問一答形式となっており,見やすいし使いやすい。大切なポイントはきちんと押さえられており,思っていた以上に良い本と思います。気象法規は上記で紹介した参考書よりも情報量が多いので重宝していました。巻末の方に実技試験も少しだけ記載されてますが,見づらいため解くことはなかったです。

 

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以上,私の使用した参考書・問題集の紹介でした。これらの書物を,それぞれの用途によって使い分けて使用していました。

私の場合は上記の8冊あれば十分でした。他にも数冊ほど別の参考書も購入はしたのですが,この8冊に網羅されている以上の情報はあまり得られなかったように感じました(私の場合はこれらの本を最初に購入したため,これらがメイン本になりました。他にも良い参考書はたくさんありますので,最初に手に取る参考書次第だと思います)。

個人的には,気象予報士試験の実技試験については,もっといろいろ本が増えても良いと思います。特に,この問題にこういう記述をすると得点もらえないよ,という間違いに焦点を当てた誤答集とかがあったら有難いと思ったので,どなたか作ってくださいm(__)m(きっと売れるはず。知らんけど)。

 

 

参考にしたWebサイト

教科書だけでは網羅されない分野や,より深い学びを得たいときに活用したwebサイトです。

 

①気象の専門家向け資料集(気象庁

www.jma.go.jp

このサイトにすべてが詰まっているといっても過言ではないほど,気象庁がどういった基準で解析しているかのウラ事情(?)が記載されています。

全部目を通すのは到底無理なので,一部自分が興味がある資料などをダウンロードして参考にしていました。

例えば,前線解析とかの資料は結構眺めていたと思います。

前線の定義と解析(梅雨前線以外)

 

②めざてんサイト

kishoyohoshi.com

実技試験の解き方が分からなかったので,実技試験の記事はだいぶ参考にさせていただきました。『メンバー登録(無料)』をして『ログイン』することで,現在では入手できない過去の気象予報士試験がアーカイブされているので,これも私としては非常にありがたく活用させていただきました。

 

他にもいくつものWebサイトを参考にしましたが,コンスタントにフォローしていたのは上記の2サイトくらいと思います。

 

 

参考にしたYouTubeチャンネル

上記の参考書やウェブサイトを用いて一般知識や専門知識,実技試験の解き方を学ぶことは,気象を理解するうえで大切とは思いますが,それらの知識・技術だけでは日々の気象を予測することは困難だと思います。

そこで,「生きた日常的な天気予報」を理解するために私はYouTubeを活用していました。

 

①Team SABOTEN 気象専門STREAM

www.youtube.com

無料でこんなの配信してくれるの?って思うほどに,良質な生きた天気予報が解説されます。このチャネルの中の『拝啓,予報官X様』というコーナーは約140回の動画を全部観させてもらいました(全部1.5~2倍速で)。実技試験の解き方についてしっかりと指南してくれるような参考書が少ない中で,プロの思考回路を理解できる動画は非常に貴重だと感じます。

 

②マニアック天気

www.youtube.com

ほぼ毎日更新され,いろいろな天気図を用いて多角的に気象を予想するため,天気図をどのように読むのかが非常に参考になります。1動画あたり10分前後とコンパクトで,通勤時や寝る前などに少しだけ時間を費やすだけで良いので,タイパ(タイムパフォーマンス,最近の流行りの言葉ですね。あまり好きな言葉ではないですが)が良いと思います。

 

 

さいごに

ということで,試験対策として活用した書籍やウェブサイトの紹介でした(それぞれの本の良い面と悪い面を本音で書きました)。あくまで私はこれらを使ったということで,自分に合った参考書などを見つけることが何より重要と思います

また,同じ分野でも,教科書によって視点が異なったりすることもあるので,2冊程度を見比べながら勉強するとより効率的に勉強できると思って,私は2冊(多くとも3冊)同時並行で流していました。

参考書マニアになって,たくさんの本を購入してしまう方もいらっしゃいますが,そんなに持っていても結局重宝するのは数冊なので,ある程度の取捨選択は必要かなと思います(私も他に何冊か購入したが,結局ほとんど使わなかった)。

 

第63回気象予報士試験 結果報告

 

2025年3月14日,第63回気象予報士試験の結果が発表されました。

今回は3度目の受験となり,専門知識は前回合格のため免除で,一般知識と実技試験の2科目の実力が試された形になります。

 

会社帰りに,自宅ポストに投函されていた一枚っぺらの薄いハガキを開けた結果は以下の通りでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで試験に合格していました

 

実技2は手応えがあったものの,実技1は途中でストーリーが追えずにいい加減な回答をしてしまい,トータルで見ると今回の合格は厳しそうかと思っていたんですが,なんとか拾ってもらえたようで安心しました。

 

先ほど自己採点を行いましたが,その結果は以下のようになります。

 

一般知識

下は全15問の自己採点の結果です。〇が正解していた問題,✕が間違えた問題。

〇✕〇〇〇〇✕〇〇〇〇〇〇〇〇

点数は13点ですね。試験の1ヶ月前からそれなりの時間をかけてやり直しをしてきたのが功を奏したようです。

今回一番頭を悩ませた問題が,問1(a)の「窒素・酸素・アルゴンの三種の気体が乾燥空気に占める割合は99.9%以上か」という問題。99%以上なのは間違いないものの,99.9%以上かと改めて聞かれると自信がなくなって,脳の奥のヒキダシの中から過去の知識の断片を引きずり出して,結局二択の賭けに出たのですが,どうやら賭けに勝ったようです。

自信があった問2と問7が不正解だったことは想定外でしたが,こちらはあとで見直しをすることにしましょう。どこかで計算ミスしてるはず。でも試験中に3回くらい見直しはしたはずなのにどこを抜け漏らしていたのだろうか。

 

専門知識

今回免除です。試験のときに時間の費やし方が分からず,あまりにも休憩が長くなって逆に疲弊してしまったことを覚えています。

 

実技試験1

こちらは自己採点はしていませんが,試験終了時の手応えとしては,だいたい40〜50点くらいで合格点には厳しそうかなという感触を持ったことを覚えています。問2の(6)が全然分からなくて,そこから先はストーリーをうまく追えなくなって,いい加減な記述を連発したと思います。まだまだ勉強不足です。

 

実技試験2

こちらも自己採点はしてないんですが,こっちはストーリーが最初から最後まで自分のコントロール下にあって,質問がどういう意図かをきちんと汲み取ることができたように思います。試験終了時の肌感覚として80〜90点ほど取れたんじゃないかという手応えはありました。

 

ただ,(この点数が正しいと仮定したとして)実技1と実技2を合わせても,120〜140点ほどであり,7割を超えているとは到底思えなかったので合格は難しいんじゃないかと,結果に期待はしていませんでした。少なくとも一般知識だけ受かっていたら良いかなと。

 

しかし今回の実技試験の合格ラインは6割と少し低めだったようで,おそらくギリギリのラインで合格を勝ち取っただろうというのが私なりの推測です。

 

 

ここ最近は,ダラダラと勉強していることに少しばかり疲れてきたこともあって,2025年の夏の試験で(受かるにせよ落ちるにせよ)ひとまず受験は終えようと思っていたところだったので,今回の合格の通知を知ってホッとしたというのが正直なところです。

 

今後についてですが,気象予報士の登録についてはそんなに急ぐ理由もないですし,期限もないので,気が向いたら対応していこうと思っています。

 

ひとまず私の受験は終わりを迎えられたので,ここからはブログを書く時間に充てていきたいですね。とりあえずこの数日間は,独学で二年間勉強してきた自分を褒めてやることにします。

 

 

2025年2月の気象関連ニュース

 

今月の個人的に興味が湧いた気象関連ニュースについてまとめてみました。

 

 

2025年1月の世界平均気温過去最高に

まずは気候変動関連。

今年の1月の世界平均気温が発表されましたが,観測史上最高となり,地球温暖化に歯止めがかかっていない現実が突き付けられました。

パリ協定では,産業革命以前に比べて世界の平均気温の上昇を「1.5℃まで」に抑えるという目標が盛り込まれましたが,2025年1月は産業革命前の水準より1.75℃高かったということで,この1ヶ月だけ見ると(悪い方向に)大幅に上回ったことになります。

www.asahi.com

 

一方,日本のこの1月の気温を見てみると,平年比で0.6℃高かったようで,昨年1月の異常な高温と比べるとやや平年並みへと落ち着いた形になりました。

weathernews.jp

気象庁の発表では,この理由として,冬型の気圧配置が長続きせず寒気の影響が弱かったこと,全国的に低気圧の影響を受けにくく高気圧に覆われる日が多かったことを挙げています。

 

2025年の夏も全国的に猛暑と予想

ようやく冬も終わりが見え,この春は何をしようかとウキウキ気分になっているところに,気象庁から今年の夏の天候についての発表がありました。

気象庁では例年,2月25日ごろに「暖候期予報」を発表しており,その年の夏の平均気温や降水量などの大まかな傾向について確認することができます。

 

今回の発表によると,2025年の夏も全国的に猛暑となる予想になっていました。いやー,結構ゲンナリしますね。

個人的には暑い夏は嫌いではないですが,暑すぎる夏はどこにもお出かけする気が起こらず,家の中で過ごさざるを得ない状況が続き好きではないのです。

 

下は気象庁発表の暖候期予報解説資料(気象庁 | 季節予報解説資料)から引用した図ですが,平均気温(図左)は平年よりも高くなる予想で,日本列島が赤く染まっています。一方で,夏の降水量(図中央)と梅雨時期の降水量(図右)は灰色となっており,ほぼ平年並みという予想でした。

 

また,太平洋高気圧の北への張り出しが強まる見込みという発表内容もあり,梅雨入り・梅雨明けが早く,夏の前半から台風の発生が多くなるのではないかと予想している記事もありました。チベット高気圧についても平年に比べ北側に強くなるという予想で,太平洋高気圧とチベット高気圧の影響で日本付近は暖かい空気に覆われやすく,梅雨前線の活動が活発となる時期があり注意が必要とのことです。

weather-jwa.jp

 

地球温暖化の影響も含めて,暑い夏は続きそうです。

 

2度の寒波の襲来

今年の2月は平年に比べて寒い1ヶ月になったように思われます。

2月上旬に寒波の第一波が,中旬に第二波が日本列島に到来し,特に日本海側を中心に大雪となりました。

newsdig.tbs.co.jp

 

今回の二度の寒波が立て続いて日本に襲来した理由として,北極を中心に吹いている「極渦」というジェット気流の分裂があったようです。

www3.nhk.or.jp

なんでも,ロシア周辺とアラスカ周辺にあった上空の高気圧が北極側へと張り出したため,極渦が2つに分裂したのだそうで。風船を左右両側から押さえつけると上下方向に伸びるように,横から押さえつけられた空気が別の方向に逃げて渦の形が変わってしまったのですね。

極渦の分裂に伴って偏西風の蛇行が大きくなり,結果的にはトラフの南下による冷たい寒気の流入が日本付近で起こったことで,この2月は寒くなりました。

 

ここから先は,三寒四温を繰り返しながら,少しずつ春の季節へと移行していくのですね。しかし,これから花粉の大量飛散が待っており,花粉症の私としては辛い季節となりそうです。

 

出典

 

【天気図】2025年2月の寒波到来

 

2025年2月17日から強烈な寒波が日本に到来し,その数日前から「10年に一度程度の大雪の可能性」がニュースで報道されていました。

今回は,週間天気図をもとにして,この寒波の到来について勉強してみたいと思います。

 

 

週間予報図から見る寒波到来

下は,寒波が襲来する前の2025年2月14日に発表された週間予報支援図(略号:FXXN519)と呼ばれる約1週間先までの天気および気温の傾向を予想することができる天気図の一部を切り取ったものです。この図では,「T=96~192」と書かれており,発表日から4日後(2月18日)~8日後(2月22日)にかけての5日間の北半球の500hPa高度平均と平年偏差が表現されています。

図の網掛け部分は負偏差域であり,平年よりも値(ここでは高度)が低くなっている場所を表しています。青い色で色付けしましたが,日本付近は負偏差となっていることが分かりますね。500hPa高度が平年よりも低いということは,地上から500hPaまでの気温が平年よりも低いということであり,このことから(トラフの南下に伴って)日本付近では寒気が入りやすい状況になることが予想されていました。

 

また,3日後(2月17日)~8日後(2月22日)の6日間の上空850hPa(約1500m)の気温予想を見てみると,平地で雪の目安となるマイナス6℃の等温線が日本列島を覆うように,太平洋側へと張り出していました(下図でマイナス6℃以下を水色に着色)。

上空に強い寒気が入りこみ,普段は雪の少ない北~西日本の太平洋側で(降水があれば)平地でも雪が降る可能性があると考えることができますね。

 

週間予報支援図(アンサンブル)(略号:FZCX50)の850hPa気温偏差予想では,館野・福岡・那覇と,特に2月18日・19日にかけて気温が平年よりも6℃近くも低く予想されていました。

後半は各クラスタ*1のばらつきが大きくなりはじめているものの,平年よりも気温が低い傾向が続くことに変わりはなく,寒気の流入が継続することが示唆されます。

 

2,3日後までの天気図だけでなく,もう少し先を予想する週間天気図や一か月予報図などを解析することによって,この先の天気の大きな傾向をとらえることができるのですね。

 

寒気の到来

天気予報の示した通り,2月17日の夜からは本格的に寒気が到来し,日本全国で寒くなりました。

結果的には,今シーズンで最長の寒波となり,メディアなどでは「居座り寒波」とも表現されていました。特に,新潟県や石川県などの日本海側で大雪となりました。

 

新潟県の湯沢のスキー場も,例年にないほど雪が降ったことで,安全確保のために営業を一時的に休止したそうです。雪が降らなければそれはそれで困り,大雪が降ってもそれも困るというのも,天気の取り扱いの難しさを教えてくれます。

 

下は2月22日の降水量を示したものですが,日本海側の平地から山沿いで多いことが見て取れます(Ventusky - Wind, Rain and Temperature Maps)。

また,近畿・山陰地方に指向するJPCZ日本海寒帯気団収束帯)も観察されました。

朝鮮半島の付け根にある山地を迂回した風が,日本海でぶつかって収束し,積乱雲が発達すると考えられています。JPCZは過去に何度も日本海側を中心に大雪をもたらしており,これらの地域では大雪に伴う災害に注意しないといけません

太平洋側でもこの寒気の流入により気温がぐっと下がりました。2月の東京の気温のグラフの推移を見てみると,17日から24日にかけてぐっと気温が低くなっており,たしかに強い寒気がやってきたことが分かります。東京や大阪でも雪が少し舞ったそうです。

この寒波が過ぎ去ると一変して日本列島は暖かくなるようで,本格的な冬も終わりが近づき徐々に春へと移っていく予想となっています。

ただ,雪が積もったところは,雪融けによって雪崩などの災害が起こりやすくなるので注意しなければなりません気象庁からの警報や注意報は下記のリンクから確認することができます。

www.jma.go.jp

 

【まとめ】学習の要点

天気図理解のメモ
  • 週間天気図や一か月予報図などを解析することによって,この先の天気の大きな傾向をとらえることができる。
  • (高度が)負偏差であると,日本付近では寒気が入りやすい状況になることが予想される。
  • JPCZは過去に何度も日本海側を中心に大雪をもたらしており,これらの地域では大雪に伴う災害に注意する必要がある。
  • 雪が積もったあとに暖気が入ると,雪融けによって雪崩などの災害が起こりやすくなるので注意する必要がある。

 

参考図書・参考URL

下記の書籍・文献およびwebサイトを参考にしました。

*1:週間アンサンブル予報では,初期値に異なる誤差を与えた合計27個の個々の予想(「メンバー」という)により構成される。27メンバーの中で,類似の変化パターンを示すもの同士をまとめたものを「クラスター」と呼ぶ

【天気図】ポーラーロウ(極低気圧)

 

下の写真は,2025年2月8日午前10時ごろの東日本周辺の気象衛星ひまわりの可視画像です(気象庁|統合地図ページより)。

秋田県沖に渦巻きが確認できますね。これはポーラーロウ極低気圧)と呼ばれるものだそうですが,私がはじめてこのポーラーロウを勉強したとき,寒冷低気圧と混乱してしまった過去がありますので,今回はその辺についてまとめておくことにしました。

 

 

ポーラーロウとは

ポーラーロウとはバレンツ海ノルウェー北海グリーンランド近海など高緯度の海域で発生する低気圧のことを指します。と言っても,海外の地名がいまひとつ分からないので,下の地図にそれぞれの位置を示しておきます。また,これらの海域よりも比較的緯度の低い日本海にも現れることもあり,冒頭の衛星画像はそれを捉えたものになります。

ポーラーロウは「寒気内(小)低気圧」「寒気場の小低気圧」などと呼ばれることもあり,水平スケールは200km~1000km程度と,温帯低気圧や台風と比較して規模が小さいメソスケールの擾乱であることが特徴です。前線は伴いません

上空からとらえたポーラーロウの雲の形も必ずしも渦巻き状になるわけではなく,コンマ状であったりとその形状も多様だそうです(下図参照;『ポーラーロウの理想化実験』,柳瀬 2010. より引用)。

左側がコンマ状で,右側がスパイラル状(渦巻き状)ですね。

 

小規模スケールの低気圧であるため,寿命はだいたい1~2日程度(スケールと寿命が概ね相関することが知られている)と短く,小さい規模でありながら,タイミング次第では,豪雪・豪雨や暴風雪・暴風雨,雷などの災害をもたらすこともあるようなので,注意が必要です。

 

では,この『真冬のミニ台風』『真冬の小悪魔』などとも揶揄(?)されるポーラーロウは,どのようなメカニズムで発生するのでしょうか?

 

ポーラーロウが発生するメカニズム

ポーラーロウが『真冬のミニ台風』と呼ばれているように,その発生メカニズムは台風のそれと類似していると考えられているようです。

台風は第2種条件付き不安定CISK:conditional instability of the second kind)と呼ばれる熱的不安定なメカニズムで発達することは以前勉強しています。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

冒頭に示したポーラーロウの衛星画像は2025年2月8日に撮影されたものですが,この日は今季最強の寒波が到来したとニュースでも大きな話題となっていました。一方,日本海には対馬海流という南からの暖流が流れ込んでいるため海面水温は日本の沿岸域なら10℃以上と比較的温かい状態になっています。

 

すると,相対的に高温の海洋上に強い寒気が流れ込むことになり,寒気は海面から顕熱と潜熱を受け取ります(簡単に言い換えると,寒気が海面を通過すると,海からの熱で温まり温度が上昇します。また,海面から蒸発した水蒸気が寒気の中に取り込まれます)。

水蒸気を含んで軽くなった空気は上昇しますが,このとき対流雲が発達すると同時に,渦の下の海面付近では気圧が低くなります。気圧が低くなったところに,周囲から空気が流れこみ,上昇気流が強まるような循環が生じ不安定化するのです。

おそらく下のようなメカニズムとして図示できるかと思います。

このように,ポーラーロウは台風と同様のCISKと呼ばれる熱的不安定で発達すると考えられているというのが教科書的な記述です。しかしながら,その発達メカニズムは複雑で,(温帯低気圧の発達メカニズムである)傾圧不安定による影響も少なくないようです。例えば,南北の温度差がなければ熱的不安定な影響が大きく渦状の雲となりやすく,他方で,南北の温度差が大きいときには傾圧不安定の寄与も大きくなってコンマ状の雲が発達しやすい,という感じ。

 

とにかく,台風が発達するメカニズムと,温帯低気圧が発達するメカニズムのハイブリッドなメカニズムが働き,それらの寄与の違いによってポーラーロウの多様性が生み出されているという点は非常に興味深いと思います。

 

ポーラーロウと寒冷低気圧との違い

さて,冒頭述べました通り,寒気の中の低気圧という点で,ポーラーロウというのは寒冷低気圧と混乱を生みやすいものだと思います。私自身,気象の勉強を始めてしばらくの間はこれらの低気圧は同じものだと勘違いしていました。

というのも,ポーラーロウもしくは寒気内低気圧(Polar Low)と寒冷低気圧(Cold Low)という日本語の字面および英語表記が酷似していて,これが混乱の元になっていたのですね。

 

では,この二つの低気圧はどういう点で異なるのでしょうか。

 

まず1つ目の違いはそのスケールです。ポーラーロウは水平スケール200~1000km程度のメソスケールの擾乱であることは先ほど述べた通りですが,寒冷低気圧の方は数千km程度の総観規模の擾乱になります。寒冷低気圧は偏西風の蛇行によって生まれるものなので,総観規模スケールである傾圧不安定波とスケール感が一致するのも矛盾しません。

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2つ目の違いは,発生するメカニズムとそれに伴う構造です。ポーラーロウは熱的不安定や傾圧不安定による影響によって発生すると考えられていますが,寒冷低気圧は偏西風の蛇行が大きくなって切り離されることで発生します。それゆえ,ポーラーロウは地上に現れ(上空では不明瞭),寒冷低気圧は上空に現れます(地上で不明瞭なことが多い)。低気圧が明瞭となる高度も違ってくるということですね。

 

さらに,発生メカニズムの違いに伴って,低気圧周辺の温度分布も異なってきます。

ポーラーロウの場合は,海面から供給される水蒸気の凝結による潜熱の放出によって低気圧中心付近の気温は周囲よりも高くなり,「暖気核」をもつこともあります。これは台風中心が暖気核をもつことと同様であり,この特徴に注目してみても『真冬のミニ台風』と呼ばれることは納得感があります。

 

一方寒冷低気圧では,中心付近において,周囲よりも気温が低い「寒気核」を持ちます

 

下は2025年2月7日21時における地上天気図ですが,北海道の西にポーラーロウが南下して進んでいます。

このときの850hPa(上空約1500m)の温度分布を見てみると,地上低気圧のほぼ真上に「W」というスタンプがあって暖気核(Warm core)の存在が示されていました。

 

一方で,2024年5月16日の寒冷低気圧を見てみますと,上空850hPaでも寒気核(Cold core)を表す「C」スタンプがありました。すなわち寒冷低気圧中心付近は周囲よりも気温が低くなっているのです。

このように,ポーラーロウと寒冷低気圧はその発生メカニズムが異なり,それに伴って明瞭となる高度分布や温度分布が違ってくるのですね。

 

そして3つ目の違いは発生時期です。ここまで述べてきたように,ポーラーロウは温暖な海面に吹き出す寒気によって発生する下層にできる小低気圧であるため,海が暖かいほど,また寒気が強いほど発達しやすいといえます。夏は海水温も気温も高くなるため温度差は小さくなって,ポーラーロウはほとんど発生しません。

一方で,寒冷低気圧は季節問わずに発生することが知られています。上に示した寒冷低気圧の高層天気図は5月中旬の比較的温かい季節のものです。

 

以上の点を考慮すると,ポーラーロウというのは寒冷低気圧と字面はよく似ているものの,異なるものであることが分かります。

ただ,これらの低気圧に関係性がまったくないかというと,そういうわけでもなさそうです。冬季に上空に寒気をもたらす寒冷低気圧があると,日本海でポーラーロウが発達することが多いそうなので,寒冷低気圧はポーラーロウの発生のきっかけをつくる役割もしているという点で,ふたつの低気圧は関係しているのです。

 

【まとめ】学習の要点

天気図理解のメモ
  • ポーラーロウとはバレンツ海ノルウェー海,北海,グリーンランド近海など高緯度の海域で発生する小規模な低気圧。冬季の日本海でも発生する。
  • 水平スケールは200km~1000km程度と,温帯低気圧や台風と比較して規模が小さい「メソスケール」の擾乱であり,前線は伴わない。寿命はだいたい1~2日程度と短い。
  • 小低気圧であるが,雪・雨や風雪,雷などの災害をもたらすこともあるため注意が必要。
  • 第2種条件付き不安定(CISK:conditional instability of the second kind)と呼ばれる熱的不安定なメカニズムで発達すると考えられているが,傾圧不安定による影響も少なくない。
  • ポーラーロウは寒冷低気圧と以下の点で異なる。
  •  ①スケール:ポーラーロウはメソスケール,寒冷低気圧は総観スケール
  •  ②発生メカニズム:ポーラーロウはCISK,寒冷低気圧は偏西風の蛇行
  •  ③構造:ポーラーロウは中心に暖気,寒冷低気圧は中心に寒気
  •  ④発生時期:ポーラーロウは冬季,寒冷低気圧は季節を問わない
  • ポーラーロウは寒冷低気圧に伴って日本海で発達することが多い。

 

参考図書・参考URL

下記の文献やwebサイトを参考にしました。