記念すべき第10回目はロマンチックに虹の原理をご紹介。
気象が魅せる美しい表情です。
虹のアーチと色
こちらは虹の写真です。
虹は外側から赤・橙・黄・緑・青・藍・紫(せき・とう・おう・りょく・せい・らん・し)と色が7色に分かれています。まぁ7色に見えるかどうかは人によりますが。
アメリカは6色,フランスは5色,ロシアは4色というように国や地域によっても虹の色の見え方というのは多種多様です。私も「藍」という色が今だにピンときてないんですけどね。
でもホントにそれだけでしょうか。
Andrew SteeleさんのTwitter(https://twitter.com/statto/status/1297538557033287680)では,可視光だけでなく紫外線や赤外線も撮影した虹の写真が掲載されており,私たちが赤く見えている虹の外側には赤外線が,紫の内側には紫外線が見られることがはっきりと分かります。
私たちの目は可視光領域を見るように進化したワケで,私たちの見ている世界がすべてでないことを改めて感じさせられます。
そしてこの虹の写真からも分かることとして,波長の長い電磁波は虹のアーチの外側に,波長の短い電磁波は内側にくることです。
でもどうしてこんなにキレイに色が分かれて見えるのでしょうか?
光の屈折
前回も話をしたように光は何かにぶつかったときに散乱,屈折,反射といった振る舞いを見せます。ここでは屈折について説明します。
屈折とは,光が異なる媒質の中を通るときにその進行方向を変えることです。
例えばお風呂の湯舟につかっていたときに,水の中にある自分の手が小さく縮んで見えて遊んだりした経験は誰しもあるかと思います。
このとき,水の中から出てきた光は水と空気の境界面(すなわち水面)でその進行方向が変えられます。
なぜ進行方向が変えられるかというと,異なる媒質を通るときに光の速度が変わるため。ここで光の速度は一定ではなかったかという疑問をもった方がおられるかもしれませんが,それは光が真空中を進むときの話です。水の中では光速は秒速23万kmであり,真空中の速度(秒速30万km)と比較して7割程度まで遅くなります。
CCS株式会社さんのHPにあった図が非常にわかりやすかったので引用させていただきますが,斜め方向から光が進入してきたときは片端にいる光が先に異なる媒質に足を踏み入れるので光の両端で進み具合にズレが生じます。その結果これまでとは角度が異なる方向へ進むことになるのです。これが屈折です。
さらに物質の中を光が進行するときは波長によって速度も違ってきます。真空中だと一緒の速度だったのにもかかわらず。
一般的には波長の短い光ほど物質中を進む速度は遅くなります。
イメージとしては,波長は進行する光の歩幅に相当し,歩幅の短い紫色光は物質との摩擦が大きくなり速度が遅くなるのに対して,ホップステップで大股の赤色光は物質との接触が少ないために早く動けるという感じですかね。
とすると,真空中からある物質に光が斜めに入るときは,紫色の光のほうがその境界面での速度の落ち方は急になるので,その分進行方向の変化も大きくなります。すなわち,波長の短い(歩幅の短い)紫色の光ほど大きく曲げられるということです。
数式を用いた説明もできますが,イメージすることが何より重要ですので,屈折についてはこの辺でやめておきます。
光の速度というのは進む物質によっても変わりますし,光自身の波長によっても変わってくるということ,この2点を押さえておけば十分だと思っています。
虹の原理
ここからはついに虹ができる原理を見ていきましょう。
雲の隙間から差し込んだ太陽光が雲から落ちてきた丸い雨粒に当たるときを考えます。
空気中の光の速度は真空中の光の速度とほぼ同じですので秒速30万kmで太陽光が雨粒に当たります。太陽光とは赤外線や可視光域の赤色光,緑色光,青色光,紫外線などさまざまな波長の電磁波を含んだ波であるので,雨粒に当たった各波長の光はそれぞれに進み方を変えることになります。
上にも述べましたように,水の中では光は秒速23万kmとその速度は遅くなり,波長の短い紫色の光ほど大きく曲げられ,波長の長い赤い光ほど小さく曲げられるのでした。それを考慮して水滴を進む光を少し大げさに描くと以下の図のような感じに。
紫色の光のほうが大きく曲げられて,そして1度水滴内を反射した光は雨粒から出て再び空気中へと進むことになります。しかも太陽光が入ってきた方角とは逆の方向の向きに。
この水滴から出てきた光を受け取って私たちは虹を認識しており,必ず虹は太陽を背にした方向に見えるのです。
でも図を良く見るとあれっ?,雨粒から出てきた光は紫色の光が上にきて赤の光が下にありますよ。
これだと虹の外側が紫で内側が赤色になりそうな気がします。が,これで合っているんです。
反射した光は私たちの網膜へと入ってきた結果虹を認識できるワケですから,虹を観察する人の視点に立たなければいけません(下図:9-11 虹のしくみ|日立市民科学文化財団 (civic.jp)より引用)。
視点を固定すると,雨粒の上側から出てきた紫の光を受け取るためには,雨粒の位置は下になければならないのです。
そして虹が見えるとき,目に入ってくる光は太陽光線と42度の角度をなしていることも分かっています。400年前にデカルトが発見したので,この42度という角度をデカルト角とも呼ぶそうです。
主虹と副虹
さて,虹が出ているとき,実は何重にも他に虹はできているのです。
ただ私たちの目で認識できるのがメインの虹(主虹:しゅこう,しゅにじ)と2番目の虹(副虹:ふくこう,ふくにじ)くらいで,それ以上の虹は見ることができません。さらに副虹すらも色が薄く,観測されるのは珍しいとされています。
上の写真で最も明るく見えているのが主虹,その外側に見えているのが副虹です。
面白いのは,副虹はアーチの外側に紫がきて,内側に赤がくること。主虹と色の並びが逆なんですね。
それでは最後に副虹ができるメカニズムを説明して終わりにしたいと思います。
先ほどは雨粒の上側から入った光が主虹を作ったのでした。
副虹は下側から入ってきた太陽光が作るのです。波長の短い紫色の光ほど大きく曲げられ,波長の長い赤い光ほど小さく曲げられるので,光の進路は以下の図のような感じになります。
水滴から出てきた光は赤色の光が上にきて紫の光が下にきます。先ほどと逆ですね(江波山気象館ebayama.jp/merumaga/20181001.htmlより引用)。
先ほど同様に視点を固定してあげると,紫色が副虹のアーチの外側にきて,赤色が内側にくるのが予想できますね。
このとき,副虹は太陽光線と52度での角度をなして見えます。そのため副虹は主虹よりも大きく外側に見られることになるのです。
と,今回は虹のできる原理の説明でした。
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さて,ここまでは地球の大気と,太陽・地球の放射,そして光の散乱について見てきました。
次回からはようやく気象っぽい話になります。雲がどのようにしてできるか,雨がどのように降るのかを見ていくことにします。
【まとめ】学習の要点
今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。
- 『気象予報士かんたん合格テキスト』技術評論社 p80-85
- 『イラスト図解 よくわかる気象学』ナツメ社 p185-p190
- 屈折 - Wikipedia
- 第23回 光の屈折|CCS:シーシーエス株式会社 (ccs-inc.co.jp)
- 9-11 虹のしくみ|日立市民科学文化財団 (civic.jp)
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わかりやすい高校物理の部屋 https://wakariyasui.sakura.ne.jp/p/wave/kouha/niji.html
- 虹 - Wikipedia
- 虹の理論 (fnorio.com)
- 大空にかかるスペクトル-虹ができる仕組み③ (opticaltale.blogspot.com)