Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第36回 地上風

 

地衡風・傾度風はいずれも平均して上空1km以上の高層で吹く風でした。

今回は地上付近の摩擦の影響を受ける上空1kmまでの地上風について説明します。

 

 

地上風

下の図はWindyというウェブサイト(Windy: Wind map & weather forecast)から切り取った地上の等圧線と風の動きが描かれた図です。

1枚目の図が高気圧周辺の風の動き,2枚目の図が低気圧周辺の風の動きを表しています。

地衡風も傾度風も等圧線(もしくは等高度線)に沿って吹く風でしたが,こちらの地上風はどうでしょう?

概ね等圧線に沿って吹いてそうな風ではありますが,よく見ると風は平行というワケではなく等圧線を横切っているのが分かりますね。

これは地衡風や傾度風といった風が上空1キロメートル以上で吹く一方で,地上風は地上付近で吹くため地表面との摩擦力が無視できなくなるためです。

摩擦力とは山や建物といった凸凹のある地表面を風が吹くときに生じる抵抗力です。空気には粘性があるため,(地表面に接する地表スレスレの部分だけではなく)地表面摩擦を受けた空気が乱れることによる上層の空気への影響もあって,上空1キロメートル程度までは摩擦を考慮する必要があるようです。

 

では空気に作用する力について見ていきましょう。

 

地上風の力学バランス

地上風が吹くときの空気に作用する力は,地衡風もしくは傾度風に摩擦力を考慮した力学バランスを考える必要があります。

 

ここでは遠心力を考える必要がない簡易な条件,すなわち等圧線が直線的に分布している条件での力のバランスを考えることにします。

 

まず空気には最初,高気圧側から低気圧側へと作用する気圧傾度力が働きます。よって空気は気圧傾度に従って速度を増しますが,速度が増すとともにコリオリ力が大きくなります。コリオリ力は北半球では進行方向に対して垂直右方向に働くのでした。

摩擦のない高度数キロメートル上空ならそのまま風はコリオリ力の働く方向に曲げられてやがて気圧傾度とコリオリ力が釣り合って地衡風となります。

 

一方で地表面との摩擦がある場合は風の進む方向とは反対側に摩擦力が作用します。風の進行方向の反対方向に作用するということは,風の速度を弱めるように働くということですね。すると速度の遅くなった風に働くコリオリ力も弱まります。なぜなら

  (単位質量あたりの空気に働くコリオリ力)= 2\Omega\sin\phi V

と表現でき,コリオリ力は速度に比例するからです。

 

風の進行方向垂直右に働くコリオリ力が弱くなる結果,左方向に働く力が勝るため,結果的には地上風は等圧線に平行にならずに地衡風から少し左に傾いた方向に進むことになります(下図)。

このように,コリオリ力が弱まることで地衡風・傾度風と比較して地上風は進捗左方向に曲げられることになります。

 

例えば下の図は高気圧周辺の風の向きを表したものですが,地上風では傾度風と比較して進行方向左側に曲げられるので右のようになるはずです。そしてこれは実際に冒頭で見せた天気図でも見られています。

同様に低気圧周辺では傾度風と比べて進行方向左に曲がるので下のようになります。

いずれにしても,地衡風・傾度風を考えたときに,それに対して左側に少し傾けた方向に地上風は吹くことになります。

 

地上風がもたらす天気

もう少し深くこの地上風の動きについて考えてみます。

上の図でも示したように,高気圧周辺では地上風は中心から遠ざかるように空気が移動することになります(発散という)。すると高気圧中心部から空気がなくなってしまうことになりますね。

そのなくなった空気はどうやって補うのか?上空の空気から補うんですね。ここに下降気流が発生します。下降気流では上空の冷たい空気が温められて地上へと降りてくるため,飽和していた空気があっても未飽和な状態へと変わり雲ができづらくなります。高気圧に覆われると天気が晴れることが多くなるのはこういった理由からです。

 

同様に低気圧周辺の地上風を考えると,中心に集まるように空気が移動することになります(収束という)。低気圧中心部集まった空気をどこかに逃がさないといけませんね。

実は上空に空気を逃がしているのです。ここに上昇気流が発生します。

上昇気流が発生すると,冷たい上空へと地上の空気が移動することになります。すると温度が下がって空気は飽和しやすくなるため雲ができやすくなります。低気圧が近づいてくると天気が悪くなるのはこのような理由があるからなのです。

下の図は高気圧・低気圧周辺の空気の流れをまとめたものです。分かりやすいですね。

(ウェザーニューズHPより)

 

地上風の摩擦の影響が,低気圧・高気圧による天気にも関係してくるというのですから,一見関係のなさそうに思えるようなことも意外なところで繋がっていて,こういう驚きが学ぶことの楽しさというものでしょう。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 地上風は地表から上空約1kmの間で吹く風のこと。
  • 地表面との摩擦力が無視できないため,摩擦力を考慮する必要がある。
  • 摩擦力は風の進行方向と反対方向に働き,風速を弱める作用がある。
  • 風速が弱くなった結果,風速に対して垂直右方向に作用するコリオリ力も弱まる。
  • その結果,(地衡風・傾度風と比較して)地上風は進捗左方向に曲げられる。
  • 高気圧周辺では地上風は中心から遠ざかるように空気が移動する(発散)。
  • 高気圧に覆われると下降気流が発生し天気が晴れることが多くなる。
  • 低気圧周辺では低気圧中心に集まるように空気が移動する(収束)。
  • 低気圧中心部では上昇気流が生じ,天気が悪くなることが多い。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。