Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第54回 日本の四季と気圧配置①〜4つの高気圧〜

 

ここまで大気の循環や偏西風について見てきました。

ここからは日本の季節と気圧配置について勉強しておきたいと思います。

 

今回は日本の季節に大きく影響する4つの高気圧(+α)についてです。

 

 

日本の季節に影響を与える4つの高気圧

赤道直下の常夏の国とは対照的に,日本には四季があります。

夏はセミの声が大変うるさく蒸し暑くてクーラーをかけないと危険とまで言われますが,喉元過ぎれば暑さも忘れて冬はとても寒くなってヒーターをかけないと手足が冷えて眠れません。

春は緑が芽吹き,秋は紅葉を楽しむ。

こういった四季があるのも,日本が赤道と北極の間の中緯度に位置する国で,温かい空気と冷たい空気がちょうど交わる地点に存在しているからですね。季節によって温かい空気が優勢になったり,冷たい空気が優勢になったりすることで日本特有の気候が生み出されるのです。

 

そしてこれらの季節の変化をつくりだすのが日本付近に登場する以下の4つの高気圧。

   ①太平洋高気圧

   ②シベリア高気圧

   ③移動性高気圧

   ④オホーツク海高気圧

さらに,これらの高気圧が生み出される仕組みもさまざま。

では,これら4つの高気圧についてもう少しだけ詳しく見ていくことにしましょう。

 

①太平洋高気圧(夏)

まずは太平洋高気圧からご紹介。太平洋高気圧の西側を特に小笠原高気圧(もしくは小笠原気団)とも呼びますが,今回は太平洋高気圧に統一して記述します。

 

この太平洋高気圧は大気の大循環によって形成されるものです。

赤道と緯度30度との間にはハドレー循環が生じ,緯度30度付近では下降した空気によって亜熱帯高圧帯が形成されるのでした。

weatherlearning.hatenablog.jp

その亜熱帯高圧帯の一つに,この太平洋高気圧があるのです。ハドレー循環では対流圏界面近くの高い高度から空気が落ちてくるので太平洋高気圧は背の高い高気圧に分類され,500hPa高層天気図でも300hPa天気図でも太平洋高気圧は確認できるそうです。

 

特に北半球が夏の場合,太平洋高気圧は太平洋上に強く張り出します。下は真夏の太平洋の地上気圧を色で示したものですが,赤っぽいところが気圧の高いところで太平洋の広い部分で気圧が高いところが広がっていることが推測できます。

太平洋高気圧は元々は乾いた空気が下降してくるのですが,海上にできる高気圧であるため大量に水蒸気を含み,日本列島に高温多湿な夏をもたらします

 

②シベリア高気圧(冬)

こちらは冬に強まる高気圧です。冬は中国大陸の地面が冷やされて,それにより重くなった空気が地上付近に集まってくるためシベリア高気圧が発達します。

下は冬の東アジアの地上気圧を可視化したものですが,ロシアの南部に1060hPaに達する高気圧があるのが分かりますね*1

冷たくなった地表が空気を冷やすものの,及ぶ高さはせいぜい上空2km程度であるため背の低い高気圧に分類されます。500hPaや300hPaの高層天気図では確認できないのですね。

そしてこの高気圧が日本の冬に寒さと日本海側の大雪をもたらすのです。

 

③移動性高気圧(春・秋)

お次は移動性高気圧。春や秋に高気圧と低気圧を順々に日本列島に送り出し,変わりやすい天気をもたらします

この高気圧は偏西風が作り出します。

下の図のように,上空の偏西風を上から見ると蛇行している様子が見られるのですが,このとき南の方に突き出た部分(気圧の谷)の西側では空気の収束が見られるそうです(このへんの理屈はまだ理解できていないので後日詳細に見ていくことにします)。

すると上空での空気の収束により,逃げ場を失った空気は地上付近へと下降してくるのです。その結果地上に高気圧を生むのだそうで。

そして高気圧(と低気圧)はこの偏西風に乗って日本列島を通過するので,天気がコロコロ変わるようになるのですね。

下は2023年4月の日々の天気図です。

たしかに高気圧が去って前線がきて,再び高気圧というふうに,天気がコロコロ変わっているだろうことが推察できます。

 

オホーツク海高気圧(梅雨)

こちらは春の後半から夏にかけてオホーツク海でできる高気圧。暖かくなってきて空気の温度は上昇しますが,陸よりも海の方が熱容量が大きい(=温まりにくく冷めにくい)ために海は冷たく,冷やされた空気が地上に集まることによってできます。

梅雨時によく現れ,太平洋高気圧とぶつかることで梅雨が起こることが知られています(ただしオホーツク海高気圧がなくても梅雨は起こるそうで,この高気圧だけの力ではないそうです)。

オホーツク海高気圧の発達にはブロッキングと呼ばれる現象が関与すると考えられています。

ブロッキングとは下の動画を見たら分かりやすいかと思います。

www.youtube.com

ブロッキングとは,動画のように偏西風(上空のジェット気流)の蛇行によって大きな風の流れから切り離される現象です。このときにできる高気圧をブロッキング高気圧(もしくは切離高気圧),低気圧をブロッキング低気圧(もしくは切離低気圧)と呼びます。

ブロッキング高気圧(ブロッキング低気圧の方も)は大きな流れから取り残されるために停滞することが多く,偏った天候が長く続くために異常気象を引き起こすことがあります。

オホーツク海高気圧が居座り続けると,東北地方に「やませ」と呼ばれる冷たい風が吹いて冷害を発生させることがあります

 

その他の高気圧

その他の高気圧として,チベット高気圧を紹介しておきます。

下はヒマラヤ山脈北部・中国南西部に位置するチベット高原と呼ばれる高原の標高を表したものです。

標高はだいたい4500m程度あり非常に高いことが分かります。

夏になりチベット高原への強い日射により空気が温められると,大気が膨張して層厚が高くなります。そのためチベット高原の上空では,気圧が高くなって高気圧となります。このように,夏にだけ現れるチベット高原上空の高層の高気圧のことをチベット高気圧と呼ぶのです。

チベット高気圧はおよそ15km付近で形成されます。この高気圧は東のほうまで張り出し,勢力が強いと日本の上空にまで達することがあります。

 

チベット高気圧が日本上空まで張り出し,太平洋高気圧のさらにその上に覆いかぶさると,日本の地上の高気圧を一段と強め日本では晴天が続き猛暑をもたらします。2010年,2013年,2018年に日本を襲った夏の猛暑はこのチベット高気圧の勢力が強まったためだと考えられています(下図;猛暑:「高気圧の2層構造」主要因 | 毎日新聞 (mainichi.jp)より引用)。逆に,チベット高気圧の勢力が弱いと,オホーツク高気圧が長期間滞在して,北日本を中心に冷夏となることがあるようです。

 

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 季節の変化をつくりだすのが日本付近に登場する4つの高気圧。
  • 「太平洋高気圧」は日本の蒸し暑い夏をつくりだす。
  • 「シベリア高気圧」は日本の寒い冬や日本海側の大雪をもたらす。
  • 「移動性高気圧」は日本の春・秋の変わりやすい天気をもたらす。
  • オホーツク海高気圧」は梅雨をもたらし,長く居座り続けると東北地方の冷害をもたらす。
  • チベット高気圧」は夏に対流圏上層に現れる高気圧で,太平洋高気圧の上に覆いかぶさると,日本では晴天が続き猛暑をもたらす。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:高気圧・低気圧には基準となる気圧は存在せず,周りの気圧と比べて相対的に決まる。モンゴルに1023hPaの気圧があっても低気圧になっているのが分かります