Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第56回 日本の四季と気圧配置③〜冬〜

 

前回は夏の高気圧・低気圧について説明しました。今回は冬です。

 

 

西高東低の冬型の気圧配置

冬の天気予報で「西高東低の冬型の気圧配置」という言葉をよく耳にします。

下の図は典型的な冬の天気図を表しているのですが,たしかに西(大陸側)に高気圧が,東(太平洋側)に低気圧があることが分かります。等圧線を見てみると,日本列島には縦方向に線が並んでいるのが確認でき,また等圧線間隔も狭く風が強いことも見て取れます。これが冬の天気図の特徴です。

冬は中国大陸の地面が冷やされて,それにより重くなった空気が地上付近に集まってくるためシベリア高気圧が発達するのでした。

下は真冬の日本付近の気圧を可視化したものですが(Ventusky - Wind, Rain and Temperature Maps),たしかに大陸の内陸部はとても気圧が高い(中心気圧は1060hPa近い,ちなみに観測史上最高海面気圧は1094hPaらしい)ことが分かりますね。

一方,太平洋上では,海が(空気に対して)比較的温かいため,海洋によって温められた空気は密度が軽くなって上昇気流を生じて低気圧が生まれやすいのです。

 

このとき風は高気圧側から低気圧側へと吹きますが,コリオリの力を受ける結果,地上付近では下のような北寄りの風(北西風)が日本列島に吹き込みます季節風とも呼ばれます)。北側は寒いですから,この冷たい空気が吹き込むと列島は冷え込みますね。

また,このとき日本海では暖かい海上の上に冷たい空気が吹き抜けることで空気の対流(ベナール型対流)が起こり,海上では筋状の雲(主に積雲や層積雲,積乱雲)が発達しやすくなります。

 

下は2023年1月に大寒波が襲来したときの赤外画像です。

日本海上一面に筋状の雲が広がっているのが分かりますね。特に大陸海岸線から筋状の雲が現れるまでの距離(離岸距離)で寒気の強さを推定することができ,写真では大陸海岸線と筋状の雲との距離が短いことから寒気が非常に強いことが読み取れます。

 

 

もう少しグローバルな視点から見たら下のような感じになります。

夏には日本付近まで張り出していた太平洋高気圧も,冬になると赤道付近まで南下。

その分,シベリア高気圧が発達し,中国大陸は冷やされます。

また北半球の南北の寒暖差が大きくなるため,その寒暖差を解消しようと上空の偏西風の蛇行も大きくなる傾向があるようです。

 

山雪型と里雪型

冬の気圧配置には大きく分けて山雪型里雪型の2つがあります。

山雪型とは,その名前の通り日本海側の山岳地帯で雪が多いタイプの気圧配置のことです。一方,里雪型とは,日本海側の平野部で雪が増えやすくなるタイプの気圧配置です。山雪型で平野部で雪が降らないというワケではないので注意が必要です。

 

この二つの気圧配置の違いは上空に寒気があるかどうかです。

山雪型では日本海上で発生した積雲・積乱雲がシベリアからの季節風に乗って日本海側地方へと運ばれてきて,そのまま山にぶつかることで上昇し雪を降らせます。

一方,里雪型では上空に強い寒気が流れ込んでいるため,大気が不安定となり日本海上で積乱雲が発達し,平野部に到達するときにはすでに雪を降らせるまでに成長しているのです。

下のように,里雪型の天気図は日本海上で等圧線が湾曲しているのが特徴です。

 

JPCZ

前述しましたように,今年2023年の1月に10年に一度と呼ばれる大寒波が日本列島を襲いました。

このとき,ニュースで「JPCZ」という言葉がよく登場したのを覚えています。JPCZとは日本海寒帯気団収束帯Japan sea Polar air mass Convergence Zone,一部メディアでは線状降雪帯)と呼ばれる収束帯のことで,このJPCZによって日本海側を中心にして各地で大雪が降り多数の死傷者も出たのです(令和5年の大雪)。

でもこの日本の冬に見られるJPCZはどのようにして発生するのでしょうか。

 

下は日本海周辺の土地の標高を表したものです。

注目してほしいのは朝鮮半島の付け根のあたりにある濃い茶色い部分。

ここは2000メートル級の山々が連なる山脈で長白山脈と呼ばれます(一番高い山の膨らみは白頭山)。

 

そしてこれまで述べてきました通り,冬は西高東低の気圧配置をとる日が多くなり,大陸側から日本列島に向かって北西の方角から地上付近に冷たい風が吹きます。

すると下のように長白山脈が風の行く手を阻み,風は二つに分岐するのです。

分岐した風はその下流で再び合流するわけですが,そのとき異なる向きの風同士がぶつかることで地上付近で収束が起こります。上の図の赤い矢印が風が収束するラインを示していますが,朝鮮半島から島根県にかけてハッキリと確認できますね。

地上で収束が起こると,行き場を失った空気は上空に逃げてそこに上昇気流が生じるのでした。

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上昇気流が生じると雲が発生しやすくなりますので,積乱雲といった雲ができ,それにより雷や大雪や雹といった荒れた天気をもたらします。

 

特に,JPCZによって福井県鳥取島根県,京都などの北陸・山陰地方の日本海側が大きな影響を受け,これまでにも何度も大雪に見舞われるなどの被害を受けてきたようです。

 

また,天気図としてはJPCZは山雪型よりも里雪型のときに圧倒的に発生頻度は高くなります

2023年1月にJPCZが発生したときも,地上天気図は里雪型を示しており,日本海上で等圧線が湾曲しているのが確認できますね。



【まとめ】学習の要点

今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 冬は「西高東低」の気圧配置が典型的にみられる。
  • 中国大陸にシベリア高気圧,太平洋上に低気圧が配置する。
  • 日本には大陸から北寄りの風(北西風)が吹き込む。
  • 日本海の上には筋状の雲が見られる(ベナール型対流によって生じる)。
  • 冬の気圧配置には大きく分けて山雪型と里雪型の2つがある。上空に寒気があるかどうかの違いがある。
  • 里雪型では上空に強い寒気が流れ込んでおり,里雪型の天気図は日本海上で等圧線が張り出して湾曲しているのが特徴となっている。
  • 朝鮮半島の付け根の長白山脈が北西風を分流させて,再び収束するラインにJPCZ(もしくは日本海寒帯気団収束帯もしくは線状降雪帯)が形成される。
  • JPCZは日本海側の北陸地方や山陰地方に大雪などの被害をもたらす。
  • JPCZは里雪型のときに発生頻度が高い。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。