Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第60回 台風とその役割

 

2023年6月2日現在,令和5年台風2号が沖縄地方を通過しました。

ちょうど勉強しようと思っていた内容だったので,前回の熱帯低気圧の勉強に引き続いて台風について理解を進めていきます。

 

 

台風の上陸

現在台風が沖縄付近を通過して本州の南の海上を進んでいます。

ちなみに,沖縄には台風は「上陸」ではなく,「通過」という言葉を使うのが定義としては正しい使い方だそうです。

台風上陸の定義は『台風の中心が,北海道・本州・四国・九州のいずれかの海岸線に達した場合』というふうに決められているからです。

ですから,日本の領土内にある小さな島を台風が飲み込んだとしてもそれは上陸とは呼ばないんですね。比較的大きな島である沖縄でも例外ではないのです。

 

台風とその被害

では台風の定義から。こちらは前回の復習です。

台風とは,北西太平洋または南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち,低気圧域内の最大風速が約17.2 m/s(34ノット)以上にまで発達したものと定義されます。最大風速とは10分間の平均風速の中の最大値であることは以前勉強しています。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

さて,日本での観測史上で最も被害を出した台風は1959年の伊勢湾台風だそうで,死者・行方不明者はおよそ5000人を超えます。

下は自然災害による死者・行方不明者数の推移を表していますが,伊勢湾台風を筆頭に,1940~1950年代では枕崎台風洞爺丸台風など台風による被害が目立ちます。

 


台風による主な物的被害としては,家屋の全壊や半壊,床上・床下浸水,耕地冠水や船舶の沈没など。人的被害としては浸水による溺死や,土砂崩れによる窒息死などがあるようです*1

特に夏は海水温が高いため海水が膨張して潮位が1年で最も高くなる季節でもあります。そのため台風による高潮(波が高くなって陸地に海水が入り込む)の災害が発生しやすいのです(下の図のように夏と冬で潮位は30cm程度ほど異なり,夏で高くなっています)。

 

また,昨今は災害関連死といった,(災害による直接的な被害ではなく),例えば災害によって救急車が遅れたり,避難の際に交通事故に会ったり,避難先でエコノミークラス症候群を発症したりといった間接的な被害も問題になりつつあるようです。

 

ここ50年を見ると,台風による死者・行方不明者数は減少傾向にありますが,これは台風の勢力が弱まったというわけでは決してなく,過去の教訓や科学技術を活かして治水・海岸整備・気象予報技術・情報伝達網などを発達させてきた人間の努力の結果なのです。

 

台風の発生時期

下のグラフは2011年から2020年までの10年間の台風の発生数を表したものです。

台風の大半は6〜11月に発生しますが,1月や12月といった冬の時期にも発生しているのが分かります。熱帯の海水温が温かくなるのが6月~11月に当たるのですが,熱帯域では冬でも海水温は温かいため1月でも少ないながらも台風が発生することもあるんですね。

 

冬に台風が発生しても日本まで来ないのは,日本付近の海水温が低いというのが理由の一つとして挙げられます。海水温が低いことで大気中に含まれる水蒸気量は少なくなり台風が発達できないのですね。

また,冬は偏西風が南下しているため,仮に熱帯域で台風が発生して北上してきたとしても,日本のはるか南側で偏西風に乗って,東へと進んでしまうようです。

 

台風が日本に上陸する時期はほとんどが6月から10月ですが(8月・9月が特に多い),過去には11月30日という晩秋に台風が上陸した記録もあるようです(平成2年台風28号)。このときも夏は記録的な猛暑で,太平洋高気圧が秋の終わりまで強まっており,台風が発達しうる環境が整っていたようです。

 

台風の役割

毎年のように周辺に大きな被害を出して去っていく台風。自然現象である以上,何らかの意味があって発生していると思われますが,そもそもこの台風によってもたらされる恩恵って何なんでしょうか?

 

分かりやすいところで言えば水不足の解消。昨年2022年に四国では雨の少ない状況が続き,ダムの貯水率が30%以下にまで下がったようですが,その後の台風の影響で降水によって状況を脱することができたそうです。恵みの雨をもたらすのですね。

 

そして台風にはもっと地球規模の重要な役割もあるのです。それは地球の気温を保つこと。

熱帯の暖かい空気を北へと運んで南北の気温を平均化する役割があり,熱帯が暖かすぎず,極地方が寒すぎない世界を形作る一端を担っているのです。

また,台風による強い風が海水面をかき混ぜることによって,海水温を下げてサンゴの白化現象を防ぎます(台風によって海水面からの蒸発が活発になると潜熱が奪われ,また下層の冷たい水が上昇してくることで海面水温は一時的に低下します)。サンゴが白化してしまうと魚の住処がなくなるので,生態系バランスに大きな影響が出てしまうのです。

 

台風を一概に悪玉とみなすのではなく,ある側面を見ると私たちに重要な恩恵をもたらしてくれる善玉であることも忘れてはいけないのですね。

 

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 台風の中心が,北海道・本州・四国・九州のいずれかの海岸線に達した場合に,「台風が上陸した」という。
  • 熱帯域において台風の大半は6〜11月に発生するが,1月や12月といった冬の時期にも海水温が高いと発生することがある。
  • 日本に台風が上陸する時期はほとんどが6月から10月であり,これは,日本付近の海水温が低いこと,冬の偏西風は南下しており台風が日本の南側で東へと流されることが理由として挙げられる。
  • 台風は地球の気温を保つのに重要な役割を果たす。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:他にも,台風の強い風による海水の飛沫で農作物被害や電線の漏電を引き起こす塩害なども知られています