前回,数値予報について勉強しました。数値予報とはコンピューターが現在の気象要素を用いて未来の気象の状態を予測することでした。そしてコンピューターへの気象要素の入力には,地図を格子状に区切って気象データの代表値を割り当てる必要があるのです。これを客観解析と呼びます。
今回は客観解析までの大きな流れについて勉強していこうと思います。
品質管理(QC:Quality Control)
まずは数値予報に用いるデータについてです。
以前,気象観測として極軌道衛星や静止衛星,飛行機やウィンドプロファイラ,さらにアメダスやラジオゾンデなどによって地上だけでなく高層の気象データも取得していることを勉強しました。
これらによって取得されたデータが数値予報に利用されています。
しかし観測されたこれらのデータがそのまま用いられるわけではありません。なぜなら,取得された生データには観測機器の不具合による欠損値や,人為的ミスによる異常データが含まれている可能性があるからです。
下の図のように(データの品質管理-沖縄気象台 (jma.go.jp)),あるタイミングにおいて突然大きな値が観測されたり,機器の故障等によってあるポイントから大きな値が出力され続けたりする場合があるようです。
間違ったデータを用いて解析してしまうと,当然ながら天気予報の精度も悪くなるので,こういった異常なデータについては除外したり欠損値を埋め合わせるなどして,正確なデータだけを用いて数値予報へと利用されているのですね。
客観解析(データ同化)
さて,品質管理によってデータのクリーニングが終わりました。ようやく使えるデータになったということです。
前回,数値予報では,地球表面・大気を3次元的に格子点に分割して気象データの代表値を割り当てることで,コンピューターが計算しやすいようなデータに成形していることを勉強しました。
このように,気象要素(気温・気圧・風速・湿度など)を格子点に割り当てることを客観解析(もしくはデータ同化)と呼びます。
では,具体的にはどのように客観解析を行っているのでしょうか。
まず,日本を水平格子間隔がおよそ数kmの格子に分割します(実際には,全球モデルでは13km,メソモデルでは5km,局地モデルでは2km)。下図で格子は赤く示されており,この格子に含まれる代表的な値が格子点上に割り振られます。
ここで1つの格子だけを拡大してみます。
上の図のように格子の中に複数の観測所が含まれる場合,どのデータを格子点の値として採用するのが良いでしょうか。一番近い観測所のデータでしょうか。
いいえ,そうではないようです。
気象庁では,格子点周辺の複数の観測値を広く活用するべく,観測所と格子点中心の距離の関係から,重みを考慮して格子点上の値を決定しています。
上の図だと格子点に最も近い観測所の気温の値は8℃ですが,他の観測所の値も無視することなく,近い観測所ほど大きな重みをかけることで値を内挿しているのです。
これで格子点上の値を求めることができたと思いきや,ここから先さらに,第一推定値という値を用いてデータを同化させる必要があります。長くなりそうですので次回に続きます。
【まとめ】学習の要点
ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
参考図書・参考URL
下記のサイトを参考にさせていただき,画像など一部お借りいたしました。
- 『イラスト図解 よくわかる気象学(専門知識編)』ナツメ社 p212-p220
- 『気象予報士かんたん合格テキスト(専門知識編)』技術評論社 p248-250
- データの品質管理-沖縄気象台 (jma.go.jp)
- 数値予報とは | 気象庁 (jma.go.jp)
- 数値予報とは その3 観測データから初期値を作成する(データ同化)|隈 健一 (note.com)