未来の気象を予測するためには,大気の状態を地図上の格子点に対応させる必要があります。この格子点ごとに気温や気圧・風などの気象データを割り当てていく処理が解析の基本です。
前回は,観測値を格子点に割り当てることを学びましたが,数値予報では予報モデルによって計算される予測値も利用して,観測値と予測値を統合する「データ同化」を行っています。
多くの参考書では「客観解析=データ同化」と書かれていますが,本ブログでは,観測値だけを用いて気象要素を格子点に割り当てることを「客観解析」,観測値データに加えて予測値を含めて格子点上に最もらしい気象場を作ることを「データ同化」というふうに区別して記述することにします。あくまで混乱を避けるための本ブログでの整理の仕方であり,正式な定義とは異なることがあります。皆様は「データ同化」を「客観解析」と読み替えて読み進めてください。
第一推定値とは
データ同化に登場する「第一推定値」とは,過去の時刻の値を使って予報モデルが計算した現在時刻の予測値のことです。つまり,「今の大気の状態はこうであろう」と数値モデルが導いた予測結果です。
ちなみに,予報モデル(あるいは数値モデル)というのは,スーパーコンピュータ上で数式を用いて実行される計算プログラムのことです。ここで用いられる数式は,大気の運動を支配する物理法則や偏微分方程式などを使って記述される非常に複雑な計算式になります。こちらは過去にも勉強していますので,詳細は下記の「プリミティブ方程式」の記事をご参考にしてください。
予報モデルは,ある時刻のある値を入力すると,計算式によって未来の値を出力します。下の図のようなイメージかと思います。

出力される予測値が未来の天気のデータとして活用されます。その中でも,次の解析時刻に該当する値が,第一推定値として利用されるのです。
全球モデル(GSMモデル)では6時間ごと,メソモデル(MSMモデル)では3時間ごと,局地モデル(LFMモデル)では1時間ごとに解析する間隔が設けられており,それぞれの時刻の第一推定値を生成しています。
データ同化とは
知らない道を歩くときに,頭の中だけで想像した地図を頼りに進んでいくと道に迷ってしまいます。途中で立ち止まって,現在地点がどこなのかをGPSで確認しながら進むことが確実に目的地にたどり着く安全ルートですね。
数値予報も同様に,予測値だけで計算を進めていくと,現実世界の値とどんどんと乖離が起こってきます。そこで,現在時刻の予測結果(第一推定値)を現在の実際の状況(観測値)と照らし合わせて,予測値と観測値の差をできるだけ小さくするような修正を加える作業が必要になります。
観測値と第一推定値を統合して,最もらしい現在の大気の状態を推定する手法をデータ同化といいます。
下の図は気象庁が発表しているデータ同化の詳細な説明図(1_chapter3.pdfより引用)ですが,第一推定値に観測値を加味して修正するのです。データ同化によって新しく得られた修正値は解析値と呼ばれます。

初期値化とは
解析値が得られたら,すぐに数値予報モデルに入力して未来の天気を計算できそうですが,実際にはもう一段階重要な処理が必要です。それが初期値化です。
例えば,解析値では,気圧傾度と風の関係(地衡風)や,気温と厚さの関係(静力学平衡)などの整合性がうまくとれていない場合があります。このデータをそのままコンピューターに入力してしまうと,不自然な振動(重力波など)が発生し,予報精度が低下することがあるのです。
そのような不具合を避けるために,解析値をモデルに適した状態に整える処理をすることが必要なんですね。
解析値が初期値化されてようやく,数値予報の入力値として使用されるのです。
解析予報サイクルの全体像
ここまでの流れを簡単にまとめると、以下のようなサイクルになります。
-
予報モデルを使って過去から現在までを計算 → 第一推定値
-
第一推定値と観測値を統合 → 解析値(データ同化)
-
解析値を調整 → 初期値(初期値化)
-
再び1へ戻る
この繰り返しが,数値予報の根幹をなす解析予報サイクルです。
図にすると下のようになります。

数値予報では,格子点上で現在の気象要素を初期値として,未来の気象を予測します。それには,スーパーコンピューターを用いて,初期値を入力として数値計算を実行します。そして,予測された未来の気象データのうち,次の解析時刻に該当する部分が,次サイクルの第一推定値として利用されます。
ただし,第一推定値はあくまで計算上の結果であるため,実際の観測値とは必ずしも一致しません。そこで,第一推定値に観測値のデータを統合して,より現実に近い値となるように修正を行います。これをデータ同化と呼び,この処理によって得られる値が解析値です。
解析値は,観測データとモデルの予測を統合した結果であるため,大気の物理法則に基づく整合性(例えば地衡風バランスや静力学平衡)が必ずしも満たされていない場合があります。このため,解析値を数値モデルに適した初期条件として整える「初期値化」が必要です。こうして得られた初期値が,再びスーパーコンピューターに入力され,次の予測計算に用いられます。
今回はここまで。
この分野は,「××値」という言葉がよく出てきて(第一推定値,解析値,初期値etc)非常に分かりづらいところだと思います。
次回は「3次元変分法」や「4次元変分法」というものについて見ていきましょう。これも正直分かりづらい。。。
【まとめ】学習の要点
ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
- 数値予報では予報モデルによって計算される予測値も利用して,観測値と予測値を統合する「データ同化」を行う。
- 「第一推定値」とは,過去の時刻の値を使って予報モデルが計算した現在時刻の予測値のこと。
- 第一推定値と観測値を統合(データ同化)して「解析値」が得られる。
- 解析値は,気象要素間の整合性がうまくとれていない場合があるため,「初期値化」を行う。
- 解析値の初期値化により「初期値」が得られる。
- 初期値は再び数値計算の入力となり,この繰り返しが,数値予報の根幹をなす「解析予報サイクル」である。
参考図書・参考URL
下記の文献やwebサイトを参考にしました。