前回は数値予報において,観測値と予測値を統合する「データ同化」について勉強しました。
今回は,データ同化の具体的な手法として,3次元変分法と4次元変分法について学んでいくことにします。なんだか難しそうな言葉ですが,頑張って理解していくことにしましょう。
微分法と変分法
今回勉強するのが,3次元変分法と4次元変分法ですが,果たして「変分法」というのはどういうものなのでしょうか。
実は皆さんが高校数学で学んだ「微分法」と似ているところがあります。
まず微分法とは,ある関数の変化率(傾き)を調べる方法です。例えば,山の頂上を探すには,坂の傾きがどう変化するかを見る必要があります。上り坂から下り坂に変わる場所が頂上だからです。
一方,変分法は,関数そのものの形を調整して,ある量(距離やエネルギーなど)を最小または最大にする方法です。山で例えるとするならば,単に頂上を探すのではなく,「最も楽に登れる道の形」を考えることに似ています。山の地形を踏まえて,歩く方向を少しずつ変えながら,距離や傾斜のきつさを最小にする道を選ぶ――これが変分法のイメージです。
すなわち,直感的には微分法と変分法は以下のように整理できます。
✅ 直感的な例え
微分法が「点(頂上)」を対象とするのに対し,変分法は「関数(道の形)」を対象とする点で違いはありますが,どちらも対象の微小な変化を分析することでその性質を求めていることは共通しているのです。
3次元変分法
気象予報では,観測値と数値予報モデルの結果には必ず誤差があります。この差をできるだけ小さくして,最も現実に近い大気の状態を求めるのがデータ同化の目的です。
3次元変分法では,「3次元空間」での観測値と予測値の差を最小化することで,最適な大気の状態を求めています。だから「3次元」変分法という名前が付けられているのですね。
この手法の特徴は,全ての観測データが解析時刻に得られたものと仮定して処理していることです。
データが観測された時刻と解析時刻には実際はズレがありますので,得られる予測の精度は少し悪くはなりますが,時間変化を気にしなくて済むので計算コストは少なく済むというメリットもあります。
下の図は,気象庁の資料(1_3.pdf)からの引用ですが,3次元変分法では,同化期間内の観測データは全て解析時刻に観測されたものとして扱われていることが理解できますね。

4次元変分法
上記で述べましたように,3次元変分法は,全ての観測データが解析時刻に得られたものと仮定して処理しているため,観測値の時間的な変化の情報を削ってしまっています。データが丸め込まれるため,当然ながら,予測精度にも少なからず影響を与えます。
そこで,4次元変分法という,3次元空間に加えて時間次元を考慮することで,より高精度な解析値を得ることができる手法が開発されています。この手法は,時間情報を加味するため予測精度は高いというメリットがあるのですが,その一方で,計算量が膨大になるというデメリットもあります。
ただ,昨今のコンピューターの性能の向上によって,時間情報を加えたより高次元な4次元変分法がデータ同化解析の主流となっているそうですよ(3次元変分法も,現在においても気象予報分野で使用されているようです)。
下の図は,4次元変分法の概略ですが,同化期間内の観測データが取得された時間の情報を保持したまま,最適な大気の状態を予測していることが分かります。

今回はここまでにしておきます。
3次元変分法と4次元変分法は,どちらも「観測値と予測値の差を最小にして,最適なデータ同化を行う」という同じ目的を持っていますが,時間情報を考慮するかどうかで精度と計算量が大きく変わることを学ぶことができました。天気予報が作られている仕組みを知るだけでも,日々のニュースを見る目が変わりますね。
今回の手法については深く勉強し始めると,おそらく時間がいくらあっても足りない深淵な学問になると思いますので,趣味で気象の勉強をしている私にはこのくらいの理解でとどめておこうかと思います。
【まとめ】学習の要点
今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。