前回からの続きです。第62回予報士試験の一般知識を振り返ります。
なお,問題については,気象業務支援センターから公開されておりますので,そちらからご覧ください。
- 第9問 積乱雲
- 第10問 中層大気の温度・風分布
- 第11問 気候変動と地球温暖化
- 第12問 予報業務の許可
- 第13問 気象予報士
- 第14問 気象業務法の罰則
- 第15問 水防法
- さいごに
- 参考図書・参考URL
第9問 積乱雲
【正解】④
【解説】
基本的な積乱雲の知識について問われました。
(a)個々の積乱雲(単一セル)は,風の鉛直シアが小さい場合に発生しやすく,通常30~60分程度の寿命と言われています。また,その大きさは数kmから数十km程度です。
よって「水平スケールが1km未満」としている記述は間違いと言えます。
(b)空気塊が浮力によって自力で上昇するようになるのは「自由対流高度」であり,持ち上げ凝結高度ではありません。
よって間違い。
(c)雨粒が蒸発するとき,周りから熱を奪います(気化熱)。これによって水が水蒸気になりますが,周りの空気は冷やされます。同様に,氷粒子が水へと融解する際には,周りから熱を奪って(融解熱)周囲の空気は冷やされます。空気が冷却されると,密度が高くなって積乱雲の下にたまり,結果的に局地的な高気圧が形成されることがあります。このような局地的な高気圧をメソハイといいます。ちなみに,メソハイはコリオリの力が小さいため,回転方向は決まっていません。
まとめると,(a)誤,(b)誤,(c)正 であるので,正解は④になります。
私はこの問題を間違えたのですが,今振り返ってみても何故②を選んでしまったのかは不思議と言わざるを得ません。
間違えた理由として,気象のスケール感を理解できていなかった点は大きいのですが,よくよく考えたら積乱雲が1km未満というのは小さく見積もりすぎだということに気づくべきでした。なぜか(a)正,(b)誤 は間違いないと判断して,(c)も正しそうだったものの,天秤にかけた結果,②が正解だと判断してしまったのですね。
中途半端な記憶だと,結局感覚的に判断してしまうリスクがあることを思い知らされた問題となりました。
第10問 中層大気の温度・風分布
【正解】⑤
【解説】
(a)オゾン層の基本問題。オゾンは太陽光のエネルギーを受けることで光解離をおこし,それが酸素と結びつくことでつくられます。よって太陽光を多く受ける赤道付近で最もオゾン生成は活発になります。ただ,成層圏のブリューワー・ドブソン循環によって,オゾンは高緯度に運ばれ,結果的には高緯度側でオゾン濃度が高くなっているのです。
よって,この記述は「高緯度で生成」「プラネタリー波により」「低緯度に運ばれる」と,どこを切り取っても誤りだと言えます(ただし,ブリューワー・ドブソン循環はプラネタリー波によって駆動されるので,一概に誤りとも言えなさそうです)。
(b)下は大気の鉛直方向の風の分布を表したものです。緑色が西風,青色が東風を示しています。

上の図から,成層圏(高度約10~50km:気圧約200~1hPa)では,冬半球では西風が卓越します。また,中間圏(高度50~80km:気圧約1~0.01hPa)ではほぼ西風になっていることも分かりますね。
よって,「中間圏ではほぼ東風」という記述は誤りと判断します。
(c)ほぼほぼ知識問題。成層圏突然昇温は対流圏からのプラネタリー波の伝播によって上層から昇温が始まります。
よって,(a)誤,(b)誤,(c)誤 で⑤が正解。
これも間違えました。中層大気の風の分布を中途半端に記憶したのが仇となりました。
第11問 気候変動と地球温暖化
【正解】⑤
【解説】
(a)地球に入る太陽エネルギーは雲や地表面で反射されて,その一部しか地球に入りません。この雲や地表面で反射される放射量の比率のことをアルベドと言います。アルベドが大きいということは,反射されるエネルギーが大きいということを表します。すると当然,地球に入るエネルギーは少なくなりますので,気温は低下します。
このことから,「アルベドが大きいと気温が上昇する」という関係性はおかしいことが分かります。
(b)温室効果ガスとしては,水蒸気・二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素・フロンなどがあります。
その中でもメタンは,同量の二酸化炭素の28倍程度の温室効果をもちます。地球上のメタンの一部は永久凍土に閉じ込められていますが,昨今の地球温暖化により永久凍土が融解することで大気中に放出され,結果的に温暖化をますます加速させる悪循環に陥っているのです。
(c)火山が噴火すると火山灰は成層圏に2,3年留まり続けます。その結果,上空の火山灰が太陽からの日射を遮ってしまい(日傘効果),地球の気温が低下することがあります。
例えば,1991年6月に噴火したピナトゥボ山は,噴火粒子が成層圏に放出され何か月も残留したとされます。それにより地球の気温が約0.5℃下がり,オゾン層の破壊も進んだようです。
選択肢の記述は一見正しそうに思えますが,「(火山灰が)対流圏に留まり」とあるので間違いとなります。
(d)温室効果をもつフロンは,同量の二酸化炭素の100倍から数万倍程度のきわめて強力な温室効果があるとされます。
よって記述は正しいと言えます。
よって,(a)誤,(b)正,(c)誤,(d)正 で⑤が正解。
(c)は,対流圏と成層圏を見過ごして,何の違和感もなく正しい記述だと判断してしまいました。重要なのは,噴火によって日傘効果で地球の気温が低下することであり,それが対流圏なのか成層圏なのかは些末な問題であり,個人的には,ただの知識問題に帰着した本問は「重箱の隅をつつく系の問題」だと思います。
本番にこういった問題に出くわして,違和感に気づけなければ,不慮の事故だと思ってあきらめる他なさそうです。
第12問 予報業務の許可
【正解】③
【解説】
気象予報業務を行おうとするものが,気象庁長官の許可を受ける際の申請書に必要な記入項目は以下の4点。
①氏名または名称及び住所並びに(法人ならば)その代表者の氏名
②予報業務の目的
③予報業務の範囲
④予報業務の開始の予定日
これに加えて,必要な要件は以下の6点。こちらは予報業務計画書として添付する必要があります。
・収集しようとする資料の内容とその収集方法
・予報資料の収集・解析の施設およびその要員
・予想事項の発表時刻
・現象の予想の方法
・気象庁の警報事項を受けることができる施設および要員
・気象予報士の氏名と登録番号
(a)気象庁の警報事項を受けることができる施設および要員は必要ですが,警報事項を伝えることについては特に明記はありません。誤。
(b)(c)予報資料の収集・解析の施設およびその要員は必要。正。
(d)気象業務の許可の取り消し後,2年を経過しない者は,再度許可を受けることができません。これは気象業務法で定められています。
・気象業務法の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者。
・予報業務許可の取消しを受け、その取消しの日から2年を経過しない者。
よって,(a)誤,(b)正,(c)正,(d)正 であるので,正解は③になります。
私はこの問題も間違え,「気象業務法で罰金以上の刑に処せられ,その執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない」と「予報業務許可の取消しの日から2年を経過しない」がごっちゃになってしまいました。
最初は正解の③を選んでいたのですが,「執行を受けることがなくなった日から2年」ではなかったかと疑念が湧いて,結局④を選んでしまったのでした。罰金の場合は,その刑の執行を受けることがなくなってから2年,許可の取り消しの場合は,取り消しの日から2年となっているので,ここは私のように混乱しないようにしましょう。
第13問 気象予報士
【正解】④
【解説】
(a)気象予報士になるためには,試験に合格して,気象庁長官の登録を受けなければなりません。ここでは「承認」となっているので誤りです。些末な問いだと思いますが,こういう問題が命取りになるので,ちゃんと覚えておくに越したことはないのです。
(b)常識問題。気象予報士が住所を変更したら,遅延なく気象庁長官に届け出なければいけません。正。
(c)これも定番問題。予報業務の許可事業者のもとで気象予報士を働かせるためには,許可事業者が予めその旨を気象庁長官に届け出なければいけません。気象予報士本人のすることではないのです。誤。
(b)常識問題。気象予報士が死亡したときは,その相続人が遅延なくその旨を気象庁長官に届け出なければいけません。正。
(a)誤,(b)正,(c)誤,(d)正 であるので,④を選びます。
第14問 気象業務法の罰則
【正解】③
【解説】
気象業務法の罰則として,代表的なものは以下のようなものがあります。ただし,教育のために行う気象観測には,罰則は適用されません。
★3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金
- 屋外に設置された警報標識や気象測器を壊したり移動させたり妨害行為を行った
★50万円以下の罰金
- 検定に合格していない気象測器を用いた気象観測(気象観測には気象庁長官の登録を受けた者が行う検定に合格したものを用いる)
- 気象庁以外の者が警報を出すこと(気象庁以外の人は気象警報を出してはいけない)
- 気象庁長官の許可なく予報業務を行うこと(予報業務には気象庁長官の「許可」が必要)
- 認可を得ずに予報業務の目的と範囲を変更すること(予報業務の目的と範囲を変更するには気象庁長官の「認可」が必要)
- 気象予報士以外の者に現象の予想を行わせること
- 気象予報士個人が許可を得ていない業務を行うこと(事業者と気象予報士の両方が罰金刑になる)
- 許可を得ずに船舶や航空機において受信されることを目的とした無線通信による気象成果の発表を行うこと
- 業務停止命令に違反したもの
★20万円以下の過料
- 予報業務の休廃止の届出を出さなかった(予報業務許可者はその業務を休止もしくは廃止するときには気象庁長官に「届出」なければならない)
★罰則なし
- 気象観測施設の届出を出さなかった
- 気象庁の警報事項を伝達しなかった(民間の予報業務許可事業者は警報事項を伝達するように努力しなければいけないが,義務ではない)
- 気象予報士が死亡したときに,相続人がその旨を気象庁長官に届け出なかった
(a)気象観測に用いている機器を壊したら,3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処せられます。よって正。
(b)教育のために行う気象観測には,罰則は適用されません。よって誤。
(c)観測成果を発表するための観測施設を設置するときは,届出の必要があります。よって,スキー場を運営する事業者は気象業務法に違反していることになるのですが,注意するべきことは気象観測施設の届出を出さなかったことの罰則については法律で明記されていないのです。
これは敢えてそうしているのか,ただの書き忘れなのか,よく分かりませんが,盲点をつく問題で,過去にも気象予報士試験で出題されているようです。
(a)正,(b)誤,(c)誤 であるので,正解は③になります。
第15問 水防法
【正解】④
【解説】
水防法をちゃんと読み込んでいる人は少ないのではなかろうか。
ここを覚えてください。
(国の機関が行う洪水予報等)
第十条 気象庁長官は、気象等の状況により洪水、津波又は高潮のおそれがあると認められるときは、その状況を国土交通大臣及び関係都道府県知事に通知するとともに、必要に応じ放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関(以下「報道機関」という。)の協力を求めて、これを一般に周知させなければならない。
2 国土交通大臣は、二以上の都府県の区域にわたる河川その他の流域面積が大きい河川で洪水により国民経済上重大な損害を生ずるおそれがあるものとして指定した河川について、気象庁長官と共同して、洪水のおそれがあると認められるときは水位又は流量を、はん濫した後においては水位若しくは流量又ははん濫により浸水する区域及びその水深を示して当該河川の状況を関係都道府県知事に通知するとともに、必要に応じ報道機関の協力を求めて、これを一般に周知させなければならない。
3 都道府県知事は、前二項の規定による通知を受けた場合においては、直ちに都道府県の水防計画で定める水防管理者及び量水標管理者(量水標等の管理者をいう。以下同じ。)に、その受けた通知に係る事項(量水標管理者にあつては、洪水又は高潮に係る事項に限る。)を通知しなければならない。
(b)誤。正しくは,「一般に周知」。
(c)正。
(d)正。
以上より,④が正解。
水防法については記事にしていますので,ご参考にしてください。
さいごに
以上で,一般知識の振り返りは終了です。
私は全部で6問も間違えてしまい,合計9点でした。以下の通り。
〇✕〇〇〇〇〇✕✕✕✕✕〇〇〇
結果は不合格。まだまだ勉強不足ですね。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。