Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強中の社会人ブログ

第62回気象予報士試験振り返り~専門知識①~

 

今回は,今年の8月に実施されました第62回気象予報士試験の専門知識について振り返っておきます。ちなみに私はこの試験を受験して,合計11点(もしくは12点?)で合格していました

 

今回の振り返りは,あくまで個人的にこうやって考えたら良いのではないかということを記述してのであって,間違いもあるかと思います。内容に誤りや修正等あればご指摘ください。

 

なお,問題については,気象業務支援センターから公開されておりますので,そちらからご覧ください。

気象予報士試験 (jmbsc.or.jp)

 

 

第1問 地上気象観測及び通報

【正解】③

 

【解説】

知識問題。覚えていないとどうしようもありません。

(a)風速・風向の観測は風車型風向風速計が用いられており,0.1m/s単位で行われています。ただ,国際気象通報式の一つである地上実況気象通報式SYNOP)では,世界中で統一された形式でやり取りするために,単位をノットに変換して,1の位まで通報しているようです。正。

 

(b)基本問題。10分間平均風速は,観測時刻の直近10分間の平均値をとることで値を算出しています。よって,前後5分間の平均値という記述は誤りです。

 

(c)覚えていないとどうしようもない問題です。「静穏」とは,10分間平均風速が0.3m/s未満の場合をいいます。気象庁風力階級の風力は0に相当しますので,後半部分の記述は正しいと言えます。

全体として,選択肢の記述は間違っていることになります。

 

(c)これも覚えていないとどうしようもない問題ですが,基本的な問題。風向を36方位で表す場合には,真北を「36」,真南は「18」になるように定めています。「00」は静穏の場合に使われます。(下図参照:tebiki.pdf

 

(a)正,(b)誤,(c)誤,(d)誤 で③を選べばよいのですね。

私は,(a)はよく分からなかったものの,(b)(c)(d)は間違いであると判断し,③を無事に正解することができました。

 

 

第2問 ドップラー効果

【正解】①

 

【解説】

計算問題。

 

まずは情報を整理します。

時刻Aでのドップラー速度は,南側で4m/sで近づく方向,北側で4m/sで遠ざかる方向,東側で4m/sで近づく方向,西側で4m/sで遠ざかる方向になっていることが分かります。

ここで,ドップラー速度とは,観測装置から見た動径(レーダーの指す方向)に沿った風速成分を指します。すなわち,レーダービームに沿った風の速さです。南北方向と東西方向に分けて,下のような図としてまとめられます。

ウィンドプロファイラが観測する風速成分は,動径方向に投影された風速ベクトルであるので,時刻Aにおける,ある高度での風速は,下のようにsin10°で割ったベクトル(橙矢印)になります。

よって,時刻Aの上空の風は,南北方向には南から,東西方向には東から吹いており,これらのベクトルを合成すると南東方向から北西方向に向かって風が吹いていることが分かります(下図)。よって南東風です。注意しなければいけないのが,風向とは風が吹いてくる方向を表しており,風が進んでいく方向を表してはいないという点です。

このときの風速 V_Aは以下のように計算されます。

    V_A = \dfrac{4 \sqrt{2}}{\rm{sin10}} = 33(m/s)

 

同様に考えて,時刻Bでの風向および風速 V_Bは以下の図のようになります。

 V_B = \dfrac{5}{\rm{sin10}} = 29(m/s) の南風となります。

 

以上をまとめると,

時刻Aの風向:南東,時刻Aの風速 V_A:33(m/s)

時刻Bの風向:南, 時刻Bの風速 V_B:29(m/s)

より①が正解です。

 

 

第3問 気象レーダー観測

【正解】⑤

 

【解説】

(a)ドップラー効果とは,波を出す音源や観測する人が動いているときに,観測される波の周波数が変化する現象のことです。

ドップラー効果の数式を見てみると,観測者が観測する波の周波数 f'

 

   f' = f × \dfrac{V-v_o}{V-v_s}

  ( f:音源が出す波の周波数, V:音速, v_o:観測者の速度, v_s:音源の速度)

 

と表せるようです。上の式を見て何が分かるかというと,ドップラー効果は速度に依存する式になっているということです。

気象レーダーでは,電波を発射して,降水粒子によって跳ね返ってきた電波を観測しています。ここで,発射した電波の周波数( f)と,戻ってきた電波の周波数( f')が分かれば,降水粒子の移動速度(動径成分)を計算することが可能になります。

降水粒子の移動速度と,その周辺に吹く風の速度は必ずしも一致するものではありませんが,基本的には,「降水粒子の動径速度≒風」と解釈して良いようです。

よって,ドップラー効果から分かることは,降水強度ではなく,降水粒子の動径速度(≒風速)です。誤。

 

(b)気象レーダーは,電波を発射して,降水粒子によって跳ね返ってきた電波を観測しているので,途中に降水域があれば電波の一部は跳ね返され,遠方に届く電波は少なくなります。手前にある降水域が,ちょうどレースのカーテンのような役割をして,その向こう側の景色が見えづらいのとよく似ています。

よって,降水域の遠方にある降水エコーは,実際よりも弱く見積もられることがあります。誤。

 

(c)これは「完全に」という表現が明らかに言いすぎですので,常識的に考えたら誤りだと分かります。

気象レーダーから発射された電波は,大気の屈折率の変化,海面や地表の構造物などに当たることで,降水がないところに強いエコーが現れることがあります(下図:気象レーダー | 気象庁 より引用)。

構造物や地形などの降水粒子以外の物体からのエコー(グランドエコー)は,(それらの物体が静止しているため)ある程度取り除くことは可能ですが,完全には除去できません。

一方,海面のしぶきによるエコー(シークラッター)は,その日の気候条件次第で波の高さなどが変わるため除去することが難しいとされます。

大気の屈折率によるエンゼルエコーも,その日のその時間の大気状態に大きく反映されますので,除去できません。

よって,一部の降水粒子以外の物体からのエコーは除去処理は行われますが,それは完全には取り除けるものではありません。誤。

 

(d)二重偏波レーダーは,水平方向に振動する水平偏波と垂直方向に振動する垂直偏波を用いることで,雲の中の降水粒子の判別(雨か雪か)や降水の強さをより正確に推定しています(下図:気象レーダー | 気象庁 より引用)。

降水粒子はその大きさが大きいほど,空気抵抗を受けて形は扁平になります。これを水平偏波垂直偏波によって観測して,その反射波の振幅の比から降水粒子の形を推定します。

また,電波などは水の中を進むと速度が遅くなるため,降水強度が強いほど,水平偏波の速度が遅くなります。水平偏波垂直偏波反射波の位相差から雨の強さを推定することができます。

よって,「反射波の振幅から雨の強さを推定」とするのは誤りです。正しくは,「反射波の位相差から雨の強さを推定」あるいは「反射波の振幅から降水粒子の形を推定」とするのが正しい答えです。よって誤。

 

以上のことから,すべて誤りなので⑤を選びます。

私は(d)は正解だと判断しましたが,振り返りを行って初めて間違いを理解しました。これはさすがに覚えてなかったです。

 


第4問 数値予報

【正解】②

 

【解説】

(a)アメダスや観測所を密に設置できる陸上に比べて,海上では気象観測点がどうしても少なくなります。海上などのデータがまばらな地域の情報は,陸上などの情報をもとに行った数値予報の結果からその解析値として反映されています。正。

 

(b)プリミティブ方程式では,下向きに働く重力と上向きに働く力がつり合った状態を仮定しています。しかし,大気の鉛直流を全く考慮しないかというとそうではなく,鉛直流は連続の式(質量保存式)から間接的に求めています。正。

 

(c)地表付近では,気温・風速・湿度などが高度数百メートルで大きく変化します(=境界層,大気安定度,雲底形成など)。また,対流圏内の静力学的安定性や対流活動を適切に表現するためには,鉛直方向の高解像度が不可欠です。

したがって,鉛直方向はより細かく分割する必要があります。具体的には,メソモデルであれば水平格子間隔は5kmですが,鉛直方向は地上から37.5kmを96層に分けられているので,その間隔ははるかに小さいと言えます。誤。

 

これらの結果より,(a)正,(b)正,(c)誤 で②が正解。

 

 

第5問 数値予報誤差とアンサンブル予報

【正解】④

 

【解説】

気象のカオス的性質については以下にまとめています。

 

気象予報の難しさは,その数値予報モデルの格子間隔が数kmとざっくりとしたスケールにしかなっていないため,実際の現象と乖離し,誤差が生じることが一つの要因に挙げられます。

また,仮に数値予報モデルの格子間隔が短く解像度が高かったとしても,観測値には必ず誤差が含まれるため,その初期値の小さな差から,その予測誤差がどんどん広がってしまうのです(カオス的性質)。

 

(a)数値予報モデルの格子点の値は,格子に含まれる地域の代表値を用いています。「物理量を近似的に評価している」という言葉が正しいのか一瞬迷ってしまいますが,代表値ということで近似値と考えて良いでしょう。よって正。

 

(b)気象のカオス的性質を的確にとらえた表現です。正。

 

(c)大気のカオス的性質から,予報時間が長くなるにつれて誤差が急速に増大してしまうのであれば,将来の天気は精度よく予測できないという結論に至りかねません。それを回避するために,気象庁では「アンサンブル(集団)予報」という数値予報の手法を用いて,少しずつ異なる初期値を多数用意してそれぞれ個々に予報を行い,平均やばらつきといった統計的情報を用いて,気象現象を確率的に捉えることで,将来最も起こりやすい気象現象を予測しているのです。

特に,積雲対流などの時空間スケールの小さいメソスケールの現象は,総観スケールに比べて予測することが難しいという特徴があります。気象庁では,メソスケールの予測には「メソアンサンブル予報」という数値予報を採用しているようで,メソモデルの初期値・側面境界値および物理過程の一部(積雲対流過程と放射過程)に摂動を加えることで将来の気象要素を予測しています。正。

 

(d)アンサンブル予報では,初期値にごくわずかなノイズを与えた複数の初期値を準備して,それらを初期値とする個々の予報(メンバー)の平均をとることで予報誤差を抑えています。アンサンブル予報のメンバー間のばらつきはその予想の信頼性を表しており,ばらつきが大きいとその予報の信頼性は低く,ばらつきが小さいと信頼性が高いということです。

ばらつきは予報の信頼性の話であり,気象の日々の変動を予測するものではありませんので,この表現は間違いです。誤。

 

(d)が誤りということで,④を選択します。

私は(c)の「メソアンサンブル予報」については詳しく知りませんでしたが,明らかに(d)が誤りだと分かったので,正解に辿り着くことができました。

 

 

第6問 気温ガイダンス

【正解】②

 

【解説】

数値予報によって出力された予測値は,単なる膨大な数字データでしかありません。すなわち,その数字を眺めているだけでは,未来の天気は見えてきません。

ガイダンスとは,数字データを統計的に解析することで,未来の天気へと翻訳する作業に相当します(下図:数値予報の応用プロダクト | 気象庁 から引用)。

ガイダンスのイメージ(予報要素への翻訳)

 

ガイダンスには,発雷確率を算出するガイダンス,気温ガイダンス,風ガイダンス,降水量のガイダンス,降水確率のガイダンスなどがあり,それぞれに対して用いられる手法も変わってきます(下表:天気予報の「ガイダンス」とは?約50年の機械学習活用の歴史とAI時代にむけた変化(季節・暮らしの話題 2024年06月22日) - 日本気象協会 tenki.jp から引用)。

ガイダンスの手法一覧

上の表から分かるように,ガイダンス手法には大きく分けて一括学習型逐次学習型の2つがあります。

 

一括学習型は,過去の大量のデータをまとめて用いて一度にモデルを学習する方式です。多くの場合,回帰分析や統計的手法(MOS)などで利用されます。すでに十分なデータがある場合には安定した精度が期待でき,長期的・大局的な関係性を学習するのに向いているというメリットがありますが,過去のデータだけで学習させているため,最近の気象の変化に対応しにくい再学習コストが大きいなどといったデメリットもあります。一括学習型としては,発雷確率ガイダンスなどのロジスティック回帰が代表として挙げられます。

 

逐次学習型の特徴は,新しいデータが得られるたびに,その都度モデルを更新する方式です。最新のモデル誤差や環境変化に柔軟に対応できるメリットがありますが,学習の仕方によっては予報精度が劣化するリスクもあるようです。逐次学習型には,気温ガイダンスや風ガイダンスや降水量ガイダンスなどのカルマンフィルター天気ガイダンスや湿度ガイダンスなどのニューラルネットワークがあります。

 

上記を踏まえた上で,選択肢を見てみます。

 

(a)気温ガイダンスはカルマンフィルターを用いています。カルマンフィルターは逐次学習型であり,時間経過とともに予測式が変化し,最新の気象変化にも対応可能です。正しい。

 

(b)ガイダンスには,系統誤差(原因が分かっている誤差)と偶然誤差(原因が分からない誤差)があります。系統誤差については統計的に補正・低減することができますが,偶然誤差については補正することが難しいという特徴があります。

海陸の区別の不一致に起因する誤差は,地形的な誤差ですので,これは系統誤差に相当します。よって,この誤差を低減することが可能です。正。

 

(c)寒冷前線の通過のタイミングは,数値予報そのもので予報できていないために生じる誤差であり偶然誤差に相当します。この誤差は補正することができませんので,記述は誤りとなります。誤。

 

よって,(a)正,(b)正,(c)誤 で②が正解。

 

 

第7問 解析雨量

【正解】②

 

【解説】

解析雨量とは,気象レーダーと雨量計の観測データを組み合わせ,1km四方の細かさで解析した1時間ごとの降水量分布のことです。

気象レーダーは空間的な分布や広がり(=面的)で雨量を推定することができますが,地形的な死角,雨の強さの誤推定など短所もあります。一方で雨量計(アメダスなど)は,その地点だけ(=点的)の雨量しか情報が得られませんが,正確な雨量を観測できるという長所があります。

これらの情報を組み合わせることで,お互いの短所を補完し合い,より正確で広い範囲の雨量を解析しているのですね。

ちなみに,雨量計は気象庁アメダスだけではなく,国土交通省地方自治体が保有する全国の雨量計のデータも使用されます。

 

(a)上記で説明した通りで,まったくもって正しい記述です。正。

 

(b)ライトバンとは,下の図のように,気象レーダーを中心として強い降水域がリング状に表現される現象です(雨雲レーダーにリング状の模様「ブライトバンド」が出現 - ウェザーニュース)。

雨雲レーダーにリング状の模様「ブライトバンド」が出現 - ウェザーニュース

このブライトバンドができる理由は,上空に融解層(みぞれの層)があるためです。上空の雪が地表に近づくと,気温が0℃以上の層に入り,雪が融けて雨粒になります。この「融けかけの雪(雪と水の混ざった状態)」が非常にレーダー波を反射しやすく,この層が強いエコー(反射強度)を生み出すのです。

見かけ上強くなってしまうのであって,ここで降水が強いというわけではないため,解釈には注意しなければいけません。

気象レーダーの情報を用いる解析雨量にも,当然ブライトバンドの影響が乗ってきますが,気象庁では,このライトバンドを上空の気温の情報を利用して自動処理で軽減してはいますが,完全に除去することは難しいようです。正。

 

(c)冒頭にも書いたように,解析雨量に使用されるのは,気象庁国土交通省地方自治体が保有する全国の雨量計のデータです。誤。

 

(d)解析雨量は,土壌雨量指数・表面雨量指数の算出,記録短時間大雨情報などに用いられます。誤。

 

よって,(a)正,(b)正,(c)誤,(d)誤 で②が正解。

(b)のブライドバンドが気温情報などを用いて処理されているかはよく知りませんでしたが,上空の0℃の気温情報があれば人為的な処理も可能と考えて,おそらく正しい記述だと判断しました。無事に正解していました。

 

 

第8問 気象衛星画像の読み取り

【正解】⑤

 

【解説】

こちらは天気図などを日頃から眺めていれば苦労しないのかもしれませんが,参考書だけの限られた情報からではなかなか解きづらい問題だったのかと思います。

(a)地形性巻雲とは,山脈の風下側に発生する停滞性の上層雲のことを指します。気象庁のHPを引用すると,以下のように記載されていました(気象衛星センター | 地形性巻雲)。

地形性巻雲は赤外画像では白く表示され、風上側の雲縁が山脈と平行な直線状となり、 風下側に長く伸びる。風上の縁はほとんど移動せず同じ場所に留まるので、動画で見ると地形性巻雲は容易に識別できる。

可視画像では、雲の下が透けて見えることから、この雲は上層に発生する巻雲であることがわかる。

雲域Aでは,この辺りに山脈などもなく,団塊状の厚い雲となっているので,地形性巻雲と判断するのは間違いとなります。赤外画像も明るいことから,雲頂高度の高い発達した積乱雲であると考えられます。誤。

 

(b)Ci(シーラス)ストリークとは,上層のジェット気流などの流れに沿って見られる上層雲のことを指します。風の流れに沿って雲筋ができるものをCiストリークと呼び,風の流れに直交して雲筋ができるCiストリークは特にトランスバースラインと呼ばれます。

雲域Bは,風の流れに直交して雲筋ができているのでトランスバースラインっぽいですが,これはCiストリークの一種であり,上層の強風軸に対応しているので,記述は正解と考えます。

 

(c)確かに雲域がなく,晴れていそうな印象を受けますが,強風軸が南に張り出していることから,この雲域Cはトラフであると判断します。

 

(d)雲域D・Eはいずれも台風ということで,中心位置については図の中に示してくれており親切な問題です。

まず雲域Eの台風は,その中心が雲域の中央になく,非対称的な形をしています。海上にあって大量の水蒸気の供給を受けられる状況を考えると,まだ発達初期段階にある初期の台風と考えるのが妥当です。

雲域Dの台風については,中心にまとまりがなく,はっきりとした台風の目が見られないことから,衰弱段階にある台風ではないかと予想されます。

ただし,これらの2つの中心付近を比較してどちらが低いか高いかは画像だけでは判断が難しいと考えられ,雲域Eの台風の方が中心気圧が低いと判断している選択肢の記述は誤りと判断します。

 

これらの結果より,(a)誤,(b)正,(c)誤,(d)誤 で⑤を選ぶのが正解です。

私は(c)を悩んで,何となく高気圧圏内かなと考えて,③を選んで誤解答しました。

 

 

前半部分はここまで。次回に続きます。

 

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。