前回からの続きです。第62回予報士試験の専門知識を振り返ります。
なお,問題については,気象業務支援センターから公開されておりますので,そちらからご覧ください。
- 第9問 前線
- 第10問 冬季の日本の気象現象
- 第11問 台風の特性と影響
- 第12問 予報精度の評価
- 第13問 表面雨量指数・土壌雨量指数・流域雨量指数
- 第14問 防災気象情報
- 第15問 1か月予報
- さいごに
- 参考図書・参考URL
第9問 前線
【正解】⑤
【解説】
前線の基本的知識が問われました。
(a)前線は,異なる気団の間の遷移層の暖気側の境界が地表面と交わるところに解析されます。これは間違えられません。誤。
(b)寒冷前線に伴う降水域は幅が狭く,温暖前線に伴う降水域は幅が広いという特徴があります。これも基本中の基本ですね。誤。
(c)温暖前線と寒冷前線の間は暖域と呼ばれ,ここでは暖かな南西風が吹いて,一般的に晴れることが多くなります。水蒸気画像では暗域として見られるのですが,これは、暖域では上空の水蒸気量が少ないことが多いためです。
そういう意味では記述は一見正しそうに思えますが,この暗域は「ドライスロット」とは呼びません。ドライスロットとは,主に寒冷前線の後面から下降気流を伴って回り込んだ乾いた空気のことであり,上層の雲や水蒸気が少ないために暗域として写ります。誤。
この時点で⑤が正解です。
(d)寒冷前線の東側では,暖域の空気が寒気の上にゆるやかに乗り上げるように斜面上昇し,上空で冷却・凝結して雲を形成します。温暖前線での上昇はゆるやかで,対流圏上層に達すると言い切れるかは私は詳しくは分かりませんが,低気圧進行方向前面では上層雲域が広がるということで記述に矛盾は見られません。

まとめると,(a)誤,(b)誤,(c)誤,(d)正 であるので,正解は⑤になります。
第10問 冬季の日本の気象現象
【正解】⑤
【解説】
(a)シベリア高気圧は背の低い高気圧ですので,記述は誤りです。500hPaや300hPaの高層天気図では確認できない高気圧です。
(b)JPCZが発生するとき,850hPa面の気温分布は,この収束帯に沿って周辺よりも高温になることが多くなります。これは,JPCZに沿って水蒸気が凝結し,潜熱の放出によって気温が周囲よりも高くなるためです。
下はJPCZが発生したときの,その周囲における850hPaの等温線分布を赤く示した結果ですが,温度場の尾根となっていることが分かりますね。誤。

(c)大陸の下層から吹く冷たい空気が,相対的に暖かい日本海から潜熱(水蒸気)や顕熱を受け取って気団変質することで,暖められた空気が対流活動を活発化させることで筋状の雲は発生します。筋状の雲は,主に積雲・層積雲から成り,一般的に雲頂高度は低いことが特徴です。よって「雲頂が対流圏界面に達することが多い」という記述は誤りです。誤。
(d)大陸から流れ出す下層の空気が冷たいほど,海面との温度差が大きくなり,海からの熱や水蒸気の供給を強く受けるため,気団変質がより早く進みます。その結果,離岸距離は短くなります。正。
よって,(a)誤,(b)誤,(c)誤,(d)正 であるので,正解は⑤になります。
第11問 台風の特性と影響
【正解】③
【解説】
これは一般知識で出題されてもおかしくない問題です。
(a)台風は中上層の風に流されて移動します。低緯度地域で発生した台風は,低緯度では偏東風に流されて西に進むことが多くなります。正。
(b)大気境界層の風は,傾度風ではなく地上風です。誤。
(b)台風の進行方向に向かって右側では時計回りに変化し,左側では反時計回りに変化します(下図)。渦度と同じように風向が変化すると覚えておくと良いでしょう。よって,この選択肢では進行方向左側に位置しているのですから,反時計回りに変化する必要があります。誤。

(b)吸い上げ効果について具体的に計算してみましょう。
台風の接近に伴い,気圧が50hPa下降するときの海面変化を求めてみます。静力学平衡の式を用いて,気圧変化量を
,水の密度を
として,
(
)
と計算されます。すなわち,50hPa気圧が下降することによって海面は50cm程度上昇することになります。これが気圧による「吸い上げ効果」ですね。
一方,台風が接近すると波の高さは5mとか8mなどになることも多いので,吸い上げ効果だけでは説明できません。それは,強風によって海水が沿岸や湾の奥に吹き寄せられる「吹き寄せ効果」によって説明されます。吹き寄せ効果は,風速が2倍になると4倍の海面上昇をもたらします。
一般的には,吸い上げ効果より吹き寄せ効果の方が,潮位上昇への寄与は大きいとされています。
(a)正,(b)誤,(c)誤,(d)誤 で,③が正解。
私は(d)についての正誤が分からず,最終的にはどちらかを選択したはずですが,どちらを選んだのか問題用紙にも記載されていないので覚えていません。当時は静力学平衡を用いて計算式を立てるということも思いつかなかったので,おそらく勘で二択の賭けに出たと思われます。うまくいっていたら,これも正解しているはずです。
第12問 予報精度の評価
【正解】③
【解説】
冬日,真冬日の言葉の定義を知らなければ,そもそも解くことが難しい問題です。言葉の定義から見ておきましょう。ついでに夏日や真夏日などについても記載しておきます。
真冬日:最高気温が0℃未満の日
冬日:最低気温が0℃未満の日
夏日:最高気温が25℃以上の日
熱帯夜:夜間の最低気温が25℃以上の日
真夏日:最高気温が30℃以上の日
猛暑日:最高気温が35℃以上の日
(気象庁非公認)超熱帯夜:夜間の最低気温が30℃以上の日
上記を含めた上で,問題を解いていきましょう。
(a)平均誤差(ME)は以下のような式で表されます。
ここで注意する点は,予報値()から実況値(
)を引き算することです。引く順番を間違えると結果は反対になってしまいますので,気を付けなければいけません。
さて,最低気温の予報の平均誤差(Mean Error:ME)について,A地点では予報値が実況値よりも高めに見積もられているので,正の偏りがあることになります()。逆に,B地点では予報値は実況値よりも低く算出されているので,負の偏りがあります(
)。ここから,MEは正の値も負の値もとれることが分かります。

次に,最高気温の予報の二乗平均平方根誤差(Root Mean Square Error:RSME)を考えてみます。
RSMEは以下のような式で表されます。
差の二乗は必ず0以上の値をとるため,RSMEも常に0以上の値になります。
そして,予測値と実況値の差()は下の図のように
の直線との縦方向の距離になります。

よって,RMSEが小さいのは,予測値と実況値の差が小さい(差の二乗の和も小さくなる)B地点で,そちらの方が精度が良いということになります。正。
(b)冬日とは「最低気温が」0℃未満の日ですので,注目しなければいけないのは最低気温の図です。また,ここでの見逃し率とは,冬日ではないと予報したのに実際には冬日となった,すなわち冬日を見逃した割合のことを指します。
冬日ではないと予報したのに実際には冬日となったのは下図の赤い枠で囲まれた部分の点の数に相当します。

全部で30個の点があるので,地点Aの見逃し率は30回中6回で20%,地点Bの見逃し率は30回中0回で0%。
ですので,見逃し率は,A地点の方がB地点よりも高くなります。誤。
(c)真冬日とは「最高気温が」0℃未満の日ですので,注目するのは最高気温の図です。また,ここでの空振り率とは,真冬日になると予報されたのに,実際には真冬日にならなかった,すなわち当てにいった予想が空振りに終わった割合のことです。
真冬日になると予報されたのに実際には真冬日にならなかったのは下図の赤い枠で囲まれた部分の点の数に相当します。

よって,地点Aの空振り率は30回中4回で13%,地点Bの見逃し率は30回中1回で3%。
空振り率は,A地点の方がB地点よりも高くなります。誤。
(a)正,(b)誤,(c)誤 で,③が正解。
冬日,真冬日といった気象用語の意味を理解していないといけないのと,MEやRMSEの計算式とその意味,見逃し率,空振り率という言葉の理解など,総合的な理解を必要とする学びの多い問題のように思います。
第13問 表面雨量指数・土壌雨量指数・流域雨量指数
【正解】④
【解説】
(a)知識問題ですが,常識的に考えると答えは出ます。表面雨量指数とは,短時間強雨による浸水危険度の高まりを把握するための指標です。地面の被覆状況,地質,地形勾配などを考慮して,降った雨が地表面にどれだけ溜まっているかを数値化することで算出されます。
ここで,問題文では地形勾配に注目しています。一般に,地形勾配が急であればあるほど降った雨は速やかに下方へと流れていきますので,地表面には降水が溜まりにくいと言えます。そのため,地形勾配が大きい地点では表面雨量指数は小さくなります。誤。
(b)土壌雨量指数とは,降った雨による土砂災害危険度の高まりを把握するための指標です。
同じ地点では,土壌雨量指数が大きくなるほど土砂災害危険性は高いといえます。しかし注意しなければいけないのが,異なる地点の土壌雨量指数を比較してどちらの地点が土砂災害の危険性が高いかを述べることはできない点です。これは,土壌の種類や地形などの要因が異なり,その土地ごとに危険度が高まる土壌雨量指数の基準が異なるためです。正。
(c)流域雨量指数とは,河川の上流域に降った雨により、どれだけ下流の対象地点の洪水危険度が高まるかを把握するための指標です。
降水域の下流に位置するので,流域雨量指数の値は降水のあった時間から時間差があって大きくなります。その時間差は,その雨量や河川の幅によって影響を受け,多雨時は流速が上がり,流達時間が短縮されることがあります。また,川幅が広ければ断面積が大きくなるため,流速が遅くなる傾向があります。誤。
以上より,(a)誤,(b)正,(c)誤 で④が正解。
第14問 防災気象情報
【正解】④
【解説】
(a)降ひょうによる被害のおそれがある場合には,気象情報や雷注意報などを通して注意を呼びかけます。誤。
(b)夏に低温や長雨が続いて農作物の被害が発生するおそれがあるときには低温注意報が発表されることがあります。夏であれば,例えば,平均気温が平年よりも5℃以上低い場合などに発表されることが多いようです(場所によって,平均気温や最高気温など,その基準は異なるようですが)。
一方,冬は低温によって水道管凍結や破裂による著しい被害が発生するときに発表されます。冬の場合は,例えば最低気温が-5℃以下になると予想される場合などに発表されるようです。日照時間は考慮されていませんので誤りです。
(c)早霜や晩霜によって農作物の被害が発生するおそれがある場合には,霜注意報が発表されます。霜が降りるのが当たり前の冬の時期では,霜対策が十分に行われているので霜注意報はほとんど発表されません。予期しない霜に対して注意報が出るのです。
地域によって霜注意報は実施期間を決めて運用されており,隣接する府県予報区においても開始日と終了日が異なることがあります。正。
(a)誤,(b)誤,(c)正 であるので,正解は④になります。
試験を解いていた当時の私は,この問題はほとんど何も分かりませんでした。特に(b)は何も分からずに正として,誤った選択肢を選んでいます。
第15問 1か月予報
【正解】①
【解説】
(a)図Aを見ると,アリューシャン列島付近で青い色(負偏差)となり,北米でオレンジ色(正偏差)となっていることが分かります。エルニーニョ発生時にはアリューシャン低気圧が平年よりも強く,負偏差となる傾向があります。
これはロジックでどうこうというより,覚えてしまいましょう。この関係性については,私の中では筋道立てて理解できる範疇を超えてしまっています。

(b)基本問題。ヨーロッパ付近・東アジアで正偏差,ロシア西部や日本付近で負偏差となるのはユーラシアパターンと呼ばれます。このユーラシアパターンが卓越するときは,日本付近は低温になりやすい傾向となります。
(c)図Bは海面気圧の平年偏差を示しており,青い色ほど海面気圧が低くなっていることが分かります。東側で青色が濃く,低気圧の勢力が強くなっていることが分かります。

(a)エルニーニョ,(b)ユーラシアパターン,(c)強く であるので,正解は①になります。
さいごに
以上で,専門知識の振り返りは終了です。
私は合計11点(問11を当ててれば12点)でした。以下の通り。
〇〇✕〇〇〇〇✕〇〇?〇〇✕〇
問3と問14は単純に知らずに不正解となり,問8は不正解でしたが冷静になって考えたら正解できる問題でした。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。