Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強中の社会人ブログ

雷から身を守る方法

 

2025年4月10日,奈良市にある学校のグラウンドに落雷があり,学生6名が重軽傷を負う事故が起こりました。当時は雷注意報が発令されてはいたようですが,雷鳴もなく,強い雨が降り始めた直後の1発目の雷が不運にもグラウンドに落ちたことで,近くにいた学生さんが被害に巻き込まれたとのこと。

今後は,事故原因の詳しい調査と再発防止策の検討が進められていますが,果たしてどのように行動していたら事故を防げたのでしょうか。

今回は,この機会に「雷」について深掘りして学んでいくことにしました。

 

 

 

そもそも雷とは何なのでしょうか。どのようにして発生し,その威力はどれほどで,身を守るためにどう行動すればいいのでしょう。

これまで生きてきて,何度も雷光を目にし,雷鳴を耳にしてきたにもかかわらず,いざこうした問いを投げかけられると,意外と分からないことが多いと気づかされます。

さらに,身を守るためにどのような行動を取ればよいのかについては,世の中にさまざまな誤った情報が出回っており,何が正しくて何が間違っているのか混乱してしまいがちです。

そこでここでは,雷について正確な知識を整理し,理解を深めておきたいと思います。

 

雷ができる原理

まずは雷がどのように発生するか,そのメカニズムを見ていきましょう。と言いたいところではあるのですが,実は雷が発生するメカニズムについては未だによく分かっていないというのが現状のようです。

 

最も一般的に受け入れられている雷の発生メカニズム仮説によると,雲(積乱雲などの対流雲)の中にある微粒子や水,氷の粒がぶつかることで摩擦などによって帯電して,プラスの電荷を帯びた小さな氷粒は雲の上層に,マイナスの電荷を帯びた大きな氷塊は雲の下層にたまり,雲の中に上層と下層で電位差(電圧)が生まれるためだと説明されます。

 

電位差が十分に大きくなると,電気的バランスを取ろうと電荷が一気に移動します。これが「放電」です。

このとき,積乱雲の中(あるいは隣り合う積乱雲の間)で放電が起こることがあり,これは雲放電と呼ばれます。たまに雨なども降らず,雲の中がただ光っているだけの光景を見ますが,これは雲の中で放電が起こっているためです。

 

一方,雲と地上の間で放電が起こることもあり,これは対地放電,いわゆる「落雷」と呼ばれます。

通常,空気は絶縁体ですが,電位差が非常に大きくなると絶縁が破れ,放電が起こることがあるのです。

 

1回当たりの雷のエネルギーは15億 J(ジュール)と推定されているようで,家庭用電力量の2ヶ月分に相当するというのですから(はれるんランドより参照),落雷のエネルギーがいかに甚大であるかが理解できます。

 

落雷の種類

落雷には,直撃雷側撃雷歩幅電圧などがあります。他にもあるようですが,ここではこの3つを紹介しておきます。

 

直撃雷とは,(その名前の通り)直接人体へ雷が落ちる現象です。

家庭用コンセントの100万倍の電圧と数千アンペアの電流が体内に流れ,心臓の筋肉が一気に収縮して停止したりすることで,多くの場合死に至ります。それでも致死率は80%程度のようで,20%程度は生存する(ただし重症を負うことは免れない)というのですから,逆に生命の逞しさを感じずにはいられません。

 

側撃雷は,高い物体に落ちた雷が,途中でその物体から人体へと飛び移る現象です。

雷というのは,一番通りやすいラクな経路を通って地面に落ちるという性質があり,例えば樹木に落ちた雷は,より電気抵抗の少ない人体に途中で経路を変えることがあります。直撃雷に次いで死亡率が高く,側撃雷を受けた人のおよそ70%程度が死に至るとされます。

 

歩幅電圧とは,雷が落ちた直後,地面に流れる電流が作り出す電位差によって感電する現象です。

雷が地面に流れ込むと,電気は地面全体に一瞬で拡がろうとしますが,地面には電気抵抗があるため,落雷地点から離れるほど電圧が減っていきます。もし,落雷地点の近くに人が立っていて,その左足の地面が1000V,右足の地面が800Vであれば,歩幅電圧はになり,この200Vが体内を通ってしまうと,人体に危険な影響を与えます。ただ,歩幅電圧の死亡率は低く,ほとんどが軽傷で済むようです。

 

直接雷に打たれた場合に人間の体がどうなるかは,下の動画をご参考にしてください。

 

雷から身を守る方法

雷から身を守る方法については,昔からいろいろな伝承や言い伝えなどがありますね。たとえば,「雷が鳴ったらヘソを隠せ」「ベルトなど身に着けた金属を外せ」「木のかげに隠れろ」「ゴム製の長靴は電気を通さないので安全」など。ヘソを隠すのに効果がないことは明白ですが,ベルトを外したり,木の下に隠れることはホントに意味があるのでしょうか?

ここからは雷から身を守る方法について考えていきます。NHKのサイト(雷(カミナリ)対策 落雷から身を守る 注意点は? - NHK)を参考にしています。

 

気象庁からの警報・注意報をチェックする

今回奈良で起こった落雷も,過去に起きた落雷事故(土佐高校サッカー落雷事故*1長居公園落雷事故*2)も,多くの場合は雷注意報が発令中に起こったものでした。

 

気象庁からは,雷注意報雷ナウキャストといった,雷に関する気象情報を発表しているので,これらをチェックして今後の落雷の可能性を事前に把握しておくことが重要になります。

www.jma.go.jp

 

ちなみに,雷注意報は,落雷による災害発生のおそれがあると気象庁が判断した場合に発表され,事前に雷による被害を想定して注意を促すためのものです。注意する点としては,「雷警報」というものは存在しないので,注意報だからと言って侮ってはいけません。

一方,雷ナウキャストは,雷の激しさや発生の可能性を1km単位で解析し,1時間先までの予測を10分ごとに更新するもので,リアルタイムに近い雷の活動状況を把握するための情報です。

それゆえ,雷注意報が出た時は落雷のリスクが高まっていることを表し,屋外での活動を控えましょう。特に,雷ナウキャストで活動度2以上は落雷の危険があり,直ちに安全確保の行動をとる必要があります

 

屋内や車の中などに避難する

とは言っても,どうしても出かけないといけない用事があって,外出中に突然雷が鳴ってきた際には,どのような安全確保の行動をとればいいのでしょうか?

 

まず,場所が都会で,近くにデパートやビルや駅などがある場合には,屋内に避難します。万が一,建物に落雷したとしても,電気は壁を通って地面に流れるので安全です。

一方で,雨が降るとビルや家の軒下で雨宿りしがちですが,落雷時に壁を伝って流れてきた電流が人に飛び移る側撃雷の危険があり,安全ではありません。

 

そして,車やバス,電車や飛行機の中なども比較的安全です。金属でできた車体の表面を通ってタイヤから地面へと電気が逃げるためです。ただし,濡れた窓や車内の金属部分に触れていると,そこから感電する可能性もあり注意が必要だと言います。

野外フェスやキャンプ,花火大会など外にいるときでも,雷が鳴ったらすぐに会場を離れる決断をしましょう。

 

落雷リスクが高まる手荷物は手放し,木に近づかない

アウトドアですぐに逃げ込める場所が周りにないときは,どのような点に気を付ける必要があるのでしょうか。

 

まず,雷は最も高い場所に落ちやすいという性質があるので,ゴルフクラブや釣り竿や金属バットなどを高く突き出してしまうと,そこに落雷する可能性が高くなるので絶対にやめましょう。傘をさすのも,その分背が高くなり,傘の先端が避雷針のような状態になるため危険です。落雷のリスクのあるものは手放して,身を守る行動をとることを最優先します。

また,雨が降っていると,どうしても木の下に避難したくなりますが,万が一近くの木に落雷した場合,側撃雷によって人体に電流が飛び移ったり,地面からの電流が流れてきたりする可能性があり非常に危険です。木の下の雨宿りの際に落雷で死亡する例は後を絶たないと聞きます。木から少なくとも4mは離れるようにしましょう。

 

ベルトなどの金属部分に雷が落ちやすいという話もありますが,こちらはさまざまな実験から否定されています。雷に打たれた人の,金属に触れていた部分がひどい火傷を負っていることが多かったため,それが誤解の元になっているようです。逆に直撃雷では,スマホなどの金属が含まれる製品を身につけていた方が人体に流れる電流を減らす効果(ジッパー効果)が報告されているようですが,金属を身に着けていれば必ず起こるわけではないので,そこまで期待できるものでもないようです。

 

さて,手荷物を手放し,高い木から離れて避難しようにも,近くに逃げ込める場所が見当たらない場合には,電線を見つけるのが効果的であるようです。

電線は避雷針に近い役割をするため,その下は,屋外でも相対的に安全性が高い場所になります。ただし,電線の下でも,鉄塔や電柱に近い場所は側撃雷によって人体に電流が飛び移る可能性があるため,数m以上は離れることが推奨されます。あくまで他の手段がない場合の例外的な対応にはなりますが,命を守る行動としては,何もしないよりは遥かに有効です。

 

最終手段は「雷しゃがみ」のポーズをとる

周りが開けた場所で,逃げ込める建物もなく,電線なども見当たらないような絶望的な場合には,最終手段として「雷しゃがみ」の体勢をとる方法があります。

www.youtube.com

 

雷は最も高い場所に落ちやすいという性質があるので,まず姿勢を低く保ちます。できるだけ姿勢を低くしたいなら,その場で寝そべることも有効に思えますが,近くに落雷した場合,地面を伝ってきた電流が心臓を通りやすくなるため危険なポーズであるようです。

そして足はそろえます。これによって,歩幅電圧による左右の足の電位差をできるだけ小さくすることが期待できます。

さらに,接地面積を少なくすることで,体内に流れ込む電流量を最小限に抑えるためにつま先立ちをするのが有効です(ただしつま先立ちは安定性が悪いので無理をする必要はない,転んだら本末転倒)。

最後に,爆風で鼓膜が破れるのを防ぐため親指で耳の穴を塞ぎ,残りの指で頭を抱え下げる体勢をとると,雷しゃがみの完成です。

 

このとき絶縁体のゴム製靴の方が良いかという疑問もありますが,雷のような巨大な電圧の下にあっては,ゴム製品だろうがその他の絶縁体であろうが,ほとんど意味をなしません。そもそも雷が鳴った時に,すぐにゴム革靴を準備できるような状況がなかなか考えづらいかと思います。

 

まとめ

以上をまとめると,以下のように整理できるかと思います。雷をきちんと理解し,きちんと恐れることが重要ですね。

  • 雷注意報や雷ナウキャストをチェックし,雷の危険が迫っているようなら外出を控える。「雷警報」は存在しないので,注意報でも十分に警戒する必要がある。
  • 外出時に雷鳴が聴こえてきた場合には,速やかに屋内に避難する。
  • 車やバス,電車,飛行機の中も比較的安全。ただし,濡れた窓や金属部分に触れると感電の危険がある。
  • ビルや家の軒下での雨宿りは側撃雷の危険があるので避ける。
  • 雷は高い場所に落ちやすいという性質があるため,ゴルフクラブや釣り竿や金属バットなどの落雷リスクのある手荷物は手放し,傘などはささない。
  • 木の下の雨宿りの際に落雷で死亡する例が後を絶たない。木からは少なくとも4mは離れる。
  • 避難できる建物が見当たらない場合には,屋外でも相対的に安全性が高いとされる電線の下に逃げ込む。ただし,鉄塔や電柱からは十分距離をとる。
  • やむを得ない場合には,「雷しゃがみ」の体勢をとる。
  • 身に着けている金属を外したり,ゴム製の靴を履いたりすることは,落雷の被害を抑えるほどの効果はない(むしろ金属製品を身に着けていることで体内の電流量を減らす効果が報告されているが,これもあまり期待できるものではない)。

 

今回いろいろ雷について調べてみると,知らないことも多かったので,今後の防災を考えるうえで非常に有用な内容を知ることができました。

 

参考図書・参考URL

下記の文献やwebサイトを参考・引用・使用させていただきました。