Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強中の社会人ブログ

第63回気象予報士試験振り返り~一般知識②~

 

前回からの続きです。第63回予報士試験の一般知識を振り返ります。

 

なお,問題については,気象業務支援センターから公開されておりますので,そちらからご覧ください。

気象予報士試験 (jmbsc.or.jp)

 

 

第9問 台風

【正解】②

 

【解説】

基本的な台風の知識について問われました。

 

(a)台風は熱帯から亜熱帯の海洋上で発生する強い熱帯低気圧の呼称です。海面水温が26~27℃以上の比較的温度が高い海域で発生します。

台風の発達メカニズムは第2種条件付き不安定CISK:Conditional Instability of the Second Kind)と呼ばれ,対流雲発生に伴って放出される潜熱による地表面での気圧低下と,地表面での風の吹き込みによる収束と上昇気流の発生という,お互いがお互いの力を増強させる方向性で発達することが知られています。

よって,選択肢の記述は正しいと言えます。

 

(b)動径成分接線成分についての理解が求められます。

まず,動径成分というのは,中心からの方向に対してどれだけ近づいたか,あるいは離れたかを表す成分のことで,ベクトルを分解したときに中心から見てまっすぐな方向のベクトル成分になります(下図赤矢印)。

一方,接線成分は,円の軌道に沿って動いている成分のことです(下図紫矢印)。

台風のまわりを吹く風は,摩擦の影響を考慮しなければ傾度風とみなすことができます。しかし,地上から約1kmまでの大気境界層では地表面との摩擦の影響が大きく,風は台風の中心に向かって,円の接線に対してやや内側(低圧側)に傾いた方向に吹くことになります。

このため,地上との摩擦を無視できる自由大気では台風周辺の傾度風に動径成分は現れませんが,大気境界層では摩擦の影響で動径成分が無視できないほど大きくなります

よって選択肢の記述は正しいといえます。

 

尚,気象予報士試験では,台風の風の接線成分について聞かれることもあり,その接線成分の鉛直断面図は下の図のようになっています。濃い色が風速が大きいことを表しています。

この図から,台風周辺の風の接線速度は大気境界層の上の約2kmあたりで最大となることが分かります。そして,台風中心に近づくにつれて接線速度は大きくなり,遠ざかると小さくなります。台風中心から約100kmあたりで接線速度が最大になると言われています。こちらも同時に覚えておきましょう。

 

(c)上で述べたように,台風周辺に吹く風は,自由大気では傾度風とみなすことができます。低気圧周辺の傾度風は,

  低気圧性の傾度風:(気圧傾度力)=(遠心力)+(コリオリ力) ・・A

という式で書くことができます。

 

一方,地衡風は下のように表せます。

  地衡風:(気圧傾度力)=(コリオリ力) ・・B

 

ここで問題文から,A式とB式の気圧傾度力は同じであるということですので,A式のコリオリ力は,B式のコリオリ力に比べて小さい必要があります。コリオリ力は物体の移動速度に依存しますので,傾度風の風速は地衡風のそれと比べて小さくなる必要があるのです。

よって誤りであることが分かります。

 

まとめると,(a)正,(b)正,(c)誤 であるので,正解は②になります。

 

 

第10問 中層大気の風の分布・温度風

【正解】①

 

【解説】

温度風の関係から,高度の上昇とともに東風成分が増加する地点を問うものです。温度風には以下の特徴があります。

  〇北半球において,温度風ベクトルの右側は高温域,左側は低温域となる

  〇南半球では温度風ベクトルの右側で低温域,左側で高温域となる。

よって,北半球か南半球か,またその地点の左右どちらが高温域かを考えたら答えは見えてきます。

 

まず,問題の図で,どちらが北半球か南半球かを理解しましょう。

ここで着目するのが成層圏で,夏半球の成層圏上部は冬半球に比べて気温は高くなります。これは夏の極では太陽が沈まずに白夜となり,太陽放射を一身に浴びることができるためです。

成層圏上部は地上約30~50kmであり,気圧に直すと約10hPa~1hPaになります(気圧が10分の1になると,高度は約16km上昇する)。

このことから,図の左側が夏極(1月のデータなので南半球),右側が冬極(同,北半球)であることが読み取れるのです。

 

あとは温度風の関係を適用すると以下の図のようになります。

(A)地点Aは南半球に位置します。南半球では温度風ベクトルの左側で高温域,右側で低温域となるので,温度風ベクトルは緑色の矢印の方向に吹きます。これは東風ですので,高度の上昇とともに東風成分が増加します。

 

(B)地点Bは北半球で,極側で気温が低くなっています。北半球では温度風ベクトルの右側で高温域,左側で低温域となります。温度風ベクトルは水色の矢印の方向に吹き,西風ですので,高度の上昇とともに西風成分が増加することになります。

 

(C)地点Cは南半球です。極側で温度が低いので,温度風ベクトルは水色の矢印として表現できます。これは西風ですので,高度の上昇とともに西風成分が増加します。

 

よって,東風成分が増加する地点はAのみで,①が正解です。

 

 

第11問 エルニーニョ現象

【正解】③

 

【解説】

基本的なエルニーニョの知識があれば問題なく解くことができます。

 

エルニーニョ現象とは,太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなる現象のことです。

平常時(エルニーニョが起こらないとき)は,東南アジア側に暖かい海水があり,ペルー沖ではウォーカー循環に伴う東風が吹いて,湧昇水や寒流の影響で水温が低い冷水を赤道域へと広げるように働きます(下図)。

よって,平常時はアジア側で海水温が高く,そのため積乱雲も発達しやすくなります。アジア側(ダーウィンなど)では上昇気流により気圧は低くなり,一方太平洋東側(タヒチなど)は下降気流により気圧は高くなります。

 

一方,エルニーニョ現象が発生すると,東風が弱まり冷水が赤道域に広がらず,逆にアジア側の暖かい海水が流れ込みます(下図)。

この結果,アジア側では海水温が例年より冷たくなり,対流活動は不活発になります。アジア側(ダーウィンなど)では気圧は高くなり,太平洋東側(タヒチなど)は気圧は低くなるのです。

 

以上を踏まえて選択肢を眺めます。

(a)正。エルニーニョ発生時はアジア側で対流活動が不活発になり,降水量が例年に比べて少なくなります。

 

(b)誤。エルニーニョ発生時は,ダーウィンで気圧は高く,タヒチで低くなります

 

(c)誤。エルニーニョ発生時は,東風は弱まります

 

よって,③が正解。

 

 

 

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ここからは気象法規についての問題です。これは考え方うんぬんよりも,ただ単に頑張って覚えてくださいとしか言えません。私も頑張って覚えました。特に過去問から類似問題が出題されていますので,とにかく過去問を当たってください。

一応簡単に解説を載せておきます。

 

第12問 予報業務の変更

【正解】③

 

【解説】

(a)予報業務の目的又は範囲の変更は,気象庁長官の認可が必要です。届け出だけでは対応できません。誤。

 

(b)これは正解。予報業務の廃止は,廃止した日から30日以内に気象庁長官への届出が必要です。

(予報業務の休廃止)
第二十二条 許可を受けた者が予報業務の全部又は一部を休止し、又は廃止したときは、その日から三十日以内に、その旨を気象庁長官に届け出なければならない。

 

(c)事業所の名称を変更する場合には報告書を提出しなければいけません。誤。

ChatGPTによると,届出と報告書提出は以下の違いがあるようです。

  • 届出 = 「○○します/しました」と“通知”するだけの行為。行政庁は形式をチェックするだけで,基本的に許可・不許可の審査は行いません。

  • 報告書の提出 = 「○○の結果はこうでした」と内容を詳しく知らせる行為。行政庁(あるいは委任者)が内容を評価・把握・監督するために求めます。

 

よって,(a)誤,(b)正,(c)誤 であるので,正解は③になります。

 

 

第13問 気象予報士の設置

【正解】⑤

 

【解説】

(a)気象予報士自身が直接届ける必要はなく,予報業務許可事業者が届ける必要があります。誤。

(b)定番問題であり,単純な知識問題。

気象予報士の設置の基準)
第十一条の二 当該予報業務のうち気象又は地象の予想を行う事業所ごとに、次の表の上欄に掲げる一日当たりの現象の予想を行う時間に応じて、同表の下欄に掲げる人数以上の専任の気象予報士を置かなければならない。
一日当たりの現象の予想を行う時間
人員
八時間以下の時間
二人
八時間を超え十六時間以下の時間
三人
十六時間を超える時間
四人

 

2 法第十七条第一項の許可を受けた者は、前項の規定に抵触するに至つた事業所(当該抵触後も気象予報士が一人以上置かれているものに限る。)があるときは、二週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置をとらなければならない。

その事業所が現象の予想を行う時間に応じて設置する専任の気象予報士の数は決められています。例えば,12時間の現象の予想を行う場合には3名以上の人員がいないといけませんよ,ということです。誤。

 

(c)これも定番問題。上の法律内容から,2週間以内に必要な措置をとらなければならない。誤。

 

よってすべて誤りで⑤を選びます。

 

 

第14問 予報と警報

【正解】④

 

【解説】

警報なのか,特別警報なのかを読み取ります。警報と特別警報では,各機関の役割が変わるためです。

(a)今回は(特別警報を除く)警報なので,各機関の役割は下の図のようになります。国土交通省海上保安庁の機関が省略されてますが,警察庁消防庁などと同じ対応です。

義務となるのは,気象庁による住民および各機関への伝達,NHKによる住民への放送

第十五条 気象庁は、気象、地象、津波、高潮、波浪及び洪水の警報をしたときは、政令の定めるところにより、直ちにその警報事項を警察庁消防庁国土交通省海上保安庁都道府県、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社又は日本放送協会の機関に通知しなければならない
2 前項の通知を受けた警察庁消防庁都道府県、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の機関は、直ちにその通知された事項を関係市町村長に通知するように努めなければならない
3 前項の通知を受けた市町村長は、直ちにその通知された事項を公衆及び所在の官公署に周知させるように努めなければならない
4 第一項の通知を受けた国土交通省の機関は、直ちにその通知された事項を航行中の航空機に周知させるように努めなければならない
5 第一項の通知を受けた海上保安庁の機関は、直ちにその通知された事項を航海中及び入港中の船舶に周知させるように努めなければならない
6 第一項の通知を受けた日本放送協会の機関は、直ちにその通知された事項の放送をしなければならない

よって,都道府県は努力義務(「努めなければならない」)なので,「しなければならない」という表現は誤りです。

 

(b)予報業務許可者は,利用者に警報事項を迅速に伝達することを求められますが,義務ではありません。よって「努めなければならない」という表現は正しい。

 

(c)これもややこしいですが,気象庁が予報や警報を「しなければならない」のか「することができる」のかは,その目的によって違ってきます。

気象業務法を読むと,以下のように記載されています。

(予報及び警報)
十三条 気象庁は、政令の定めるところにより、気象、地象、津波、高潮、波浪及び洪水についての一般の利用に適合する予報及び警報をしなければならない

2 気象庁は、前項の予報及び警報の外、政令の定めるところにより、津波、高潮、波浪及び洪水以外の水象についての一般の利用に適合する予報及び警報をすることができる


第十四条 気象庁は、政令の定めるところにより、気象、地象、津波、高潮及び波浪についての航空機及び船舶の利用に適合する予報及び警報をしなければならない
2 気象庁は、気象、地象及び水象についての鉄道事業、電気事業その他特殊な事業の利用に適合する予報及び警報をすることができる

第十四条の二 気象庁は、政令の定めるところにより、気象、津波、高潮及び洪水についての水防活動の利用に適合する予報及び警報をしなければならない

よって,「航空機及び船舶の利用に適合する予報及び警報をしなければならない」のであって,「することができる」と書かれている記述は誤りです。

 

(d)上の警報事項の伝達の流れで示したように,「国土交通省の機関は、直ちにその通知された事項を航行中の航空機に周知させるように努めなければならない」のであって,義務ではありません。誤り。

 

(a)誤,(b)正,(c)誤,(d)誤 であるので,正解は④になります。

 

 

第15問 災害対策基本法

【正解】④

 

【解説】

受験していて,さすがに細かいところ突いてきたなと思った問題。災害対策基本法の中身をちゃんと読み込んでいる方はほとんどいないのでは。

 

良心的なのは,誤っている選択肢をどれか一つ見つけなさい,という形式になっていること。さすがに出題者側も,それぞれの正誤まで問うのは正答率が低くなりすぎると判断したのかもしれません。

 

さて,問題ですが,災害対策基本法では,中央防災会議は,1年ごとに防災基本計画について見直し,必要があれば修正しなければいけないと定められています(第34条1項)。よって,「5年ごと」と記載されている(d)だけは明らかに誤りです。正解として④を選びます。

 

災害対策基本法については下記にそれなりに詳細に調べて記事にしていますので,ご参考にしてください。

 

 

さいごに

以上で,一般知識の振り返りは終了です。

私は第2問の計算ミス,第7問の直方体の長さの見落としから,2問不正解で合計13点でした。

 

ちなみに,私の一般知識の解き方は以下の通りです。これは,過去の試験での失敗から導き出した,私にとって最も精神的負担が少ない解答方法です。

 

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まずは記憶が新しいうちに,気象法規関連の問12~15を先に解きます。単純な知識問題から取りかかることで,頭をウォームアップさせる意図もあります。ただし,この段階ではマークシートには記入せず,問題用紙に各選択肢の〇✕や正解と思う番号をメモするだけにとどめます。

次に,問1~11についても同様に〇✕をメモし,正解だと思う選択肢をチェックしますが,やはりマークシートには記入しません。

その後,問1からもう一度解き直し2周目に入ります。もし,1周目の考え方の誤りに気づいたら,該当する問題にチェックを入れます。1周目と2周目で答えが変わった問題については,3周目として再検討します。時間的余裕があれば全問題に3周目の見直しを行い,最終確認します。

このようにして,最終的に納得のいく解答を得てから初めてマークシートに記入します。マークシートも塗りミスやズレがないか3回ほど確認します。

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最初からマークシートを塗らないのは,一度正解と塗りつぶした解答を消して変更する際の心理的負担が大きく(後ろ髪を引っ張られながら答えを修正する経験が多々あった,もしかしたら変更前の選択肢が正しいかもという動揺も大きい),それが試験中の集中力を乱す原因になるためです。

共感される方がいらっしゃたら,ぜひ試してみてください。

 

ただ,2周目・3周目する時間的余裕がないよって方は,1つ1つ確実にマークシートに記入した方が良いです。

大切なのは,自分にとって最も負担が少なく正解数を稼ぐ方法を見つけることです。

 

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。