今回は,第65回試験の専門知識について簡単に解説してみます。
なお,試験問題については下記のリンク上で公開されておりますので,そちらをご参考にしてください。
あくまで私はこういう風に考えたのであって,誤っている箇所もあるかもしれませんので,間違いを見つけた場合はご指摘いただけましたら幸いです。
- 問1 観測機器の設置
- 問2 ウィンドプロファイラ観測
- 問3 気象レーダー観測とブライトバンド
- 問4 数値予報の品質管理
- 問5 数値予報プロダクトの利用
- 問6 天気予報ガイダンス
- 問7 竜巻発生確度ナウキャスト
- 問8 衛星画像
- 問9 気象衛星画像とウィンドプロファイラ観測の対応関係
- 問10 大気成層
- 問11 台風
- 問12 予報精度
- 問13 流域雨量指数
- 問14 週間天気予報
- 問15 海面気圧と平年偏差
- 採点結果
- 参考図書・参考URL
問1 観測機器の設置
いくつかの会社のHP(積雪深の測定~設置環境について②~ - 株式会社フィールドプロ ,気象観測装置の設置方法について : 光進電気工業 株式会社,強制通風筒 | クリマテック株式会社 %)に詳しく記載されていましたのでご参考にしてください。
(a)超音波式積雪計の積雪深測定面は水平かつ平坦な場所を選び,コンクリートや板などを敷かずに,芝生など自然な状態で測定することが推奨されています。よって正しい。
(b)ビルの屋上に風向風速計を設置する場合には,屋上の一番高いところに設置することが理想的とされます。屋上の外壁やその周辺は,吹き上げの影響が考えられるため,外壁より5m以上内側に設置することが推奨されています。よって誤。
(c)屋外の温度・湿度を正確に計測するには,日射の影響がない風通しの良い日陰での計測が推奨されています。しかし常に日射の当たらないところに温度計・湿度計を設置することは難しいので,通風筒の中に入れて日射の影響を最低限にします。通風筒自体が日陰の役割を果たしていますので,通風筒を日陰に設置する必要は必ずしもありません。解答例は誤となっていました。
以上より③が正解です。
細かい点を突いてきますね。
問2 ウィンドプロファイラ観測
(a)下の図のように,温暖前線が通過すると南よりの風が入ります。このとき,地上から上空まで暖気に覆われることになりますので,「時間とともに厚くなる」という記述は間違いと考えます。

(b)正しい。降水による電波の散乱が強いと,その先の上空の観測データが得られないことがあります。
(c)ウィンドプロファイラの波長は,気象レーダーのそれよりも長いものが用いられます。この理由としては,気象レーダーの雨粒からの散乱はレイリー散乱であり,
(散乱強度
は波長
の4乗に反比例する)
と表されるので,波長が小さい方が散乱強度が大きくなり有利となります。
一方,ウィンドプロファイラは雨粒を観測するのではなく,上空の風をキャッチしますので,波長が長い方が空気のゆらぎとスケールが合うのです。
以上より④が正解です。
私は(c)のウィンドプロファイラの波長が分かりませんでした。
問3 気象レーダー観測とブライトバンド
ブライトバンドについてです。
ブライトバンドとは,上空に融解層(みぞれの層)があるときに,環状のエコーとして観測される現象です。
上空から落下してきた雪片は,地上近くなると融けて雨粒に変化します。雪片と雨粒の中間の状態,いわゆる「みぞれ」の状態のとき,雨滴よりも粒が大きくなり,周りが水で覆われることになります。
気象レーダーの電波は,固体よりは液体の方が,また粒子が大きい方がよく反射するという性質があり,(実際には強い降水がないのにも関わらず)局所的に強いエコーが気象レーダーによって観測されるのです。
図Aを見ると,気象レーダーを中心に半径15kmのブライトバンドが観測されていることが見て取れます。

よって,仰角3.5°のレーダーで15km先に融解層があると分かります。その値を読み取ると,融解層の高さはおよそ1000mと考えられます。

上のグラフからも分かるように,ブライトバンドの半径が小さくなるときは,融解層の高度が低下するときです。
以上より②が正解です。
問4 数値予報の品質管理
すべて正しい記述です。覚えましょう。①が正解です。
問5 数値予報プロダクトの利用
(a)数値モデルでは,地形が粗く表現されているので,それによる予測結果の誤差が生じます。正。
(b)パラメタリゼーションも近似であって,厳密ではありません。これ自身に伴う誤差が生じます。正。
(c)全球モデルでは個々の積雲の発達・予測は難しいですが,水平解像度の高いモデルではより精度高く予測することが可能になります。正。
よって正解は①。
問6 天気予報ガイダンス
(a)天気予報ガイダンスとは,数値予報の結果に含まれる系統誤差を補正したり,数値予報で直接には計算しない降水確率などの要素を算出したりすることで予報作業を支援する手法のひとつです。 正しい。
(b)予測誤差で,系統誤差は統計的に補正することができますが,ランダム誤差(偶然誤差)は軽減することができません。誤。
(c)海陸の区別の不一致は系統誤差(原因が分かっている誤差)ですので,低減することができます。正。
(d)カルマンフィルタは予測式の係数を逐次更新するため,柔軟な変更が可能です。正しい。
よって②が正解。
問7 竜巻発生確度ナウキャスト
10km四方の解像度で,10分間隔で1時間先までの竜巻などの激しい突風(竜巻だけでなくダウンバースト・ガストフロントなども含める)が発生する確度を予測し発表するものが竜巻発生ナウキャストです。気象ドップラーレーダーなどから「竜巻が今にも発生する(または発生している)可能性の程度」を推定し,2段階の発生確度として発表します。
| 発生確度 | 状況 |
|---|---|
| 1 | 竜巻などの激しい突風が発生する可能性がある。 |
| 2 | 竜巻などの激しい突風が発生する可能性があり注意が必要。 |
竜巻発生確度ナウキャストで発生確度2が現れた地域では竜巻注意情報が発表され,発表から約1時間その情報は有効となります。
(a)正。
(b)ナウキャストは数値予報で予測された上空の風や気温などの分布の情報も予測に用いているようです。正しい。
(c)正。
(d)発生確度1と2の違いとして,発生する可能性の程度の違いを表現したものであるという記述は正しいですが,発生するまでの時間的な切迫度を示すものではないので,記述は誤りです。
よって,正解は①。ナウキャストについて,私の記憶の中から忘れつつあります。
問8 衛星画像
(a)水蒸気画像を見ると,日本海から朝鮮半島の南海,華中に沿って明域と暗域の境界であるバウンダリーが見られます。暗域が南側に凸となっている場所はトラフに相当します。よって,正しい。
(b)発達期の低気圧は,衛星画像ではバルジが明瞭化し,低気圧の中心付近にフックパターンが形成されます。中心位置は下図のようになります。正しい。

(c)正しい。
(d)低気圧に向かう風の流れによって発生した,積雲(?)であると考えられます。正しい。
以上からすべて正解で,⑤を選びます。個人的には(d)が難しかったです。
問9 気象衛星画像とウィンドプロファイラ観測の対応関係
温暖前線の前面では暖気移流,寒冷前線の後面では寒気移流です。温度移流から,温暖前線の前面では高度の上昇に伴い風は時計回りに変化,寒冷前線の後面では反時計回りに変化すると考えられます。
9時時点の地上天気図Aから,(a)は寒冷前線後面,(b)は低気圧中心,(c)は温暖前線前面,(d)は秋田県沖に位置する低気圧の東側に位置しています。
まず9時の時点において,地上付近の風向が大きく変化する「ア」ですが,これは低気圧中心に位置する地点b と考えられます。
9時において高度の上昇に伴い風向が反時計回りに変化している「ウ」は寒気移流となっていますので,寒冷前線の後面に位置する地点a と判断します。等圧線を考慮しても北よりの風が吹いていると考えられますので矛盾しません。
ここまでで正解は④か⑤の二択に絞られます。
9時において高度の上昇に伴い風向が時計回りに変化している「イ」と「エ」はともに暖気移流,地上付近で南東からの風なので,風向の情報からだけでは判断が難しそうです。
ここで9時時点の水蒸気画像Bを見ると,秋田沖の低気圧付近に暗域(乾燥した空気)が映っていますので,9時以降でウィンドプロファイラの観測高度が低くなっている「イ」が地点d に対応していると判断します。
よって,正解は⑤ではないかと考えます。
問10 大気成層
(a)高度の上昇に伴って気温も低下するので,相対湿度は高くなると考えられます。正。
(b)対流雲は,地上付近の暖気と上空の寒気による不安定な成層で発生し,特に大気が「条件付不安定」な状態で激しく発達します。誤。
(c)対流不安定時には,層全体が上昇することで不安定が顕在化することがあります。正しい。
よって②を選びます。
問11 台風
(a)台風が発生するには,コリオリの力が必要ですので,その力が小さい赤道付近では発生することができません。正。
(b)下図のように,台風では対流圏界面付近まで中心に暖気核があります。誤り。


(c)一般的に台風の最接近時に,気圧低下による吸い上げ効果と,強風による吹き寄せ効果で,潮位が最大になります。ただし今回の設定は,西に開いた湾の西側を北上する台風に伴う,湾奥の潮位について尋ねられています。
台風の最接近の前は,南よりの風が吹くため,海水が湾へ強く押し込まれることはありません(下図)。

台風の最接近の後は,南西の風が吹き,湾の入り口から奥へ海水をダイレクトに押し込む風となります(下図)。このとき潮位の偏差が最大となると考えられます。

よって正しい説明です。
以上から,②ですね。
問12 予報精度
(a)平均誤差は,予測値が実況と大きく外れていても,0になることがあります。例えばサンプル1の予測ー実況の値が+100,サンプル2の予測ー実況の値が-100なら,平均誤差は0になってしまいます。よって誤。
(b)平均誤差は以下の式で表現できます。
A地点の平均誤差は,
B地点の平均誤差は,
B地点の平均誤差は0なので,正の偏りはありません。誤。
(c)二乗平均平方根誤差は以下の式で表現できます。
A地点の二乗平均平方根誤差は,
B地点の二乗平均平方根誤差は,
二乗がうっとうしいので,どちらも二乗すると,誤差はA地点>B地点です。
よって予報精度が高いのは,誤差の小さいB地点です。誤。
以上から⑤が正解。
問13 流域雨量指数
以下,流域雨量指数 | 気象庁からの抜粋です。
流域雨量指数とは、河川の上流域に降った雨により、どれだけ下流の対象地点の洪水危険度が高まるかを把握するための指標です。
流域雨量指数は、全国の約20,000河川を対象に、河川流域を1km四方の格子に分けて、降った雨水が、地表面や地中を通って時間をかけて河川に流れ出し、さらに河川に沿って流れ下る量を、タンクモデルや運動方程式を用いて数値化したものです。流域雨量指数は、各地の気象台が発表する洪水警報・注意報の判断基準に用いています。
流域雨量指数の流出過程の計算には、降った雨が河川に流出する様子を孔の開いたタンクを用いてモデル化した「タンクモデル」を使用します。
降った雨は、通常は、地中に染み込んで地下水となったり、地表面を流れたりして河川に流れ込みますが、都市域では、地面がコンクリートで覆われているため、ほとんどが地表面を流れます。このように、浸透や流出は「地表面の被覆状態(自然の土の状態か、アスファルトに覆われているか)」や「雨水の浸み込みやすさに関わる地質」に大きく左右されることから、都市用と非都市用の性質が異なるタンクモデルを土地利用に応じて使い分けています。
(a)流域雨量指数は,氾濫が発生した場合の氾濫水の移動までは考慮されていませんので記述は誤りです。細かいし知らんし。
(b)上の抜粋文からだいたい正しそうなのは分かります。実際,流域雨量指数は過去の洪水災害発生時の指数を調査した上で設定しており,アスファルトや自然土の状況だけでなく,堤防の整備状況などもある程度考慮されています。
(c)潮汐やバックウォーター現象は,下流側の水位変化の影響を受けて生じる現象であり,現状の流域雨量指数の計算方法ではこれら現象を表現することはできません。よって記述は誤りです。細かい質問ですね。
よって正解は④ですね。それにしても,本問は誰が解けることを想定して出題してるんですかね。謎です。
問14 週間天気予報
この問題の(a)も(b)も質問内容が細かい。
(a)2日先から7日先の最高気温の予報誤差は夏の方が冬よりも小さい。誤。
(b)梅雨時期の九州南部地方と,冬の北陸地方の降水の有無の適中率の問題。冬型の気圧配置が続く北陸の安定した降雪があるので適中率は高そうというイメージがあります。実際,1月の北陸の方が,6月の九州南部よりも降水の有無の適中率は高いそうです。誤。
(c)週間天気予報の3日目以降の降水の有無の予報については,「予報が適中しやすい」ことと「予報が変わりにくい」ことを表し,A・B・Cの3段階で表現します。6日先より7日先の方が高くなることもあり得ます。正しい。
よって④が正解です。分からなかったので,個人的なイメージで回答しました。
問15 海面気圧と平年偏差
まずは天候の図についてまとめてみます。
図Aは,平均気温平年偏差が日本全体がオレンジ色で,全国的に気温が高かったことが読み取れます。日照時間平均比からは日本海側で日照時間が長かった点が特徴的です。このことから,図Aは『冬型の気圧配置が例年より持続しなかった年』に相当すると考えます。
図Bは,図Aとは対照的に,平均気温平年偏差が日本全体が青色で,全国的に気温が低かったことが読み取れます。日照時間平均比からは日本海側で日照時間が短かったことが分かります。図Bは『冬型の気圧配置が例年より強かった年』であると考えます。
図Cは,平均気温平年偏差から西日本で低温,北海道地方で高温であることが特徴的です。よって,図Cは『北海道付近に暖かい空気が流れ込みやすかった年』です。
次は海面気圧の図について。
図アは,大陸側で高気圧,アリューシャン地方で低気圧が明瞭ですので,『冬型の気圧配置が例年より強かった年』と考えます。
図ウは,図アとは対照的な偏差パターンを示していますので,『冬型の気圧配置が例年より持続しなかった年』ではないかと推測できます。
図イは,残った『北海道付近に暖かい空気が流れ込みやすかった年』であると分かります。北海道付近の気圧が負偏差であることも矛盾しません。
よって,④を選択します。
以上で終了。
採点結果
さて今回,私が問題を解いた結果ですが,以下の通りでした。
✕✕〇〇〇〇✕✕〇〇✕〇✕〇〇
結果は9点。残念ながら専門知識の内容はもう半分程度抜け落ちてしまったようです。今の状態で受験していたら不合格だったでしょう。
試験全体としては,問1,問2,問13,問14のような細かい点を聞いてくる問題が多いように思えました。覚えていないとどうすることもできない問題もあるので,専門知識の各分野で抜け漏れなく正確な知識を身に着けておく必要性を感じます。
ここ数年と同レベルの難しめの問題が続いているので,合格点はおそらく前回同様10点でしょうか。個人的には9点であってほしい。
ということで,専門知識のレビューはここで終わりです。
あとは(気が向いたら)実技試験も解いてみて,面白い問題があったらピックアップします。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。
- 気象予報士試験
- 気象業務支援センター Japan Meteorological Business Support Center (jmbsc.or.jp)
-
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/expert/pdf/tenkizu/03_gainen.pdf
-
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/expert/pdf/chushokasen.pdf