Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第92回 数値予報①〜格子点〜

 

ここ最近バタバタしており,ようやく少し落ち着いたので勉強を少しづつ再開していきます。気象の勉強への熱量が少し冷めつつあったので,リハビリがてら数値予報について書き記していくことにします(コンピュータ上で未来の気象の予報値をはじきだすことを「数値予報」といいます)。

だいぶ以前に勉強していた気象の予報の続きになります。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

 

アナログとデジタル

私たちの世界にはアナログの世界とデジタルの世界が共存しています。

アナログというのは連続的なデータを取り扱うことで,デジタルというのはとびとびの不連続なデータを取り扱うことを指します。

どういうことでしょうか?

 

例えばデジタルならばデジタルカメラを想像すると分かりやすいかと思います。

下はデジカメで撮影した写真です。一見すると何の変哲もない建物を撮っただけの写真ですね。

しかし写真を拡大してみましょう。

滑らかに見えた画質も,拡大すると四角い小さなマス目(ピクセルあるいは画素という)がたくさん敷き詰められているのが分かりますね。
実はこのマス目それぞれには数値が入っており,その数値を色に変換して像が作られているのです。

このように,(一見滑らかに見えても)マス目に分かれていて,それぞれに飛び飛びの数値が割り当てられているのがデジタルの世界です。

 

一方アナログの世界はフィルム写真を想像するとイメージしやすくなります。

カメラフィルムにはハロゲン化銀という化学物質が塗られており,これが光と反応することによって色を焼き付ける仕組みになっています。こちらはピクセルのような区画は存在せず,連続的に変化するアナログの世界と言えるでしょう。

 

格子点

ここまで述べてきたようにアナログとデジタルの混在する世界の中でも,とりわけ昨今のコンピューター技術の発達によってデジタルデータを扱うことが圧倒的に多くなりました。

なぜなら,コンピューターは0と1という2つの数字に置き換えてデータを処理するため,アナログよりもデジタル化された情報を扱う方が得意なんですね。

 

さて,現在の天気予報はコンピューターを用いて行っているワケですが,機械に計算させるにはデータをデジタル化する必要があります。ではどのように気象情報をデジタル化しているんでしょうか?

 

結論から言ってしまうと,(デジタルカメラピクセルのように)規則正しく並んだ格子というものを考えているのです。

下は気象庁のHPから取ってきた格子を用いた数値予報のわかりやすいイメージ図です(気象庁 | 気象業務はいま 2020 | 第2部 気象業務を高度化するための研究・技術開発 (jma.go.jp)より引用)。

f:id:popinsgg:20230922073840j:image

図のように格子という細かい区画に分けて,気象要素などの値を各格子に割り当てて計算しているのですね。もちろん,区画に分けてしまうとその区画内の細かい地点の情報は失われるため,格子に含まれる地域の平均化された値を代表値として用いる客観解析)ことになります。

 

また,この一つの格子の領域を点として考えると,格子は格子点とみなすこともできますね(下図,以下「格子点」という言葉を使用)。

格子点は地上だけでなく,鉛直方向にも設定されており,3次元的な情報を扱って膨大な計算をさせています。格子の大きさが小さければ解像度の高い結果が得られる一方,格子点数が増え計算量は多くなりますので,この辺は現在の計算機の性能を鑑みながら条件を決めてやる必要があるようです。

 

まとめると,コンピューターを用いて天気を予報させる準備として,地球表面・大気を3次元的に格子(点)に分割して,それぞれの区画に気象データの代表値を割り当てることで,コンピューターが計算しやすいようなデータに成形しているのです。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • コンピュータ上で行う未来の気象の予報値をはじきだすことを「数値予報」という。
  • 数値予報では,地球表面・大気を3次元的に格子点に分割して気象データの代表値を割り当てることで,コンピューターが計算しやすいようなデータに成形している。
  • 周囲の気象情報から,格子点に気象要素を割り当てることを「客観解析」という。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

【天気図】2024年春の黄砂

 

今年も黄砂の季節がやってきました。今回は黄砂を深堀りしてみます。

 

 

黄砂とは何か

黄砂については以前勉強していますが,もう一度復習しておきます。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

冬の大陸は,地上がキンキンに冷やされてシベリア高気圧が発達しています。そのため高気圧下にある中国大陸内陸部では穏やかな天候が続くのですが,春になって気温が暖かくなると,低気圧通過などで上昇気流が起こり砂が舞い上げられ太平洋側へと飛来してくることがあります。これが黄砂です。

黄砂の由来となるのは,中国の内陸部にあるゴビ砂漠タクラマカン砂漠といった砂漠から飛来する砂です。

砂は地上数千メートルの高さまで舞い上がるようで,それらが偏西風に乗ることで中国の東にある韓国,北朝鮮や日本などに運ばれるのです。

 

この黄砂の飛来がいつまで続くかというと,4月をピークに2月から5月まで続きます気象庁|黄砂観測日数の経年変化 (jma.go.jp))。これからがピークといったところでしょうか。

 

で,この黄砂なんですが,ただの細かい砂かと思っていたら,そういうワケでもないんですね。

黄砂に元々含まれている鉱物が金属アレルギーを誘発したり,飛来する過程で花粉や汚染物質を吸着することによって深刻なアレルギー症状を引き起こしたりすることが懸念されています。これらが洗濯物に付着することもありますから,(特に小さいお子さんの)アレルギー症状には気を付けなければいけません。

それだけでなく愛車に大量に砂が降ってきたり,外出しなくなることで経済活動も縮小するなど人間にはなかなか厄介な存在であるようです。

 

その一方で,黄砂が完全な悪者と決めつけるのも時期尚早のようです。

例えば,2023年の九州大学広島大学などの研究結果では,黄砂は海水中の鉄の重要な供給源であることが示唆されており,北太平洋の生態系を育むうえで大きな役割を果たしている可能性が考えられていたりもするのです。

 

自然というのはホントに絶妙なバランスで維持されているのだと考えさせられます。

 

衛星画像の黄砂

黄砂がどのへんに浮遊しているのかを確認するには,気象庁から発表されているひまわりの衛星画像(気象庁|気象衛星ひまわり (jma.go.jp))が視覚的に分かりやすいかと思います。

下は2024年3月30日の衛星ひまわりトゥルーカラー再現画像になりますが,日本海上に白い雲とは明らかに異なる茶色い帯が観察できますね。これが黄砂のようです。

この黄砂も,時間の経過に伴って西から東へと移動するのが見られ,雲と同じくらいのスピードで移動していることから偏西風の影響を受けていることが推察できます。

偏西風に乗った黄砂は,その通り道になる韓国や日本に到達することになるのですが,一部はアメリカまで到達していることが近年の研究から分かっているようです。

恐るべし,黄砂ですね。

 

天気図上の黄砂

では,地上天気図上で黄砂は表現されているのでしょうか。

下は2024年3月30日のASAS(アジア太平洋域実況天気図)ですが,注目点は朝鮮半島

拡大してみると,現在天気が「」と表記されていました。

この「」という記号は,砂(Sand)の頭文字から来ているようで,空中に砂やちりが浮遊しているときに付けられるようです。今回の場合はもちろん大陸の砂漠に由来する黄砂が浮遊している状態です。
この日,韓国ソウルでは黄砂の影響により視界が悪い状態が続いたことがニュースにもなっていました。

www.youtube.com

 

このように,大陸から飛来する黄砂は人々に健康被害をもたらすため,その飛来が落ち着く6月までは注意しないといけませんね。

特に,この時期は昼夜の寒暖差や花粉の飛散,新生活のストレスなど大きなイベントが立て続けにくるので,体調管理には十分に気を付けなければいけません。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

【空観察】2024年3月の空と自然観察

 

今月は仕事が非常に忙しくて気象の勉強まで手が回りませんでした。

それでも今月はいろいろな気象のニュースがありました。

 

特に春分の日に強い風が吹いていたのには参りました。私が住むところだけでなく全国各地で風が強かったようです。

www.youtube.com

その日の天気図を見てみると,等圧線間隔が非常に狭いことが分かります。なるほど,これでは風が強いワケですね。

熊本県と鹿児島県など,九州の一部の都市では3月の観測史上最大の強風が吹いたところもあったそうです。

 

■■■■

さて,今月撮影した写真も掲載しておきます。

前日の雨で増水した川。

休日に出かけた自然豊かな公園。

アセビの花が咲いていました。春先に咲く花です。

 

今月はそこそこ晴れた日も多かったかな。ここ最近は高気圧と低気圧が交互に通過し,周期的に天気が変わる春らしい気圧配置になってきました。

そろそろ4月ですね。

いよいよ季節は本格的な春へと突入し,生命が息吹く季節になっていきます。自然観察も楽しめそうです。

ある程度落ち着いたら気象の勉強も再開しなくてはいけません。

 

気象データに刻まれる災害の歴史

 

2024年も3月に入りました。一般的な3月の天気の特徴として,上旬は日本海低気圧が発達して南よりの強い風が吹き,下旬になると移動性高気圧の影響で高気圧と低気圧が交互に通過し天気が変わりやすくなるといいます。少しずつ春の兆しも見え始めました。新生活に向けてあわただしく準備されている方も多いかと思います。

 

さて,本日は3月11 日ということで,東日本大震災が発生してから13年が経ちます。私も地震発生当時,緊急停止した電車内に2時間ほど閉じ込められて,線路上を歩いて最寄りの駅まで避難したことを覚えています。結局その駅から徒歩で自宅へと向かい,途中同じ方向に向かう同じ境遇の方と出会って励まし合いながら,だいたい3時間ほどかけて帰宅したことを思い出します。

今でもYouTubeなどで災害の映像を見ることもできますが,時間が経過するとどうしても記憶が薄れていくのは仕方がないことかもしれません。

 

そんな中,今回は,気象データの中から災害の記憶を見つけていきたいと思います。

 

東日本大震災の記憶

東日本大震災とは,2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う余震や福島第一原子力発電所事故などを含む一連の大災害のことを指します。この震災による死者数は2024年3月1日時点で全国で1万5900人,行方不明者は2520人となっているそうです。

そして,この災害で犠牲になった方々の死因の多くは地震に伴う津波によるものと報告されています。

 

過去の気象データを見ていると,その津波が押し寄せてきたと考えられる形跡が残っていることに気がつきます。

例えば,下は岩手県大船渡市の震災発生日の気象データの一部ですが(気象庁|過去の気象データ検索 (jma.go.jp)より引用),15時30分以降のデータがすべて「✕」となっていることが分かりますね。

この✕印は気象測器の故障等によって観測値が得られない場合であったり,明らかに間違いであると考えられる場合に付与されるようです。このことから,大船渡市の観測所では,15時20分から15時30分の間に津波が襲ってきたものと推測できます。

事実,大船渡市にある「茶々丸パーク時計塔」というモニュメントには,津波の襲ってきた15時25分で止まった時計が設置されているそうです(Google Earthより画像取得)。

 

他にも,福島県浪江町の気象データは以下のようになっています。

こちらの観測所では,16時以降のデータがすべて欠測値となっていることが分かります。よってこのデータから,浪江町に大きな津波が到達した時刻は16時頃であることが読み取れるのです。

浪江町の隣には福島県第一原子力発電所があり,翌日の3月12日に原子炉建屋で水素爆発が起こり原発事故が発生したことが明らかになります。その後,浪江町の居住者は避難指示により一時は0人になったようですが,現在は一部の地域で避難指示が解除されたことで2000名程度の方が住んでいるとのことです。

この13年間で復興も進んでは来ましたが,かつての日常を取り戻せるまでにはまだまだ歩みは道半ばな印象は受けますね。この大震災を教訓として身近なところで私たちにできることは,震災の記憶を風化させず,防災意識を高めて各自が災害に備えることだと思います。

 

関東大震災の記憶

東日本大震災からさかのぼること約90年前に起こった関東大震災ではどうでしょうか。気象庁の過去の気象データベースでは,東京の場合だと1872年から情報が公開されています(気象庁|過去の気象データ検索 (jma.go.jp)より引用)。ここまで年代をさかのぼれるとは驚きですね。

 

関東大震災が起こったのは1923年9月1日の11時58分。ちょうど正午ごろに発生し,昼食の準備のために火を使っていた家庭も多く,火災の広がる一因となりました。また,近くに台風が存在し強い風が吹いていたことも火災を大きく広げたといいます。下は気象庁の「関東大震災から100年」の特設サイト(気象庁|「関東大震災から100年」特設サイト (jma.go.jp))で閲覧できる関東大震災が起こった日の天気図です。

午前6時には北陸あたりに台風があり,午後6時に三陸沖に抜けていったのが分かりますね。

 

1923年9月の東京の気象データを見てみると,震災が発生した9月1日と2日は記録がありませんね。災害によって正確な値が取得できなかったため欠測値になっているようです。

 

しかし,次世代デジタルライブラリーというデータベース上の気象月報(中央氣象臺月報 : 全國氣象表 - 次世代デジタルライブラリー (ndl.go.jp)より引用)では観測された値がちゃんと記録されていました。

歴史を感じるのが,1923年ということもあって台湾が日本の中の一地域として扱われていることですね。臺北,臺中,臺南などの台湾の主要都市が記載されています。他にも当時の日本が統治していた韓国やパラオなどの都市も含まれています。

この気象月報データから関東大震災が発生した時刻前後の東京市の気温を見てみると,2日の午前1時から3時頃にかけて気温が40度を超えているのが分かります。午前1時の観測では45.2度を観測していました。

これまでの日本の観測史上最高気温は41.1度(2018年に観測された熊谷市の気温と2020年に観測された浜松市の気温が1位タイ記録)*1ですが,それをはるかに超える東京の気温「46.4度」がこの日に記録されていたようです。当然ながら,この気温は気象現象によるものではなく,東京の火災によって町に熱がこもった結果であることは容易に想像ができますので公式な値とは認められていませんが,非公式ながら日本で観測された史上最高気温であることは事実なのです。

公式記録から消されてしまうことで、私たちの記憶に残らないものになってしまうのは少し残念な気もしますね。このようなことがあったという事実は,もう少し世の中に知られても良いんじゃないかと思いますし,伝えていかなければいけないことだと感じます。

 

 

以上のように,過去の気象データから災害の歴史を読み解くこともできそうです。これまでに蓄積された膨大な気象データが現在どこまで広く活用されているかは知りませんが,気象や人流などのデータをうまく活用できれば,より良い社会づくりに大きく貢献するのではないかと最近考えるようになっています。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:2024年3月時点

【空観察】2024年2月の空の観察

 

2024年の2月はうるう年です。今年は29日まであるので,なんだか得した気分になっているのは私だけではないはずです。

 

さて,今月もなんだか雨が多かったように思います。

写真を見返してみると空の写真を今月は2枚しか撮っていなかったことに気づき,驚愕しているのでした。

花粉も舞っていてくしゃみも始まりました。花粉症にはきつい季節です。

 

勉強はと言うと,あまり進められていないのが正直なところです。夜仕事から帰ってきたらもうぐったりですね。これから勉強しようとはなかなかならないのです。

それでも今月は気象法規について一通り勉強できたのは一つの進歩でした。これまではとりあえず表面をさらっと撫でていたところが,もう少し深い部分の理解ができたことで頭の中に定着しやすくなったように感じます。

また,動画くらいならYouTubeで寝ながら見られるわけなので,そのへんの動画を見ながら,少なくとも1日15分ほどは勉強時間を確保している状況ですかね。

 

そして,また南岸低気圧が日本に近づいているそうです。ただ,首都圏は今回は雨だそうで,前回みたいに雪が積もるわけではないらしいです。

上の予想図のように低気圧が陸地に近いところを通過するので,南からの暖かい空気が陸の方に流れ込みやすくなって雨になる可能性が高いとのこと。

かといって天気はどうなるかわからないので,油断は禁物ですね。

 

 

【気象学勉強】第91回 気象業務法⑤~気象予報士の資格

 

今回は気象予報士の資格について。

 

 

気象予報士になるための資格

気象業務法によると,気象予報士になるには気象予報士試験に合格しなければいけません(国籍は問わない。外国籍の方でも気象予報士になることが可能)。これは気象予報士試験を受ける身からすると痛いほど理解している点です。

第三章の二 気象予報士
(試験)
第二十四条の二 気象予報士になろうとする者は、気象庁長官の行う気象予報士試験(以下「試験」という。)に合格しなければならない。
 試験は、気象予報士の業務に必要な知識及び技能について行う。
(試験の一部免除)
第二十四条の三 試験を受ける者が、予報業務その他国土交通省令で定める気象業務に関し国土交通省令で定める業務経歴又は資格を有する者である場合には、国土交通省令で定めるところにより、試験の一部を免除することができる。
気象予報士となる資格)
第二十四条の四 試験に合格した者は、気象予報士となる資格を有する。

ちなみに気象予報士試験は,気象業務支援センターが,気象業務法に基づき気象庁長官の指定を受けて行っています。このような国の指定を受けて技能証明試験の実施に関する事務を行う機関のことを指定試験機関といいます。指定試験機関としては他にも,着付け技能センターとかピアノ調律師協会とか調理技術技能センターなどがあるようです。

 

また,国の⾏政機関で気象庁⻑官が定める予報業務に従事していた経験がある者などに関しては試験の一部が免除されることもあるようです。

そして,晴れて試験に合格した者は気象予報士となる資格を有する,とのこと。

でも,「資格を有する」という言葉は何とも曖昧な言葉ですね。「気象予報士になれる」とは書かれていませんが,これはどういうことでしょうか。

条文に下記のような一文があります。

(登録)
第二十四条の二十 気象予報士となる資格を有する者が気象予報士となるには、気象庁長官の登録を受けなければならない。
 
(登録の申請)
第二十四条の二十二 第二十四条の二十の登録を受けようとする者は、登録申請書を気象庁長官に提出しなければならない。
 前項の登録申請書には、気象予報士となる資格を有することを証する書類を添付しなければならない。

気象予報士になるためには登録申請書を気象庁長官に提出し,気象庁長官からの登録を受けなければいけないのです。合格したからと言って,自動的に予報士になれるワケではないのですね。書類を提出して晴れて予報士になるということです。合格して登録を受けるまでに特に期限は定められてないので,特に急ぐ必要はないようです。

 

気象庁長官からの登録を受けるための登録申請書は以下から閲覧できます。

format1.pdf (jma.go.jp)

必要な記入事項は,①氏名,②生年月日,③住所,④合格年月日,⑤合格証明書の番号の5つ(※引っ越しなどで,これらの登録名簿に記載している内容に変更があった場合には,遅延なく気象庁長官に届け出なければならない)。

 

ただし,気象庁長官から登録を受ける資格に欠けていると判断された者については,気象予報士になれません。

欠格事由は以下の通り。

(欠格事由)
第二十四条の二十一 次の各号の一に該当する者は、前条の登録を受けることができない。
 この法律の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者
 第二十四条の二十五第一項第三号の規定による登録の抹消の処分を受け、その処分の日から二年を経過しない者

気象業務法で罰金以上の刑に処され,その執行が終わった(もしくは受けることがなくなった)日から2年経過しない者。気象業務法での罰金刑については前回勉強した通り。

気象業務法での罰金刑以上なので,他の法律に引っかかって罰金刑に処されても欠格事由には当たりません。また2年経過するまで登録が受けられないのであって,2年を待たずとも試験を受験することは可能です。

そして,登録の抹消処分を受けた者についても,その処分の日から2年経たないと登録が受けられません(後述)。

 

気象予報士資格の取り消し

気象予報士の合格が取り消されることもあります。合格の取り消されるのは以下の場合です。

(合格の取消し等)
第二十四条の十八 気象庁長官は、不正な手段によつて試験を受け、又は受けようとした者に対しては、試験の合格の決定を取り消し、又はその試験を停止することができる。
 指定試験機関は、前項に規定する気象庁長官の職権を行うことができる。
 気象庁長官は、前二項の規定による処分を受けた者に対し、情状により、二年以内の期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる。

不正な手段を使って試験を受けたとき。これはわざわざ法律に書かなくても人として当たり前のことですね。カンニングや替え玉受験など不正をした場合は合格が取り消されるということです。

気象庁長官が試験の合格の取り消しや試験を停止させることができるのですが,その権限は指定試験機関の権限としても認められているということです。試験場では気象庁長官が試験監督をしているわけではないので,指定試験機関が合格の取り消しなどの権限を代わりに行使できるということのようです。

 

そして,不正に試験を受けて処分を受けた場合には2年以内の気象予報士試験の受験ができません

 

気象予報士資格の抹消

次は,気象予報士資格の抹消について。「抹消」というのは登録された名前を消すことです。「合格の取り消し」も「抹消」の原因の一つです。

(登録の抹消)
第二十四条の二十五 気象庁長官は、気象予報士が次の各号の一に該当する場合又は本人から第二十四条の二十の登録の抹消の申請があつた場合には、当該気象予報士に係る当該登録を抹消しなければならない。
 死亡したとき。
 第二十四条の二十一第一号に該当することとなつたとき。
 偽りその他不正な手段により第二十四条の二十の登録を受けたことが判明したとき。
 第二十四条の十八第一項の規定により試験の合格の決定を取り消されたとき。
 気象予報士が前項第一号又は第二号に該当することとなつたときは、その相続人又は当該気象予報士は、遅滞なく、その旨を気象庁長官に届け出なければならない。

登録が抹消される場合としては,

気象予報士本人が死亡したとき(この場合には相続人が遅延なく届け出なければならない)

気象業務法の罰金刑以上に処されたとき(この場合にも,予報士本人または相続人が遅延なく届け出なければならない)

③不正な手段による登録が判明したとき

④試験の合格が取り消されたとき

があるようです。

抹消処分を受けた者については,その処分の日から2年経たないと気象予報士の登録が受けられません。

 

気象予報士の業務

気象予報士試験に合格し,気象庁長官の登録を受けて気象関連の企業に気象予報士として就職したとしましょう。ここで,気象予報士が行う業務は「予報業務のうち現象の予想について」のみです。現象の予想というのは,気象現象の予想(「予想」には発表することまでは含まれない,対して,「予報」は予想して発表することを指す)のことです。

以下については現象の予想ではないので,気象予報士以外の方も行うことが可能です。

 ・花粉飛散の予報(花粉飛散は現象の予想ではない)

 ・桜の開花予想(桜の開花は現象の予想ではない)

 ・服装指数の発表

 ・ニュースの天気キャスター(天気を伝えるのに気象予報士の資格は必要ない)

 ・予報業務許可事業の代表(予報業務の許可を受ける者は気象予報士資格は必要ない)

あくまで,気象予報士の仕事は「現象の予想」のみです。

たしかに,気象予報士の資格を持っていないニュースキャスターがお天気コーナーを担当しているのはよく目にしますね。TVでハキハキと分かりやすく伝えるのがキャスターの役割なので,餅は餅屋ということです。

でもそれならば,「気象予報士」より「気象予想士」というほうが厳密な気がしますが,気象予想士だと気まぐれ占い師みたいで職業として人気がなくなりそうです。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 気象予報士の資格を有するためには,気象予報士試験に合格しなければいけない。
  • 気象予報士になるためには,登録申請書を気象庁長官に提出し,気象庁長官からの「登録」を受けなければいけない(合格したからと言って自動的に気象予報士にはなれない)。
  • 気象業務法で罰金以上の刑に処され,その執行が終わった(もしくは受けることがなくなった)日から2年経過しない者は登録を受けられない。
  • 登録の抹消処分を受けた者についても,その処分の日から2年経たないと登録が受けられない。
  • 不正な手段を使って試験を受けた場合は,試験を停止させられたり,合格を取り消されたりする。不正に試験を受けて処分を受けた場合には2年以内の気象予報士試験の受験ができない。
  • 気象予報士本人が死亡したとき,気象業務法の罰金刑以上に処されたとき不正な手段による登録が判明したとき,試験の合格が取り消されたときは気象予報士の登録が抹消される。

  • 気象予報士が行う業務は「予報業務のうち現象の予想について」のみ。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

 

【気象学勉強】第90回 気象業務法④~予報業務における罰則

 

今回はさくっと行きましょう。予報業務における罰則についてです。

 

 

気象業務法は法律でありますから,それに反すると当然ながら罰則があります。今回はその罰則について見ていくことにします。

気象業務法では,「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」,「1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」,「50万円以下の罰金」,「30万円以下の罰金」,「20万円以下の過料」の5つの段階に分かれているようです。

 

3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金

最も罪が重いのがこちらにカテゴリされる禁止事項を行った場合。

これに該当するのは一つだけです。屋外に設置された警報標識や気象測器を壊したり移動させたり妨害行為を行ってはいけないという第37条を破った場合のみ。気象庁の気象測器だけではなく,地方公共団体が使用している機器についても同様に罰則対象です。

(気象測器等の保全
第三十七条 何人も、正当な理由がないのに、気象庁若しくは第六条第一項若しくは第二項の規定により技術上の基準に従つてしなければならない気象の観測を行う者が屋外に設置する気象測器又は気象、地象(地震にあつては、地震動に限る。)、津波、高潮、波浪若しくは洪水についての警報の標識を壊し、移し、その他これらの気象測器又は標識の効用を害する行為をしてはならない。

お酒を飲んで気分が高揚していても,警報の標識を壊したりしないようにしましょう。

 

1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金

こちらはあまり私たちには関係なさそうなので覚えなくてもよさそうです。試験を実施する機関の職員が,試験問題の内容を漏洩したときなどに罰則となるようです。

 

50万円以下の罰金

以下の行為を行った者は,50万円以下の罰金になります。

  • 検定に合格していない気象測器を用いた気象観測(気象観測には気象庁長官の登録を受けた者が行う検定に合格したものを用いる)
  • 気象庁以外の者が警報を出すこと気象庁以外の人は気象警報を出してはいけない)
  • 気象庁長官の許可なく予報業務を行うこと(予報業務には気象庁長官の「許可」が必要)
  • 認可を得ずに予報業務の目的と範囲を変更すること(予報業務の目的と範囲を変更するには気象庁長官の「認可」が必要)
  • 気象予報士以外の者に現象の予想を行わせること
  • 気象予報士個人が許可を得ていない業務を行うこと(事業者と気象予報士の両方が罰金刑になる)
  • 許可を得ずに無線通信による気象成果の発表を行うこと
  • 業務停止命令に違反したもの

 

30万円以下の罰金

以下の行為を行った者は,30万円以下の罰金になります。

  • 気象などの業務に従事する職員の土地または水面への立ち入りを拒否すること気象庁長官の権限として,公有地だけでなく私有地に職員を立ち入らせることができる)
  • 検査を拒否,もしくは虚偽の陳述をすること気象庁長官は予報業務許可事業者に対して,それらの業務に対して報告させることができる)
  • 業務改善命令に違反すること

 

20万円以下の過料

以下の行為を行った者は,20万円以下の過料(罰金刑には相当しない)になります。

  • 予報業務の休廃止の届出を出さなかった(予報業務許可者はその業務を休止もしくは廃止するときには気象庁長官に「届出」なければならない)

 

罰則なし

最後は罰則となりそうでならない事例について。

  • 気象観測施設の届出を出さなかった
  • 気象庁の警報事項を伝達しなかった(民間の予報業務許可事業者は警報事項を伝達するように努力しなければいけないが,義務ではない)
  • 気象予報士が事業所に定められた人数配置されていなかった
  • 気象予報士が死亡したときに,相続人がその旨を気象庁長官に届け出なかった

 

 

予報業務許可者への罰則

上記の罰則を受けた予報業務許可者はどのようになるのでしょうか?

以下に記されています。

(許可の取消し等)
第二十一条 気象庁長官は、許可を受けた者が次の各号のいずれかに該当するときは、期間を定めて業務の停止を命じ、又は許可を取り消すことができる。
 この法律若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づく処分又は許可若しくは認可に付した条件に違反したとき。
 第十八条第二項第一号又は第三号に該当することとなつたとき。

気象庁長官から予報業務許可を停止もしくは許可を取り消されることがあるようです。

 

また,この気象業務法の規定により罰金刑以上の処分を食らった場合には,執行が終わった日から2年経過しないと予報業務の許可は得られません予報業務の許可を取り消された者も同様で,2年経過しないと再び予報業務の許可は得られないのです。

 気象庁長官は、前項の規定により審査した結果、その申請が同項の基準に適合していると認めるときは、次の場合を除いて許可しなければならない。
 許可を受けようとする者が、この法律の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者であるとき。
 許可を受けようとする者が、第二十一条の規定により許可の取消しを受け、その取消しの日から二年を経過しない者であるとき。

 

今回は理屈云々よりも,純粋に暗記することにしましょう。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 上記の罰則内容を純粋に暗記する

 

【気象学勉強】第89回 気象業務法③~予報業務の許可~

 

前回,予報と警報について勉強しました。気象や高潮,波浪などについての警報は基本的に気象庁しか出せないのでした。一方で,気象の予報については,こちらは気象庁だけではなく許可を受けていれば民間の企業でも予報業務を行うことができます。予報業務の許可を受けた事業者のことを予報業務許可事業者と呼び,民間気象会社などはこちらに該当します。

 

 

予報業務の許可

民間の人間でも予報業務ができるからといって,もちろん勝手に天気予報をやっていいわけではありません。ちゃんとした許可が必要です。誰からの許可が必要かというと,気象庁長官の許可が必要になります。

(予報業務の許可)
第十七条 気象庁以外の者が気象、地象、津波、高潮、波浪又は洪水の予報の業務(以下「予報業務」という。)を行おうとする場合は、気象庁長官の許可を受けなければならない。

上記のように,気象,地象,津波,高潮,波浪,洪水の6種の予報業務のいずれかを行う場合に許可が必要になります(花粉の飛散や桜の開花予想などは許可は不要)。予報業務許可申請書はこちらで閲覧できます。

気象庁 | 予報業務の許可について (jma.go.jp)

kishou_tebiki.pdf (jma.go.jp)

予報業務許可申請書に必要な記入項目は以下の4点。

 ①氏名または名称及び住所並びに(法人ならば)その代表者の氏名

 ②予報業務の目的

 ③予報業務の範囲

 ④予報業務の開始の予定日

ここで「予報業務の目的」というのは,一般の人向けなのか特定の人向けなのかを指します。また,「予報業務の範囲」というのは,気象なのか洪水なのか波浪なのかという「予報の種類」と,予報を行う物理的な範囲である「対象とする区域」のことを指します。

このように,どういう目的でいつから何をどこで実施するのかを明記して許可申請をしなければならないようです。これに加えて,

 ・収集する資料内容とその方法

 ・予報資料の収集・解析の施設

 ・予想事項の発表時刻

 ・予想の方法

 ・気象庁の警報事項を受ける方法

 ・気象予報士の氏名と登録番号

などについても書類(予報業務計画書)を添付する必要があります。

 

では,誰でも申請書さえ書けば許可を受けられるかというとそうではないのです。それには予報資料の収集・解析ができる施設と要員を有していることが許可基準の1つです。

また,予報業務範囲に関係する気象庁からの警報事項を迅速に受けられる施設と要員も必要です。ただし,許可を受けた予報業務許可事業者の利用者への警報事項の伝達については努力義務であり,絶対にやらなければいけないということはありません。

(許可の基準)
第十八条 気象庁長官は、許可の申請書を受理したときは、次の基準によつて審査しなければならない。
 当該予報業務を適確に遂行するに足りる観測その他の予報資料の収集及び予報資料の解析の施設及び要員を有するものであること。
 当該予報業務の目的及び範囲に係る気象庁の警報事項を迅速に受けることができる施設及び要員を有するものであること。
 
(警報事項の伝達)
第二十条 許可を受けた者は、当該予報業務の目的及び範囲に係る気象庁の警報事項を当該予報業務の利用者に迅速に伝達するように努めなければならない。

 

では,予報業務に必要な要員とは,どういった人が何人程度必要なのでしょうか?

当然,気象の予報を行うので,気象予報士がいなくてはいけません。それが気象業務法施行規則第十一条の二に記載されています。

気象予報士の設置の基準)
第十一条の二 法第十九条の二各号のいずれかに該当する者は、当該予報業務のうち気象又は地象の予想を行う事業所ごとに、次の表の上欄に掲げる一日当たりの現象の予想を行う時間に応じて、同表の下欄に掲げる人数以上の専任の気象予報士を置かなければならない。ただし、予報業務を適確に遂行する上で支障がないと気象庁長官が認める場合は、この限りでない。
一日当たりの現象の予想を行う時間
人員
八時間以下の時間
二人
八時間を超え十六時間以下の時間
三人
十六時間を超える時間
四人

その事業所が現象の予想を行う時間に応じて設置する専任の気象予報士の数は決められています。例えば,16時間を超えて現象の予想を行う場合には4名以上の人員がいないといけませんよ,ということですね。

 

予報業務の変更と廃止・休止

ここで,新しく波浪についての予報業務を行おうとした花子さんを考えます。花子さんは,必要な施設と要員を満たしたため,気象庁長官から予報業務を行っても良いという許可を受けました。

晴れて予報業務を開始して数年が経ったとき,波浪だけではなく洪水まで予報業務の内容を広げたいと考えるようになりました。このように,予報業務の目的や範囲を変更する場合には気象庁長官の認可を受ける必要があります(「許可」ではなく「認可」であることに注意)。これには予報業務変更認可申請書の提出が必要になります。

(変更認可)
第十九条 許可を受けた者が第十七条第二項の予報業務の目的又は範囲を変更しようとするときは、気象庁長官の認可を受けなければならない。

 

そしてある時,花子さんは事業所の名称を変更することに決めました。そのときには,気象庁長官に報告しなければなりません。報告書が必要な事例は以下のようなものがあります(「気象業務法施行規則第50条」参考)。

 ・許可を受けた者の氏名、名称又は住所に変更があった場合

 ・許可申請書に添付した書類(予報業務計画書)に変更があった場合

   ・気象予報士の氏名の変更

   ・予報資料の収集,解析の施設の変更

   ・気象庁の警報事項を受ける方法や施設の変更  など

 

そして月日は流れ,花子さんがこの事業所を畳むことになりました。このように業務を廃止したり休止したりする際には,気象庁長官に届出をしないといけません。届出書については以下から閲覧できます。

(予報業務休止/廃止届出書)yohou_kyuhaishi_youshiki.doc (live.com)

記入事項は以下の通りです。

 ①氏名,名称,住所,法人なら代表者名

 ②休止,廃止した予報業務の範囲

 ③休止,廃止する理由

 ④廃止の日,休止ならその期間

届出は,廃止した日から30日以内に行わないといけません

 

 

許可と認可と報告に届出といろいろ言葉がややこしいですね。

〇許可「(気象庁長官が)予報業務してもいいよ」

〇認可「(気象庁長官が)予報業務の範囲を変更してもいいよ」

〇報告「(事業者が)変更しましたので知らせときます」

〇届け出「(事業者が)やめますんで知らせときます」

こんなところでしょうか。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 予報業務を行うには,気象庁長官の「許可」が必要(予報業務許可申請書の提出)。
  • 予報業務の許可を受けた事業者のことを予報業務許可事業者と呼び,民間気象会社などが該当する。
  • 予報業務の許可を受けるには,予報資料の収集・解析ができる施設と要員を有していること,予報業務範囲に関係する気象庁からの警報事項を迅速に受けられる施設と要員を有していることなどが必要な基準となる。
  • 予報業務の目的や範囲を変更する場合には気象庁長官の「認可」を受ける必要がある(予報業務変更認可申請書の提出)。
  • 予報業務の目的・範囲以外の事項を変更するとき(名称の変更や,事業所の引っ越し,警報事項を受ける方法の変更など)には気象庁長官に「報告」しなければいけない(予報業務変更報告書の提出)。
  • 業務を廃止したり休止したりする際には,気象庁長官に「届出」が必要になる(予報業務廃止届出書の提出)。届出は,廃止/休止日から30日以内に行わないといけない。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

【気象学勉強】第88回 気象業務法②~予報と警報行為の規定~

 

前回に続いて気象業務法についてです。

今回は第三章の予報と警報行為の規定について勉強していきます。

 

 

予報と警報

気象業務における予報と警報の言葉の定義については前回勉強しました。

第一章 総則
(定義)
 この法律において「予報」とは、観測の成果に基づく現象の予想の発表をいう。
 この法律において「警報」とは、重大な災害の起こるおそれのある旨を警告して行う予報をいう。

予報というのは観測結果から現象を予想し発表することを指します。警報というのは重大な災害が起こる危険性がある際に出される警告を伴う予報のことです。

 

そして,この予報や警報を誰が行うかというと,それは気象庁の役割になります。

(予報及び警報)
十三条 気象庁は、政令の定めるところにより、気象、地象(地震にあつては、地震動に限る。略)、津波、高潮、波浪及び洪水についての一般の利用に適合する予報及び警報をしなければならない。(略)。
 気象庁は、前項の予報及び警報の外、政令の定めるところにより、津波、高潮、波浪及び洪水以外の水象についての一般の利用に適合する予報及び警報をすることができる。
 気象庁は、前二項の予報及び警報をする場合は、自ら予報事項及び警報事項の周知の措置を執る外、報道機関の協力を求めて、これを公衆に周知させるように努めなければならない。
十三条の二 気象庁は、予想される現象が特に異常であるため重大な災害の起こるおそれが著しく大きい場合として降雨量その他に関し気象庁が定める基準に該当する場合には、政令の定めるところにより、その旨を示して、気象、地象、津波、高潮及び波浪についての一般の利用に適合する警報をしなければならない。
 気象庁は、前項の基準を定めようとするときは、あらかじめ関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。この場合において、関係都道府県知事が意見を述べようとするときは、あらかじめ関係市町村長の意見を聴かなければならない。
 気象庁は、第一項の基準を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければな
第十四条 気象庁は、政令の定めるところにより、気象、地象、津波、高潮及び波浪についての航空機及び船舶の利用に適合する予報及び警報をしなければならない。
 気象庁は、気象、地象及び水象についての鉄道事業、電気事業その他特殊な事業の利用に適合する予報及び警報をすることができる。
 第十三条第三項の規定は、第一項の予報及び警報をする場合に準用する。
第十四条の二 気象庁は、政令の定めるところにより、気象、津波、高潮及び洪水についての水防活動の利用に適合する予報及び警報をしなければならない。

上の文言で,「一般の利用に適合する」とありますが,これは「一般の市民が簡単に理解できる」という風に読み替えれば良い感じですかね。気象庁の仕事は,一般の方にも分かりやすいように気象や地象,水象についての予報および警報をすることのようです。あとは上の文をある程度暗記してしまいましょう。

 

では,気象庁以外の者は予報や警報ができないのでしょうか?実は予報業務については予報業務の許可さえ受けていれば気象庁以外の者であっても可能です(詳細は次回記載)。日本には気象庁以外にも天気を扱っている民間企業がたくさんありますよね。一方,警報については気象庁以外の者は基本的に出すことはできません。

 

では,次からは警報の伝達について学んでいくことにします。

 

警報の伝達

警報は気象庁以外の者は基本的に出すことができません。いろんな人が警報を出してしまうと社会が混乱してしまうので,気象庁にその権限が委ねられているということですかね。

(警報の制限)
第二十三条 気象庁以外の者は、気象、地象、津波、高潮、波浪及び洪水の警報をしてはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。

ここでいう警報というのは,気象(大雨,大雪,風雪,暴風雪),洪水,波浪,高潮,津波警報などが挙げられます。

先日勉強したように,水防法で定められた水防警報を出すのは国土交通大臣もしくは都道府県知事であり,消防法で定められた火災警報を出すのは市町村の役割ですので,あらゆる警報が気象庁から出されるわけではありません。

また,津波警報だけは,気象庁からの警報事項を適時に受けることができない場合には特例として市町村長が警報を行うことができます

 

では,気象庁から警報が出されたときには,どのような人や機関を通ってその情報が私たち住民に通達されるのでしょうか?

それが下に書かれています。

第十五条 気象庁は、(略)気象、地象、津波、高潮、波浪及び洪水の警報をしたときは、政令の定めるところにより、直ちにその警報事項を警察庁消防庁国土交通省海上保安庁都道府県、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社又は日本放送協会の機関に通知しなければならない。地震動の警報以外の警報をした場合において、警戒の必要がなくなつたときも同様とする。
 前項の通知を受けた警察庁消防庁都道府県、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の機関は、直ちにその通知された事項を関係市町村長に通知するように努めなければならない。
 前項の通知を受けた市町村長は、直ちにその通知された事項を公衆及び所在の官公署に周知させるように努めなければならない。
 第一項の通知を受けた国土交通省の機関は、直ちにその通知された事項を航行中の航空機に周知させるように努めなければならない。
 第一項の通知を受けた海上保安庁の機関は、直ちにその通知された事項を航海中及び入港中の船舶に周知させるように努めなければならない。
 第一項の通知を受けた日本放送協会の機関は、直ちにその通知された事項の放送をしなければならない。
第十五条の二 気象庁は、第十三条の二第一項の規定により、気象、地象、津波、高潮及び波浪の特別警報をしたときは、政令の定めるところにより、直ちにその特別警報に係る警報事項を警察庁消防庁海上保安庁都道府県、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社又は日本放送協会の機関に通知しなければならない。地震動の特別警報以外の特別警報をした場合において、当該特別警報の必要がなくなつたときも同様とする。
 前項の通知を受けた都道府県の機関は、直ちにその通知された事項を関係市町村長に通知しなければならない。
 前条第二項の規定は、警察庁消防庁東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の機関が第一項の通知を受けた場合に準用する。
 第二項又は前項において準用する前条第二項の通知を受けた市町村長は、直ちにその通知された事項を公衆及び所在の官公署に周知させる措置をとらなければならない。
 前条第五項の規定は海上保安庁の機関が第一項の通知を受けた場合に、同条第六項の規定は日本放送協会の機関が第一項の通知を受けた場合に、それぞれ準用する。

長くて読むのにくだびれてしまいそうですが,ここで,警報(第十五条の一)と特別警報(第十五条の二)という二つの警報が出てきました。

特別警報というのは,警報の発表基準をはるかに超える大雨や大津波などが予想され,重大な災害が起こるおそれが著しく高まった場合に発表される警報です。要は最大級の警戒を呼び掛けるスーパー警報といったところでしょうか。東日本大震災(2011年)や九州北部豪雨(2012年)などを受けて2013年に創設されました。

そして警報と特別警報では各機関の対応が少し異なってきます。

 

まずは警報の伝達の流れは以下の図で表されます(shiryou.pdf (jma.go.jp)より)*1

気象庁は,重大な災害が発生するおそれがある場合には警報を発表しなければいけません(義務,怠ると罰せられる)。伝達先は警察庁消防庁NTT東日本/西日本,海上保安庁国土交通省NHK都道府県です。

ただし,警報の種類によっても通知先も少し変わります。

気象,高潮,波浪警報の場合には,消防庁NTT東日本/西日本,海上保安庁NHK都道府県に通知しなければなりません。

火山現象や津波の場合には,上に加えて警察庁にも通知しなければなりません。

空域に関する警報なら国土交通省だけに通知しなければならないようです。

 

通知を受けた警察庁消防庁,NTT東西,都道府県の機関は,通知された内容を関係市町村長に通知するように努力する必要があります(努力義務,実施しなくても罪にはならない)。海上保安庁は航海中や入港中の船舶に知らせるよう努めなければなりません(努力義務)。また,国土交通省も航空機に知らせるよう努力しなければばりません(努力義務)。

そして,通知を受けた市町村長も、通知内容を住民と官公署(市役所や村役場)に周知させるように努めなければなりません(これも努力義務)。

ただしNHKについては放送が義務化されています。一方,民放については特に放送の義務はありません。

 

お次は特別警報が出された場合*2

通知を受けた都道府県の機関は,通知された内容を関係市町村長に通知しなければなりません(義務になる)。

また,通知を受けた市町村長は、通知内容を住民と官公署(市役所や村役場)に周知しなければいけません(義務になる)。

 

このように,警報・特別警報によって対応は変わってくることに注意し,どの機関がどの機関に伝達するのか,それは義務なのか努力義務なのかを押さえておけばよさそうです。

 

次回は予報業務を行うための許可について。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 「予報」とは、観測の成果に基づく現象の予想の発表をいう。
  • 「警報」とは、重大な災害の起こるおそれのある旨を警告して行う予報をいう。
  • 気象庁以外の者は、気象,地象,津波,高潮,波浪及び洪水の警報をしてはならない。
  • 津波警報については,市町村長が気象庁からの警報事項を適時に受けることができない場合には警報を行うことができる。
  • 特別警報というのは,警報の発表基準をはるかに超える大雨や大津波などが予想され,重大な災害が起こるおそれが著しく高まった場合に発表される警報のこと。
  • 気象庁警報の伝達先は警察庁消防庁,NTT東/西日本,海上保安庁国土交通省NHK都道府県の7つ。NHKだけは国民へ周知するために放送が義務となっている。あとの通知は努力義務。
  • 気象庁特別警報の伝達先は警察庁消防庁NTT東日本NTT西日本海上保安庁NHK都道府県の6つ。NHKは国民へ周知するために放送が義務化されている。都道府県は市町村に通達する義務を負い,市町村長は住民公官公署に周知する義務がある。残りの通知は努力義務。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:海上保安庁国土交通省が省略されているので注意

*2:海上保安庁が省略されているので注意

【気象学勉強】第87回 気象業務法①~法律の目的と観測の規定~


ここまで災害対策基本法,水防法,消防法と気象関連の法律を見てきました。今回からは気象業務法について何回かに分けて勉強していくことにします。

 

 

気象業務法の目的

まずは気象業務法とはどういった法律なのかを理解しておきます。

気象業務法は1952年に公布・施行されました。この法律は簡単に言うと,日本の(気象庁や民間企業を含めた)気象従事者の役割などを規定する法律です。

ここからは気象従事者になったつもりで法律を見ていくと理解しやすくなるかと思います。

 

まずはこの法律の目的を確認しておきましょう。第一章に記されています。

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、気象業務に関する基本的制度を定めることによつて、気象業務の健全な発達を図り、もつて災害の予防、交通の安全の確保、産業の興隆等公共の福祉の増進に寄与するとともに、気象業務に関する国際的協力を行うことを目的とする。

法律関連の文言は堅苦しくていけ好かないのですが,上記の字面を追うと気象業務を行う目的は,自然災害予防交通安全確保産業の興隆等に寄与することのようです。最先端の技術を導入しながら気象データを作成・提供することで,防災や産業への活用を図って世の中を良くしていこう,ってことですね。

 

次に「気象」「気象業務」などの言葉の定義が規定されます。

(定義)

第二条 この法律において「気象」とは、大気(電離層を除く。)の諸現象をいう。
 この法律において「地象」とは、地震及び火山現象並びに気象に密接に関連する地面及び地中の諸現象をいう。
 この法律において「水象」とは、気象、地震又は火山現象に密接に関連する陸水及び海洋の諸現象をいう。
 この法律において「気象業務」とは、次に掲げる業務をいう。
 気象、地象、地動及び水象の観測並びにその成果の収集及び発表
 気象、地象及び水象の予報及び警報
 気象、地象及び水象に関する情報の収集及び発表
 この法律において「観測」とは、自然科学的方法による現象の観察及び測定をいう。
 この法律において「予報」とは、観測の成果に基づく現象の予想の発表をいう。
 この法律において「警報」とは、重大な災害の起こるおそれのある旨を警告して行う予報をいう。

長くて読むのが嫌になってしまいそうですが,雨や雷といった「気象」,地震や火山といった「地象」,洪水・津波・高波などの「水象」の言葉の定義が示されています。電離層(熱圏)については大気の範囲内なのですが,気象への影響は少ないため,大気の諸現象からは除外されているようです。

そして「気象業務」とは,これら気象や地象・水象の観測観測結果の収集発表を行ったり,予報警報を出したりすることである,とあります。観測するだけではなく,データを集めて今後の気象を予想したり,災害が起こるおそれがあったら警報を出したりして世の中に発表するところまでがお仕事だということですね。

 

気象庁の組織

そして第二章では,主に気象従事者が行う観測方法について書かれています。

この法律を読んでいく前に,まずは気象庁という組織について理解しておきましょう。

下は日本の政策を行う行政機関である省庁(中央省庁)の組織図です(2023年8月1日時点)。

日本には現在,1府13省庁(11省+2庁)が置かれています。そして,上の図を見てもらえたら分かるように,気象庁国土交通省に属する組織になっています。

たまに気象庁国土交通省の方が一緒に記者会見を開いていることがありますが,これは2つの省庁がこういった関係にあるからなんですね(親分も参上,みたいな?)。

 

では,これらの組織の関係性を理解したうえで,改めて気象業務法を見ていくことにします。

 

気象観測の方法

第一章においても,『「観測」とは、自然科学的方法による現象の観察及び測定をいう。』との文言がありました。

次の第二章ではその気象観測の方法について書かれています。

 

気象観測の中でも,気象庁が行う観測と,気象庁以外の者(政府機関や地方公共団体,民間気象会社や鉄道会社など)が行う観測に分けられています。

気象庁の行う観測の方法)

第四条 気象庁は、気象、地象、地動、地球磁気、地球電気及び水象の観測を行う場合には、国土交通省令で定める方法に従つてするものとする。
気象庁以外の者の行う気象観測)
第六条 気象庁以外の政府機関又は地方公共団体が気象の観測を行う場合には、国土交通省令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。但し、左に掲げる気象の観測を行う場合は、この限りでない。
 研究のために行う気象の観測
 教育のために行う気象の観測
 国土交通省令で定める気象の観測
 政府機関及び地方公共団体以外の者が次に掲げる気象の観測を行う場合には、前項の技術上の基準に従つてこれをしなければならない。ただし、国土交通省令で定める気象の観測を行う場合は、この限りでない。
 その成果を発表するための気象の観測
 その成果を災害の防止に利用するための気象の観測
 前二項の規定により気象の観測を技術上の基準に従つてしなければならない者がその施設を設置したときは、国土交通省令の定めるところにより、その旨を気象庁長官に届け出なければならない。これを廃止したときも同様とする。
 気象庁長官は、気象に関する観測網を確立するため必要があると認めるときは、前項前段の規定により届出をした者に対し、気象の観測の成果を報告することを求めることができる。

気象庁で気象観測を行う場合には国土交通省令で定める方法に従うこととあります。ここで国土交通省という文字が出てきました。気象庁国土交通省との関係は上で述べた通りです。「国土交通省令で定める方法」についての詳細は各自でお調べください。

 

では気象庁以外の者は気象観測できないかというと,そうではありません。気象庁以外の政府機関や,民間気象会社や鉄道会社,個人なども気象観測を行うことは可能です。

政府機関や地方公共団体が気象を観測する際には,国土交通省令で定める技術上の基準に従う必要があります(「技術上の基準」とは,どういった気象要素をどういった機器で測定するか,などを定めた基準のこと;kijyun.pdf (jma.go.jp)を参照)。ただし,研究や教育を目的とする場合には技術上の基準を必ずしも満たす必要はないとのこと。また,すでに国土交通省令で定められた気象の観測(船舶と航空機による観測)は除外されるみたいです。

 

一方,民間気象会社や鉄道会社であっても,その観測結果を発表したり,災害の防止に役立てようと利用したりする意図があるのであれば,国土交通省令で定める技術上の基準に従う必要があるのですね(下図;kansoku.pdf (jma.go.jp)より引用)。

その場合,気象観測をどういった機器で測定すればよいのかというと,それが第9条に書かれています。

(観測に使用する気象測器)
第九条 第六条第一項若しくは第二項の規定により技術上の基準に従つてしなければならない気象の観測に用いる気象測器, (略) 第三十二条の三及び第三十二条の四の規定により気象庁長官の登録を受けた者が行う検定に合格したものでなければ、使用してはならない。ただし、特殊の種類又は構造の気象測器で国土交通省令で定めるものは、この限りでない。

観測方法が異なるとその結果が統一性のあるものではなくなるため,使用する機器は気象庁長官の登録を受けた者が行う検定に合格したものだけ使用できるようです。

そして,国土交通省令で定める技術上の基準に従う場合には,気象庁長官に対して気象観測施設の届出もしなければいけません(研究・教育のための気象観測施設には届出は不要です)。

 

少し長くなりそうなので,今回はここまでにしておきます。

次回は気象業務法の第三章の予報と警報について見ていくことにします。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 気象業務法は,日本の(気象庁や民間企業を含めた)気象従事者の役割などを規定する法律。
  • 気象業務の健全な発展を図り,災害予防交通安全確保産業の興隆等の公共の福祉に寄与し,気象に関する国際的協力を行うことを目的とする。
  • 気象業務の対象は,「気象」だけではなく「地象」「水象」の諸現象も含まれる。
  • 「観測」とは、自然科学的方法による現象の観察及び測定をいう。
  • 政府機関や地方公共団体が気象を観測する際には,国土交通省令で定める技術上の基準に従う必要がある。ただし,研究や教育を目的とする場合には技術上の基準を必ずしも満たす必要はない。
  • 民間気象会社や鉄道会社であっても,その観測結果を発表したり,災害の防止に役立てようと利用したりする意図があるのであれば,国土交通省令で定める技術上の基準に従う必要がある。その場合には,使用する機器は気象庁長官の登録を受けた者が行う検定に合格したものを使用する必要がある。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。