Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第89回 気象業務法③~予報業務の許可~

 

前回,予報と警報について勉強しました。気象や高潮,波浪などについての警報は基本的に気象庁しか出せないのでした。一方で,気象の予報については,こちらは気象庁だけではなく許可を受けていれば民間の企業でも予報業務を行うことができます。予報業務の許可を受けた事業者のことを予報業務許可事業者と呼び,民間気象会社などはこちらに該当します。

 

 

予報業務の許可

民間の人間でも予報業務ができるからといって,もちろん勝手に天気予報をやっていいわけではありません。ちゃんとした許可が必要です。誰からの許可が必要かというと,気象庁長官の許可が必要になります。

(予報業務の許可)
第十七条 気象庁以外の者が気象、地象、津波、高潮、波浪又は洪水の予報の業務(以下「予報業務」という。)を行おうとする場合は、気象庁長官の許可を受けなければならない。

上記のように,気象,地象,津波,高潮,波浪,洪水の6種の予報業務のいずれかを行う場合に許可が必要になります(花粉の飛散や桜の開花予想などは許可は不要)。予報業務許可申請書はこちらで閲覧できます。

気象庁 | 予報業務の許可について (jma.go.jp)

kishou_tebiki.pdf (jma.go.jp)

予報業務許可申請書に必要な記入項目は以下の4点。

 ①氏名または名称及び住所並びに(法人ならば)その代表者の氏名

 ②予報業務の目的

 ③予報業務の範囲

 ④予報業務の開始の予定日

ここで「予報業務の目的」というのは,一般の人向けなのか特定の人向けなのかを指します。また,「予報業務の範囲」というのは,気象なのか洪水なのか波浪なのかという「予報の種類」と,予報を行う物理的な範囲である「対象とする区域」のことを指します。

このように,どういう目的でいつから何をどこで実施するのかを明記して許可申請をしなければならないようです。これに加えて,

 ・収集する資料内容とその方法

 ・予報資料の収集・解析の施設

 ・予想事項の発表時刻

 ・予想の方法

 ・気象庁の警報事項を受ける方法

 ・気象予報士の氏名と登録番号

などについても書類(予報業務計画書)を添付する必要があります。

 

では,誰でも申請書さえ書けば許可を受けられるかというとそうではないのです。それには予報資料の収集・解析ができる施設と要員を有していることが許可基準の1つです。

また,予報業務範囲に関係する気象庁からの警報事項を迅速に受けられる施設と要員も必要です。ただし,許可を受けた予報業務許可事業者の利用者への警報事項の伝達については努力義務であり,絶対にやらなければいけないということはありません。

(許可の基準)
第十八条 気象庁長官は、許可の申請書を受理したときは、次の基準によつて審査しなければならない。
 当該予報業務を適確に遂行するに足りる観測その他の予報資料の収集及び予報資料の解析の施設及び要員を有するものであること。
 当該予報業務の目的及び範囲に係る気象庁の警報事項を迅速に受けることができる施設及び要員を有するものであること。
 
(警報事項の伝達)
第二十条 許可を受けた者は、当該予報業務の目的及び範囲に係る気象庁の警報事項を当該予報業務の利用者に迅速に伝達するように努めなければならない。

 

では,予報業務に必要な要員とは,どういった人が何人程度必要なのでしょうか?

当然,気象の予報を行うので,気象予報士がいなくてはいけません。それが気象業務法施行規則第十一条の二に記載されています。

気象予報士の設置の基準)
第十一条の二 法第十九条の二各号のいずれかに該当する者は、当該予報業務のうち気象又は地象の予想を行う事業所ごとに、次の表の上欄に掲げる一日当たりの現象の予想を行う時間に応じて、同表の下欄に掲げる人数以上の専任の気象予報士を置かなければならない。ただし、予報業務を適確に遂行する上で支障がないと気象庁長官が認める場合は、この限りでない。
一日当たりの現象の予想を行う時間
人員
八時間以下の時間
二人
八時間を超え十六時間以下の時間
三人
十六時間を超える時間
四人

その事業所が現象の予想を行う時間に応じて設置する専任の気象予報士の数は決められています。例えば,16時間を超えて現象の予想を行う場合には4名以上の人員がいないといけませんよ,ということですね。

 

予報業務の変更と廃止・休止

ここで,新しく波浪についての予報業務を行おうとした花子さんを考えます。花子さんは,必要な施設と要員を満たしたため,気象庁長官から予報業務を行っても良いという許可を受けました。

晴れて予報業務を開始して数年が経ったとき,波浪だけではなく洪水まで予報業務の内容を広げたいと考えるようになりました。このように,予報業務の目的や範囲を変更する場合には気象庁長官の認可を受ける必要があります(「許可」ではなく「認可」であることに注意)。これには予報業務変更認可申請書の提出が必要になります。

(変更認可)
第十九条 許可を受けた者が第十七条第二項の予報業務の目的又は範囲を変更しようとするときは、気象庁長官の認可を受けなければならない。

 

そしてある時,花子さんは事業所の名称を変更することに決めました。そのときには,気象庁長官に報告しなければなりません。報告書が必要な事例は以下のようなものがあります(「気象業務法施行規則第50条」参考)。

 ・許可を受けた者の氏名、名称又は住所に変更があった場合

 ・許可申請書に添付した書類(予報業務計画書)に変更があった場合

   ・気象予報士の氏名の変更

   ・予報資料の収集,解析の施設の変更

   ・気象庁の警報事項を受ける方法や施設の変更  など

 

そして月日は流れ,花子さんがこの事業所を畳むことになりました。このように業務を廃止したり休止したりする際には,気象庁長官に届出をしないといけません。届出書については以下から閲覧できます。

(予報業務休止/廃止届出書)yohou_kyuhaishi_youshiki.doc (live.com)

記入事項は以下の通りです。

 ①氏名,名称,住所,法人なら代表者名

 ②休止,廃止した予報業務の範囲

 ③休止,廃止する理由

 ④廃止の日,休止ならその期間

届出は,廃止した日から30日以内に行わないといけません

 

 

許可と認可と報告に届出といろいろ言葉がややこしいですね。

〇許可「(気象庁長官が)予報業務してもいいよ」

〇認可「(気象庁長官が)予報業務の範囲を変更してもいいよ」

〇報告「(事業者が)変更しましたので知らせときます」

〇届け出「(事業者が)やめますんで知らせときます」

こんなところでしょうか。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 予報業務を行うには,気象庁長官の「許可」が必要(予報業務許可申請書の提出)。
  • 予報業務の許可を受けた事業者のことを予報業務許可事業者と呼び,民間気象会社などが該当する。
  • 予報業務の許可を受けるには,予報資料の収集・解析ができる施設と要員を有していること,予報業務範囲に関係する気象庁からの警報事項を迅速に受けられる施設と要員を有していることなどが必要な基準となる。
  • 予報業務の目的や範囲を変更する場合には気象庁長官の「認可」を受ける必要がある(予報業務変更認可申請書の提出)。
  • 予報業務の目的・範囲以外の事項を変更するとき(名称の変更や,事業所の引っ越し,警報事項を受ける方法の変更など)には気象庁長官に「報告」しなければいけない(予報業務変更報告書の提出)。
  • 業務を廃止したり休止したりする際には,気象庁長官に「届出」が必要になる(予報業務廃止届出書の提出)。届出は,廃止/休止日から30日以内に行わないといけない。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。