前回に続いて気象業務法についてです。
今回は第三章の予報と警報行為の規定について勉強していきます。
予報と警報
気象業務における予報と警報の言葉の定義については前回勉強しました。
第一章 総則(定義)6 この法律において「予報」とは、観測の成果に基づく現象の予想の発表をいう。7 この法律において「警報」とは、重大な災害の起こるおそれのある旨を警告して行う予報をいう。
予報というのは観測結果から現象を予想し発表することを指します。警報というのは重大な災害が起こる危険性がある際に出される警告を伴う予報のことです。
そして,この予報や警報を誰が行うかというと,それは気象庁の役割になります。
(予報及び警報)3 気象庁は、前二項の予報及び警報をする場合は、自ら予報事項及び警報事項の周知の措置を執る外、報道機関の協力を求めて、これを公衆に周知させるように努めなければならない。 第十三条の二 気象庁は、予想される現象が特に異常であるため重大な災害の起こるおそれが著しく大きい場合として降雨量その他に関し気象庁が定める基準に該当する場合には、政令の定めるところにより、その旨を示して、気象、地象、津波、高潮及び波浪についての一般の利用に適合する警報をしなければならない。2 気象庁は、前項の基準を定めようとするときは、あらかじめ関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。この場合において、関係都道府県知事が意見を述べようとするときは、あらかじめ関係市町村長の意見を聴かなければならない。3 気象庁は、第一項の基準を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければな 2 気象庁は、気象、地象及び水象についての鉄道事業、電気事業その他特殊な事業の利用に適合する予報及び警報をすることができる。3 第十三条第三項の規定は、第一項の予報及び警報をする場合に準用する。
上の文言で,「一般の利用に適合する」とありますが,これは「一般の市民が簡単に理解できる」という風に読み替えれば良い感じですかね。気象庁の仕事は,一般の方にも分かりやすいように気象や地象,水象についての予報および警報をすることのようです。あとは上の文をある程度暗記してしまいましょう。
では,気象庁以外の者は予報や警報ができないのでしょうか?実は予報業務については予報業務の許可さえ受けていれば気象庁以外の者であっても可能です(詳細は次回記載)。日本には気象庁以外にも天気を扱っている民間企業がたくさんありますよね。一方,警報については気象庁以外の者は基本的に出すことはできません。
では,次からは警報の伝達について学んでいくことにします。
警報の伝達
警報は気象庁以外の者は基本的に出すことができません。いろんな人が警報を出してしまうと社会が混乱してしまうので,気象庁にその権限が委ねられているということですかね。
ここでいう警報というのは,気象(大雨,大雪,風雪,暴風雪),洪水,波浪,高潮,津波警報などが挙げられます。
先日勉強したように,水防法で定められた水防警報を出すのは国土交通大臣もしくは都道府県知事であり,消防法で定められた火災警報を出すのは市町村の役割ですので,あらゆる警報が気象庁から出されるわけではありません。
また,津波警報だけは,気象庁からの警報事項を適時に受けることができない場合には特例として市町村長が警報を行うことができます。
では,気象庁から警報が出されたときには,どのような人や機関を通ってその情報が私たち住民に通達されるのでしょうか?
それが下に書かれています。
第十五条 気象庁は、(略)気象、地象、津波、高潮、波浪及び洪水の警報をしたときは、政令の定めるところにより、直ちにその警報事項を警察庁、消防庁、国土交通省、海上保安庁、都道府県、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社又は日本放送協会の機関に通知しなければならない。地震動の警報以外の警報をした場合において、警戒の必要がなくなつたときも同様とする。3 前項の通知を受けた市町村長は、直ちにその通知された事項を公衆及び所在の官公署に周知させるように努めなければならない。4 第一項の通知を受けた国土交通省の機関は、直ちにその通知された事項を航行中の航空機に周知させるように努めなければならない。5 第一項の通知を受けた海上保安庁の機関は、直ちにその通知された事項を航海中及び入港中の船舶に周知させるように努めなければならない。6 第一項の通知を受けた日本放送協会の機関は、直ちにその通知された事項の放送をしなければならない。 第十五条の二 気象庁は、第十三条の二第一項の規定により、気象、地象、津波、高潮及び波浪の特別警報をしたときは、政令の定めるところにより、直ちにその特別警報に係る警報事項を警察庁、消防庁、海上保安庁、都道府県、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社又は日本放送協会の機関に通知しなければならない。地震動の特別警報以外の特別警報をした場合において、当該特別警報の必要がなくなつたときも同様とする。2 前項の通知を受けた都道府県の機関は、直ちにその通知された事項を関係市町村長に通知しなければならない。4 第二項又は前項において準用する前条第二項の通知を受けた市町村長は、直ちにその通知された事項を公衆及び所在の官公署に周知させる措置をとらなければならない。
長くて読むのにくだびれてしまいそうですが,ここで,警報(第十五条の一)と特別警報(第十五条の二)という二つの警報が出てきました。
特別警報というのは,警報の発表基準をはるかに超える大雨や大津波などが予想され,重大な災害が起こるおそれが著しく高まった場合に発表される警報です。要は最大級の警戒を呼び掛けるスーパー警報といったところでしょうか。東日本大震災(2011年)や九州北部豪雨(2012年)などを受けて2013年に創設されました。
そして警報と特別警報では各機関の対応が少し異なってきます。
まずは警報の伝達の流れは以下の図で表されます(shiryou.pdf (jma.go.jp)より)*1。
気象庁は,重大な災害が発生するおそれがある場合には警報を発表しなければいけません(義務,怠ると罰せられる)。伝達先は警察庁,消防庁,NTT東日本/西日本,海上保安庁,国土交通省,NHK,都道府県です。
ただし,警報の種類によっても通知先も少し変わります。
気象,高潮,波浪警報の場合には,消防庁,NTT東日本/西日本,海上保安庁,NHK,都道府県に通知しなければなりません。
火山現象や津波の場合には,上に加えて警察庁にも通知しなければなりません。
空域に関する警報なら国土交通省だけに通知しなければならないようです。
通知を受けた警察庁,消防庁,NTT東西,都道府県の機関は,通知された内容を関係市町村長に通知するように努力する必要があります(努力義務,実施しなくても罪にはならない)。海上保安庁は航海中や入港中の船舶に知らせるよう努めなければなりません(努力義務)。また,国土交通省も航空機に知らせるよう努力しなければばりません(努力義務)。
そして,通知を受けた市町村長も、通知内容を住民と官公署(市役所や村役場)に周知させるように努めなければなりません(これも努力義務)。
ただしNHKについては放送が義務化されています。一方,民放については特に放送の義務はありません。
お次は特別警報が出された場合*2。
通知を受けた都道府県の機関は,通知された内容を関係市町村長に通知しなければなりません(義務になる)。
また,通知を受けた市町村長は、通知内容を住民と官公署(市役所や村役場)に周知しなければいけません(義務になる)。
このように,警報・特別警報によって対応は変わってくることに注意し,どの機関がどの機関に伝達するのか,それは義務なのか努力義務なのかを押さえておけばよさそうです。
次回は予報業務を行うための許可について。
【まとめ】学習の要点
ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
- 「予報」とは、観測の成果に基づく現象の予想の発表をいう。
- 「警報」とは、重大な災害の起こるおそれのある旨を警告して行う予報をいう。
- 気象庁以外の者は、気象,地象,津波,高潮,波浪及び洪水の警報をしてはならない。
- 津波警報については,市町村長が気象庁からの警報事項を適時に受けることができない場合には警報を行うことができる。
- 特別警報というのは,警報の発表基準をはるかに超える大雨や大津波などが予想され,重大な災害が起こるおそれが著しく高まった場合に発表される警報のこと。
- 気象庁の警報の伝達先は警察庁,消防庁,NTT東/西日本,海上保安庁,国土交通省,NHK,都道府県の7つ。NHKだけは国民へ周知するために放送が義務となっている。あとの通知は努力義務。
- 気象庁の特別警報の伝達先は警察庁,消防庁,NTT東日本,NTT西日本,海上保安庁,NHK,都道府県の6つ。NHKは国民へ周知するために放送が義務化されている。都道府県は市町村に通達する義務を負い,市町村長は住民公官公署に周知する義務がある。残りの通知は努力義務。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。