Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第91回 気象業務法⑤~気象予報士の資格

 

今回は気象予報士の資格について。

 

 

気象予報士になるための資格

気象業務法によると,気象予報士になるには気象予報士試験に合格しなければいけません(国籍は問わない。外国籍の方でも気象予報士になることが可能)。これは気象予報士試験を受ける身からすると痛いほど理解している点です。

第三章の二 気象予報士
(試験)
第二十四条の二 気象予報士になろうとする者は、気象庁長官の行う気象予報士試験(以下「試験」という。)に合格しなければならない。
 試験は、気象予報士の業務に必要な知識及び技能について行う。
(試験の一部免除)
第二十四条の三 試験を受ける者が、予報業務その他国土交通省令で定める気象業務に関し国土交通省令で定める業務経歴又は資格を有する者である場合には、国土交通省令で定めるところにより、試験の一部を免除することができる。
気象予報士となる資格)
第二十四条の四 試験に合格した者は、気象予報士となる資格を有する。

ちなみに気象予報士試験は,気象業務支援センターが,気象業務法に基づき気象庁長官の指定を受けて行っています。このような国の指定を受けて技能証明試験の実施に関する事務を行う機関のことを指定試験機関といいます。指定試験機関としては他にも,着付け技能センターとかピアノ調律師協会とか調理技術技能センターなどがあるようです。

 

また,国の⾏政機関で気象庁⻑官が定める予報業務に従事していた経験がある者などに関しては試験の一部が免除されることもあるようです。

そして,晴れて試験に合格した者は気象予報士となる資格を有する,とのこと。

でも,「資格を有する」という言葉は何とも曖昧な言葉ですね。「気象予報士になれる」とは書かれていませんが,これはどういうことでしょうか。

条文に下記のような一文があります。

(登録)
第二十四条の二十 気象予報士となる資格を有する者が気象予報士となるには、気象庁長官の登録を受けなければならない。
 
(登録の申請)
第二十四条の二十二 第二十四条の二十の登録を受けようとする者は、登録申請書を気象庁長官に提出しなければならない。
 前項の登録申請書には、気象予報士となる資格を有することを証する書類を添付しなければならない。

気象予報士になるためには登録申請書を気象庁長官に提出し,気象庁長官からの登録を受けなければいけないのです。合格したからと言って,自動的に予報士になれるワケではないのですね。書類を提出して晴れて予報士になるということです。合格して登録を受けるまでに特に期限は定められてないので,特に急ぐ必要はないようです。

 

気象庁長官からの登録を受けるための登録申請書は以下から閲覧できます。

format1.pdf (jma.go.jp)

必要な記入事項は,①氏名,②生年月日,③住所,④合格年月日,⑤合格証明書の番号の5つ(※引っ越しなどで,これらの登録名簿に記載している内容に変更があった場合には,遅延なく気象庁長官に届け出なければならない)。

 

ただし,気象庁長官から登録を受ける資格に欠けていると判断された者については,気象予報士になれません。

欠格事由は以下の通り。

(欠格事由)
第二十四条の二十一 次の各号の一に該当する者は、前条の登録を受けることができない。
 この法律の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者
 第二十四条の二十五第一項第三号の規定による登録の抹消の処分を受け、その処分の日から二年を経過しない者

気象業務法で罰金以上の刑に処され,その執行が終わった(もしくは受けることがなくなった)日から2年経過しない者。気象業務法での罰金刑については前回勉強した通り。

気象業務法での罰金刑以上なので,他の法律に引っかかって罰金刑に処されても欠格事由には当たりません。また2年経過するまで登録が受けられないのであって,2年を待たずとも試験を受験することは可能です。

そして,登録の抹消処分を受けた者についても,その処分の日から2年経たないと登録が受けられません(後述)。

 

気象予報士資格の取り消し

気象予報士の合格が取り消されることもあります。合格の取り消されるのは以下の場合です。

(合格の取消し等)
第二十四条の十八 気象庁長官は、不正な手段によつて試験を受け、又は受けようとした者に対しては、試験の合格の決定を取り消し、又はその試験を停止することができる。
 指定試験機関は、前項に規定する気象庁長官の職権を行うことができる。
 気象庁長官は、前二項の規定による処分を受けた者に対し、情状により、二年以内の期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる。

不正な手段を使って試験を受けたとき。これはわざわざ法律に書かなくても人として当たり前のことですね。カンニングや替え玉受験など不正をした場合は合格が取り消されるということです。

気象庁長官が試験の合格の取り消しや試験を停止させることができるのですが,その権限は指定試験機関の権限としても認められているということです。試験場では気象庁長官が試験監督をしているわけではないので,指定試験機関が合格の取り消しなどの権限を代わりに行使できるということのようです。

 

そして,不正に試験を受けて処分を受けた場合には2年以内の気象予報士試験の受験ができません

 

気象予報士資格の抹消

次は,気象予報士資格の抹消について。「抹消」というのは登録された名前を消すことです。「合格の取り消し」も「抹消」の原因の一つです。

(登録の抹消)
第二十四条の二十五 気象庁長官は、気象予報士が次の各号の一に該当する場合又は本人から第二十四条の二十の登録の抹消の申請があつた場合には、当該気象予報士に係る当該登録を抹消しなければならない。
 死亡したとき。
 第二十四条の二十一第一号に該当することとなつたとき。
 偽りその他不正な手段により第二十四条の二十の登録を受けたことが判明したとき。
 第二十四条の十八第一項の規定により試験の合格の決定を取り消されたとき。
 気象予報士が前項第一号又は第二号に該当することとなつたときは、その相続人又は当該気象予報士は、遅滞なく、その旨を気象庁長官に届け出なければならない。

登録が抹消される場合としては,

気象予報士本人が死亡したとき(この場合には相続人が遅延なく届け出なければならない)

気象業務法の罰金刑以上に処されたとき(この場合にも,予報士本人または相続人が遅延なく届け出なければならない)

③不正な手段による登録が判明したとき

④試験の合格が取り消されたとき

があるようです。

抹消処分を受けた者については,その処分の日から2年経たないと気象予報士の登録が受けられません。

 

気象予報士の業務

気象予報士試験に合格し,気象庁長官の登録を受けて気象関連の企業に気象予報士として就職したとしましょう。ここで,気象予報士が行う業務は「予報業務のうち現象の予想について」のみです。現象の予想というのは,気象現象の予想(「予想」には発表することまでは含まれない,対して,「予報」は予想して発表することを指す)のことです。

以下については現象の予想ではないので,気象予報士以外の方も行うことが可能です。

 ・花粉飛散の予報(花粉飛散は現象の予想ではない)

 ・桜の開花予想(桜の開花は現象の予想ではない)

 ・服装指数の発表

 ・ニュースの天気キャスター(天気を伝えるのに気象予報士の資格は必要ない)

 ・予報業務許可事業の代表(予報業務の許可を受ける者は気象予報士資格は必要ない)

あくまで,気象予報士の仕事は「現象の予想」のみです。

たしかに,気象予報士の資格を持っていないニュースキャスターがお天気コーナーを担当しているのはよく目にしますね。TVでハキハキと分かりやすく伝えるのがキャスターの役割なので,餅は餅屋ということです。

でもそれならば,「気象予報士」より「気象予想士」というほうが厳密な気がしますが,気象予想士だと気まぐれ占い師みたいで職業として人気がなくなりそうです。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 気象予報士の資格を有するためには,気象予報士試験に合格しなければいけない。
  • 気象予報士になるためには,登録申請書を気象庁長官に提出し,気象庁長官からの「登録」を受けなければいけない(合格したからと言って自動的に気象予報士にはなれない)。
  • 気象業務法で罰金以上の刑に処され,その執行が終わった(もしくは受けることがなくなった)日から2年経過しない者は登録を受けられない。
  • 登録の抹消処分を受けた者についても,その処分の日から2年経たないと登録が受けられない。
  • 不正な手段を使って試験を受けた場合は,試験を停止させられたり,合格を取り消されたりする。不正に試験を受けて処分を受けた場合には2年以内の気象予報士試験の受験ができない。
  • 気象予報士本人が死亡したとき,気象業務法の罰金刑以上に処されたとき不正な手段による登録が判明したとき,試験の合格が取り消されたときは気象予報士の登録が抹消される。

  • 気象予報士が行う業務は「予報業務のうち現象の予想について」のみ。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。