Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第74回 中層大気の風の分布

 

 

中層大気の温度と風

さて,前回からの続きです。

前回は中層大気の温度についてみてきました。夏半球と冬半球での中層大気には温度の分布があり,その理由が分かりました。

 

では風の分布はどうでしょう?

下の図は地球大気の気温と風の分布を表したものです。横軸が緯度,縦軸が高度です。この図の中の青い線が風を表現しており,単位は m/s になっています。

今回はこちらの風の分布について詳細に勉強していくことにします。

 

中層大気の風の分布

上の図は少し混みあっていますので,風の情報だけを抜き出して模式的に表現しなおしたものが下になります。下図は上空の熱圏までを含めたものです。

ここで,左側が夏半球で,右側が冬半球です。また,緑色に塗られた風が西から吹く風を表し,青色に塗られた風が東から吹く風を表します。色が濃い部分は風速が大きいことを示しています。では,それぞれの風をもう少し詳しく見ていきましょう。

 

まずは下層の対流圏から。

対流圏では,季節を問わず西からの風が吹いています。これは偏西風が吹いているためです。

上図で対流圏界面付近に左右それぞれ風速が大きい島がありますが,これは偏西風の中でも特に強いジェット気流です。

偏西風は夏は高緯度側に寄り,冬は低緯度側まで広がるので,ジェット気流の吹く緯度を確認しても左右どちらが夏半球なのか冬半球なのかが推測可能です。

 


次に成層圏から中間圏を見てみると,夏半球では東風が,冬半球では西風が吹いているのが分かります。すごく特徴的な風の吹き方をしています。

さらにその上空の中間圏上層から熱圏下層に入ると,夏半球では西風が,冬半球では東風が吹きます成層圏・中間圏とは逆の吹き方です。

 

なぜ,こんな風向きになるのでしょうか?

 

中層大気の風向きの理由

これには温度風が関係しており,北半球では風は暖かい側を右手に見るように風が吹き,逆に南半球では暖かい側を左手に見るように風が吹くという関係から導き出すことができます。

 

前回,中層大気の温度の分布について学びましたね。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

成層圏界面では,夏半球の極で温度が最も暖かくなり,冬半球の極で最も寒くなります。夏半球だけで見ると,極地方で暖かく,赤道付近は相対的に寒くなるのです。

また,中間圏界面付近では,夏半球の極地方で最も寒くなり,冬半球の極で最も暖かくなります。

ここで夏半球を北半球だと仮定すると,北半球では風は暖かい側を右手に見るように風が吹くので,成層圏界面では下の図の矢印の向きに東風が吹くことになります。そして中間圏界面より上空では北半球では西風が吹きます。

 

逆に,夏半球を南半球だと仮定すると,下の図のように風が吹くことになります。

ここでも,北半球では風は暖かい側を右手に見るように風が吹き,逆に南半球では暖かい側を左手に見るように風が吹いているのが分かります(南北が入れ替わったので東西も入れ替わります)。

結果的に北半球が夏だろうが,南半球が夏だろうが,成層圏から中間圏では夏半球で東風が,中間圏界面以上では西風が吹くことになります。

 

 

まとめると,温度風の考え方によって,成層圏から中間圏では夏半球では東風が,冬半球では西風が吹くのです。

同じように,中間圏上層から熱圏下層では,夏半球では西風が,冬半球では東風が吹きます

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 対流圏では,季節を問わず夏半球でも冬半球でも西からの風(偏西風)が吹く。
  • 成層圏から中間圏では,夏半球では東風が,冬半球では西風が吹く。
  • 中間圏上層から熱圏下層では,夏半球では西風が,冬半球では東風が吹く。
  • これには温度風が関係しており,北半球では風は暖かい側を右手に見るように風が吹き,逆に南半球では暖かい側を左手に見るように風が吹くため。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

  • 『イラスト図解 よくわかる気象学』ナツメ社 p373-p375
  • 気象予報士かんたん合格テキスト』技術評論社 p292-p293