Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第75回 成層圏突然昇温と成層圏準2年周期振動

 

今回は成層圏で起こる成層圏突然昇温成層圏準2年周期振動について勉強していきます。

 

 

成層圏突然昇温

下は2022年9月~2023年6月現在にかけての成層圏の気温のグラフです(30hPaにおける気温。縦軸;温度,横軸;日時)。

灰色の線が例年の成層圏の温度,黒線が観測された成層圏の温度を表しています。2023年の1月下旬から3月下旬にかけて突然気温が上昇しているのが分かりますね。

このような成層圏の突然の気温上昇のことを成層圏突然昇温といいます。そのまんまの名前で分かりやすいです。春先で起こりやすい現象のようです。

では,成層圏突然昇温が起こると何が起こるのでしょう?

今年の福島県のニュースでそのことが取り上げられていました(動画後半から)。


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成層圏の下部(高度約20~30km)の気温が上昇すると,対流圏の偏西風が蛇行が強まり,北から強い寒波が南下したり,逆に南から暖波が入ったりして異常気象をもたらすそうです。

2023年3月は記録的な温かさだったようですが,この天気の原因の一つにこの成層圏突然昇温があったと考えられているそうです。

ではそのメカニズムはどのようなものなのでしょうか。

 

冬になると北極圏は太陽光が当たらずマイナス60℃以下にまで下がります。すると,北極圏の成層圏には「極渦」と呼ばれる強い風の渦が形成されます極渦は成層圏に形成される西風です。

一方,北半球の対流圏では冬から春先にかけてプラネタリー波が活発になることがあります。プラネタリー波が活発になる原因としてはあまりよく分かっていないようです。プラネタリー波が活発になり西風が卓越すると,そのプラネタリー波は成層圏に伝播し,成層圏の極渦を弱めます(極渦の西風の減速)。弱まった極渦は上下運動をする波となり,下降気流のところでは断熱昇温が起こり,成層圏下部の平均気温が突然数十度上昇するのです。西風の減速は成層圏上部から始まるため,気温上昇は高い高度から次第に弱まりながら下層に移動していきます

 

下の動画が非常に分かりやすく解説されていますので,ご参考にしてください。


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個人的には,この成層圏突然昇温の解説のどれもが私の腑に落ちるものでないため,今一つそのメカニズムが曖昧で理解したとは言い切れないモヤモヤがあるのが本音です。

 

成層圏準2年周期振動(QBO)

次は成層圏準2年周期振動QBOQuasi-Biennial Oscillation)についてです。また,なんだか聞きなれない言葉が出てきました。

 

まず,この現象は赤道上空の成層圏下部で見られるものです。

下の図は,赤道付近の上空(高度約15km以上)の東西風速分布の断面を表したものです。赤が西風,青が東風を示しています。

確かに2年程度(正確には26か月)の周期で風の向きが変わっているのが分かりますね。

1950年代に存在が確認されたようで,まだ比較的見つかってから歴史が浅い(と言えるのか?)気象現象であるようです(成層圏突然昇温も1950年代に見つかったようです)。

1970年頃には,この現象がどのようにして起こるのかが解明されてきました。細かい原理は詳細に述べませんが(私が説明できないので),こちらもプラネタリー波の鉛直伝播が関与しているようです。最初は上層から始まり,時間とともに下層へと広がるようです。

とりあえずは,赤道付近の上空の高度17~40km程度の成層圏では西風と東風が約2年の周期で入れ替わっているのです。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!

成層圏突然昇温

  • 成層圏の西風(極渦)が突然弱まり,成層圏下部の気温が突然上昇することがある。これを「成層圏突然昇温」と呼ぶ。
  • 主に北半球で起こり,プラネタリー波が強くなる秋から春の寒い時期に見られる気象現象。
  • プラネタリー波が成層圏に伝播して極渦を弱めることで,下降気流が発生し断熱昇温が起こるために成層圏の気温上昇が生じる。
  • 気温上昇は高い高度から次第に弱まりながら下層に移動する

 

成層圏準2年周期振動(QBO)

  • 赤道付近の上空の高度17~40km程度の成層圏では西風と東風が約2年の周期で入れ替わる現象を「準2年周期振動」と呼ぶ。
  • プラネタリー波の鉛直伝播が関与して引き起こされると考えられている。
  • 風の入れ替わりは,最初は上の層から始まり,時間とともに下層へと広がる

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。