Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

第60回気象予報士試験振り返り~専門知識①~

 

前回に引き続いて,今回は第60回気象予報士試験専門知識の振り返りを行っていきます。

 

第1問 湿度の計測

 

ページをめくって初見で見たときに見かけがイカつそうな問題にぎょっとしたのを覚えています。乾球温度ってなんだっけ?湿球温度って覚えてないぞ,となりましたが,読み進めてみると乾球温度・湿球温度を知らなくても答えにたどり着ける問題でした。

 

下は試験後に本問を受けてアップロードした湿度計測についての記事。ご興味あればご参考にしてください。

当時の思考(再現)

うわ,なんかゴツそうな問題だなぁ。湿球温度ってなんだったっけ,思い出せないぞ。。

とりあえず落ち着いて問題を眺めよう。

問題自体は空気に含まれる水蒸気量を問う問題で一般知識にも出てきそうな問題。あとは湿度計の使い方・見方だけ分かれば大丈夫そう。

とりあえず手を動かしてみる。

 

まずは確認事項。

・飽和水蒸気圧は温度にのみ依存する。

・(相対湿度)=100×(大気に含まれる水蒸気圧)÷(その気温における飽和水蒸気圧)

・露点温度とは一定気圧下で温度を下げたときに水蒸気が凝結する温度(飽和水蒸気量に達する温度)

 

このことから地点Aの水蒸気圧は,飽和水蒸気圧が23.4hPa,湿度70%より

  (地点Aの大気に含まれる水蒸気圧)=23.4×0.7=16.38(hPa)

 

地点Bは25℃であるので,飽和水蒸気圧は31.7hPa。地点Bの大気を冷やしたときに飽和水蒸気圧に達するのは15℃のときで,17.1hPa。よって17.1hPa分の水蒸気が大気に含まれていることになる。このことから地点Bの湿度を求めると以下のように計算できる。

  (地点Bの相対湿度)=17.1/31.7×100=54(%)

 

地点Cは乾球温度20℃,乾球温度と湿球温度の差が5℃なので,表よりその交点である59%が相対湿度になる。地点Cは20℃であるので,飽和水蒸気圧は23.4hPa。

  (地点Cの大気に含まれる水蒸気圧)=23.4×0.59=13.8(hPa)

 

よって整理すると,

地点A:湿度70%,水蒸気圧16.38hPa

地点B:湿度54%,水蒸気圧17.1hPa

地点C:湿度59%,水蒸気圧13.8hPa

 

となり(a)は正しく,(b)は誤り,(c)は正しい。

よって②を選択すればいいんだな。

当初の見かけよりも簡単な問題で良かった。あとは計算さえ間違っていなければ考え方自体は正しいはず。

 

はい,正解

 

 

第2問 レーダーエコー観測

 

思考

図を見てブライトバンドの問題であると予想できるな。どう考えてもこの輪っかが天使の輪っぽいので「エンゼルエコー」と呼びたくなるが,「ブライトバンド」と呼ぶのが正しいのだ。おそらく間違えて覚えている人が多数いるはず笑。だから今回問題になっているのかな。

なので(c)から手を付ける。これは間違い。何度もいうが「エンゼルエコー」ではなく「ブライドバンド」。でもどう考えてもこっちの方がエンゼル感あるんだよなぁ。

(a)に戻る。これは分からなくてもイメージ的に正しそう。雪が雨に変わる途中は,雪同士がくっつきやすくなったりして粒が大きくなり,溶けているんだから表面が水で覆われることにもなるだろう。

(d)に。レーダーの位置を中心にして融解層が一定の高度に水平に広がるから輪っかができるのだから正しい。

最後に残った(b)は悩みどころ。固体の方がなんとなく電波を反射しそうな気はする。しかし,明るく環状のエコーが見えた理由を聞いており,(a)の選択肢では表面が液体に覆われていることに触れているので,液体の方が電波を反射しやすいと考えた方が問題として自然。なので間違いではないかな。

 

(b)が自信がなく①か③で迷いましたが,結局③に。

 

はい,正解でした

 

 

第3問 ラジオゾンデを用いた高層気象観測

 

思考

(b)と(c)は正しい。

(d)は初めて見たし,初めて聞く言葉だな。「特異点」ってのはよくAIとかでは「シンギュラリティ」とも呼ばれ,人工知能がヒトの知能に追いつく点のことを指す。上空の観測点のことを指す意味合いとは違うので,果たして気象における「特異点」の意味はこれで良いのか?保留。

(a)は正しそうだが,ちょっと待てよ?気圧ってそもそもゾンデで直接計測しているはずでは?(気象庁で使用されるGPSゾンデの中には,気圧計を備えたものもあるが,気圧を直接測定しないものもあるようです)さらに気圧は以下の式で求めたはず。

    \displaystyle \log P_1 - \log P_2 = -\dfrac{g(Z_1 - Z_2)}{RT_m}

気温は確かに用いるが,湿度ってこの式に入ってないよな。GPSで求めた高度を用いて気圧を測った方が早いのでは?よって「気温と湿度」ではなく,「気温と高度」を用いるのが正しいのではないか。

そう考えると,この(a)の記述は間違いなのではないだろうか(これは私の方が間違いで,気圧を直接測定しないGPSゾンデでは気温と湿度から気圧を求めているそうです)。

 

よって(d)を保留していたものの,(a)が間違いかと思い私は①を選択しましたが,これは不正解でした。

ただ,気温と湿度から気圧を求める式が理解できていません。

 

 

第4問 パラメタリゼーション

 

思考

これは単純な知識問題。

パラメタリゼーションとは予報モデルの時間・空間分解能以下の(格子間隔よりも小さい)現象の効果を格子点の値に反映させること。

コリオリ力の影響はパラメタリゼーションには反映されていないは覚えているので,Bが入っている選択肢はこの時点で消える。よって①か④の二択となる。

Dの格子スケールの気温の断熱的な変化量は考慮されていなかったはず。

よって①の記述が正しいのかな。

 

はい,正解

 

 

第5問 数値予報モデル

 

思考

これも知識問題。

(a)は明らかに間違い。数値予報モデルで表現可能な最小スケールは格子間隔の5~8倍。

(b)数値予報において鉛直流は質量保存則の式(連続の式)で計算しているので正しいかな(これは全文を読めば間違いであると分かります。静力学平衡を使った全球モデルでは,連続の式を用いていますが,非静力学モデルでは鉛直方向にも運動方程式を立ててやる必要があります。)。ただ「診断的」という言葉はよく分からん。「診断的に計算」ってどういう意味?

(c)これはCFL条件というやつだな。格子間隔と時間間隔については

    \dfrac{\Delta X}{\Delta t} > V(流れの速さ)

という関係式があったはず。時間ステップを短くすると,格子間隔も短くしなければ計算の精度が低くなったり不安定になったりする。正しそうだな。

 

よって(a)✕ (b)〇 (c)〇 で③だろう。

 

しかしこれは不正解でした。正解は④です。

ただ,この問題の(b)は下線部だけ読んで静力学平衡を仮定したモデルであると早とちりして答えてしまったので,ちゃんと問題文を読んで解いたら間違いに気づいたはずです。もったいない間違え方をしたなぁと思っています。

 

 

第6問 解析雨量と降水短時間予報

 

思考

(a)そもそも陸上ではアメダスがあるが,海上には観測所が少ないので,陸上よりも海上の方が誤差が大きくなると考えるのが自然。よって正しい記述かな。

(b)これは降水短時間予報についての問題か。降水短時間予報では,降水域の移動予測にはパターンマッチング(補外予報)という手法と,メソモデル(数値予報モデル)手法に重みをつけたモデルを採用していたはず。よって誤りと思われる。

 

ここで②と③の二択になる。

(c)7~15時間先の降水短時間予報では,メソスケールモデルや局地モデルに重みをおいて予報していたはず。全球モデルは採用していたかどうかの記憶が怪しい。

どっちだったかな。。

 

で,結局②と③かで迷って,②にしました。

しかしこれは間違い7~15時間先の降水短時間予報では全球モデルは採用していない)でした。

 

 

第7問 天気予報ガイダンス

 

思考

(a)ガイダンスの問題。系統誤差(原因が分かっている誤差)と偶然誤差(原因が分からない誤差)についての問題か。ガイダンスは系統誤差を統計的に補正・低減することができるので,記述は間違いだと考えられるな。

(b)局地的な大雨などの発生頻度が低い現象では,統計的な情報が少ないため予測誤差を取り除くのは難しいのでは。そもそも「確実に」なんて言葉を私は簡単に信用しない。これは間違いと判断。

(c)ニューラルネットワークとは深層学習のことであり,深層学習では非線形で複雑な計算を行うためブラックボックス化してしまう。よって説明根拠は乏しい。これは自信をもって間違いと言える。

よってすべて間違い。⑤を選択。

 

正解

 

 

第8問 太平洋高気圧

 

太平洋高気圧は勉強しました。ハドレー循環によって形成されるのでしたね。

思考

これはハドレー循環で勉強したところだ。

(a)太平洋高気圧は太平洋上に現れ,日本をすっぽりと覆うほどの大規模なものであったはずだ。日本列島は3000kmくらいなので,それをはるかに上回る規模でなければならないだろう。よって誤っていると思われる。

(b)赤道で上昇した大気は中緯度地域で下降して亜熱帯高気圧が形成される。よって対流圏下層では発散域になる。正しい。

(c)これは間違い。赤道で上昇した大気は中緯度地域で下降して亜熱帯高気圧が形成されるので,断熱昇温によってもともとが乾燥していたはずで,ただ海面に近づくと大量の水蒸気を含むようになる。よって誤り。

(d)なんとなく夏の夕方を思い出して積乱雲が発達するイメージをする。正しそうか?いや待て。今回の問題は,太平洋高気圧にチベット高気圧(対流圏上層の高気圧)が重なると雨が降らず晴天が続き猛暑をもたらすので記述は間違いなはずだ。

よって(b)のみ正しい④を選択。

 

正解でした。

 

 

ということで後半は次回に続きます。