前回に引き続いて,今回は第60回気象予報士試験専門知識の振り返りを行っていきます。
第9問 JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)
JPCZは2023年の1月に大きな話題となり,それきっかけで詳しく調べていましたので,私としてはとっつきやすい問題でした。
受験時の私の思考(再現)
おっ,JPCZの問題だ。これは勉強したので解けそうだ。
JPCZは朝鮮半島付け根から山陰や北陸にかかる風の収束帯であったはず。北海道から九州までの列島の長さが約2000km程度であるので,朝鮮半島付け根から山陰や北陸まではだいたい1000km程度かな。(a)は合っていそう。
(b)は誤り。京都や島根など,山陰地方でJPCZによる大雪の影響が大きいことは記憶していた。
(c)はシベリアからの冷たい季節風が朝鮮半島の付け根にある長白山脈にぶつかり分岐し,その風下の日本海で再び合流するときに収束して上昇気流が生まれやすくなるはず。正しい。
よって②を正解だと予想した。
これは合っていました。
第10問 台風
これも勉強した台風の問題。
思考
(a)は自由大気下層だったかどうか。ちょっとすぐには分からないので飛ばす。
(b)は明らかに間違い。台風の上部の中心からある程度離れた場所では,空気は時計回りに吹き出す。
(c)は正しい。台風は暖気核をもち,周囲の空気よりも温度が温かい。大量の水蒸気が凝結して潜熱が放出されているからだった。
(d)は台風の強さについての問題。台風の強さは気圧ではなく,中心付近の最大風速で定義される。よってこれは確実に間違い。ちなみに「猛烈な台風」は,中心付近の最大風速が54m/s(105kt)以上の台風を言う。
ここから(b)✕,(c)〇,(d)✕ であることが分かる。ただしここから一つには絞れず,②か⑤の二択。
自由大気下層では地上との摩擦がなくなり最も風速が大きくなるのは,正しそうかな。ということで②を選択(風の接線成分では確かに自由大気下層で最大となるが,動径成分は大気境界層内で最大となります)。
ということでこれは間違いでした。
自由大気下層だったかどうかに気を奪われて,動径成分についての正誤判断がおろそかになっていました。これはちゃんと考えたら取れた問題だっただけに,もったいないことをしたなぁと今になってから思います。
第11問 水蒸気画像
思考
(a)は「大気の窓」についてか。大気の窓領域とは,大気による吸収が少なく衛星が地球表面をとらえやすい赤外領域のことだった。水蒸気画像では水蒸気による吸収・放射が多い赤外波長領域における放射量を観測している。よって,前半の記述「水蒸気の影響の少ない大気の窓領域の波長領域」で見ているというのは誤り。見ているのは大気の窓領域ではないはず。後半の記述「大気中上層の水蒸気の多寡」については正しい記述と思われる。
(b)水蒸気画像の暗域は水蒸気量が少ない領域に対応している。よって正しそう(受験当時気がついていませんでしたが,水蒸気量が少ないということは乾燥していることを表します。「温度が高く」という記述をナチュラルにスルーしてしまいました)。
(c)そもそもジェット気流とは温度差が大きいところで吹くもの。ジェット気流が蛇行するのは,高緯度の冷たい空気と低緯度の暖かい空気の温度差を解消するためだった。よって南側の明域と北側の暗域の境界が強風軸を見つける目安になる。これは正しい。
(d)これも正しい。暗化域の変化はトラフの深まりを示唆している。
よって③を選択しましたが,これは間違いですね。
(b)の問題で「温度が高く」という記述がおかしいと気づけなかったのは悔やまれます。水蒸気画像を実際の天気図で解析した記事は,過去に「寒冷低気圧」のところで記載しています。
第12問 特別警報・警報・注意報
思考
知識問題。
(a)は間違い。大雪特別警報を発表するのは,「50年に一度の積雪深」のときだったはず。降雪量ではない。
(b)警報や注意報の基準は,地震などが発生した場合には柔軟に対応して,基準を下げることがある。これは合っている。
(c)雪融けによってその下流の地域で洪水などが起こる可能性がある場合は洪水注意報も同時に発表されたと記憶している。洪水で被害が拡大する危険性があるのにそれを発表しないのは,さすがに常識的に考えてないのではなかろうか。
よって④が正解の回答かな。
はい,これは正解してました。
第13問 冬の気象災害
思考
(a)は合ってそう。豪雪地帯でなくとも,南岸低気圧とかの影響で関東が雪になったら着雪害は当然起こり得るはずよね。
(b)全層なだれが発生するのは,雪融け時期の暖かくなった時期のはず。よって厳冬期ではないのではなかったか。選択肢の記述は誤りかな。
(c)雷が多い地域は,東北から北陸地方の日本海側で多いのは記憶している。日本海側で雷が多いのは,冬の大陸側の寒気による対流雲の発達が原因だった。よって「冬に雷がほとんど発生しない」という記述は明らかに誤り。(ちなみに,日本海側の雷日数は冬の方が多いようです。一方内陸は夏の方が雷が多いとのこと。気象庁|雷の観測と統計 (jma.go.jp)より)
これも正解。
第14問 モデルの性能評価
これは自信があったのですが,蓋を開けてみると間違っていました。
思考
モデルの評価についての計算問題か。モデル評価は(予報値 )から(実況値 )を引いたもの。これを押さえてなければ値が逆になりかねないから注意しとかないと。
平均誤差(ME);
二乗平均平方根誤差(RMSE);
なので,あとは値を代入するだけ。
地点Aについて
ME:
RMSE:
同様に地点Bについて
ME:
RMSE:
より(a)は,地点A,BともにMEは正なので正しい。
また,(b)は地点Aと地点Bを比較すると
なのでA地点の方がB地点よりも予報誤差が大きく間違い。
(c)は表を作成した方が分かりやすい。
見逃し率は,真夏日ではないとしたのに真夏日であった割合であるので表の赤く囲った部分に相当する。
よって地点Aの見逃し率は1/7,地点Bの見逃し率は2/7となり,地点Aの方が地点Bと比較して見逃し率は低い。
ここから問題文の記述を正しいとした(これは日本語を読み誤りました。問題文では「B地点の方がA地点より低い」となっていますが,私は「A地点の方がB地点より低い」と勝手に日本語を変えて問題を解いていました。。恐ろしい((((;゚Д゚))))ガクガク)。
よって①を選択しましたが,これは間違いですね。原因は上述したようにただの凡ミスです。
第15問 北極振動
思考
ようやく最後の問題。
(a)ジェット気流は対流圏界面付近で吹く強い偏西風のこと。300hPa付近はおよそ9000m前後なのでこちらが正しいか。100hPaはさすがに高度が高すぎだろう(100hPa付近はおよそ高度16000m)。
(b)北極振動指数について。これは覚えた。北極振動指数が負であるということは,北極側は正偏差になり日本では負偏差になっている(すなわち北極で気温が高く,日本などの中緯度地域では気温が低い)。冬に北極振動指数が負になっているということは日本では厳冬になりやすいということ。よって偏西風が大きく蛇行して北からの冷たい風が入りやすいので,ジェット気流自体の風速は弱くなるはず。よって「弱い」が正解かな。
(c)はじっくり考えたら正解は導けそう。図1は日本・北米・北欧周辺でトラフが形成されているため,このパターンは南北流型と思われる。このパターンでは日本は厳冬になることが多かった。このとき北極振動が負になっていると考え,北極で気圧が高く,中緯度で気圧が低いはず。よってそのような図を選べばよいのでは。よってアかウのどちらかかな。でも厳冬のはずだから西高東低の冬型の気圧配置でなければいけないか。それなら正解はアかな。
というわけで①を選択しました。
これは正解。
ここで問題終了~~。
ハイ,ということで結果は9点となります。
この専門知識では早とちりや読み間違いがあり,ミスが多かったと反省しています。特に第5問,第11問,第14問は落としたのはもったいなかったなぁと感じます。
見直しの時間もできて,ざっと答えを眺めなおしたんですが全く気がつかなかったのはやはり実力不足ということでしょう。
ただ,概ね考え方は間違っていないと思っていますし,まったく気象のことを分からなかった2022年12月に比べると気象についての理解が深まっているのは明らかです。
現在は天気図の見方を理解したいという思いが強いので,今後は実技の方に重きを置いて勉強していく予定です。一般知識・専門知識については時間をかけて勉強するのはとりあえず保留しようかなと思っています。