Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第5回 地球大気の温度

 

今回でようやく地球の大気層についての話が終わります。

本日の話は大気の温度について。

 

大気の温度変化

気圧というのは単位面積あたりにかかる空気の重さのことでした。

高度が高くなればその分背負う空気の重さは軽くなるため気圧は低くなります。つまり上空に行けば行くほど気圧は低くなります

 

では気温はどうなるでしょうか?

上空に行けば行くほど気温も低くなると思いがちですが,実はそうでもないのです。

下は大気の気圧と高度と温度についての図。赤い線が温度を表現しています。

この図からも分かるように,温度は上空に行っても寒くなったり暑くなったりを繰り返します。不思議な動きです。一つひとつ見ていきましょう。

 

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まずは地上に接する対流圏から。

図を見ると,対流圏では高度が高くなればなるほど気温は下がる一方です。ほぼ直線的に気温が下がっているのがわかりますね。だいたい1km上昇するごとに平均して6.5℃気温は低くなります(ちなみに高度が上がるにしたがって気温の下がっていく割合を気温減率と呼ぶ)。

対流圏の厚さは平均11kmですので,対流圏界面の気温は(地上を日本の平均気温15℃とすると)マイナス56.5℃ほどになります。長距離の旅客機はこのくらいの気温の中を飛んでいるんですね。

 

成層圏に入ると気温の低下が止まります。

高度20kmのところから徐々に気温が上昇へと転じるのです。そして気温上昇は続き,成層圏界面(高度50km)で温度は極大に。この時の温度はだいたい0℃近く。

高度50kmなんてエベレストが50個以上入るほどの高さなのに,思っていた以上に気温が暖かいのが分かります。

 

しかし中間圏に入ると再び温度は低下

高度約80kmの中間圏界面までほぼ一直線に気温は低下します。中間圏界面ではマイナス90℃程度にもなります。地球で最も寒い場所とも言われます。

 

そして熱圏にきたら再び温度低下はストップ。

高度100kmからは高度が上がるにつれて温度は上昇し続け,その上空では1000~2000Kにも達するようです。

 

この不規則とも思える気温変化は一体どういうワケなんでしょうか?

 

温度変化のワケ

羽毛の入ったダウンジャケットは寒い冬に重宝します。とても暖かいですよね。これは空気が熱を通しにくいという断熱性の高さを利用しています。

ホッキョクグマの体毛一本一本にはストローのように中心に穴が開いた中空構造になっており,空気の層をはさむことによって極地方という極寒の地域で生きていられるのも空気の断熱性の高さを示す良い例です。

このように,空気というのは熱を伝えにくい性質があるのですが,これが対流圏の気温低下と密接に関係します。

 

対流圏はその名が示す通り空気の対流が起こっています。対流が起こるということは空気が流動的に上がったり下がったりしているということです。

すると上昇した空気は周囲からの熱の流入をほとんど受けずに上空へと移動します。断熱性が高いからです。そして高度が高ければ高いほど気圧は低いので空気は膨張します。空気を抑えておく力が弱まるためです。

その結果,断熱膨張とよばれる現象が起こり高度が上がるほど温度は低下するのです。このことは熱力学第一法則によって説明できるのですが,そちらについてはまた今度説明することにしましょう。

 

 

成層圏に入ると今度は温度は上昇に転じます。成層圏は非常に安定な大気層で,対流圏のような鉛直方向の空気の大きな移動はないので断熱膨張は起こりにくいと思われます。そして成層圏の特徴はオゾン層があることでしたが,このオゾン層こそが成層圏の気温上昇の主な要因です。

酸素分子やオゾンが太陽からの紫外線を吸収して熱へと変えているんですね。

  ①  \rm{O_2 + O → O_3 + 熱}

  ②  \rm{O_3 + O → 2O_2 + 熱}

 

と,ここで一つ疑問が生じます。

オゾン層は高度25kmで濃度が最大になるので,温度が極大となるのはその高度25kmになりそうな気がしますが,実際には高度50kmの成層圏界面の方が温度が高くなっているのです。

これを説明する理由の1つが,成層圏上部のオゾンが紫外線を吸収し,高度25kmへ行き着いたときには紫外線量が減弱してしまっているというもの。この理由はわかりやすい。

そしてもう一つの理由は空気密度が小さい高度の高い場所では気温上昇率が大きくなるというもの。こちらは少し説明がいります。

ある物体の温度を1℃上昇させるのに必要なエネルギーのことを「熱容量」と呼びます。同じ物質なら(例えば鉄),1gの鉄を1℃上昇させるのよりも100gの鉄を1℃上昇させるのに必要なエネルギーの方が多くなるのはイメージがつかみやすいかと思います。

同様に,同じ物質でも密度が違えば,例えばギュウギュウに詰まった空気を1℃温めるよりも,スカスカの空気を1℃温める方が必要なエネルギーは少なくて済むのです。

よって成層圏の上層ではより密度が低いため,同じエネルギーを受けたことによる気温の上昇率が大きくなるのです。

 

 

そして中間圏に入ると今度は直線的に温度は低下に向かいます。ここまでくると空気の薄さは地上の1万分の1程度になっており,太陽からの光のエネルギーを十分に吸収することもできず,二酸化炭素からの放射冷却も進み温度は中間圏界面でマイナス90℃に達します。中間圏界面が地球大気の中で最も寒い場所になります。

もし成層圏・中間圏などの中層大気の気温についての詳しく知りたい方がいらっしゃったら,以下の記事をご参考ください。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

 

最後に熱圏。

さらに空気が薄くなって気温が下がりそうですが逆に温度が爆上がりします。その名前の通り「熱い大気層」になります。

これは窒素や酸素といった大気の成分が太陽光からの強いエネルギーによりプラズマ化しているからです。プラズマの温度はだいたい5000から1万℃くらいですので,熱圏というのは熱いんですね。

ただ,この高度になりますとそもそも空気の密度が低いので,数百℃・数千℃の気温であっても私たちは熱く感じることはないでしょう。

80℃のお湯に入れないのに,80℃のサウナに入れるのと同じ理屈です。

 

 

はい,というわけで大気の温度を理解するのは一筋縄では行きませんでしたが,なんとか飲み込めたので次に進むことにします。

次回は太陽からの熱の放射の話をしていくことにします。

 

 

【まとめ】学習の要点

今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 地球大気の温度は高度によって上がったり下がったりを繰り返す。
  • 対流圏の大気は断熱膨張により高度が上がるほど気温は下がる。
  • 成層圏の大気はオゾンや酸素が紫外線を吸収して熱に変換するため気温は上昇する。
  • 成層圏でオゾン濃度が最も高い高度25kmではなく高度50kmで気温は極大になる。
  • 中間圏は空気も薄く二酸化炭素からの放射冷却もあり気温は下がる。
  • 熱圏は大気原子がプラズマ化するため気温は上昇する。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。