世の中はGWですが,私は今年はゆっくりと家で過ごしながら,仕事であまり時間を作れなかった気象の勉強に充てていきたいと思います。
今回は,前回少し触れました貿易風について簡単に説明しておきます。
航海と貿易風
2021年8月,ニュースキャスターの辛坊治郎さんがヨットで太平洋横断に成功したことがニュースで大きく取り上げられました。
そのときの太平洋横断の経路がネット上にアップされていましたので(⾟坊治郎さんの太平洋横断チャレンジを応援しよう! | FURUNO),その経路を見てみましょう。
往路(上)と復路(下)を見比べると,復路では大きく南側の海域へと膨らんだ航路をとっているのが分かりますね。
その理由は,貿易風という恒常的に東から吹く風をキャッチできるため。
ただインタビュー記事によると,安定した貿易風に乗ってしまうと大してすることもなくなって精神的に病んだ状態になったそうです(苦笑)。
このように昔から人々はより効率よく歩を進めるために貿易風を利用していました。
新大陸を発見したコロンブスも,スペインから南側に下って貿易風に乗れる航路を選んだことが知られています。
世界の天気をチェックできる天気予報アプリ「Ventusky」(Ventusky - Wind, Rain and Temperature Maps)で太平洋の地上2mにおける風の動きを見てみると,下のような図が確認できます。
矢印で風の向きを表現してみましたが,確かに赤道方向へと向かう北東の風が吹いているのが分かりますね。
貿易風の風向き
前回,貿易風はハドレー循環で亜熱帯地域から赤道の方向へ向けて吹く風であることを勉強しました。
赤道の温かい空気が温められて亜熱帯地域で下降し,相対的に冷たい亜熱帯の空気が赤道へと戻ってくるのですね。このとき,下降して亜熱帯から赤道へと向かう風が貿易風でした。下の図でいうと赤く丸で囲んだところです。
上の図の矢印の向きを見ても分かるように,貿易風はただ北から南に向かうわけではなく,東寄りの風になって赤道へと向かいます。
これはコリオリ力が働くためです。コリオリ力は,北半球では進行方向右側に働くため,北から南へと向かう貿易風は西の方向に曲げられるのです。
一方南半球では,コリオリ力は進行方向左側に働き,南から北へと向かう貿易風は同じように西の方向に曲げられます。
このように北半球と南半球のどちらの貿易風も結局は東寄りの風になり,北半球で吹く貿易風を北東貿易風,南半球で吹く貿易風を南東貿易風と呼びます。
というわけで,前回の復習と,ちょっとした追記点とを合わせて貿易風についての解説でした。
【まとめ】学習の要点
ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。
- 『イラスト図解 よくわかる気象学』ナツメ社 p282-291
- 『気象予報士かんたん合格テキスト』技術評論社 p224-226
- Creating Artificial Rain By Building Small Hadley Cells (cleantechloops.com)
- ⾟坊治郎さんの太平洋横断チャレンジを応援しよう! | FURUNO
- 太平洋“再”横断中の辛坊治郎さん/貿易風帯からいつ北上する? 舵オンライン │ 船遊びの情報サイト (kazi-online.com)
- 辛坊治郎氏のヨット船内に軽油が流出の大ピンチ!初日に受けた太平洋の“洗礼” - まぐまぐニュース! (mag2.com)
- クリストファー・コロンブス (coocan.jp)
- BOOK of MORMON RESOURCES: Voyages of Columbus
- コロンブスの第1回航海を詳しく見てみよう | 歴史 | 中学校の社会科の授業づくり (social-studies33.com)