Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第78回 エルニーニョ現象とラニーニャ現象

 

さて,今回で一般知識については最後になります。

最後の話はニュースでよく聞く,「エルニーニョ現象」と「ラニーニャ現象」について。いまだにどっちが起こると日本の夏が暑くなるのか混乱しますが,なんとか努力して覚えたいと思っています。

 

 

エルニーニョラニーニャ現象と日本の気象

下の表は2010年以降のエルニーニョラニーニャ現象と日本の天気についてざっくりとまとめたものです(エルニーニョ・南方振動 - Wikipedia参考)。

 

              年     

      El/La        

日本の気象
2010-2011 ラニーニャ 21世紀日本で観測史上1位の猛暑熱中症による死亡多数。
2011-2012 ラニーニャ 冬は奄美沖縄を除けば1984年のような大寒
2014-2016 エルニーニョ 2014年の夏は西日本で冷夏。2015年12月は日本国内のみならず,国外の多くで北半球最大規模の大暖冬となった。
2016-2018 ラニーニャ 2017年1月中旬と2月中旬,3月上旬は日本国内のみならず,国外の多くで10数年に1度の北半球最大規模の大寒が襲来した。
2018-2019 エルニーニョ 冬はほぼ全国的に暖冬で,西日本の日本海側は記録的少雪となった。2019年5月〜7月は北日本を中心に記録的な長期高温・長期日照・長期少雨となった。
2020-2023 ラニーニャ 2020年初冬より日本国内を中心に、数年に1度の最大規模の大寒が襲来した。2022年冬は,日本でも記録的大雪が多発し,東海地方の津と四国太平洋側の高知では10cmを超える記録的な大雪であった(令和5年の大雪)。

 

この表を見ると,ラニーニャ現象が起こった年は記録的猛暑や寒冬が起こりやすく,エルニーニョ現象が起こった年は冷夏や暖冬の傾向がありますね。エルニーニョラニーニャ現象が日本の気象と関わっているのがなんとなく明らかになってきました。

 

しかしなぜこのような傾向があるのでしょうか?

 

ウォーカー循環

エルニーニョラニーニャ現象を説明する前に,まずはウォーカー循環について解説します。

以前,南北方向の大規模な熱輸送として,ハドレー循環・フェレル循環・極循環を勉強しました。

weatherlearning.hatenablog.jp

一方で,東西方向にも大規模な大気の循環が存在し,太平洋赤道付近に見られる東西循環としてウォーカー循環があります。

もともと南米の西海岸にはペルー海流フンボルト海流)という南極のほうから来る冷たい寒流が流れており,海水面が低くなっています*1

そして下図のような(エルニーニョ現象って?|ミガケ、好奇心!時事もんドリル|NHK NEWS WEBを一部改変),太平洋赤道上の大気の循環が生まれます。

寒流が流れる南米の西の海上では,空気が冷やされて下降気流が生まれます。一方,東南アジアでは温かい海によって上昇気流が生じています。

その結果,下降気流によって気圧の高くなった南米から,上昇気流によって気圧が低くなった東南アジアへと偏東風貿易風)が吹くことになるのです。

そしてエルニーニョラニーニャ現象はこの貿易風が大きく影響するのです。

 

エルニーニョ現象

では,ウォーカー循環を理解したうえで,エルニーニョ現象について見ていきます。

もともとは,南米ペルー付近にクリスマスの頃に小規模な暖流が現れ,その暖流を「神の子(すなわちイエス・キリスト)」という意味である『El Nino(英訳するとThe Boy)』と呼んでいたのが語源だそうです。クリスマス時期なのでキリストの降誕と重ね合わせたわけですね。

やがてこのエルニーニョという言葉は,数年に一度に現れる,ペルー沖で水温が高くなる現象に用いられることになります。この大規模な水温の気温上昇も,先ほどの小規模な暖流と同じくクリスマス頃に最も暖かくなることが知られているようです。

 

下の図はエルニーニョ現象が起こったときの太平洋の海水温を表したもので,赤くなるほど温かく,青くなるほど冷たくなるように描かれています。

ペルー・エクアドル付近の海水温が高くなっていることが分かりますね。

これはペルー海流が流れている海洋に,赤道側から温かい海水が入ってくることで海水温が上がるという報告もあるようですが,現在もそのメカニズムについては不明な点が多いそうです(貿易風が弱まってペルー沖の海水が西へと移動できないのか,ペルー沖の海水温上昇によって貿易風が弱まるのか・・などなど)。

 

とにかく,エルニーニョ現象が起こって貿易風が弱まると,冷たい海水は西側へと移動できず,代わりに東南アジアからの温かい海水が南米の方へと移動してくるのです。

東南アジア側の温かい海水量が太平洋の中心へと流れ込んでいくため,東南アジアの海水温は低くなり,アジアの気温は低下するようです。これが影響して,日本では夏は冷夏となることが多くなります。

その一方で冬は暖冬になりやすいのですが,それはシベリア高気圧による季節風が弱まるのが原因だそうで,エルニーニョがシベリア高気圧によってどう影響するかは不明な点も多いそうです。

 

ラニーニャ現象

今度はラニーニャ現象について。エルニーニョが「神の子(The Boy)」に対して,ラニーニャは「女の子(The Girl)」を意味するそうです。

下の図を見てみると,今度はエルニーニョ現象が起こったときは太平洋の海水温が低くなっていることが理解できます。

ラニーニャ現象が起こると貿易風が強まり,東南アジアの温かい海水は西の方へと追いやられます。

その結果,日本の夏は猛暑となり,冬は厳冬になることが多いそうです。

 

エルニーニョラニーニャ現象については,以下の日経の動画が分かりやすかったのでご紹介しておきます(2022年の動画)。


www.youtube.com

 

南方振動

太平洋赤道付近の地上気圧(温度ではなく気圧であることに注意)は,東部が高くなると西部では低くなり,東部で低くなると西部では高くなるといったシーソーのようなバランスがあり,この現象は南方振動と呼ばれています。

そして,太平洋中部のタヒチの地上気圧から,西部のダーウィンの地上気圧を引き算した値を南方振動指数といいます。

気圧傾度の差なので,これは貿易風の強さの指標とも言い換えられます。

上の図のように,南方振動指数がプラスの場合(すなわちタヒチの地上気圧の方が高い場合)はラニーニャが発生する年になります(繰り返しになりますが,海水温の差ではなく気圧の差であることに注意)。

反対に,南方振動指数がマイナスの場合は,ダーウィンの地上気圧が高いため,エルニーニョが発生することになります。

 

さいごに

さて,これでとりあえず一般知識の教科書を一巡したことになります

ここからは実際に問題を解いて,自分の理解していない部分を洗い出す作業になります。飛ばして勉強していたところもやり直しの作業も入ってきます。

 

次回はこれまでの確認事項を羅列していく予定です。

そのあとは,ゆっくりと気象の予報がどのように行われているかを勉強していきます。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 太平洋赤道付近に見られる東西循環としてウォーカー循環がある。
  • エルニーニョラニーニャ現象のメカニズムについては不明な点が多い。
  • ペルー沖で海水温が高くなる現象をエルニーニョ現象という。
  • ペルー沖で海水温が低くなる現象をラニーニャ現象という。
  • エルニーニョ現象が起こった年は,日本では冷夏や暖冬が起こりやすい。
  • ラニーニャ現象が起こった年は,記録的猛暑や寒冬の傾向がある。
  • 太平洋赤道付近の東西の地上気圧のバランスを南方振動と呼ぶ。
  • 太平洋中部のタヒチの地上気圧から,西部のダーウィンの地上気圧を引き算した値を南方振動指数という(海水温ではなく気圧の差であることに注意)。
  • 南方振動指数がプラスの場合は「ラニーニャ現象」。
  • 南方振動指数がマイナスの場合は「エルニーニョ現象」。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:そのためこの海域では熱帯低気圧が発達しづらいことが知られています。熱帯低気圧は26~27度以上の比較的海水温が高い海上で発生するからです。