Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第76回 環境汚染と都市の気候

 

今回からは様々な環境汚染と都市気候について勉強していきます。

 

 

火山活動による環境への影響

こちらは人為的なものではなく,自然要因によって地球環境に影響する例です。

日本では桜島などが火山として有名ですが,都市部に住んでいたら登山を趣味としない限りはあまり火山活動というのはピンとこないですよね。

ただ,1991年の雲仙普賢岳火砕流や,2014年の御嶽山の噴火など,人命を奪った災害も多く,火山が危険であることはなんとなく認識してはいます。

 

そして,そんな火山は地球の気象や気候に大きな影響を及ぼすのです。

例えば,1991年にフィリピンのルソン島にあるピナトゥボ山という火山が大規模な噴火が起こったようです。

 

下のグラフはピナトゥボ山噴火後の気温の変化を表したものですが(火山噴火は「熱さ」より「寒冷化」が怖かった...氷床調査によってわかった寒冷化の歴史(石 弘之) | 現代ビジネス | 講談社(5/5) (gendai.media)から引用),噴火に伴い気温が低下傾向にあるのが見て取れます。このとき地球の温度は0.5℃も低くなったそうです。

火山噴火によって地上の気温が低くなるのは,大量の火山性エアロゾル火山灰など)が噴出して,太陽光を散乱・吸収するため。これらのエアロゾル成層圏まで到達して,数か月間も上空に滞留し続けるというから驚きです。

上空で太陽光が散乱されるため,地表に届く日射量は減少して,地上では受け取る熱が少なくなり気温は下がるんですね(これを日傘効果と呼ぶ。ちょうど火山灰が日傘のように太陽光を遮断するのです)。

一方,上空ではエアロゾルが太陽光の一部を吸収するため気温は上昇します。

 

そしてピナトゥボ火山の噴火が一つの要因となって,1993年には日本で記録的な冷夏となり,稲の不作が続いて「平成の米騒動」と呼ばれる事態へと発展しました。噴火によって我々の食事情にも大きな影響を与えるワケですね。

そのとき日本国内のお米(ジャポニカ米)が不足し,急遽タイからタイ米(インディカ米)を輸入することになったのですが,外国のお米の味がどうしても受け付けずに大量に廃棄されたことが報道され,タイの国民から顰蹙を買ったそうです。

火山活動による環境への影響,そして農作物への影響に至り,さらには対外関係にまで影響してくるんですから,いやはや恐ろしいことです。

 

黄砂と健康被害

こちらも自然要因によるもの。

この黄砂に関しては以前にまとめてます。中国の砂漠などから砂が飛来して日本などの東アジアに降り注ぐのでした。

weatherlearning.hatenablog.jp

春先から初夏にかけて発生頻度が高い気象現象です。

冬の間はシベリア高気圧の影響で中国大陸内陸部では穏やかな天候が続くのですが,春になって気温が暖かくなると低気圧通過などで上昇気流が起こり砂が舞い上げられ,偏西風に乗って太平洋側へと飛来してくることで引き起こされます。

もちろん洗濯物や車に砂が降り注ぐなどの影響もありますが,黄砂が飛来する過程で花粉や汚染物質を付着して毒性が高くなり,深刻なアレルギー症状を引き起こすことも懸念されており,ただの砂だと思っていたら大間違いなのです。

 

酸性雨による生体への影響

酸性雨とは,その文字通り,雨が酸性になる現象のことです。

ただ,雨が酸性になること自体は至って普通にみられる現象です。なぜなら,空気中の二酸化炭素が雨粒の中に溶け込み,pH(ペーハー:酸性で値が低く6未満,中性で6~8,アルカリ性で8以上)は通常,弱酸性の pH = 5.6 程度に保たれているからです。

そして,これを基準として,pH = 5.6 よりも値が低ければ酸性雨と呼ばれるようです。

では,どうして雨が酸性に振れるんでしょうか?

 

それは,火山噴火や化石燃料を燃焼させたときに排出される硫黄酸化物SOx)や窒素酸化物NOx)などの大気汚染物質が,雲粒や雨粒に取り込まれた結果,硫酸や硝酸などの強い酸性をもつ物質が生成されることで引き起こされます。

 

雨が酸性になると,土壌や湖沼に酸が蓄積して酸性化し,魚が住めなくなったり,木が枯れたりして生態系に大きな影響を引き起こすのです。

植物が枯れると光合成量が少なくなり,大気中の二酸化炭素量が増えて地球温暖化につながるなど,ますます地球環境は悪循環に陥ってしまいますね。

 

光化学スモッグ健康被害

ニュースなどでたまに聞く「光化学スモッグ」という言葉。正直,何が問題なのか今一つ分かっていませんでした。スモッグで景色がぼやけて見にくくなるのかな,くらいの認識だったのです。

 

工場や自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物NOx)や揮発性有機化合物VOCs)などの微粒子が,太陽放射の紫外線によって化学反応を起こしてオゾンなどの光化学オキシダントを生成し,それによって見通しが低下した状態のことを光化学スモッグといいます。

下の写真がその光化学スモッグの写真だそうです(5月〜8月にかけて多く発生「光化学スモッグ」その傾向と対策 - ウェザーニュース (weathernews.jp)より引用)。

ぼんやりと霞んでいるのが分かります。

工場・自動車の排ガスなどに含まれる物質が原因となるため,都市部で顕著に起こる現象です。また,太陽放射の紫外線が光化学オキシダント生成を媒介するので,太陽放射が強くなる5月から9月にかけて発生しやすくなります。

 

そして光化学スモッグによって発生したオゾンなどの物質は人体にも影響することが報告されています。

主な症状としては目がチカチカしたり,喉がイガイガしたりといったもの。症状が重くなると呼吸困難などの意識障害を引き起こすそうです。

 

ですので,今後光化学スモッグ注意報や警報が発令された場合には,窓やカーテンを閉め外出を控えるなどの対応が必要です。特に,気管支喘息の方や,高齢者,乳幼児は光化学スモッグの影響を受けやすい可能性があり,注意する必要があります。

 

ヒートアイランド現象と生体への影響

最後はヒートアイランド現象について。

ヒートアイランドとは,Heat(熱)とIsland(島)の二つの言葉を組み合わせたもので,「熱い島」という意味です。

 

まずは下の図を見てみます(ヒートアイランド関連図表 | 大気環境・自動車対策 | 環境省 (env.go.jp)より引用)。

関東地方における気温が30℃以上を超えた合計時間について,1980年からの4年間と,2003年からの4年間を比較したものです。

明らかに2003年に入って暑い日が増えているのが分かりますね。特に都市部で顕著な結果になっています。

 

この理由のひとつに地球温暖化の影響がありますが,それだけではありません。

もともと草地や森林,田畑だったところが,コンクリート建造物やアスファルト舗装などによって覆われてしまうことで,水は直接排水溝へと流れていくため,地表面からの水の蒸発量は少なくなります

水は蒸発するときに,周りの熱を奪い(潜熱),周辺の気温を低下させる効果があるのですが,都市化によって潜熱による熱輸送が少なくなるため熱がこもりやすくなるのです。

さらに,都市部では電気やガスなどのエネルギー消費量が大きく,それによって排出される熱が都市のヒートアイランド化に拍車をかけているのです。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 火山噴火によって大気中にエアロゾルが噴出すると,上空で太陽光が散乱・吸収され,地上の気温は低下する。これを日傘効果という。
  • 黄砂は春先から初夏にかけて発生頻度が高い気象現象である。
  • 黄砂が飛来する過程で花粉や汚染物質を付着して毒性が高くなり,深刻なアレルギー症状などの健康被害を引き起こす危険性がある。
  • pHの値が5.6よりも値が小さい雨のことを一般的に酸性雨と呼ぶ。
  • 酸性雨は,硫黄酸化物や窒素酸化物などの大気汚染物質が雲粒や雨粒に取り込まれた結果,硫酸や硝酸などの物質が生成されることで引き起こされる。
  • 土壌や湖沼に酸が蓄積して酸性化し,生態系に大きな影響を引き起こす。
  • 工場や自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物や揮発性有機化合物などの微粒子が,太陽放射の紫外線によって化学反応を起こしてオゾンなどの光化学オキシダントを生成し,それによって見通しが低下した状態のことを光化学スモッグという。
  • 光化学スモッグによって発生したオゾンなどの物質は人体にも悪影響をおよぼす。
  • コンクリート建造物やアスファルト舗装などによって,潜熱による熱輸送が少なくなるため熱がこもりやすくなりヒートアイランド現象が引き起こされる。
  • 電気やガスなどのエネルギー消費量が大きく,それによって排出される熱が都市のヒートアイランド化に拍車をかけている。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。