Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強中の社会人ブログ

【天気図】JPCZとカルマン渦

 

2023年11月24日,にわかにX(旧Twitter)が気象関連で湧き立ちました。どうもJPCZとカルマン渦が天気図上に登場したようです。

 

みんなJPCZ好きなんですね。まぁ私も好きですけどね。なぜなら視覚的に分かりやすいから。でもJPCZは大雪をもたらすので,出現したからといってはしゃいではいられないのです。

そんなこんなで今回は先日起こった気象現象について,ちょうど良い機会ですので勉強していくことにします。

 

 

JPCZ

下は2023年11月24日の13時半ごろの可視画像です。

日本海には筋上の雲が広がっていますが,その雲を裂くように朝鮮半島の付け根から北陸地方にかけて帯ができているのが見て取れます。

これはJPCZ日本海寒帯気団収束帯,一部メディアでは線状降雪帯)と呼ばれています。

朝鮮半島の付け根には長白山脈という2000メートル級の山々が連なる山脈があり,ここに大陸から流れてきた冷たい空気がぶつかり分岐し,その下流で再び合流して空気が収束することで上昇流が起こって積乱雲などの対流性の雲ができるのでしたね(下図参照)。

 

このときの地上天気図を見てみると,JPCZができているところで等圧線が湾曲した気圧の谷ができていることが分かります(下図のオレンジ線)。

空気が収束する場所では上昇流が生じ,地上では気圧が低くなるため,このような気圧の谷が見られることが多くなります。

天気図上にちゃんとその兆候が表れているのが見ていて楽しいですね。

 

カルマン渦

JPCZが現れたのと同じタイミングで,韓国の済州島(チェジュ島)の南にカルマン渦が発生していました。

下の写真を見たら一目瞭然。主に層積雲から成る雲の渦です。

コーヒーにミルクを入れてかき混ぜるときのような渦巻きが写っています。

この時刻付近の済州島の天気記号を見てみるとたしかに下層雲に層積雲 があり,この日の雲はほとんどが層積雲で占められていることも分かります。

 

そして,このカルマン渦とは流体の流れの中に障害物を置いたときに,その下流で交互にできる渦のこと流体力学の研究者であるカルマンという学者さんの名前に由来しています。その渦については下のアニメーションが分かりやすい。

   

カルマン渦は身近にも存在しているようで,野球のナックルボールであったり,旗が風ではためくのもこの物理が関係しているそうです。

 

今回の気象現象においては,済州島が空気の流れの障害物となってカルマン渦列ができていますが,他にも主に冬季に屋久利尻島などでも見ることができます。

では,空気の流れを遮れば必ずカルマン渦列が見られるかというと,そう簡単でもないようですね。そこにはいくつか条件があります。

 

まずは雲が発生していること。カルマン渦が可視化できるようになるためには雲がないといけません。

また,風向がほぼ一定で比較的強い風が吹いていること

そして,高度1km付近に顕著な逆転層があり,山頂がその高度よりも高いこと。この日の済州島でのエマグラムを,ワイオミング大学のサイトから取得して解析してみると以下のようでした。

840hPaあたりに逆転層がありますね。高度は約1500mになります。

済州島中心には漢拏(ハルラ)山という約2000mの山があり,確かに逆転層高度よりも山頂の高さの方が高いことが分かりました。逆転層があるところはきわめて大気が安定であるため,上から蓋をされているような形となり,下層の寒気は山を迂回するように流れる結果,その下流でカルマン渦が現れるのです。

 

カルマン渦についての詳細な解説動画は下の動画を参考にしてください。私も現在勉強中。


www.youtube.com

 

このように,衛星画像にはJPCZとカルマン渦が出現し,冬がいよいよやってきたと感じた11月下旬なのでした。

 

天気図理解のメモ
  • JPCZは,朝鮮半島の付け根の山脈に大陸から流れてきた空気がぶつかることで分岐し,その下流で空気が収束し悪天候となる。
  • JPCZができているところで等圧線が湾曲した気圧の谷ができることが多い。
  • カルマン渦とは流体(空気)の流れの中に障害物(孤立峰など)を置いたときに,その下流で交互にできる渦のこと。気象において,主に層積雲から成る雲の渦となる。
  • カルマン渦は,済州島屋久島や利尻島などで主に冬季に見ることができる。
  • カルマン渦ができるには,風向がほぼ一定で比較的強い風が吹いていること,高度1km付近に顕著な逆転層があり山頂がその高度よりも高いことなどの条件がそろう必要がある。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトを参考・引用させていただきました。