今回は水防法について。前回災害対策基本法について学びましたが,今回の法律とはどのように違うのでしょうか?
勉強していきましょう。
水防法とは
水防法とは,洪水や津波,高潮などに際して水災を警戒・防御し,その被害を軽減することで公共の安全を保持することを目的として制定された法律です。1949年に施行されたということで災害対策基本法よりも古い法律になります。
災害対策基本法では暴風・竜巻・豪雨・豪雪・洪水・土石流・高潮・地震・津波・噴火・火事などの災害全般に対して防災体制について記述されていましたが,水防法は水災にのみ焦点を当てて防災対策・防災体制について書かれているようですね。
(目的)第一条 この法律は、洪水、雨水出水、津波又は高潮に際し、水災を警戒し、防御し、及びこれによる被害を軽減し、もつて公共の安全を保持することを目的とする。
雨水出水とは内水氾濫のことで,排水能力を超えた大量の水が下水道などからあふれ出て町が水浸しになることをいいます(河川から水があふれて市街地を水浸しにすることを洪水もしくは外水氾濫といいます)。
では,どのような体制で警戒・防御を行うかというと,それが洪水予報と水防警報になります。
洪水予報
まず洪水予報についてですが,洪水や津波,高波のおそれがあるときにその情報を周知させるための流れが以下に述べられています。
(国の機関が行う洪水予報等)第十条 気象庁長官は、気象等の状況により洪水、津波又は高潮のおそれがあると認められるときは、その状況を国土交通大臣及び関係都道府県知事に通知するとともに、必要に応じ放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関(以下「報道機関」という。)の協力を求めて、これを一般に周知させなければならない。 (都道府県知事が行う洪水予報)
まず,気象庁長官の役割について。気象庁長官は,洪水や津波,高潮のおそれがあるときには国土交通省と都道府県知事に通知して,必要があればTV局やラジオ局,新聞社などに協力してもらって住民に周知する義務を負います。
次に国土交通大臣の役割。国土交通大臣は,気象庁長官からの通知を受けたときに,大きい河川(国土交通省が指定する一級河川など)が氾濫するおそれがあれば,気象庁長官と共同してその水位または流量のいずれか(氾濫後であれば,水位または流量または氾濫により浸水する区域と水深のいずれか)を示して関連する都道府県知事*1に通知して,必要があればTV局やラジオ局,新聞社などに協力してもらって住民に周知しなければいけません。
最後に都道府県知事の役割ですが,(大きい河川で洪水などのおそれがあったときに)気象庁長官や国土交通大臣からの通知があった場合には直ちに水防管理者(市町村長など)に通知しなくてはいけません。また,小さい河川(国土交通省の指定範囲外の河川)が洪水などのおそれがあった場合には,気象庁長官と共同してその水位または流量のいずれかを示して水防管理者等に通知して,必要があればTV局やラジオ局,新聞社などに協力してもらって住民に周知しなければいけないようです。
話がややこしいので下に図としてまとめておきます。
水防警報
では今度は水防警報について。水防警報とは何でしょうか?
洪水予報が一般に周知される予報であるのに対して,水防警報というのは水防機関(水防団など)へ出動と準備を促すための警報であるとのこと。水防警報を出すのは,(大きい河川・湖沼*2なら)国土交通大臣,(小さい河川や湖沼なら)都道府県知事の役割です。
(水防警報)
これも図を示した方が分かりやすい。
法律というのはなんとも読みづらくて一般市民からは理解しづらいものですが,この辺は(気象の試験を受ける上では)頑張って覚えた者勝ちというところでしょうか。
【まとめ】学習の要点
ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
- 水防法とは,洪水や津波,高潮などに際して水災を警戒・防御し,その被害を軽減することで公共の安全を保持することを目的として制定された法律。
(洪水予報)
- 洪水予報とは,洪水や津波,高波のおそれがあるときにその情報を一般に周知させるための予報。
- 気象庁長官の役割:国土交通省と都道府県知事に通知しなければならない。
- 国土交通大臣の役割:大きい河川(国土交通省が指定する一級河川など)が氾濫するおそれがあれば,気象庁長官と共同してその水位または流量のいずれか(氾濫後であれば,水位または流量または氾濫により浸水する区域と水深のいずれか)を示して関連する都道府県知事に通知しなければならない。
- 都道府県知事:大きい河川の場合は直ちに水防管理者・量水評管理者に通知。小さい河川の場合は気象庁長官と共同してその水位または流量のいずれかを示して水防管理者・量水評管理者に通知しなければならない。
- 上記,いずれも必要に応じて,報道機関の協力を求めて,一般に周知させなければならない。
(水防警報)
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。