Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第85回 水防法

 

今回は水防法について。前回災害対策基本法について学びましたが,今回の法律とはどのように違うのでしょうか?

勉強していきましょう。

 

 

水防法とは

水防法とは,洪水津波高潮などに際して水災を警戒・防御し,その被害を軽減することで公共の安全を保持することを目的として制定された法律です。1949年に施行されたということで災害対策基本法よりも古い法律になります。

災害対策基本法では暴風・竜巻・豪雨・豪雪・洪水・土石流・高潮・地震津波・噴火・火事などの災害全般に対して防災体制について記述されていましたが,水防法は水災にのみ焦点を当てて防災対策・防災体制について書かれているようですね。

(目的)
第一条 この法律は、洪水、雨水出水、津波又は高潮に際し、水災を警戒し、防御し、及びこれによる被害を軽減し、もつて公共の安全を保持することを目的とする。

雨水出水とは内水氾濫のことで,排水能力を超えた大量の水が下水道などからあふれ出て町が水浸しになることをいいます(河川から水があふれて市街地を水浸しにすることを洪水もしくは外水氾濫といいます)。

 

では,どのような体制で警戒・防御を行うかというと,それが洪水予報水防警報になります。

 

洪水予報

まず洪水予報についてですが,洪水や津波,高波のおそれがあるときにその情報を周知させるための流れが以下に述べられています。

(国の機関が行う洪水予報等)
第十条 気象庁長官は、気象等の状況により洪水、津波又は高潮のおそれがあると認められるときは、その状況を国土交通大臣及び関係都道府県知事に通知するとともに、必要に応じ放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関(以下「報道機関」という。)の協力を求めて、これを一般に周知させなければならない。
 国土交通大臣は、二以上の都府県の区域にわたる河川その他の流域面積が大きい河川で洪水により国民経済上重大な損害を生ずるおそれがあるものとして指定した河川について、気象庁長官と共同して、洪水のおそれがあると認められるときは水位又は流量を、はん濫した後においては水位若しくは流量又ははん濫により浸水する区域及びその水深を示して当該河川の状況を関係都道府県知事に通知するとともに、必要に応じ報道機関の協力を求めて、これを一般に周知させなければならない。
 都道府県知事は、前二項の規定による通知を受けた場合においては、直ちに都道府県の水防計画で定める水防管理者及び量水標管理者(量水標等の管理者をいう。以下同じ。)に、その受けた通知に係る事項(量水標管理者にあつては、洪水又は高潮に係る事項に限る。)を通知しなければならない。
都道府県知事が行う洪水予報)
第十一条 都道府県知事は、前条第二項の規定により国土交通大臣が指定した河川以外の流域面積が大きい河川で洪水により相当な損害を生ずるおそれがあるものとして指定した河川について、洪水のおそれがあると認められるときは、気象庁長官と共同して、その状況を水位又は流量を示して直ちに都道府県の水防計画で定める水防管理者及び量水標管理者に通知するとともに、必要に応じ報道機関の協力を求めて、これを一般に周知させなければならない。

まず,気象庁長官の役割について。気象庁長官は,洪水や津波,高潮のおそれがあるときには国土交通省都道府県知事に通知して,必要があればTV局やラジオ局,新聞社などに協力してもらって住民に周知する義務を負います。

 

次に国土交通大臣の役割。国土交通大臣は,気象庁長官からの通知を受けたときに,大きい河川(国土交通省が指定する一級河川など)が氾濫するおそれがあれば,気象庁長官と共同してその水位または流量のいずれか(氾濫後であれば,水位または流量または氾濫により浸水する区域と水深のいずれか)を示して関連する都道府県知事*1に通知して,必要があればTV局やラジオ局,新聞社などに協力してもらって住民に周知しなければいけません。

 

最後に都道府県知事の役割ですが,(大きい河川で洪水などのおそれがあったときに)気象庁長官や国土交通大臣からの通知があった場合には直ちに水防管理者(市町村長など)に通知しなくてはいけません。また,小さい河川(国土交通省の指定範囲外の河川)が洪水などのおそれがあった場合には,気象庁長官と共同してその水位または流量のいずれかを示して水防管理者等に通知して,必要があればTV局やラジオ局,新聞社などに協力してもらって住民に周知しなければいけないようです。

話がややこしいので下に図としてまとめておきます。

 

水防警報

では今度は水防警報について。水防警報とは何でしょうか?

洪水予報が一般に周知される予報であるのに対して,水防警報というのは水防機関(水防団など)へ出動と準備を促すための警報であるとのこと。水防警報を出すのは,(大きい河川・湖沼*2なら)国土交通大臣,(小さい河川や湖沼なら)都道府県知事の役割です。

(水防警報)
第十六条 国土交通大臣は、洪水、津波又は高潮により国民経済上重大な損害を生ずるおそれがあると認めて指定した河川、湖沼又は海岸について、都道府県知事は、国土交通大臣が指定した河川、湖沼又は海岸以外の河川、湖沼又は海岸で洪水、津波又は高潮により相当な損害を生ずるおそれがあると認めて指定したものについて、水防警報をしなければならない。
 国土交通大臣は、前項の規定により水防警報をしたときは、直ちにその警報事項を関係都道府県知事に通知しなければならない。
 都道府県知事は、第一項の規定により水防警報をしたとき、又は前項の規定により通知を受けたときは、都道府県の水防計画で定めるところにより、直ちにその警報事項又はその受けた通知に係る事項を関係水防管理者その他水防に関係のある機関に通知しなければならない。

これも図を示した方が分かりやすい。

 

法律というのはなんとも読みづらくて一般市民からは理解しづらいものですが,この辺は(気象の試験を受ける上では)頑張って覚えた者勝ちというところでしょうか。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 水防法とは,洪水や津波,高潮などに際して水災を警戒・防御し,その被害を軽減することで公共の安全を保持することを目的として制定された法律。

 

(洪水予報)

  • 洪水予報とは,洪水や津波,高波のおそれがあるときにその情報を一般に周知させるための予報。
  • 気象庁長官の役割:国土交通省都道府県知事に通知しなければならない。
  • 国土交通大臣の役割:大きい河川(国土交通省が指定する一級河川など)が氾濫するおそれがあれば,気象庁長官と共同してその水位または流量のいずれか(氾濫後であれば,水位または流量または氾濫により浸水する区域と水深のいずれか)を示して関連する都道府県知事に通知しなければならない。
  • 都道府県知事:大きい河川の場合は直ちに水防管理者・量水評管理者に通知。小さい河川の場合は気象庁長官と共同してその水位または流量のいずれかを示して水防管理者・量水評管理者に通知しなければならない。
  • 上記,いずれも必要に応じて,報道機関の協力を求めて,一般に周知させなければならない。

 

(水防警報)

  • 水防警報というのは水防機関(水防団など)へ出動と準備を促すための警報。
  • 国土交通大臣指定の河川・湖沼・海岸なら,国土交通大臣が水防警報を出す。
  • それ以外の河川・湖沼・海岸なら,都道府県知事が水防警報を出す。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:河川が2つの都道府県にまたがっていることもあるため「関連する」と表記される

*2:正確には国土交通大臣指定の河川、湖沼、海岸