Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第62回 台風の構造

 

引き続きの台風の回。今回は台風の構造についてです。

 

 

台風の構造

まずは実際に台風の映像を見てみましょう。

下の動画は台風の目に入って,その構造を捉えたときのものです。非常に貴重な映像です。


www.youtube.com

台風の目の上空からは海が見えることから,厚い雲がないことが分かります。一方,台風の目の周囲には高く聳え立つ分厚い雲の壁が見られます。

 

上の動画の他にも,サイエンスZEROの動画なども非常に分かりやすくておススメですので,ぜひご覧ください(動画共有が無効のためリンクを貼っておきます)。

[サイエンスZERO] 超大型台風の“目”に突入!命がけの観測に密着 | 台風予測の新常識発見 | まるで“神々の園”!? | NHK - YouTube

 

 

台風は北半球では反時計回りに渦を巻いて回転しており,その中心は雲のない空洞部分ができ「台風の目)」と呼ばれます。

この台風の目の大きさは半径10〜100km 程度と台風によってもまちまちですが,目の中では天候は穏やかで雨も強くは降らず青空すらも覗くことがあります。これは,遠心力が働いて中心部まで雲が入れないこと,また台風の目の上部では下降気流が生じて雲ができにくくなっていることが原因です。

しかし台風の目の周囲は台風の中でも最も雨風の強い領域です。そこでは非常に発達した背の高い積乱雲が,壁をつくるように台風の目を取り囲んでいます(アイウォールもしくは壁雲(かべぐも))。その高さはおよそ10~15km と,地表から対流圏界面ギリギリまで広がっているそうです。発達した台風では,アイウォールは雲頂部において外側へと広がり,キノコの傘のような蓋をする形をしています(CDOCentral Dense Overcast ;「中心部の濃い曇り領域」の意味)。

さらにアイウォールの外側では,それを取り囲むようにらせん状に積乱雲や積雲などが列をなしスパイラルバンドと呼ばれます。

下の図が分かりやすく図示されています(台風のしくみ - 日本気象協会 tenki.jpより引用)。

 

台風内部の温度分布

今度は台風内部の気温について。

下の図は台風の気温偏差分布の鉛直断面図です。横軸が中心からの距離,縦軸が高度,数字が気温偏差を表します。

気温偏差というとなんだか難しいですが,簡単に言うと,同じ高度の平均的な気温に対してどのくらい気温が高いか低いかを表した図です。値がプラスであれば,一般的なその高度における気温よりも高いことを表し,マイナスであれば低いことを表します。

図を見てみると温度分布は東西にほぼ対称になっており,その気温偏差の値はどこもプラスであることから台風内部では一般的な同じ高度における気温よりも高いことが分かります。

中でも,際立って中心部分で特に気温が高くなっていることも分かります。

このように台風内部では,同じ高度の平均的な値と比較して気温が高く,この中心部分の気温が高い構造のことを暖気核ウォームコア)といいます。

暖気核の気温が高いのは,大量の水蒸気が凝結することで潜熱が放出されること,また,中心部上部の下降気流による断熱圧縮に伴う昇温によって起こります。

 

台風内部の風の分布

最後は台風内部の風の分布について。

台風の目では,暖気核で温められて密度が小さくなった空気が地上の低気圧をつくりだします。ですので,台風の下側では気圧が低い中心部に向かって反時計周りに風が吹き込みます

しかし台風の中心部では遠心力が働き,風がある一定以上の距離から中には入り込めません。そうすると空気は螺旋状に回転しながら中心部の外側(壁雲あたり)を上昇することになります。

このとき,台風中心部は空気が少ない状態になるため,上層の空気からその空気を補充しようとします。このように中心部の上部では下降気流が生じるのです。かと言って中心部が高気圧になるかと言うとそれは逆で,台風中心部は最も気圧が低い部分になります。

下降気流によって高気圧になるワケではなく,気圧が低いからそこの空気を埋めるために下降気流を生じるという関係なのですね。

 

一方,台風の上部(ただし,中心部からある程度離れた場所)では,壁雲の中を螺旋を描いて上昇してきた空気が時計回りに吹き出します。こちらは高気圧性の大気の循環が生まれ,大気の発散が起こっているのです。

 

以上のように,台風の中では結構複雑な風の流れがあるのですね。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 台風の中心は雲のない空洞部分ができ「台風の目」と呼ばれる。
  • 台風の目の中では雨もあまり降らず,青空すら見えるほど天候が穏やかになることが多い。
  • 台風の目の周囲は最も雨風の強い領域で,「アイウォール」と呼ばれる非常に発達した背の高い積乱雲が,壁をつくるように台風の目を取り囲んでいる。
  • アイウォールの外側では,「スパイラルバンド」と呼ばれるらせん状に列をなした積乱雲や積雲が見られる。
  • 台風内部では一般的な同じ高度における気温よりも高く,特に中心部分では際立って気温が高くなっている(暖気核)。
  • 暖気核は,大量の水蒸気が凝結することによる潜熱の放出と,中心部の下降気流による断熱圧縮による昇温によるもの。
  • 台風の下側では,気圧が低い中心部に向かって反時計周りに風が吹き込む。
  • 上層の空気から,気圧の低い台風中心部へと空気を補充するために,中心部の上部では下降気流が生じる。
  • 台風の上部では,壁雲の中を螺旋を描いて上昇してきた空気が時計回りに吹き出す。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。