Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強中の社会人ブログ

【気象学勉強】第64回 積乱雲とその発達

 

さて,前回までは台風について見てきました。

今回は積乱雲のライフサイクルについて見ていくことにします。

 

 

メソスケール

メソスケールという言葉があります。気象を勉強するまで聞いたこともなかった言葉です。

メソ(meso-)というのは「中間」という意味で,例えば,四大文明メソポタミア(川の中間地点の意)とかメソ化合物(化合物合成の中間体)などで使われる接頭語です。

よって,メソスケールとはその名の通り「中間の規模」という意味があり,大規模なものと小規模なものの間に当てはまります。

気象の場合では,プラネタリー波だとかハドレー循環などは地球規模で見られる大規模な気象現象(総観スケールと呼ぶ)であり,一方でつむじ風などは小規模な気象現象に分類されます。その中間規模の気象現象をメソスケールの現象と呼ぶようです。

メソスケールの例としては,前回まで説明してきた「台風」であったり,「積乱雲」「集中豪雨」「線状降水帯」などが当てはまります。

 

今回はメソスケールの中でも積乱雲の発達について勉強していきます。

 

積乱雲

以前雲について勉強しました。

積乱雲というのは,強い上昇気流による影響で鉛直方向に発達した対流性の雲であり,雲底は地上から高度約2km程度に位置し,雲の高さはおよそ3kmから大きいもので10kmを超えるものもあります。

 

対流圏界面の高さまで発達した巨大な積乱雲は「かなとこ雲」と呼ばれ,安定な成層圏より上に発達できずに水平に広がります。水平に広がるときのかなとこの向きは,上層の風の向きに一致し,風下側に伸びることになります。下の写真がかなとこ雲。

積乱雲ができると,多くの場合,強い雨または雪、あられや雷を伴い,強度変化の大きい驟雨性の降水になります。積乱雲は頂上の高さが上空10kmを超えることもあり,この高さでは夏でも氷点下であるため雲の中には氷でできた粒も数多く存在します。夏になると多くは地表に到達するまでに解けて雨になりますが,氷の粒が大きく成長すると,地上に到達する途中でも解けきらずに夏であってもひょうが降ることがあるのです。

では,この積乱雲のライフサイクルを見てみることにしましょう。

 

積乱雲のライフサイクル

①発達期

まずは発達期。積乱雲の発達期は,全雲の中ではほとんどが上昇気流で占められます。そのため上昇流によって雲はモクモクと上へ上へと発達していくのです。

 

②成熟期(最盛期)

次は成熟期。最も積乱雲がピークとなる時期です。積乱雲の雲頂高度は最大に達し,対流圏界面にまで到達するものもあります。圏界面より上には発達できずに横方向に伸びたかなとこ雲が発達するのもこの成熟期です。

このとき,雲の上部では上昇流が,下部では下降流が共存している状態です。下部では下降流が起こると同時に強いにわか雨を降らせます。

下降流が起こる理由としては,雲の中の氷や雨粒が周囲の空気を引きずり下ろしながら落下していくことと,氷の粒が水に状態変化する際に周りから熱を吸収することで周囲の空気が冷やされて重くなることが挙げられます。

 

③衰弱期

そして衰弱期。積乱雲の中ではほとんどが下降気流で占められます。それにより雲は下の方へしぼむように小さくなっていきます。下降気流が優位となって地上からの上昇気流を阻止するためです。

地上では弱い雨を伴うことがありますが,それもすぐに止むことになります。

 

この一連の流れを頭に入れたうえで下の動画を見ると,なるほど,積乱雲が発達して衰弱していく様子が見えてきます。一般的に積乱雲が発生してから衰弱するまでは,わずか30分~1時間程度と本当に短い時間なのです。


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積乱雲の発達に伴う風

上述しましたように,積乱雲は成熟期から雲の内部では下降気流が発生するようになります。このとき,下降気流によって積乱雲の下では小規模な高気圧が形成されます。これを雷雨性高気圧(あるいはメソハイ)と呼びます。

 

下降気流が地上へと流れ込むと,地上にいる人は風を受けることになるわけですが,時に突風となって積乱雲の下で大きな被害が出ることもあります。このように地表へと吹く強い下降気流による突風をダウンバーストといいます(スケール的には水平数kmにわたる広がりをもちます)。

 

下はダウンバーストの映像。動画30秒当たりに強い風が吹いているのが分かりますね。


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このダウンバーストが地上へと達して地面に沿って水平方向へと移動するとき,ダウンバーストの先頭では小規模な前線を形成することがあります。積乱雲から流れ出た冷たい空気(冷気外出流)が,下層にある暖かい空気とぶつかることで作られるこの前線はガストフロントと呼ばれます。下の図の青線が下降流(突風ならばダウンバースト),黒破線がガストフロントを表します。

ガストフロントの水平の広がりは単一の積乱雲の場合で5~10km,マルチセル型の場合はときに数十km以上に達することもあるようです。

ガストフロントが通過すると,ダウンバーストと同じように局所的な高気圧(メソハイ)に入るため,気圧の急上昇を伴います。

下はガストフロントに伴う雲の映像。このような雲はアーク雲(アーチ雲,アーククラウド)などと呼ばれ,衛星画像でも確認できるようです。

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筋状の雲とベナール型対流

最後は筋状の雲に少しだけ触れておきます。特に冬の日本海で見られることが多い積雲・層積雲および積乱雲です。

この筋状の雲が発達する主な要因は,ベナール型対流です。

 

お味噌汁を見ていると,ぐるぐると渦をつくって対流している様子を見たことがある方も多いとおもいますが,粘性のある流体を加熱して上下の温度差がある一定以上大きくなるとハチの巣のような形になりベナール型対流が起こるのです。お味噌汁と全く同じ原理で筋状の雲もできていたわけですね。

そして対流は,下の図(雲から山の天気を学ぼう|(43)日本海の雪雲の正体 | jRO 日本山岳救助機構合同会社 (sangakujro.com))のように,温かい空気の上昇と冷たい空気の下降が交互に起こっています。

 

このとき,積雲や積乱雲といった雲が空気の上昇に伴って形成されますが,上空に強い寒気があるかでその構造も異なってきます。

 

オープンセル型は上空に強い寒気があるときに発生します。下はオープンセル型の雲(Cloud Structures - 'Open Cell' & 'Enhanced Cumulus' Structures - Description

ハチの巣状に雲が広がっているのが分かりますね。

上空の寒気が強いため,空気は冷やされて低い高度で凝結がおこり上空では乾燥することで形成されるようです。

 

一方,下はクローズドセル型の雲(雲の“細胞”:クローズドセル型 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイトより)。

クローズドセル型では上空の寒気が弱いときに発生します。こちらはハチの巣を蓋するように雲ができていますね。

上空の寒気が弱いため高い高度になるまで凝結がおこらず,逆転層付近で発生した雲が横方向に広がることで形成されるようです。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • プラネタリー波やハドレー循環などの地球規模で見られる大規模な気象現象は総観スケールと呼ぶ一方で,その大きさまで満たない台風や集中豪雨などの気象現象はメソスケールと呼ぶ。
  • 積乱雲は,強い上昇気流による影響で鉛直方向に発達した対流性の雲のこと。
  • 積乱雲の発達期は,全雲の中ではほとんどが上昇気流となっている。
  • 積乱雲の成熟期は,雲の上部では上昇流が,下部では下降流が共存している状態である。
  • 積乱雲の衰弱期では,雲の中ではほとんどが下降気流になっている。
  • 積乱雲の成熟期以降は,下降気流によって積乱雲の下では小規模な高気圧が形成される(メソハイ)。
  • 地表へと吹く強い下降気流による突風をダウンバーストと呼び,ダウンバーストの先頭では小規模な前線「ガストフロント」を形成する。
  • 冬の日本海で見られることが多い積雲および積乱雲を筋状の雲という。
  • オープンセル型は上空に強い寒気があるときに発生し,クローズドセル型では上空の寒気が弱いときに発生する。
  • 筋状の雲は高さが2.5kmほどの低い雲になる。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。