Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強中の社会人ブログ

【気象学勉強】第77回 温室効果と地球温暖化

本日は七夕。第77回の記事を七夕で迎えることができました。

 

 

地球の気温推移と地球温暖化

下のグラフは1850年から2020年までの世界の平均気温の推移を表したものです。黒の実線が実際の観測値を表しており,青の点線が人間の手が入らなかった場合の推定値です。もちろん,人為的要因を除いた場合の計算はあくまで推定値であり,本当のところは知り得ることはできないため,歴史の「if」ではあるんですが,科学技術が発達してヒトの人口も増加した1900年初頭あたりから気温の傾きが急上昇していることが見て取れます。

1900年初頭から2020年までのおよそ100年間で1℃程度の気温上昇が見られたことになるでしょうか。

気温が1℃とはなんだかわずかな値のような気がしますが,体温が37℃から38℃になると体調が大きく変わるように,地球の気温が1℃上昇しても地球規模では大きな異常が起こるのです。

例えば,気温が1℃高くなると,絶滅の危機に瀕する生物種の数が10%ずつ増える可能性が報告されており,また東南アジアのサンゴ礁の88%が失われる可能性があるなど,生物多様性に大きな悪影響を及ぼすと考えられています。

さらに日本で起こる猛暑日が1.8倍増加することがスーパーコンピューターで予測されており,気象においても大きな悪影響が出ることが示唆されているそうです。

 

そして,この地球の(異常な)平均気温上昇を地球温暖化といい,昨今の環境問題の大きな課題となっています。

 

地球温暖化温室効果

以前,地球放射について勉強しました。

weatherlearning.hatenablog.jp

大気がある場合と,大気がない場合では惑星の温度が大きく異なることを学びました。大気は,地表面から放出される赤外放射(長波放射)を吸収して,再び地表面に向かって再放射することができるのでした。

このように大気によって地表面が再び温められることで地表面付近の温度が上がる効果を温室効果と呼びます。

 

この温室効果を持つ気体として,水蒸気(地球の温室効果に最大の寄与をする),二酸化炭素(人為的に大量に排出されているため現在問題になっている),メタン二酸化炭素の25倍の強い温室効果がある。湿地帯からの発生や,化石燃料の燃焼や牛のゲップから出されてもいる),フロンガス(同じ分子数で比較したとき,二酸化炭素の数千倍の強力な温室効果がある。オゾン層破壊への影響から現在は使用が制限される),そしてオゾンなどがあります。

これらの気体が人的要因により大気に多く排出されたことで,地表面へと再放射されるエネルギー量が多くなり,熱収支バランスがおかしくなって地球がどんどんと温められているのです。

 

そして,地球温暖化によって(飽和水蒸気量が大きくなり)大気中の水蒸気が増えて温暖化が加速することが危惧されており(水蒸気フィードバック),また,極地方の氷が解けることで地球のアルベドが小さくなり(氷は太陽光を反射するが,氷が解けると太陽光がそのまま地表面に吸収される),温暖化が加速することも報告されています(アイス-アルベドフィードバック)。

さらに,地球温暖化山間部の氷河が溶けることによって海水面上昇が起こり,モルディブなど一部の国の存亡が危惧される事態へと発展しています(注意すべきなのは,海水面上昇は主に陸上の氷が溶けて海に流れ込むことで起こります。海氷が溶けても海水面はほとんど変動しません。コップに水を入れて氷を浮かべると,やがて氷は溶けますが,氷が溶けても水面が変化しないのと同じ理屈です)。

このように,地球温暖化が進んでしまうと,さらに温暖化に拍車がかかるように事態は進行し,悪循環に陥ってしまうのです。

 

二酸化炭素濃度と地球温暖化

中でも,現在の地球温暖化問題で必ず話題に上るのが二酸化炭素の排出の規制です。

下のグラフは地球全体の二酸化炭素濃度の推移を表していますが,年々増加しているのが分かりますね。

二酸化炭素濃度がギザギザと波打っているのは,季節を通して空気中の濃度が変化するからです。夏は緑が多く草木が茂るので光合成が盛んに起こり二酸化炭素濃度は低下*1します。一方,冬は落葉樹などは葉を落とし,また太陽光も弱まるため二酸化炭素濃度は増加します。

北半球が冬のときは南半球では夏なので光合成が盛んに起こっているはずですが,北半球の方が陸地面積が広く(北半球の陸地面積は南半球の約2倍),緑が多く分布しているので,結局は北半球の季節に引っ張られる形で二酸化炭素濃度は変動するのです。

 

そして,この二酸化炭素は,火山噴火などの自然起源のものの方が多いものの,石油や石炭といった化石燃料を燃やすことによって人為的に増加してきたものも少なくありません(大気中に排出される二酸化炭素の中で,人間活動によるものの割合は約50%を占める)。特に産業革命以降,人々が大量に化石燃料を使用してきた結果,偏西風などの風に乗った二酸化炭素濃度の蓄積が,現在になって地球規模で現れているようです。

下は二酸化炭素濃度の推移についての動画です。ご参考にしてください。二酸化炭素濃度が増加して温室効果が高まり,地球温暖化が加速しているのです。


www.youtube.com

 

ということで今回はここまでです。

地球温暖化に懐疑的な見方をする人もいるようですが,実際にさまざまなデータを見ていると,人間の活動が原因となって温暖化が加速しているのは間違いないでしょう。

2021年に国連組織であるIPCC気候変動に関する政府間パネル)から公表された報告書によると,

It is unequivocal that human influence has warmed the atmosphere, ocean and land. Widespread and rapid changes in the atmosphere, ocean, cryosphere and biosphere have occurred.

(人類の影響により,大気・海洋・陸地が温暖化したことは明白である。大気・海洋・雪氷圏・生物圏に広範かつ急速な変化が起きている。)

         ― Climate Change 2021: The Physical Science Basis

と記載されています。

温暖化対策への取り組みとして今から行動しておくことが,現在の美しい地球を保つうえで必要なことなんだと改めて学ばされた勉強回でした。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 地球の(異常な)平均気温上昇を地球温暖化といい,昨今の気象・環境問題の大きな課題となっている。
  • 地表面が大気によって再び温められることで地表面付近の温度が上がる効果を温室効果と呼ぶ。
  • 温室効果を持つ気体として,水蒸気,二酸化炭素,メタン,フロンガス,オゾンなどがある。
  • 二酸化炭素は,主に石油や石炭といった化石燃料を燃やすことによって増加の一途をたどっている。
  • 大気によって二酸化炭素が地球全体に運ばれ蓄積された結果,地球規模で二酸化炭素濃度の増加が見られている。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:光合成二酸化炭素から酸素をつくりだします