気象予報士試験を終えて一息ついていましたが,再び勉強を再開していきます。
今回からは天気予報についてです。天気予報はどのようなデータからどのようにして予想されるのでしょうか。
まずは天気予報のために取得されているデータから見ていくことにします。
気象観測のいろいろ
過去に気象データの観測として,アメダスだったりラジオゾンデだったりウィンドプロファイラなどを使用していることは勉強してきました。
しかし実際はそれだけではありません。陸,海,空,宇宙から気象は観測されており,さらにそれらは世界各地で観測され国際的に情報が交換されているのです。そうやって収集された膨大な数値から膨大な計算をさせることにより,未来の天気の予測が行われているのですね。
地上観測
まずは地上からの観測。最も基本的な観測方法ですね。
下の地図は地上観測データの分布を色をつけて表したものです(No51.pdf (jma.go.jp)より引用)。
世界各地で観測が行われていることが読み取れますが,特に日本,欧州,アメリカ,中国都市部などで観測数が多く,アフリカや南米などでは観測数が少ない地域があることも分かりますね。
おそらく,気象観測などの施設や研究に充てるほどの経済的な余裕がないことが原因の一つだと思われますが,アフリカは気候変動の影響を受けやすいことが言われており,アフリカでの気象観測網の整備は世界的な課題だと考えます。
日本ではアメダスなどが地上観測の主な例といえます(下写真;天気や気温を伝える「気象庁のアメダス」 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)より)。
全国およそ1300ヶ所に点在しており,そのすべてで降水量を自動観測しています。降水量に加えて気温,風向風速,日照時間*1を観測しているのは840ヶ所余りで,多雪地域ではレーザー式積雪計も設置されているところもあるそうです。
高層観測
下の地図は高層観測データの分布をプロットしたものです。
こちらは主にラジオゾンデを用いて上空の大気の状態を計測しています。地上観測網と比較すると密度は低め。
世界中で観測されていることが分かりますが,やはりアフリカで観測が少ないことが見て取れます。
日本では16ヶ所(+南極の昭和基地)でラジオゾンデ観測が行われており,世界各地で毎日決まった時刻(日本標準時では朝9時と夜21時)にゴム気球に吊るされたゾンデが高度約30kmまでの大気を観測しています。
航空機による気象観測
ここまでのアメダス・ラジオゾンデ観測についてはこれまでの復習でした。
ここからは飛行機による気象観測について。日々飛行している航空機からも気象観測が行われています。
下が航空機による観測の分布をプロットしたものです。
主要な都市をハブ(中心点,集約点)として,都市と都市とが線で結ばれているのが分かります。
航空機には前方部分に気象レーダーが搭載されており,運航中にリアルタイムで気象の状況を確認しているそうです(Aircraft weather RADAR - Aircraft Nerdsより画像引用)。
他にも外気温センサーが車体に設置されており気温の情報も取得し,また風速のデータも取得しているんですって。
飛行中に収集されるこれらの気象データは,気象庁にも届いて天気予報へと活用されています。
船舶による海上気象観測
航空機では大気の情報を取得する一方,船舶からは波の高さなどの水象についての情報が取得されています。
下の図は船舶からの気象観測の分布を表していますが,こちらは陸地にはほとんどプロットが認められないことからも船からの観測であると予想することができます。
青いプロットは船舶による観測で,オレンジ色のプロットは海洋気象ブイ(あるいは単にブイ;下写真)による観測を表します。
世界中広く分布していることが分かりますが,海洋での気象観測は陸地に比べて観測密度が小さいですね。観測密度の高さも気象予報を精度よく行う上では重要になってきます。
衛星による気象観測
最後は衛星からの観測。気象衛星では気温や日照,風などの情報を取得しているようです。
気象衛星には地球を周回する極軌道衛星と,地球の自転を追いながら定位置に留まって観測を行う静止衛星の2つがあります。
下は極軌道衛星の観測地点の分布図。
地球上を周回しているので幅広い地点での情報が取得される一方で,同じ地点の上空には1日に2度しか通り過ぎません。
そのため,とある地点の状況をずっと観測していたい場合には不向きになります。
一方で下は静止衛星の観測地点の分布図になります。
赤いプロットは日本が運用する気象衛星ひまわりです。
日本付近および太平洋で密度の濃い情報が取得されていることが分かりますね。静止衛星ではこのように日本上空のデータを一年中追うことが可能ですが,他方で日本の裏側にある南米などの情報を取得することはできません。他の衛星のデータに頼らざるを得ないのです。
このように世界中で膨大な観測データがリアルタイムで取得されており,これらのデータをスーパーコンピューター(スパコン)などの高性能計算機で計算させることで得られた数値データをもとにして天気予報はつくられているのです。
【まとめ】学習の要点
ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
- アメダスなどの観測所やラジオゾンデによる高層観測だけでなく,航空機や船舶,気象衛星からもリアルタイムで情報が取得されている。
- 取得された観測データをスーパーコンピューターで計算させて,得られた数値予報の結果をもとにして天気予報はつくられる。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。
- 『天気と気象』ニュートンプレス
- 天気や気温を伝える「気象庁のアメダス」 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
- saijiki2021_01a.pdf (jma-net.go.jp)
- Aircraft weather RADAR - Aircraft Nerds
- 【飛行中の外気温】-50℃はどのように測っている?|仕組みの話 | マニアな航空資料館 (okinawa-airport-terminal.com)
- 航空機の風速はどのようにして測るのですか? - Quora
- 海洋気象ブイ - Wikipedia
- _pdf (jst.go.jp)
- jma.go.jp/jma/kishou/books/nwptext/51/No51.pdf