Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第45回 気温の測り方

 

 

さて,今までに地上での降水量の測定方法,風の観測方法などの気象観測について紹介してきました。

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しかし,いくつかの気象パラメータの観測方法についてはまだ説明していなかったので,そちらについて記述しておくことにします。

今回は気温の測定について。ものすごく基本的なことですけど,気温ってどういった機器で測定されてるんでしょうか?

 

消える百葉箱

私が小学生だった頃,校庭の隅にはどこでも百葉箱が設置されていました。雨や太陽光を遮り,風通しも良いということで気象観測で世界中で用いられてきたようです。

しかし今現在,その百葉箱をあまり目にしなくなりました。実は1990年代には気象台や測候所では百葉箱を用いた気象観測は廃止されています。意外と前に気象庁では使われなくなっていたんですね。

百葉箱は風のない日には風通しが悪くなり,温度計が指し示す温度は真の値と4℃ほど誤った値を出すこともあり正確な気温の測定ができなかったそうで,現在では強制通風筒と呼ばれる装置を用いた観測が行われています。

 

強制通風筒(もしくは単に通風筒)

その強制通風筒とは下の写真のような装置です(福岡管区気象台|温度計のしくみ)。

筒の中には温度計や湿度計が内蔵され直射日光を遮る構造となっており,また二重構造で外管が日光で熱せられてもその影響を極力少なくなるようになっています。

強制通風筒は上部にモーターファンが内蔵されており,強制的に通風させることで風通しを良くしています。

 

気象地点で気温を測定する場合,地上1.25~2mの高さで測定することが世界的にも推奨されており,日本(気象庁)では強制通風筒の下端が地上1.5mの高さになるように設置されているようですよ。

1.5mという高さは日本人の身長にも近く人の感覚にも近い気温なので,体感からかけ離れた気温がニュースで報道されて違和感を覚えることもなさそうです。

 

電気式温度計(白金抵抗温度計)

この強制通風筒の中に設置されている温度計は電気式温度計(もしくは白金抵抗温度計)と呼ばれるものです。気象で用いられる最も一般的な温度計のようです。

Pt(白金測温抵抗体)温度計 | クリマテック株式会社 (weather.jp)

 

上のような細長い棒が白金抵抗温度計。

白金などの金属は温度が上昇するにしたがって電気抵抗が増加することが知られいます。逆に温度を下げると電気抵抗は低下し,例えばある種の金属では絶対零度(-273℃)近くまで温度を下げてやると電気抵抗がゼロになる「超伝導」という性質が出てきたりします。

そして温度によって電気抵抗が変化する特性を用いて気温を計測しているのがこの電気式温度計です。

ただ,この温度計の短所として数秒単位の急激な気温変化を精度よくとらえられない点があります。これは温度変化に対する温度計の応答するのに時間がかかるためです。

 

白金抵抗体を用いた気温観測は,地上だけでなく高層気象観測(ラジオゾンデ)でも気温センサとして用いられているようです。ただし,以前勉強したように,高層観測での気温観測は,センサ部分に太陽光が当たり気温が上昇することを考慮して補正が行われています*1

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そのほかの温度計

他の温度計についてもついでにご紹介。

 

  • ガラス製温度計(水銀温度計,アルコール温度計)

私が小学生のときあらゆるところで見かけたガラス製温度計。体温を測る際にデジタルの温度計だけでなく水銀温度計も使っていた記憶もあります。

また,上の写真のように赤い液体の入った温度計はアルコール温度計と呼ばれます。理科の実験でも使用した覚えがありますが,公式の気象の世界ではあまり活用されてなさそうですね(知らんけど)。

設置や移動が簡単なので今でも学校では使われてそうですが,どうなんですかね?

 

  • 金属製温度計

時計みたいな温度計。どこかで見たことがあると思っていたらサウナとかについてるやつですね。誤差が大きいため気象には用いられません。

 

最高気温・最低気温

気温は平均値をとらずに,観測されたその瞬間の温度を発表しています(一方で風などはその瞬間瞬間による風速のバラツキが大きいため,10分間の平均値をとって算出します)。

たとえば気象庁のサイトでは気温は10分毎に発表されていますが,この値も平均値ではなく直近の観測値が表示されます。

 

では,最後に最高気温最低気温について言及しておきます。

 

まず,地上気温観測において統計データとして残る最高気温・最低気温」は午前0時から24時までの間の最大値および最小値のことを指します。

例えば,下の表のように2023年1月24日における高知の気温を見てみると,気温の極大値は10時ごろの9.1℃,極小値は24時の-3.0℃になっていますので,この日の最高気温は9.1℃付近,最低気温は-3.0℃付近で記録されているはずです*2


しかし,前日の高知ニュースの天気予報(『最強寒波』24日は午後から気温下がる見込み…25日にかけて警報級の大雪となるおそれも(高知地方気象台) | TBS NEWS DIG)では,最高気温は10℃,最低気温は5℃と予報されており,最低気温の予報値が実際の観測値よりも8℃程度も高く見積もられているのが分かりますね。

こんなにも天気の予報精度が悪いのでしょうか?

いえ,そうではないようです。これには天気予報における最高気温と最低気温」の言葉の定義を知る必要があります。

 

気象庁が発表する翌日までの予想気温の定義は,

 〇最低気温・・・「午前0時~9時までの最低気温」
 〇最高気温・・・「午前9時~午後18時までの最高気温」

となっています。時間帯を区切って予報しているわけですね。

民間会社もこの気象庁の時間帯区切りを採用しているところが多いようですが,一部の会社は15時までの気温だったりと独自の時間帯で最高・最低気温を出しているところもあるようです。

 

この定義に従うと,前日に発表される2023年1月24日の予想気温は,最低気温が朝7時頃の4.9℃付近(午前9時までの最低気温の値),最高気温が午前10時頃の9.1℃付近(午前9時から午後18時までの最高気温の値)と予測されることになり,だいたい前日の予報とも一致してきます。

すなわち,午後から急激に気温が低下してその日の中で最も低い気温を示したとしても,前日の最低気温の予報には考慮されないんですね。同様に,夜明け前に最高気温を観測したとしても,前日の最高気温の予報には反映されないことになります。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 強制通風筒と呼ばれる装置を用いた気温の観測が行われる。
  • 強制通風筒は上部にモーターファンが内蔵されており,強制的に通風させることで風通しを良くしている。
  • 気象庁では強制通風筒の下端が地上1.5mの高さになるように設置する決まりになっている。
  • 温度計は電気式温度計(もしくは白金抵抗温度計)が主に用いられる。
  • 白金などの金属が温度が上昇するにしたがって電気抵抗が増加する特性を利用して気温を測定するのが白金抵抗温度計の原理。
  • 気温は平均値をとらずに,観測されたその瞬間の温度が発表される。
  • 天気予報における最高気温と最低気温は以下で定義される。

   〇最低気温…「午前0時~9時までに予測される最低気温」

   〇最高気温…「午前9時~午後18時までに予測される最高気温」

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:日射の影響が強くなる上空ほど補正値は大きくなる

*2:午前0時の観測値は前日の24時のデータの観測値として扱う