Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強中の社会人ブログ

【気象学勉強】第9回 レイリー散乱とミー散乱と幾何光学的散乱

 

さて,これまで太陽放射や地球放射について学んできました。今日は散乱について。

この散乱が終われば,次から本格的に天気の話になっていきます。わくわく。

 

散乱・屈折・反射

電磁波は真空中ではまっすぐに進む性質がありますが,途中で何か物体に当たったときにはその振る舞いは大きく変化することになります。

例えば,行く手を遮る分子や微粒子に当たったときは,そこから四方八方に方向を変え二次的な電磁波を発生することがあります(散乱)。

鏡のようなものに当たったときは,同じ角度で跳ね返されることもあります(反射)。

一方で電磁波がそのまま物体の中に入り込み,進行方向が少しだけ変化することだってあります(屈折)。

 

どれも進行方向を変えられるという点では良く似た言葉ですが,別々の言葉として使われているため混同しないように気をつけなければいけません。

 

散乱

タバコの煙のことを紫煙と呼びます。タバコの先から上がっている煙が紫色っぽく見えることからその名前がついたようです。

しかしタバコを吸って吐く煙は白っぽい白煙なんですって。

これはタバコから上がる粒子が非常に細かいのに対して,吐いた煙の粒子は肺の中の水蒸気などが付着して大きくなり散乱の仕方が異なることに由来します。タバコから立ち上る煙は「レイリー散乱」という方式で,口から吐く煙は「ミー散乱」と呼ばれる方式で散乱されるのです。

ここからはそれらの散乱について見ていきましょう。

 

レイリー散乱

タバコの話でもありましたように細かい粒子に光が当たって散乱した結果見られるのがレイリー散乱です。細かいというのは,光の波長に対して十分に小さい(10分の1程度以下)のときに発生するようです。

例えば空の色がレイリー散乱の主な例です。

太陽光線の多くは可視光領域(波長は  0.38 ~0.77  \rm{\mu m})の光であり,邪魔をする粒子は大気中の分子(数 \rm{nm})ですから,波長と比較して粒子の大きさは非常に小さいことが分かりますね。

 

そして世の中賢い人がいるもんで,これらの散乱の法則を式にまとめてしまった物理学者がいるようです。その名もレイリー卿。

その方によると,散乱強度はぶつかる粒子の直径の6乗に比例し,波長の4乗に反比例するのだそう。

そして散乱して前方に行く光と後方に向かう光の強度はほぼ同程度でかつ最大となり,入射した光と垂直方向に向かう光は最も弱くなるという性質を持っています。

散乱された前後で光の波長が変化しないことにも注意が必要です。

 


散乱強度  I  を式で表すと

    I \propto \dfrac{d^6}{\lambda^4}(1+ \rm{cos}^2 \theta)I_0   (※   \propto は比例するという意味) 

のようです。

ここで  I_0  は入射光の強度, d  は粒子の直径, \lambda  は入射光の波長, \theta  は散乱角です。

角度がたしかに  \theta = 0° だと最も散乱が強く,  \theta = 90° だと最も散乱が弱くなることがこの式からも分かりますね。

 

空が青い理由

空が青く見えるのはレイリー散乱ということでしたが,その理由はなぜなんでしょうか。

太陽光線の多くは可視光領域(波長は  0.38 ~0.77  \rm{\mu m})であることは先ほど述べました。そして可視光の中でも赤い光は波長が長く,青紫の光は波長が短いことは以前述べていますね。

すると上記の散乱強度の式に当てはめると,波長の短い青紫の光の散乱強度が非常に強くなることが分かります。

 

例えば  0.4  \rm{\mu m} の青紫の光と  0.8  \rm{\mu m} の赤い光で比較してみましょう。散乱強度  I  は

    I \propto \dfrac{1}{\lambda^4} 

なので,波長が半分の青紫の散乱強度は赤い光に比べて16倍も強いことが計算から求まります。

散乱されても光の波長は変化しませんので,青紫の光が散乱すると二次的に複数の青紫の光を発生させることになり,これが何度も繰り返されることで空全体が青く広がっていきます。

これが空が青い理由なんですね(タバコの煙も全く同じで,青紫の光の散乱強度が強いので,紫色に見えているのです)。

 

しかし夕方は空が赤くなりますよ。これまでの話だけだと夕焼けをうまく説明できません。それには太陽光が通過する大気の距離を考慮する必要があります。

 

昼は太陽光が頭上からやってくるので,太陽光は空気中を進む距離は短くて済むのですが,夕方は斜めから太陽光が入ってくるので太陽光が私たちの目までやってくるのに長い距離進む必要があります。

すると,夕方では太陽光の青紫の短い波長の光が散乱されつくされてしまい,結果的に散乱強度の弱い赤い光が私たちの網膜に届くというワケですね。

もちろん朝焼けも同じ理屈です。

 

ミー散乱

タバコの吐く煙が白いのはミー散乱であると述べました。

ミー散乱はレイリー散乱よりも粒子の直径が大きい物体に光が散乱されたときに起こります。

太陽光線の波長がだいたい衝突する粒子の半径と同じくらいのとき。すなわち粒子の直径が 数~数十 \rm{\mu m} 程度のときに起こると言われています。

 

例えばミー散乱の代表が。雲が白いのはこの散乱によるためです。

そして白くなることからも分かるように,どの波長の光も同程度に散乱させる性質があります。ミー散乱が仮に特定の波長の光だけ,例えば緑色の波長だけを強く散乱させる性質があったら,雲は緑に染まるはずですから。すなわちミー散乱は波長に依存しない散乱強度を持っているのですね。

 

幾何光学的散乱

最後に紹介するのが幾何光学的散乱

太陽光線の波長よりも極めて大きい粒子(数mmと私たちの目で容易に見える程度)にぶつかるときの散乱です。

 

その代表が。自然が魅せてくれる美しい自然現象の一つでもあります。

でもなんであんなキレイに色が分かれるのでしょう?

 

虹のできる原理は次回に回すことにしましょう。

 

 

【まとめ】学習の要点

今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 電磁波が物体にぶつかったとき,散乱,反射,屈折などの現象が起こる。
  • 電磁波が分子や微粒子に当たったとき四方八方に方向を変え二次的な電磁波を発生することを散乱と呼ぶ。
  • 散乱にはぶつかる粒子の大きさが小さいものから「レイリー散乱」,「ミー散乱」,「幾何光学的散乱」の3つに大別される。
  • レイリー散乱の散乱強度は,当たった粒子径の6乗に比例し,入射波長の4乗に反比例する。
  • レイリー散乱の散乱強度は,前方に行く光と後方に向かう光の強度はほぼ同程度でかつ最大となり,入射と垂直方向に向かう光は最も弱くなる。
  • レイリー散乱の代表として空の色が挙げられる。
  • ミー散乱は入射波長に大きくは依存せず,どの波長の光も同程度に散乱させる性質がある。
  • ミー散乱の代表として雲の白さが挙げられる。
  • 太陽光線の波長よりも極めて大きい粒子にぶつかるときの散乱が幾何光学的散乱。
  • 幾何光学的散乱の代表として虹が挙げられる。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。