今回も前回に引き続き気象観測について。
今回は日射・日照の観測です。
太陽放射から受け取るエネルギー
以前,太陽放射によって地表面が受け取るエネルギーについて勉強しました。
雲や大気からのエネルギーの損失を無視できる地球大気上層で,太陽光線に垂直な面において1秒間に単位面積あたりに受け取るエネルギーは
()
となり,これを太陽定数と呼んだのでした。
実際には雲や大気によって太陽光線は散乱・反射・吸収されるので,地面に届くエネルギーはその70%ほどの ()程度です。
散乱されずに太陽光が直接地表に届くエネルギーは直達日射量と呼ばれます。一方,太陽光が途中で散乱して間接的に地表に届くエネルギーを散乱日射量と呼び,直達日射量と散乱日射量を合計したものを全天日射量と呼びます。下の図が分かりやすいです(sekkei_1.pdf (meti.go.jp)より引用・改変)。
注意しなければいけないのは,直達日射量は太陽光線に垂直な面で受け取ったエネルギーである一方,散乱日射量・全天日射量は地表面に水平な面で受け取ったエネルギーのようです。
太陽定数,直達日射量,散乱日射量と全天日射量と何だか定義がいろいろあって混乱しますね。
直達日射量
直達日射とは散乱されずに直接地上に到達する太陽放射のことを指します。
測定機器は以下のように周囲からの日射が入らないように筒状で,太陽からの直接光だけを取り込む構造になっています。常に太陽を追跡しながら測定しているんですね。
下の表は2022年8月の筑波における直達日射量の1時間ごとのデータです(気象庁|日射・赤外放射 (jma.go.jp))。単位は です。
値に大きなバラつきがあるのは,晴れの日と雨の日で直達日射量が大きく変わるからです。
太陽が厚い雲に覆われている(と思われる)ときは直達日射量が0の時間もありますね。一方で晴れている(だろう)日では ()以上になっているときもあります。
また直達日射量は太陽の出ていない夜間は検出できません。
ちなみに 1時間のエネルギー ()を1秒間の仕事率に書き直すと,
()= ()
となり,よく晴れた真昼の1秒間だけを切り取ると,約 () 程度の直達日射量が観測されることになります。
散乱日射量
地球大気上層から入った太陽光が途中で散乱して間接的に太陽から地表に届く放射を散乱日射と呼びます。こちらは地表と水平面で受ける太陽放射です。
下の表は,先ほどの直達日射量の表と同じ2022年8月の筑波における散乱日射量の1時間ごとのデータです。
表を見てみると,同じ時刻で見ると,直達日射量が多い時間では散乱日射量は少なくなり,逆に直達日射量が少ない時間では散乱日射量は多くなっている傾向が認められます。雲が多いとその分太陽光が散乱され,散乱日射量は増え直達日射量が減ることが考えられます。
また,ぶ厚い雲がかかったり,雨が降ったりした日には直達日射量と散乱日射量のいずれも少なくなっている傾向がありそうです。
全天日射量
全天日射量は,直達日射量の地表水平成分と散乱日射量を合計したものであるようです。直達日射量は太陽光と垂直な面で受けたエネルギーであり,散乱日射量は地平に水平な面で受けたエネルギーであるため,直達日射量の方は地表に対する水平面成分だけ取り出して計算しているようです。
日照・日照時間
最後に日射とよく似た言葉の「日照」について説明しておきます。日射とは太陽放射そのもののことであり,日照とは太陽放射で地表面を照らすことを指します。
日照時間とは太陽光が地面を照らしている時間のことです。厳密には直達日射量が 以上を示した時間のことを表します(直達日射量で定義されることに注意)。 は地面に物体の影が映るかどうかという値らしいです。ちなみに,日射・日照については補正などは行いません(地上の気温観測や風観測と同様)。
2022年8月の筑波における日照時間も過去の気象データから閲覧することができます(気象庁|過去の気象データ検索 (jma.go.jp))。そこには日照時間も記載されています。
このように,日射・日照が日々観測されているのですね。
【まとめ】学習の要点
ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
- 太陽光が地表まで直接に平行線で受け取るエネルギーを直達日射量という。
- 晴れた日の正午ごろに直達日射量は最大値をとり,だいたい ()程度。
- 太陽光が途中で散乱したエネルギーを散乱日射量という。
- 直達日射量(の水平成分)と散乱日射量を合計したものを全天日射量という。
- 日射とは太陽放射そのもののことであり,日照とは太陽放射で地表面を照らすことを指す。
- 日照時間とは直達日射量が 以上を示した時間のこと。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。