Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第11回 湿度と飽和水蒸気量

これまでは地球の大気や太陽からの放射など天体規模の大きな話でしたが,今回からは身近な気象の話に入ります。

いよいよ天候はどのようなメカニズムで起こっているのかを本格的に理解する時が来たようです。

 

湿度の疑問

梅雨のジメジメした雨の日に私たちは「今日は湿度が高い」などと良く言います。湿度が高いと聞くとなんだか水っぽくて不快な感じがしますね。

 

例えば梅雨の時期のとある雨の日の湿度を見てみると,湿度は90%を超えていたります。

でも湿度ってそもそも何なんでしょう?

湿度100%ってのはもはや水の中のようなビチャビチャな状態ではないのでしょうか。

 

これはきちっと湿度の定義から見ていく必要がありそうです。

湿度について見ていく前にまずは飽和水蒸気量について説明しておきましょう。

 

飽和水蒸気量

夏は洗濯物がすぐに乾き,冬は洗濯物が乾くまで時間がかかることは皆さんも経験上ご存知でしょう。

風がない晴れた日に同じように日陰で干したとしても,やはり夏の方が洗濯物が乾くスピードは早いのです。夏と冬で大きく違う点は気温ですので,気温が重要なファクターであることはなんとなく予想できます。

しかし梅雨の暑い雨の日に洗濯物を干してもなかなか乾きません。冬の晴れた日よりも乾くのは遅いでしょう。

気温だけでは説明がつけられないのであれば,この現象を説明できる何か他の考え方を導入しなければいけません。

 

ここで,空気中に最大でどのくらい水蒸気が含むことができるかを表す「飽和水蒸気量」が登場します。

例えば梅雨のジメジメした25℃の雨の日と,カラッと晴れた夏の25℃の日では,もともとの空気中に含まれている水蒸気の量が違います。もちろん雨の日の方が含まれている水蒸気量は多いはずです。

そしてカラッと晴れた日の方は空気中に含まれる水蒸気量が少なくまだまだ水蒸気が入る余裕があるので,干した服に含まれる水分はそちらの方へ逃げやすく,結果的に同じ気温ならば乾燥した日のほうがより洗濯物が乾きやすいという結果になります。

 

では同じくらい乾燥した冬の日と夏の日の比較はどうでしょうか。

実は空気が含むことができる水蒸気の量は暖かくなるほど多くなります。温度が高いと水分子が熱を受けて活発に動き回ることができ,たくさんの量が気体として存在できるからです。

その結果,同じ乾燥条件ならば暑い日の方がたくさん水蒸気を取り込む余裕があるため干した服の水分はそちらに移動しやすく乾きやすいということになります。

 

各気温における飽和水蒸気量の値を見てみましょう。

 

【表1】各気温における飽和水蒸気量

さてこの飽和水蒸気量ですが,  \rm{1m^3} あたり何  \rm{g}の水蒸気を含むことができるかという指標であるので,単位は

    \rm{g/m^3}

となります。

そして重要な点ですが,この飽和水蒸気量は温度にのみ依存すること。

数式に書き表すと飽和水蒸気量  a(T) は下記のように近似できるそうです。

   a(T) = \dfrac{217×e(T)}{T + 273.15} \rm{g/m^3}) ・・・①

たしかにこの①式を見ると,温度  T しか出てこない式になっていますね(ちなみに e(T)  も温度にのみ依存する関数で飽和水蒸気圧と呼ばれます)。

 

飽和水蒸気圧

乾燥空気(水蒸気を考えない空気)はその約78%が窒素であり,約21%は酸素,残りはアルゴンや二酸化炭素が占めており,これらがそれぞれの圧力(分圧)を持ってその合計が気圧として現れています。

例えば気圧が1000hPa(約1気圧)であれば,780hPaは窒素分子の分圧で,210hPaは酸素分子の分圧,残りはアルゴン分子や二酸化炭素分子の分圧となるのです。

 

(水蒸気を含んだ)湿潤空気では,場所などによって大きく変わりますが水蒸気の割合は大気のだいたい0〜4%を占めます。よって気圧が1000hPaであればだいたい水蒸気の分圧は0〜40hPaくらいになるはずです。

そして空気が限界まで水蒸気を含んだとき(飽和水蒸気量に達したとき)の水蒸気分圧を「飽和水蒸気圧」といいます。①式の  e(T) のことです。

各温度における飽和水蒸気圧が下の【表2】です。

 

【表2】各気温における飽和水蒸気圧

 

この飽和水蒸気圧  e(T) の値は以下の式でも近似できるそうです。

   e(T)  = 6.1078×10^{\frac{7.5T}{T + 237.3}}  \rm{hPa}) ・・・②

こちらも温度しか出てこないので,温度のみに依存する関数です。

下に各温度の実際の飽和水蒸気圧と,②式の計算で求めた飽和水蒸気圧を比較してみるとこんな感じ。

②式からでも飽和水蒸気圧の値をほぼ完全に推定できていますね。

 

飽和水蒸気量と飽和水蒸気圧とよく似た言葉ではありますが,前者が空気に含まれる水蒸気の質量で後者が水蒸気の分圧を表しているだけで,片方が倍になればもう片方も倍になり対応関係があるので本質的にはそこまで違いはないものだと考えても良いかと思ってます。

 

改めて湿度とは何か

さて冒頭に戻って湿度を考えてみます。

これまでの説明の通り,空気にいくらでも水分を含むことができるわけではなく,気温によってその限界値は決まっているのでした。

とするとその限界値を基準として空気中の水蒸気量から空気の乾燥具合が推定できますね。これが湿度(相対湿度)になります。

すなわち

   湿度= \dfrac{空気中の水蒸気量}{飽和水蒸気量} ×100 \rm{%}) ・・・③

もしくは

   湿度= \dfrac{空気中の水蒸気圧}{飽和水蒸気圧} ×100 \rm{%}

で表現することができます。

 

例えば湿度が40%であれば,限界値まで60%の余裕がある空気中の水蒸気量ということになり,湿度が100%であればそれ以上水蒸気を含むことが出来ない状態にあるということです。

 

ちなみに人が快適に過ごせる湿度は40〜60%と言われており,それよりも高いと汗がうまく蒸発しないなど不快感を感じたり,それよりも低いと目や皮膚が乾燥して不快感を感じたりするそうです。

アメリカのラスベガスなどは湿度10%以下になることも少なくない乾燥した土地ですが,汗がすぐに蒸発してしまうため汗をかいてないと錯覚して脱水状態に気づくのが遅れることもあるようで,湿度が低いことは命の危険にもつながるので注意する必要があるんですね。

 

露点温度

最後は露点温度について。

何度も言っているように,飽和水蒸気圧は温度のみによって決まり,温度が高いほど大きい値をとります。

今,圧力一定のもとで飽和していない湿潤空気の温度を下げていくとします。温度を下げると空気中に含める水蒸気は少なくなるので,どこかの温度で飽和を迎え水蒸気が水へと凝結し始めます。この温度のことを露点温度といいます。これは湿度が100%になったときの温度とも言えます。

 

例えば秋のとある日にキャンプをするとします。

この日のお昼の温度は20℃で湿度は70%でした。気温20℃の飽和水蒸気量は【表1】から  17.2  \rm{g/m^3}ですので,空気に含まれている水蒸気量は③式から  17.2×0.7 = 12.0  \rm{g/m^3} であることが分かります。

夜になって温度が下がるとすると徐々に湿度は上がっていきます。気温が下がって飽和水蒸気量が小さくなっていくからです。

やがて湿度が100%になって空気中にこれ以上水蒸気が含めなくなり水滴が出てくる気温が露点温度になります。【表1】から読み取ると露点温度はだいたい15℃より少し低い14℃程度であると予想されますね。

キャンプで朝起きたときにテントに夜露がついているのは,夜に気温が低くなって水蒸気になりきれなかった水分が水滴として現れたからです。

 

一方,お昼の温度が20℃で湿度は50%だった場合は露点温度は低くなります。計算してみると露点温度はだいたい8℃程度になります。

含まれる空気中の水蒸気量がそもそも少ないので,飽和水蒸気量に達するにはそれだけ気温を低くする必要があるのです。

 

このように露点温度は空気中の水蒸気量に依存し,露点温度が高いほど空気中の水蒸気量は多いことを示し,露点温度が低いほど空気中の水蒸気量は少ないことを表しています。

 

【まとめ】学習の要点

今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 飽和水蒸気量とは空気中に最大でどのくらいの水蒸気を含むことができるかを表す指標(単位は  \rm{g/m^3})。
  • 温度が高くなるほど飽和水蒸気量は大きくなる。
  • 空気が限界まで水蒸気を含んだときの水蒸気の分圧を「飽和水蒸気圧」と呼ぶ(単位は一般的に  \rm{hPa})。
  • 飽和水蒸気量および飽和水蒸気圧は温度にのみ依存する。
  • 空気中の水蒸気量が飽和水蒸気量に対してどのくらいの割合含まれているかを表した指標を湿度(相対湿度)という。
  • 露点温度とは圧力を一定に保ったまま温度を下げたときに水蒸気が凝結を始める温度のことをいう。
  • 露点温度は空気中の水蒸気量に依存する。
  • 露点温度が高いほど空気中の水蒸気量は多く,露点温度が低いほど空気中の水蒸気量は少ないことを表す。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。