Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第35回 旋衡風

 

前回,前々回と地衡風・傾度風を紹介しましたが,今回は旋衡風について見ていきます。

旋衡風とはコリオリの力の影響が無視できるほどに小さいとき,すなわちそのスケールが十分に小さいときに見られる現象に適用されます。

例えば竜巻つむじ風塵旋風)などは旋衡風に近似できることが知られています。

 

 

旋衡風とその力の釣り合い

地衡風では気圧傾度力コリオリ力が釣り合い,傾度風では気圧傾度力コリオリ力と遠心力が釣り合いました。

今回紹介する旋衡風は気圧傾度力と遠心力が釣り合います。竜巻やつむじ風などは規模が小さいためコリオリ力を無視して考えていいのですね。地面との摩擦力も無視します。

そして旋衡風の渦の向きは右回りでも左回りでもどちらでも生じうるという点は注意が必要です。規模が大きくコリオリの力の影響が働く場合は,進行方向の右向きのコリオリ力が働き,北半球では必ず低気圧は左側に位置しますが,規模の小さい旋衡風はコリオリ力が無視でき右回り・左回りにもなるんですね。

 

式を立ててみましょう。

単位質量の空気に作用する気圧傾度力は,(気圧差を用いて求める場合には)以下のように表せます。

   F_m = -\dfrac{1}{\rho} \dfrac{\Delta P}{\Delta n} ・・・①

式がマイナスなのは気圧が高い方から低い方に働くという意味で,力の大きさは絶対値をとった方が私としては分かりやすいのでここからは絶対値で話を進めます。

 

また単位質量の空気に作用する遠心力  F_K

   F_K = \dfrac{V^2}{R}  ・・・②

でしたね。


よって力の釣り合いを考えると以下のようになります。

   \dfrac{1}{\rho} \dfrac{|\Delta P|}{\Delta n}=\dfrac{V^2}{R}

 

 

具体的に数値を与えて旋衡風に作用する力を計算してみることにします。

問題:

北緯30度の地点で竜巻が発生しました。

中心から50m地点での風速は60m/sだったとき,コリオリ力と遠心力を求めてその力を比較しなさい。ただし地球の自転角速度は  7.3×10^{-5} (rad/s)とする。

まずは単位質量あたりの空気に働くコリオリ力を求めてみると以下のように算出できます。

   F_C=2\Omega \sin\phi V=2×7.3×10^{-5}×\sin{30°}×60=4.4×10^{-3} \rm{N/kg}

 

一方遠心力は

   F_K = \dfrac{V^2}{R}=\dfrac{60^2}{50} = 72 \rm{N/kg}

となります。値を比較してみるとコリオリ力の大きさは遠心力と比較して2万倍ほど弱いことが分かります。

よって旋衡風ではコリオリ力を無視して考えても問題ないのですね。

 

はい,ということでここまで地衡風・傾度風・旋衡風について見てきました。

次回は地上風。摩擦力を考慮する必要が出てきます。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 旋衡風とはコリオリの力の影響が無視できるほどに小さいときに見られる風。
  • 竜巻やつむじ風(塵旋風)などは旋衡風に近似できる。
  • 旋衡風は気圧傾度力と遠心力が釣り合う。
  • 旋衡風の渦の向きは右回りでも左回りでもどちらでも生じうる。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。