Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第57回 日本の四季と気圧配置④〜春・秋〜

 

GWが明けて仕事も始まり,再び勉強する時間が減って更新も遅くなってしまいました。

さて今回は春と秋の天気図について勉強したいと思います。まだ私の中でも理解できていない点も多いのですが,じっくり考えてみることにします。

 

 

春・秋の天気

『女心と秋の空』。

女性の心の移ろいやすさを秋の空になぞらえた有名な言葉ですが,このように秋というのは天気の移り変わりが激しい季節であることは昔から知られていました(元々は『男心と秋の空』が語源だそうで,いつのまにか女性に変わったようです)。

 

また,秋の天気と同様に春の天気も変わりやすいことが知られています(『女心と春の空』とも言うそうですよ)。

下の図は4月の天気の変化を表したもの。

日本列島を高気圧が来たかと思うと低気圧が通過するということを繰り返していますね。たしかに天気が変化しやすい季節であるのかもしれません。

 

偏西風の収束と発散

春や秋の天気が変化しやすいのは偏西風が大きく影響しています。

もっと詳しく書くと,偏西風がつくりだす移動性高気圧および低気圧(温帯低気圧)によるものです。

でも,どうして偏西風が高気圧・低気圧を形成するんでしょうか。

 

下の図は上空の等高度線を模式的に描いたものです。ここでは簡単のため等高度線の間隔は一定であると考えます。

 

偏西風は蛇行しながら進んでおり,偏西風の蛇行が南側に張り出しているところは気圧の谷トラフ),北側に張り出しているところは気圧の尾根リッジ)というのでした。
このとき気圧の谷を通過する偏西風と気圧の尾根を通過する偏西風の風速について考えてみます。

 

まず気圧の谷を通過する偏西風の風速から。空気の釣り合いは以下の図のようになります。

まず空気は気圧が高い方から低い方へと移動します。ここで一般的に気圧は北側が低くなります。そして,図の緑色の矢印のように気圧傾度力が働きます。

また風が曲率を描く際には遠心力が作用します(黒の矢印)。

さらに北半球では風の進む向きと垂直右方向にコリオリ力(大きさは, 2\Omega \sin{\phi} V_{\rm trough} V_{\rm trough}は気圧の谷を通過するときの偏西風の速度)が働くのでした(赤矢印)。

この釣り合いを式としてまとめると,

   (気圧傾度力)= (遠心力)+2\Omega \sin{\phi} V_{\rm trough}

となりますね。

よって気圧の谷を通過する偏西風の風速  V_{\rm trough}は以下のように計算できます*1

   V_{\rm trough} = \dfrac{(気圧傾度力)-(遠心力)}{2\Omega \sin{\phi} }     ・・・①

 

今度は気圧の尾根を通過する偏西風の風速を見てみます。空気の釣り合いは以下の図のようになります。

気圧傾度力コリオリ力は同じように働きますが,遠心力は先ほどと逆向きに働きます。

気圧の尾根を通過するときの偏西風の速度を  V_{\rm ridge}とすると,力の釣り合いは

   (気圧傾度力)+(遠心力)=2\Omega \sin{\phi} V_{\rm ridge}

です。

よって,気圧の尾根を通過する偏西風の風速  V_{\rm ridge}は以下のようになります。

   V_{\rm ridge} = \dfrac{(気圧傾度力)+(遠心力)}{2\Omega \sin{\phi} }     ・・・②

 

等高度線の間隔が一定であると仮定したとき,気圧傾度力は気圧の谷でも気圧の尾根でも同じ大きさだけ働きます(北緯  \phi も同じと考えましょう)。

すると,①と②を比較して

    V_{\rm ridge}>V_{\rm trough}

ですね。すなわち,単純計算では,気圧の尾根を通過する際の風速は,気圧の谷を通過する際の風速と比較すると大きくなるのです。

 

これをまとめてみると以下の図のようになります。

気圧の尾根の前面(あるいは気圧の谷の後面)では,前の遅い風に後ろからの速い風が追いつき空気の渋滞(収束)が起こります

逆に,気圧の谷の前面(あるいは気圧の尾根の後面)では,前の速い風と後ろからの遅い風との差がどんどん広がって空気が疎な状態(発散)になります

上空で空気の収束が起こると,行き場をなくした空気は地上へと逃げてきます。その結果地上では下降気流が生じて気圧が高くなります。

上空で空気の発散が起こると,少なくなった空気を埋め合わせしようと地上側の空気が上空へと流れてきます。このとき上昇気流が生じて,地上の気圧は低くなります。

このように,偏西風の気圧の谷と尾根を通過する速度の違いによって地上では移動性高気圧が発生し,また(中緯度地域でできる)温帯低気圧が発生します。

偏西風は,夏は太平洋高気圧に押されて日本列島よりも北側を流れやすく,冬は北からの寒気に押されて日本列島の南側を流れやすくなります。しかし,春と秋には偏西風が日本上空を通ることが多くなるため,この季節は天気が変わりやすくなるというワケです。

温帯低気圧の発生・発達についてもまとめていますのでご参考にしてください。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

 

ということで,今回はここまでにします。

偏西風による空気の収束・発散という考え方は非常に重要そうですので,ココはキチンと理解しておきたいと思っています。

 

【まとめ】学習の要点

今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 春と秋は高気圧と低気圧が交互に日本列島を通過し,天気の移り変わりが激しい季節。
  • 春や秋の天気が変化しやすいのは偏西風のつくり出す高気圧と低気圧によるもの。
  • 単純計算では,気圧の尾根を通過する際の風速は,気圧の谷を通過する際の風速と比較すると大きくなる。
  • 気圧の尾根の前面(あるいは気圧の谷の後面)では空気の収束が起こり,地上で高気圧が発達しやすい
  • 気圧の谷の前面(あるいは気圧の尾根の後面)では空気の発散が起こり,地上で低気圧が発達しやすい
  • 春と秋にはちょうど偏西風が日本上空を通過するので,移動性高気圧と温帯低気圧が交互にきて天気が変わりやすい。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:厳密には遠心力も速度Vの関数なので,それを考慮して計算する必要がありますが,今回は概算で計算しています