Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第40回 発散・収束②

 

前回に引き続き今回も発散・収束について。前回いろいろ書ききれない点もありましたので,実際に問題を解きながら内容を補完しながら説明したいと思います。

 

 

前回の復習

問題を解く前にまずは前回の復習から。

発散・収束を表す式は以下のように書けるのでした。

    div \vec V = \dfrac{\Delta V_x}{\Delta x} +  \dfrac{\Delta V_y}{\Delta y} ・・・①

 

 \Delta V_x \Delta V_y はそれぞれ  x軸方向 と  y軸方向の風速の変化量(流出時の風速-流入時の風速)を表しており, \Delta x \Delta y は局所領域の  x軸方向 と  y軸方向の1辺の長さを表します。

 

 

①の式の意味するところは,(ある局所領域における単位面積当たりの)

(発散・収縮具合)=( x軸方向の正味の流出量)+( y軸方向の正味の流出量)

ということ。

 div \vec V >0 ならば流出量の方が多いため発散 div \vec V <0 ならば流入量が多い(流出量がマイナスになる)ため収束を表します。

 

これらを理解したうえで問題を解いていきましょう。

 

 

発散・収束の問題

では発散・収束について問題を解いていきます。

問題1

水平面上の一辺が1km四方の正方形領域に,北辺では北風が10m/s,東辺では西風が15m/s,南辺では南風が5m/s,西辺では西風が5m/s の風が吹いているとき,その領域では収束しているか,発散しているか答えなさい。

まずは図を描いてみます。下のような図が描けるでしょう。

①式に単純に値を代入してみましょう。長さの単位は国際単位系のメートル表記に必ず直すクセはつけておきたいですね。

 \Delta V_x = 15-5=10 \Delta V_y = 0-15=-15 \Delta x = 1000 \Delta y=1000 ですから,水平発散  D(=div \vec{V} に相当) とすると,

    D = \dfrac{10}{1000} + \dfrac{-15}{1000} = -\dfrac{5}{1000} = -5.0×10^{-3} \rm {1/s}

となります。

  D<0 ですので 「収束する」が答えとなります。

発散・収束の単位は  \rm {1/s} であることに気を付けましょう

 

 

私の場合は, x軸方向 と  y軸方向にわざわざ分けて考えるのは面倒なので,全流出量と全流入量を考えます。

まず正方形領域全体の空気の流出量(正方形から遠ざかる矢印だけを考慮する)は*1

  (流出量)= 15×1000 = 15000 \rm {m^2/s}

この正方形領域全体の空気の流入量(正方形に入ってくる矢印だけを考慮する)を考えると

  (流入量)= 10×1000+ 5×1000+5×1000= 20000 \rm {m^2/s}

となります。

よってトータルの流出量は

  (流出量)-(流入量)=   15000-20000 = -5000 \rm {m^2/s}

 

単位面積あたりに換算して

    D =   \dfrac{-5000}{1000×1000} = -\dfrac{5}{1000}= -5.0×10^{-3} \rm {1/s}

 

同じ結果が得られましたね。

 

問題2

東西方向と南北方向の長さがそれぞれ200kmと100kmの領域において,時刻ADで各辺に垂直な方向の水平風が図の場合,この領域における空気の水平方向の収束の大きさをそれぞれ求めなさい。ただし,領域内では空気の密度は場所と時刻によらず一定で,水平方向の収束は一様とする。

(第51回 気象予報士試験 学科一般・問題6 改題)

こちらは実際の気象予報士試験の問題からです。

 

まずはAから。

(全流出量)= 3×100×10^3+2×200×10^3= 700×10^3 \rm {m^2/s}

(全流入量)= 3×200×10^3+2×100×10^3 = 800×10^3 \rm {m^2/s}

よって単位面積あたりの正味の流出量は

    D_A =   \dfrac{(700-800)×10^3}{100×10^3×200×10^3} = -5.0×10^{-6} \rm {1/s}

 D_A<0 から,この領域は収束することになります。

 

B

(全流出量)= 3×200×10^3+2×200×10^3 = 1000×10^3 \rm {m^2/s}

(全流入量)= 2×100×10^3+3×100 ×10^3= 500×10^3 \rm {m^2/s}

よって単位面積あたりの正味の流出量は

    D_B =   \dfrac{(1000-500)×10^3}{100×10^3×200×10^3} = 2.5×10^{-5} \rm {1/s}

 D_B>0 から,この領域は発散することになります。

 

次はC

(全流出量)= 3×200×10^3+2×100×10^3 = 800×10^3 \rm {m^2/s}

(全流入量)= 3×100×10^3+2×200×10^3 = 700×10^3 \rm {m^2/s}

よって単位面積あたりの正味の流出量は

    D_C =   \dfrac{(800-700)×10^3}{100×10^3×200×10^3} = 5.0×10^{-6} \rm {1/s}

 D_C>0 から,この領域は発散することになります。

 

最後はD

(全流出量)= 2×100×10^3+3×100×10^3 = 500×10^3 \rm {m^2/s}

(全流入量)= 3×200×10^3+2×200×10^3 = 1000×10^3 \rm {m^2/s}

よって単位面積あたりの正味の流出量は

    D_D =   \dfrac{(500-1000)×10^3}{100×10^3×200×10^3} = -2.5×10^{-5} \rm {1/s}

 D_D<0 から,この領域は収束することになります。

 

 

では斜めに風が吹き込む場合はどうでしょうか。こんな問題も作れるでしょう。

問題3

東西方向と南北方向の長さがそれぞれ10kmと20kmの領域において,水平風が下の図のように吹いている場合,この領域における空気の水平方向の発散の大きさをそれぞれ求めなさい。ただし, \sqrt 2= 1.4 \sqrt 3= 1.7 として良い。

この場合も解き方は基本的には同じ。ただし  x軸方向 と  y軸方向に分解してやる必要があります。領域の各辺に垂直に入り込む成分だけを考慮し,平行な成分は無視して考えます

 

北辺で吹き込む北西風の  y軸成分は南向きに 10 m/s,東辺で吹く風の  x軸成分は東向きに 17 m/s,南辺では南風が5m/s,西辺では  x軸成分 10 m/sの東に向かう風が吹いていると計算できます。

あとは全流出量・流入量を計算。もちろん①式に単純に代入しても全く問題ありません。お好みの方法で解いてください。

 

(全流出量)= 17×20×10^3= 340×10^3 \rm {m^2/s}

(全流入量)= 10×10×10^3+5×10×10^3+10×20×10^3 = 350×10^3 \rm {m^2/s}

よって単位面積当たりの正味の流出量に換算して

    D =   \dfrac{(340-350)×10^3}{10×10^3×20×10^3} = -\dfrac{1}{2×10^{3}} = -5.0×10^{-5} \rm {1/s}

 

 D<0 から,この領域は収束することになります。

 

 

とりあえず解き方は以上のようになります。これはなぜそうなるかというよりもこういう計算方法なんだと割り切って覚えた方が早いですね。

 

領域に流出する空気量が流入量よりも多ければ発散し,流入する空気量が流出量の方が多ければ収束するということがポイントですね。そして地上の収束が起こるところは上昇気流が生じて雲や雨を降らすことになるのですね。

 

 

【まとめ】学習の要点

今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  •  div \vec V = \dfrac{\Delta V_x}{\Delta x} +  \dfrac{\Delta V_y}{\Delta y}

 

  • 式の意味は(ある局所領域における単位面積当たりの)

    (発散・収縮具合)=( x軸方向の正味の流出量)+( y軸方向の正味の流出量)

  •  div \vec V >0 ならば流出量の方が多いため発散, div \vec V <0 ならば流入量が多い(流出量がマイナスになる)ため収束。
  • 発散・収束の単位は  \rm {1/s}
  • 風が斜めから吹き込む場合でも, x軸方向と y軸方向に分解して計算すれば良い。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:(空気の量)=(風速)×(長さ)