角速度
以前コリオリの力について勉強したとき,北緯 (ファイと読む)の地点において速度 で運動する物体の単位質量あたりに働くコリオリ力 は
と表せ, をコリオリパラメーターと呼んだのでした。
このとき (オメガ)という地球の自転の角速度が出てきました。
この角速度とは1秒間に回転する角度(通常は弧度法のrad[ラジアン]を単位とする)を表します。地球は24時間で1回転するので角速度は地球のどの場所にいても同じ値になります(一方で「角速度」ではなく,「自転速度」を考えると赤道の近くの方が極付近よりも24時間で進む距離が長いため大きくなります)。
そして地球のどこにいても約24時間で地球を一周(360 °= [rad])するので,
(単位:rad/s もしくは 1/s)
となります。
そして回転しているということは,このとき渦度も発生しているのです。
このような地球の自転に伴った渦度を惑星渦度(もしくは地球渦度)と呼びます。
惑星渦度
地球上にいる人の自転に伴う回転運動を見てみると,下の図の左図のように球を回転軸に垂直な面で切った円の円周を回るように運動します(赤矢印)。
運動は水平な面で行われるので,この回転運動による渦度は回転面に垂直な方向に生じます(左図の紫矢印)。右ねじの法則と同じ理由です。
そして,この渦度の大きさは,下の図のように計算できます(天気の科学ー6 (hokudai.ac.jp))。
すなわち,
になります。この値は北極点だろうと東京だろうと赤道上だろうと地球上のどこにいても同じです。
そして私たちのいる位置(北緯とする)の地面に垂直な成分だけを取り出すと
となります(上図右の紫矢印)。これを惑星渦度と呼びます(南半球だと となりマイナスになるので,渦の向きが逆になることを意味します)。
これはコリオリパラメータそのものでもあります。実はコリオリ力のコリオリパラメータとは地面と垂直な渦度成分だったのです。
よって惑星渦度のことをコリオリパラメータとも呼ぶのです。
前回,相対渦度は(静力学平衡を近似して)大気とは垂直,すなわち地面とも垂直な方向に生じることを学びました。
今回出てきた惑星渦度(もしくはコリオリパラメータ)も地面に垂直な成分だけを取り出していますので,相対渦度と惑星渦度はどちらも地面とは垂直な方向であるということですね。
よってこれらは同じ方向を持つものなので,そのベクトルを単純に足し合わせることができるのです。
そしてそれらを足し合わせたものを「絶対渦度」と呼びます。
絶対渦度と絶対渦度保存則
地球上で観測される渦度(相対渦度)と自転にともなう渦度(惑星渦度)を合計したものを絶対渦度と呼びます。
すなわち,
(絶対渦度)=(相対渦度)+(惑星渦度)
そして宇宙から眺めたときには,この絶対渦度は保存されます(地球の回転座標軸から観測するときは保存されないことに注意)。
例えば北極(北緯90°)上にある相対渦度0(厳密には鉛直方向の相対渦度が0)の大気の動きを赤道上(北緯0°)にもってきたときに相対渦度( とする)がどうなるかを求めてみると,
(絶対渦度)
より
と計算できます。
このように絶対渦度が保存されることを絶対渦度保存則と呼びます。
【まとめ】学習の要点
今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
- 角速度とは1秒間に回転する角度であり,(1/s)である。
- 地球の自転に伴った渦度を惑星渦度(もしくは地球渦度)と呼ばれる。
- (惑星渦度)=(コリオリパラメータ)=
- 相対渦度と惑星渦度を合計したものを絶対渦度と呼ぶ。すなわち
(絶対渦度)=(相対渦度)+(惑星渦度)
- (地球の回転座標外から見ると)絶対渦度は保存される。
参考図書・参考URL
下記のサイトや文献を参考にさせていただきました。
- 『イラスト図解 よくわかる気象学』ナツメ社 p276-p280
- 『気象予報士かんたん合格テキスト』技術評論社 p209-210
- 絶対渦度と相対渦度のイメージ - 計算気象予報士の「知のテーパ」 (goo.ne.jp)
- 天気の科学ー6 (hokudai.ac.jp)
- 大規模な大気の運動①大気の大循環 - 気象ゼミごっこ (hatenablog.com)