ここ数日,「大気の状態が不安定」という言葉を天気予報で聞くことが多い気がします。これは寒気を伴うトラフ(偏西風の南側への蛇行)が日本の上空を通過していたためです。
そのせいかここ2週間ほど体調を崩してついに寝込んでしまいました。季節の変わり目ですので体調管理には十分に気を付けなければいけませんね。
各地でひょうや落雷
下はNHKニュースの兵庫県の天気予報の記事を一部を引用したものです(上空に強い寒気 28日明け方にかけ突風やひょう 落雷に注意|NHK 兵庫県のニュース)。
強い寒気が流れ込んでいる影響で、兵庫県では、28日の明け方にかけて大気の状態が非常に不安定となる見込みです。
近畿地方の上空およそ5500メートルには、マイナス21度以下の、この時期としては強い寒気が流れ込んでいます。
このため、大気の状態が非常に不安定となり、局地的に雷雲が発達する見込みです。
気象台は竜巻などの激しい突風やひょう、それに落雷に注意するよう呼びかけています。(10月27日 16時21分発表 NHK news webより一部抜粋)
近畿地方ではひょうや落雷があったことが映像でも見ることができます。
ニュースで報道されるような気象現象については,ちゃんと天気図で確認しとかなければいけません(使命感)。
天気図を眺める
まず,上空約5500mの大気を天気図で見てみると,-21℃の等温線(点線で表示される)は下のように青い線で引くことができます。
日本時間10月27日の朝9時の500hPa高層天気図。
北海道と九州北部の上空に-21℃以下の空気が流れ込んでいるのが分かります。
上空5500メートル付近の温度と地上の気温差が35℃とか40℃以上になると大気の状態が非常に不安定となり,雷雲が発達しやすくなるようです。冷たい空気は密度が大きく重いので,上空に寒気が入ると冷たい空気は地表の方へと下降しようとし,地表側の暖かな空気は軽いため上昇しようとしますが,この対流が起こることによって積乱雲などの対流性の雲が発生して雷が発生するワケですね。
夕方には各地で急な雨や落雷が観察されたのが,下の雨雲レーダーおよび雷監視システムの情報から見て取れます。
兵庫県神戸市では16時ごろに雹(ひょう)が降ったようですよ。
神戸で雹が降ってきた#ゲリラ pic.twitter.com/sDWS4idZUy
— 貴方を全肯定【トト】@ポジティブADHD (@Scuderia_ADHD) 2023年10月27日
このとき,神戸市の気温がぐっと低くなっているのが下の気象データから分かります。
風速も5.8m/sと相対的に強めの風が吹いているのも確認できますね。
積乱雲などの下では雷の他にも,マイクロバーストやダウンバーストなどといった強い下降流が突風となって吹くおそれがあり注意が必要です。ダウンバーストは冷えて重くなった下降流が積乱雲から地上へと吹き付けるため,一般的に数℃近く気温が下がることもあります。
さらに時間を進めてこの日の21時の高層天気図を見てみると下のような感じ。
-21℃の寒気が西日本を東進していました。
翌日28日には西日本にかかっていた上空の寒気は通過し,地上では西からやってきた高気圧に覆われ神戸市の天気は秋晴れだったようです。
単純に上空に寒気が流れ込むだけで大気の安定・不安定が決まっているわけでもないそうで,そこには下層大気の状態など様々な要素も考慮する必要があるようです。例えばエマグラムでSSIとかを確認してみるなども面白いかもしれません。
ただ,今回は上空に寒気が流れ込んだことだけに着目して天気図を見てみた次第です。
- 寒気を伴うトラフが日本上空を通過するとき,大気の状態が不安定になりやすい。
- 上空5500メートル付近の温度と地上の気温差が35℃以上になると,大気の状態が不安定となる一つの目安となる。
- 大気の状態が不安定になると積乱雲などの対流性の雲が発生し,落雷や竜巻などの激しい突風,急な強い雨,降ひょうに注意が必要。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。