今回は,天気図の中に描かれる温帯低気圧について勉強していきます。
天気図の中の低気圧
下の天気図は2023年12月5日日本時間午後9時の地上実況天気図(ASAS)の一部を切り出したものです。
日本の南海上には低気圧があるのが分かります。その下には何やら英文が記入されていますね。
防災上の観点から,発達中の低気圧や台風の場合,中心位置などの情報が英文記事として天気図上に記入されるのです。
今回の天気図の低気圧についての英文情報を見てみますと,以下のように記述されています。
まず1行目には「DEVELOPING LOW」と書かれていますが,これは発達中の(Developing)低気圧(Low Pressure)のことを表します。発達中の低気圧とは,中心気圧または最大風速からみて,今後,中心気圧が下がるか,または最大風速が増すことが予想される低気圧のことです。
ほかにも「DEVELOPED LOW」と表記されていることがあり,これは発達した低気圧という意味です。この場合は最盛期もしくは衰弱期にある低気圧を指します。
2行目には「1002 hPa」とあり,これは低気圧の中心気圧になります。発達中の低気圧は,今後中心気圧が低くなっていくことが予想されるので注意が必要となるのですね。
事実,この低気圧はこの12時間後には中心気圧が996hPa,24時間後には986hPaへと変化しました。
3行目には低気圧の中心位置が書かれています。「30N 139E」とあり,北緯(North latitude)30度,東経(East longitude)139度に中心位置があるということです。
次は進行方向と移動速度。「ENE 35 KT」という表記から,低気圧は東北東に35ノットで進んでいます。
速度が5ノット以下で進行方向が定まっている場合には「SLW」(SLOWLYの略,「ゆっくり」),速度が5ノット以下で進行方向が定まっていない場合には「ALMOST STNR」(ALMOST STATIONARYの略,「ほとんど停滞」)と表現されることもあります。
最後の一文が少し長いですね。
「EXPECTED WINDS 30 TO 50 KT WITHIN 600NM OF LOW E-SEMICIRCLE AND 300NM ELSEWHERE WITHIN NEXT 24 HOURS」。
日本語に直すと,「今後24時間以内に,低気圧の東側半円600海里以内と,その他の半円300海里以内で,風速30~50ノットに達する見込み」となります。NMというのは海里のことで,Nautical Mileの略です。
ちなみに1海里=1.852kmですから,300海里はおよそ555km,600海里はおよそ1111kmになります。
海上警報
そして天気図には,低気圧の情報だけでなく,他にもいろいろな情報が表現されています。
その一つとして,下の赤線に示すように,[W]などの[ ]がついた海上警報があります。実際に気象現象が発生しているか,もしくは24時間以内に発生すると予想される場合に海上警報が発表されることになっています。
たとえば「FOG [W]」と書かれているのは海上濃霧警報。視程が約500メートル(0.3海里)以下の時に発表されます。他にも強い風が吹いているときに発表される海上風警報( [W]),海上強風警報( [GW]),海上暴風警報( [SW])などがあります。また,台風が来ている場合には,海上台風警報( [TW])が発表されます(下図;気象庁|アジア太平洋域 実況天気図の説明 (jma.go.jp)より引用)。
風速や発表基準の数値については覚えておくことにしましょう。
また,海上警報の対象として緯度経度で区切った海域は天気図上で や といった線で囲んで表現されるようです。
このとき下のように,海上強風警報や海上暴風警報では,丸い形の波枠で囲まれますが,海上濃霧警報ではトゲトゲの波枠で囲まれます。
海上警報の種類によって枠の形も異なることは覚えておいて損はなさそうです。
このように,気象庁では日本近海の低気圧に関する情報とともに,強風・濃霧などの海上警報,他にも風向・風速・波の高さなどの海上予報を発表し,海の上を行き交う船の安全性の維持や,海上輸送における経済性の確保に貢献しているのですね。
- 発達中の低気圧や台風の場合には,中心位置などの情報が英文記事として天気図上に以下のように記入される。
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。