Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【天気図】2024年2月の南岸低気圧の天気図解析

 

つい先日,南岸低気圧について勉強したばかりです。

weatherlearning.hatenablog.jp

そこから2週間程度しか経ってませんが,2つの南岸低気圧が立て続けに日本列島の南側を通過しました。

今回はその低気圧について(気象の勉強を兼ねて)天気図を用いて解析してみました。

 

 

二つの南岸低気圧の通過

まず1個目の南岸低気圧は,2024年2月3日から4日にかけて日本列島の南を通過していきました。

こちらの南岸低気圧は,あまり発達しなかった(3日21時と4日12時とで中心気圧は1018hPaで変化がない)ことと陸地から比較的離れたところを通った(八丈島の大きく南側を通過)ことで,関東地方での降水量は比較的少なかったようです。

4日21時にはこの南岸低気圧は不明瞭になり,一方で東シナ海で新たな低気圧が発生しました。そしてこの2つ目の低気圧が今回首都圏に雪を降らせることになります。

新しく生まれた低気圧は,4日21時には中心気圧が1016hPaでしたが,5日18時には1002hPaになっていることからも,発達しながら日本の南岸を通過していったことが分かりますね。

5日15時までには東京でも雪が降り始めたようです。

上のように地上実況天気図(ASAS)を見てみると,東京に並みまたは強いしゅう雪()の現在天気の天気記号が記されていました。私が気象を勉強し始めてから,初めて確認できた東京の雪の記号ですね。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

そして東京に雪をもたらしたこの南岸低気圧は閉塞しながら八丈島の少し北側を通過後,日本の東の海上へと抜けていきました。

3日9時から6日12時までの雲の様子を赤外画像から抽出し,それをアニメーションにすると以下のようになります。

1つ目の低気圧はあまり目立ちませんが,2つ目の低気圧は白くて厚い雲を伴って日本列島に覆いかぶさってきたのが分かりますね。動画で見るとやはり分かりやすいし面白い。

 

上空のトラフと低気圧の発達

ここまでに書いてきたように,2つ目の低気圧は日本の南岸を発達しながら進みました。では何故,この低気圧は発達したのでしょうか。

 

ここで上空のトラフ(等高度線が南側に張り出した領域)が重要なポイントになってくるようです。トラフの進行方向前面に低気圧中心があると,その低気圧は発達することが知られているからです。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

下の図のように,上空500hPaの高層天気図と地上天気図を重ね合わせてみました。黒が高層天気図,赤が地上天気図です。

2月4日21時に2つ目の南岸低気圧が発生したときの天気図。

地上低気圧中心(赤✕印)の西側に上空のトラフ(黒太線)が位置していることが分かりますね(トラフの引き方はよく分かっていない,向きとか長さとか傾きとか。とりあえず感覚で引きましたw 詳しい方がいらっしゃったら教えてください)。おそらくこのトラフと結びつきを強めて低気圧は発達したものと考えられます。

 

5日9時の図。徐々に西側のトラフが近づいてきました。

 

5日21時。トラフはだいぶ浅くなったようで,低気圧中心とほぼ同じ位置まで近づきました。

このとき低気圧は最盛期を迎え,閉塞前線が形成されます。

 

気象の勉強を始めた1年前は,気象予報にトラフ解析が重要だと教科書で書かれていたのを見て今一つピンときませんでしたが,ここ最近天気図を見ていてようやくその大切さを少しずつ実感してきました。上空のトラフに着目することで,低気圧の盛衰を読み取ることができるのですね。

 

東京の気温変化

そしてトラフと結びついて発達した低気圧は,都心で雪を降らせました。東京では8センチの積雪だったようです。

このとき気になるのが,東京都心の気温ですね。

一般的に,地上気温が6℃を下回ると(湿度が低ければ)雪の可能性が考えられ,2℃以下で雪の可能性が高くなります

 

この日の東京の気温変化をグラフで見てみると下のようでした(気象庁|過去の気象データ検索より)。

12時頃には地上気温が5℃だったものの,1時間後の13時には気温が2℃以下まで低下していますね。気温が一気に下降したことが分かります。

この気温の急降下がなぜ起こるかというと,おそらく関東平野に形成される滞留寒気層の影響ではないかと思います。

南岸低気圧が接近する前から先行して雨が降り,その時に上空から落ちてくる雨粒(もしくは雪片)が地上に到達する間に蒸発(もしくは昇華)し水蒸気に変わるときに周りから熱を奪います。これにより気温が急激に低下して滞留寒気層が形成され,南岸低気圧に伴う降水域が接近すると,降水は雪となって地上に舞い降りるのですね。関東平野は地形上,寒気が滞留しやすく,高度数百m程度の寒気の層ができるのだそうです。

 

地上気温が非常に低くなったことで,東京の降水は雪となり,低気圧の発達と相まって今回の積雪につながったということですかね。5日の午後から6日の朝にかけて東京では雪が降り続きました。

 

ライトバン

最後は,このような雪の日に見られるライトバンについて。

X(旧Twitter)などを眺めていると,千葉県柏市においてブライトバンドが見られたというツイートで盛り上がっていました。

雨雲レーダーを見てみると,5日20時頃に,確かに柏市で円形の強い降水域が確認できました。スクショしておきました。

 

ライトバンドは通常もっと輪ゴムのようなリング状に写りますが(下図;雨雲レーダーにリング状の模様「ブライトバンド」が出現 - ウェザーニュース (weathernews.jp)より),こんな小さな円として写ることもあるんですね。

雨雲レーダーにリング状の模様「ブライトバンド」が出現 - ウェザーニュース

 

このブライトバンドができる理由は、上空に融解層(みぞれの層)があるためで,ここで降水が強いというワケではないので注意が必要です。いわゆる偽モノの強いシグナルが観測されているのですね。

上空から落下してきた雪片は,地上に近くなると融けて雨粒に変化します。雪片と雨粒の中間の状態,いわゆる「みぞれ」の状態のとき,雨滴よりも粒が大きくなり,周りが水で覆われることになります。

気象レーダーの電波は,固体よりは液体の方が,また粒子が大きい方がよく反射するという性質があり,(実際には強い降水がないのにも関わらず)局所的に強いエコーが気象レーダーによって観測されるのです。

 

今回のブライトバンドが非常に小さいのは,みぞれの層が上空の低い高度に形成されたからなのかもしれません。

 

いずれにせよ,このように地図上に隠れている気象に関連するイベントを探すのは,隠れミッキーを探し当てるくらいには楽しめそうです。

 

まだまだ分からないことがたくさんありますが,天気図を眺めながら実際の天気に照らし合わせると,今まで知らなかったことがいろいろと見えてきますし,見識が広がるように感じます。

 

 

天気図理解のメモ
  • トラフの進行方向前面に低気圧中心があると,その低気圧は発達する。
  • 上空のトラフに着目することで,低気圧の盛衰を読み取ることができる。
  • 地上気温が2℃以下になると,湿度が高くても雪になりやすくなる
  • 関東平野は地形上寒気が滞留しやすく,雨雪が降り始めると大気から熱が奪われ,気温が急激に低下し,これが滞留寒気層を形成する。
  • ライトバンドという偽のエコーが観察されることがある。これは上空に融解層(みぞれの層)があるため。

 

(以下,あまり理解できてないポイント)

  • トラフの引き方(曲がり方,引く長さなど)

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。