今回は地上の風の観測についてです。
風をどのように計測して,どのくらいの風速なら強いと呼べるのか?分からないことばかりですが基本的なところから見ていきたいと思います。
風の計測
現在気象庁で使用している主な風向風速計は風車型風向風速計と呼ばれるものです。
この風向風速計は下の写真のように胴体・垂直尾翼・プロペラで構成されています。風が吹いてくる方向にプロペラのある先端が向き,胴体の向きから風向をプロペラの回転数から風速を観測しています。
実際にはこんな感じで動いているようですよ。
こうやって動いている様子を見ると,風向きは常に一定方向ではなく時々刻々と変化していることに気がつきますね。風はその瞬間によってコロコロ変化するのです。
ですので,風向・風速は直近10分間の平均値をとることで値を算出しています。また風は地上に近すぎると地面との摩擦によって乱されるので,地上からおよそ10mの高さで観測します*1。こうやって計測された10分間の平均的な風の速さは「(10分間)平均風速」などとも呼ばれます。
一方,10分間平均風速とは別に瞬間風速という言葉もよく耳にします。こちらは3秒間というごくわずかな時間範囲の平均値で,「3秒間平均風速」と言い換えることもできます。もう少し詳しく説明すると,風速は1秒間に4回観測(すなわち0.25秒間隔で観測)されていて,直近12回分の値を平均したものが瞬間風速です。
そして,ある一定時間観測を続けたとき,10分間平均風速が最大となった風速の値を「最大風速」,3秒間平均風速(瞬間風速)が最大となった風速の値を「最大瞬間風速」と呼びます。
よく天気予報で聞くこのような言葉ってこうやって算出されてたんですね。
観測時間内の10分間平均風速に対する最大瞬間風速の倍率(=最大瞬間風速÷10分間平均風速)のことを突風率(ガストファクター)といい,だいたい1.5~2の値になります。
ちなみに(地上でなく)高層の風速や風向の計測については以前記述した通りです。気球を打ち上げてGPSなどで算出しているのでした。
風の向き(風向)
北風とか南風とか呼ばれるように,風はその向きによって名前がつけられます。北風とは北の方角から吹く冷たい風のことで,南風とは南の方角から吹く温かい風のことです。
注意しなければいけないのが,風向とは風が吹いてくる方向を表しており,風が進んでいく方向を表してはいないという点です。例えば「北西の風」だったら,北西の方角から吹いてくる風のことです。
そしてこの風向には方位を16個にわける16方位と,36個に分ける36方位の2種類があります。風の観測結果は36方位で表現されるようです。
ここでは16方位だけを示しておきます。
気象予報のラジオなどを聞いていると,「北北西の風」などという言葉がよく出てくるのですが,それがどの方向からどちらの方向に吹いているのかこの方位図と合わせてすぐに分かるようになりたいと思います。
「北北西」と言われても,頭の中で2秒くらい考えて意外と処理に時間がかかることに勉強を始めて気がついたのでした。
風の強さ(風速・風力)
下の図は穏やかに晴れた日のとある時刻の中国地方の風速を表したものです。地上10mで取られたデータで,図中に記載されている数字が風速(m/s)です(Ventusky - 天気図より取得)。
風速4~6m/sくらいが多く見受けられますね。
でも風速がどのくらいの数字だと風が強いのかあまりピンときません。
風速とその威力については下の表が参考になります。
平均風速 |
強さの表現 |
感じ方 |
---|---|---|
0~10(m/s) |
- |
3~5m/s程度が一般的に言う風 |
10~15(m/s) |
やや強い風 |
傘が差しにくい,電線が揺れる |
15~20(m/s) |
強い風 |
風に向かって歩けない |
20-30(m/s) |
非常に強い風 |
つかまっていないと立っていられない |
30(m/s) |
猛烈な風 |
外出は極めて危険 |
だいたい風速3~5m/sが一般的に世間がイメージする「風」で,それより弱いと無風状態もしくは微風,それより強いと砂埃が舞うくらいの風だそうです。家庭用扇風機の弱風は3m/s,強風は4m/sくらいだそうですよ。
そして風がないか非常に弱い(0.3m/s未満)の場合は「静穏」という表現が用いられます。
風速10m/sを超えると風も強く感じられ,人への影響も出てくるようです。
また気象庁はビューフォート風力階級というイギリスで考案された風の強さを表す指標をもとにして0~12までの13段階で風力を表すことになっています(気象庁風力階級)。
風力 |
相当風速(m/s) |
相当風速(kt) |
---|---|---|
0 | 0から0.3未満 |
1未満 |
1 | 0.3以上1.6未満 | 1以上4未満 |
2 | 1.6以上3.4未満 | 4以上7未満 |
3 | 3.4以上5.5未満 |
7以上11未満 |
4 | 5.5以上8.0未満 | 11以上17未満 |
5 | 8.0以上10.8未満 |
17以上22未満 |
6 | 10.8以上13.9未満 | 22以上28未満 |
7 | 13.9以上17.2未満 | 28以上34未満 |
8 | 17.2以上20.8未満 |
34以上41未満 |
9 | 20.8以上24.5未満 | 41以上48未満 |
10 | 24.5以上28.5未満 |
48以上56未満 |
11 | 28.5以上32.7未満 | 56以上64未満 |
12 | 32.7以上 | 64以上 |
1ノットをだいたい半分にした値がメートル毎秒になるのでした。
「風力2」とか「風力3」などという言葉をよく聞きますが,この表がもとになっていたんですね。
天気図での風向・風速の表現
最後は天気図における風の表現について。
下は日本列島付近の天気図を大きく拡大したものです。ここで風速は矢羽根という記号で表されています。
下の図で説明しているように矢羽根の羽根のついている方角から風が吹いてくることを意味しています。
風速は矢羽根についた羽根の形や数で表現します。短矢羽根が風速5ノット(約2.5m/s),長矢羽根1つ分が10ノット(約5m/s),旗がついた旗矢羽根が50ノット(約25m/s)となります。
矢羽根のついている丸は天気(雲量)を表しており,例えば白丸は快晴で*2,雲の量が多くなるにつれ白丸の中が塗りつぶされていきます。
これらを用いて,例えばある地点が雲一つない快晴で,風速35ノット,北東の風が吹いていたときは,図の右のように記載されているということです。
ちなみに 1 kt = 0.514 m/s は覚えておくと計算が捗ることがあります。
詳しい天気図の天気記号については以下の記事にまとめてありますので,ご興味あれば参考にしてください。
【まとめ】学習の要点
ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
- 風を計測する機器として風車型風向風速計が用いられる。
- 風は地上からおよそ10mの高さで観測する。
- 一般的な風向・風速は10分間の平均値を算出する(10分間平均風速)。
- 風向・風速は3秒間の平均値は「瞬間風速」と呼ぶ(3秒間平均風速)。
- 一定時間観測を続けたとき,10分間平均風速が最大となった風速の値を「最大風速」,瞬間風速が最大となった風速の値を「最大瞬間風速」という。
- 観測時間内の10分間平均風速に対する最大瞬間風速の倍率のことを突風率(ガストファクター)といい,だいたい1.5~2の値になる。
- 風向とは風が吹いてくる方向を表す。
- 風向には16方位(22.5°区切り)と36方位(10°区切り)の2種類がある。
- 風速3~5m/sあたりが日常的に感じている風,15m/s以上の風が「強風」,20m/s以上の風が「暴風」。
- 気象庁は気象庁風力階級を用いて0~12までの13段階で風の強さ(風力)を表す。
- 天気図上で風を記す際には,矢羽根の羽根のついている方角が風速を,矢羽根についた羽根の形や数で風速を表す。
- 1 kt = 0.514 m/s は覚えておく。
参考図書・参考URL
下記のサイトを参考にしました。また画像などを一部お借りしていることもあります。