Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第48回 地上気圧の観測

 

今回は気圧の測定についてです。どんな原理で,どんな機器で気圧は測定されているのでしょうか。

 

 

気圧の測定原理

昔から10m以上ある井戸から水をくみ上げられないことが知られていました。1600年代に物理学者のトリチェリが水ではなく水銀を用いてこの理由を調べました(トリチェリの実験)。

水銀を用いたのは,常温で液体であり,比重が高く(密度が大きく),蒸気圧が小さいため。水だと10m以上ある試験管が必要となってくるので実験するには都合が悪かったのですね。

 

さて,トリチェリは水銀を満たした試験管をさかさまに水槽に入れると,水槽の水銀面から約76cmのところで水銀柱(試験管内の水銀面)の高さが止まることを発見します(下図)。

そして彼は,水槽の水銀面が押す力(大気圧)と,試験管の水銀柱が重力を受けることでつくられる圧力が釣り合うことでこの現象が起こっていると結論づけました。

すなわち下のような力の釣り合いが図として描けます(先見創意の会 (senkensoi.net)より)。図のb(大気圧)とc(水銀柱の圧力)の力が釣り合っているのです。

圧力とは単位面積あたりにかかる力のことは以前勉強しました。単位は  \rm N/m^2 です。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

計算してみると,水銀柱のつくる圧力(c)は水銀の密度を  13.6  \rm g/cm^3 ,試験管の底面積を  1  \rm cm^2 として,

   (水銀柱のつくる圧力)= 76 × 13.6 × 9.8 ÷ 10^3÷10^{-4} = 101290  \rm N/m^2 

よって,1013hPaが水槽の水銀面が押す力b(大気圧)が算出されました。

こうやって気圧測定の原理が見つかったのです。

 

水銀気圧計

気象観測で用いられている気圧計は,水銀気圧計,アネロイド型気圧計,電気式気圧計の大きく3つがあるようです。

 

(フォルタン型)水銀気圧計は現在ではほとんど用いられることがないようですが,トリチェリの実験と原理は同じで,水銀柱の高さを用いて圧力を計測します。

ただし,0℃のときに正しい気圧を示すようにつくられており,気温が0℃からズレるときには温度補正が必要となります。また緯度による重力の変化を補正する必要があります。

 

アネロイド型気圧計

アネロイドとは,否定を表す「a」と液体を表す「neros」というギリシャ語を由来とします。すなわち「液体ではない」という意味のようです。液体ではないということは水銀を使用していない気圧計ということですね。

では水銀ではなく何を利用しているのかというと,固い金属を用いているのです。

内部を真空にした金属製容器(BOX)の円板状の面が,大気圧に応じて膨らんだり凹んだりするのを,針(DIAL)の動きに変えて気圧を読む形式の気圧計です。

小型で持ち運びに適しているというメリットはありますが,温度による影響が大きくその精密は水銀気圧計に劣ります。下がアネロイド気圧計の実物。

 

電気式気圧計

最後は電気式気圧計。現在最も主流となっている気圧計です。

気圧によって電気容量が変化する素子を用いることで,その電気的な変化から気圧を測定します。下がその実物。

 

等圧線が引かれるまで

さて,ここまで気圧を測定する原理と機器について勉強しました。

最後は天気図で見られる等圧線がどのように引かれているかについて学習します。よく考えると日々目にする天気図では海上にも引かれていますよね。

でもこの海上の気圧というのはどのように測定しているのでしょうか?また目に見えない気圧をどのように引いているんでしょうか?

その答えは下の動画が非常に分かりやすかったので,そちらをご覧ください。


www.youtube.com

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 水銀を満たした試験管をさかさまに水槽に入れると,水槽の水銀面から約76cmのところで試験管の水銀柱の高さが止まる。これをトリチェリの実験と呼ぶ。
  • トリチェリの実験で見られる現象は,水槽の水銀面が押す力(大気圧)と,試験管の水銀柱が重力を受けることでつくられる圧力が釣り合うことで起こる。
  • 気象観測で用いられている気圧計は,水銀気圧計,アネロイド型気圧計,電気式気圧計の大きく3つがある。
  • 水銀気圧計は水銀柱の高さを用いて圧力を計測する。温度補正と重力補正が必要となる。
  • アネロイド気圧計は(水銀を用いずに)内部を真空にした金属容器の膨張を読み取り気圧を計測する。精度は水銀気圧計に劣る。
  • 電気式気圧計は現在最も主流となっている気圧計。電気的な変化から気圧を測定する。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。