Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第71回 波の観測

 

ここまで温帯低気圧を見てきましたが,今回は台風や低気圧に伴ってニュースでよく耳にする「波(波浪)」について勉強していくことにします。

 

 

 

波浪=風浪+うねり

ニュースで「波浪警報」という言葉をよく耳にします。私が幼い頃は「ハロー警報」と勘違いして陽気に挨拶する外国のお兄さんを想像していました。「ハロー(Hello)」が「波浪」だと気づいたのは中学に入ってからだったでしょうか。

波浪と漢字で書かれるとなんだか難しく感じてしまいますが,簡単に言うと水面に立つ波のことです。波も浪も「なみ」と呼びますよね(ちなみに「波」は小さい波,「浪」は大きい波のことだそうです)。

 

でもそもそも波というのはどのようにして起きるのでしょう?

 

お風呂に入ったときに水面に息を吹きかけると,水面上にさざ波が広がります。このことから,風によって波が生まれるだろうと予想がつきます。

事実,風によって波が生まれ,それは「風浪」と呼ばれます。

例えば風速25mの風が,海の上を60kmの距離にわたって吹くとすると,風浪の波の高さは約4メートルになるそうですよ。

 

しかし,風がほとんどないのにかかわらず海では波がなくなることはありません。風以外の別の要因が波を起こしているのです。それが「うねり」と呼ばれる波です。

うねりとは低気圧や数千キロメートル南方の台風の影響によって発生したものが伝わってきたときに見られる波です。

そう聞くと波がそんなに遠くまで伝わるものかと感じますが,1960年に起きたチリ地震で地球の反対側で起きた津波が日本に甚大な被害をもたらしたことを考えると,波が遠くまで影響を与えることも納得できます。

 

 

これらの二つの波の違いとしては,風浪の個々の波の形は不規則で尖った形状をしている一方で,うねりは規則的で丸みを帯びているという点です(下図:気象庁 | 波浪の知識 (jma.go.jp)より引用)。

また,波長*1・周期*2の特徴にも違いがあり,波長は風浪では短くうねりでは長く(うねりでは波長80~100m以上が多い),周期は風浪は短くうねりでは長い(8秒以上がうねりの目安)傾向にあります。

他にも,風浪であればその上空の風と概ね同じ方向に生まれますが,うねりの場合は風向とは異なることも多くあります(波向も風と同じように波がやってくる方向を表します)。

 

このように,波浪は「風浪」と「うねり」に分けられ,これらの二つが混ざり合って波は生じています。純粋に風浪だけでできた波や,純粋にうねりだけでできた波というのはほとんどありません。

 

 

波高(有義波高)

波高というのは波の高さを表します。ただし気象の世界でいう波高とは有義波高を指します。

有義波高というのは,一定時間(一般的に20分間)多数の波の高さを観測したときに,観測した波の高さを高い方から1/3を集めてその平均値をとったものです。よって有義波高のことを「1/3最大波高」と呼ぶこともあるようです。

このような一見奇妙とも恣意的とも思える波高の測り方をする理由としては,こうして得られた有義波高が,私たちの目で見た波の高さのイメージと一致するからです。

気象庁が発表している天気図上に描かれている波の高さは有義波高を指しています。

 

 

高波と高潮

波浪警報がある一方で,高潮警報という警報も存在します。高潮と波浪とは何が異なるんでしょうか。また,高波という言葉もあって高潮・波浪とどのように違うのでしょうか。いろいろややこしいですが,詳しく勉強していくことにしましょう。

 

まずは高波について。これは文字通りそのままの意味で「高い波」を表します。

高い波がなぜ起こるかというと,風が強く風浪が高くなったり,遠くの台風の勢力が強くて伝わってきたうねりが高くなったりするのが原因です。すなわち,背の高い波が押し寄せるのが高波です。

だいたい有義波高が3mを超えると波浪注意報(高波は波浪に含まれる)が発表され,有義波高が6mを超えると波浪警報が発表されるようですが,注意報や警報は地域によって発表基準が異なり一律に基準が統一されているわけではありませんのでご注意ください。

 

お次は高潮。こちらは高波とは全然意味が異なります。

高潮は台風などの強い低気圧がきたときに海面の水位が上昇することを言います。

高潮には二つのメカニズムから成り,一つは低気圧中心に海面が吸い上げられるように上昇する「吸い上げ効果」。もう一つはその台風などの低気圧自身の強い風に伴う「吹き寄せ効果」です。

 

吸い上げ効果は以前計算をしています。だいたい1hPa気圧が低下すると,海面はおよそ1cm上昇すると計算できます。例えば,950hPaの台風の中心部分では,海面の高さはおよそ50cm程度潮位が高くなるということです。

weatherlearning.hatenablog.jp

このように海面が高くなったところに強い風が吹くことで吹き寄せ効果により潮位はさらに高くなります。さらにさらにここに風浪やうねりがプラスされて有義波高が高い波が街に押し寄せることで被害が発生することが起こり得ます。

 

下の動画が非常に分かりやすいのでご参考にしてください。


www.youtube.com

 

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 波浪とは簡単に言うと,水面に立つ波のこと。
  • 波浪は「風浪」と「うねり」に分けられ,これらの二つが混ざり合って波は生じる。純粋に風浪だけでできた波や,純粋にうねりだけでできた波というのはほとんどない。
  • 風浪の個々の波の形は不規則で尖った形状で,うねりは規則的で丸みを帯びている。
  • 風浪とその上空の風向は概ね一致するが,うねりの場合は一致しないことも多い。
  • 気象の世界でいう波の高さは有義波高を指す。
  • 有義波高とは,一定時間に観測した波の高さを高い方から1/3を集めてその平均値をとったもの。
  • 「高波」は背の高い波が押し寄せること。高潮」は台風などの強い低気圧がきたときに海面の水位が上昇すること。
  • 高潮には二つのメカニズムから成り,一つは「吸い上げ効果」,もう一つは「吹き寄せ効果」。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

*1:波と波の距離的間隔

*2:波がきてから次の波が来るまでの時間