テレビで天気予報が流れると,今日の天気だったり,明日の天気だったり,週間天気などがあることを知ります。
しかしそれらの予報の種類にどういったものがあるのかはちゃんと知っている人は少ないと思います。気象の教科書を読んでいても,五月雨式に予報の種類が出てくるので全体像をあまりつかめなかったりもするんです。
そこで,まずは予報の種類についてざっくりと眺めておくことにします。
今回は,何時間先までの予報なのか,予報期間に着目して勉強しましたのでここに共有しておきます。
予報期間による分類
大雨を降らす雨雲が近づいているとき,私たちは雨雲レーダーなどで今後の動向を注視し,雨雲が過ぎ去った後にほっと胸を撫でおろします。この場合,ほんの数十分先の予報が重宝されます。
また,今日恋人とデートがある人や,明日山登りをしたりする人たちにとっては,今日の天気や明日の天気がどうなるかが最も気にかかるところでしょう。この際,1週間後の天気予報などは正直どうでもよいことのように思えます。
1週間後にキャンプを控えている人にとっては,今日の天気はさほど重要ではなく,1週間後の天気がどうなるかを日々スマホでコマメにチェックして一喜一憂する運命を辿ります。
かき氷屋さんを営んでいる人にとっては,この夏の天候がどのくらい暑いのかを知ることが重要ですし,農家の方にとってはこの数か月の気候が農作物の成長にとって適したものになるのかが気になるところです。
このように,個人個人にとって重要となる天気予報は,その目的によって大きく異なるということですね。
気象庁ではそういったニーズを汲んだ,予報期間に応じた気象予報を発表しており,目的に応じて私たちが使い分けることができます。
予報期間に着目してみると,概ね以下のように分類できます。
◾️ナウキャスト:1時間先までの気象予報
◾️短時間予報:数時間先までの気象予報
◾️短期予報 :予報期間が48時間以内の天気予報(☜今日・明日の天気)
◾️中期予報:予報期間が2週間以内の天気予報
◾️長期予報:予報期間が1か月以上の天気予報
では,それぞれについてもう少し詳しく見ていきましょう。
長くなりそうなので,今回はナウキャストと短時間予報について説明して,次回に残りについて勉強していくことにします。
ナウキャスト
まずはナウキャストについて。ナウキャストとは「現在(Now)」と「予報(Forecast)」という言葉を使って作られた造語で,「現在からだいたい1時間先までの極めて短時間の予報」です。近い過去や未来の天気をできるだけ早く正確に理解するためにある予報です。
でもなぜそんな近い未来を予測する必要があるのか?
それは大雨などの重大な災害に結び付く状況で,今後どのように行動すれば良いのか迅速な防災行動につなげられるからですね。
そしてナウキャストには,降水ナウキャスト,雷ナウキャスト,竜巻発生確度ナウキャストの3つがあります。
①降水ナウキャスト
まずは降水ナウキャスト。
気象庁のHP(気象庁 | ナウキャスト(雨雲の動き・雷・竜巻))で「雨雲の動き」のタブを表示した後に,下の赤矢印の部分をクリックすると降水ナウキャストが表示されます。
従来の降水ナウキャスト(2004年運用開始)は1km四方の解像度で10分毎に1時間先まで1時間雨量の予測を発表していました。しかし,5分毎に発表される降水ナウキャストが2011年から運用開始し,2014年には高解像度降水ナウキャストが運用されます。
高解像度降水ナウキャストは,雨量を250m四方の解像度で5分間隔で30分先までを発表しています(ただし海上では1km四方の解像度)。解像度が上がったうえ,これまで捉えられなかった,新しく積乱雲が発生することも予測が可能になりつつあります*1。
上のHPではこの高解像度降水ナウキャストのデータが使用されています(ただし30分先まで。30~1時間までの予報は通常の降水ナウキャストで予報)。
②雷ナウキャスト
次は雷ナウキャスト。上と同じHPに飛んで,降水ナウキャストの横にあるアイコン(下図赤矢印)をクリックすると表示されます。
すると,日本列島に黄色や赤や紫の領域が表示されることがあります。
雷ナウキャストでは,雷活動度という指標で表現され,4段階に分類されます。
活動度 | 状況 |
---|---|
1 | 雷可能性あり。現在は雷は発生していないものの,今後落雷の可能性がある |
2 | 雷あり。電光・雷光が確認できる。まもなく落雷する可能性が高い |
3 | やや激しい雷発生。落雷が発生中。 |
4 | 激しい雷が発生。落雷が多数発生している。 |
1km四方の解像度で10分間隔で1時間先までの雷の激しさや雷の可能性を予測し発表しています。
③竜巻発生確度ナウキャスト
最後は竜巻発生確度ナウキャスト。雷ナウキャストの横にあるアイコン(下図赤矢印)をクリックすると表示されます。
10km四方の解像度で,10分間隔で1時間先までの竜巻などの激しい突風(竜巻だけでなくダウンバースト・ガストフロントなども含める)が発生する確度を予測し発表しています。こちらは2段階で発表。
発生確度 | 状況 |
---|---|
1 | 竜巻などの激しい突風が発生する可能性がある。 |
2 | 竜巻などの激しい突風が発生する可能性があり注意が必要。 |
発生確度1以上の地域では,発生確度2の地域に比べて竜巻予測の適中率(竜巻が起こるという予測が当たった割合)は低い一方で,捕捉率(実際に竜巻がおこったのを言い当てた割合)高いという特性もありますので覚えておくことにしましょう*2。
また,竜巻発生確度ナウキャストで発生確度2が現れた地域では竜巻注意情報が発表され,発表から約1時間その情報は有効となります。
はい,これで最も近い将来を予測するナウキャストについての説明は以上です。大雨や雷,竜巻など短時間で命にかかわるような気象現象に対して,近い未来予測を発表してくれているようです。
さて,今度は短時間予報について見ていきます。
(降水)短時間予報
短時間予報とは数時間先までの短期の気象予報のことで,降水短時間予報がその代表格です。
気象庁は2006年から降水短時間予報を運用開始し,1km四方の解像度で30分毎に更新される1時間降水量の値を6時間先まで発表してきました。
2018年3月からは10分毎に更新される速報版降水短時間予報の運用を開始し,よりタイムリーな情報を入手できることが可能になりました。
さらに,2018年6月からは7~15時間先までの予報へと拡張させ,1時間毎に5km四方の解像度で降水量を予測し発表しています*3。
降水短時間予報は気象庁の「今後の雨」で確認することができます(気象庁 | 今後の雨(降水短時間予報) (jma.go.jp))。
天気図にはカラーバーが表示されており,灰色→青→赤になるほど1時間降水量が多いことを示しています。
また,従来では線状降水帯があれば赤い楕円(実線)で囲んで表示していましたが,2023年5月からは線状降水帯の発生の危険が予測される地域には赤い楕円(点線)で囲んで発表されています。
とりあえず短時間予報についてはこんなところでしょうか。
ナウキャストは5分10分単位で更新されて目先1時間までの予報であるのに対して,短時間予報は数時間先までの予報ということで,その予報期間に違いがあります。降水ナウキャストとは異なり,新しい積乱雲の発生を予測することも可能です。
目的に応じてどちらの予報を使うかは適宜私たちのほうで選択する必要があるということですね。
【まとめ】学習の要点
ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。
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◾️ナウキャスト:1時間先までの気象予報
◾️短時間予報:数時間先までの気象予報
◾️短期予報 :予報期間が48時間以内の天気予報
◾️中期予報:予報期間が2週間以内の天気予報
◾️長期予報:予報期間が1か月以上の天気予報
- ナウキャストには,降水ナウキャスト,雷ナウキャスト,竜巻発生確度ナウキャストの3つがある。
- 短時間予報とは数時間先までの短期の気象予報のことで,降水短時間予報がその代表格。
- ナウキャストと降水短時間予報の違い
降水ナウキャスト;1km四方の解像度で1時間先まで5分毎
高解像度降水ナウキャスト;250m四方の解像度で30分先まで5分毎
降水短時間予報;1km四方の解像度で6時間先まで10分毎+
5km四方の解像度で7~15時間まで1時間毎
参考図書・参考URL
下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。