Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強初心者のブログ

【気象学勉強】第83回 地震と津波

 

2024年になりましたが,元旦には能登半島で大きな地震が起こり多大な人的・物的被害が出ました(令和6年能登半島地震)。地震発生に伴って津波注意報津波警報そして大津波警報が北陸の各地で発表*1されています。そこで,今回は地震津波について勉強していくことにしました。

 

 

地震の発生メカニズム

日本周辺は,北側の北米プレート,東側の太平洋プレート,南側のフィリピン海プレート,西側のユーラシアプレートの4つのプレートが接する場所となっています(下図;気象庁 | 地震発生のしくみ (jma.go.jp)より引用)。

このプレートというのは,地球の表面を覆う岩盤のことで厚さはおよそ100kmほどあり,(大小さまざまな規模のものが知られているものの)地球表面は大規模なもので十数枚のプレートにより覆われています。

これらのプレートは各々固有に運動しており,特に,異なるプレート間の境界では2枚のプレートの異なる動きによるひずみが生じやすいため地殻変動が起こりやすいのです。

 

下の図はプレートの分布と地震発生場所とその規模を表した図ですが,プレートの境界で地震が特に多いことが明瞭です。

ロシアやヨーロッパ,ブラジルなどの国では地震はほとんど起こらないと聞きますが,それはこれらの国々がプレート境界から遠く離れた場所に位置するためです。一方で冒頭に述べたように,日本では4枚の大規模なプレートがぶつかる場所になっているので地震が非常に多い国となります。

さらに,石川県は北米プレートとユーラシアプレートの境界付近に位置しているため,日本の中でも地震が多い地域となっているのです*2

 

そして,地震の種類には大きく分けて海溝型地震内陸型地震の二つがあります(下図;内陸型地震と海溝型地震の特徴|命をまもるため今すぐできる備えとは? | 防災新聞より引用)。

まず,海溝型地震は異なるプレートがぶつかるちょうど境目で起こる地震です。

海洋側のプレートが陸地側のプレートの下に沈み込んでおり,陸側のプレートを地下へと引き込みます。やがて引きずりこむ力に耐えられなくなった陸プレートは元に戻ろうとバネのように跳ね上がり,この衝撃波が地震となって伝わるのです。海溝型では震源は陸から遠いため津波に警戒する必要があります。

関東大震災(1923)や東日本大地震(2011)はこの海溝型地震に分類されています。

 

一方,内陸型地震は,陸地側のプレートが断層をきっかけに大きく動いて発生する地震です。

陸地側のプレートに大きな力が働くと,地盤が弱くなっている断層帯で大きく地盤がズレるのですね。陸地側の地表近くで起こるため,震源が近く,大きな揺れが突然に起こる傾向があります。そのため内陸型地震直下型地震とも呼ばれます。

阪神・淡路大震災(1995)や新潟県中越地震(2004),熊本地震(2016)などがこの内陸型地震に分類されます。今回の能登半島地震もこの内陸型地震だと考えられているようで,内陸型地震でも津波を起こす可能性があるということを今回身をもって感じることになりました。

 

津波の発生メカニズム

今回の能登半島地震では津波が観測されました。

そもそも津波というのは,地震や火山活動など(他にも隕石落下など)による海洋に生じる大規模な波の伝播現象であるとされます。

一般的な津波の発生メカニズムは,下に添付した短い動画を見たら分かりやすいかと思います。


www.youtube.com

動画は海溝型地震を例に,地震によって物理的に持ち上げられた海水が大きな波を形成している様子をアニメ化しています。このときの波が津波となって襲ってくるわけですね。

津波が伝わる速度は地震の規模に関わらず水深が深いほど早く,水深5000mでは飛行機並みの速度で,水深100mでは電車並みの速度になります。沿岸(水深10m)になれば速度は小さくなりますが,それでも自動車並の速度で一般人が全力で走るよりもはるかに速いスピードでやってくるのです。

 

そしてこの水の力というのは非常に大きいものであり,津波によって1mの浸水があった場合には死亡率はほぼ100%になるという試算もあるようです(熱海市役所「津波の基礎知識」より引用)。

過去にも,チリ地震(1960),スマトラ島沖地震(2004)や東日本大震災(2011)などのように,地震に伴う津波によって多くの被害を出した例は世界中で多数あり,いかに津波が大きなエネルギーを持つかが理解できます。

 

最近の情報網の発達によって,津波地震の動画がYouTubeなどで見られるようになり簡単にその恐ろしさを知ることができる便利な世の中になりました。こういった動画から災害について学ぶのも防災意識を高めるきっかけになりますね。

 

津波に関する警報

今回の令和6年能登半島地震が発生した際に,気象庁から津波注意報津波警報そして大津波警報が発表されました*3。下はその時の気象庁のサイトの画像。

津波予報は青で,津波注意報は黄色,津波警報は赤,大津波警報は紫で海岸線が色付けされています。

津波注意報は,予想される津波の最大波の高さが高いところで0.2m以上1m以下の場合に発表されます。そして,津波警報は予想される最大波の高さが高いところで1mを超え3m以下の場合に,大津波警報は予想される最大波の高さが高いところで3mを超える場合に発表されます。今回の能登半島地震大津波警報が発表されましたが,これは東日本大地震以来の発表でした。

 

そして通常,地震が起こってから3分程度で気象庁から津波に関する警報が発表されるみたいです(chapter5.pdf (jma.go.jp)参照)。今回の地震も,16時10分に地震が起こってから,約2分後には最初の津波警報が発表されています。

気象庁で発表された地震速報や注意報・警報は,各放送局や携帯電話会社を通じて住民に伝達され,他にも警察・消防庁海上保安庁などにも伝達されて災害への備えに活用されます。

     

 

災害への対応

さて,今回の地震のような災害が発生したとき(もしくは災害が発生するおそれがあるとき)には,災害対策本部という機関が,国または地方自治体に臨時に設置されます。

この機関で何が行われるのかというと,避難所の運営や被害状況の把握,物資の輸送などの災害対応と意思決定がなされるようです。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

災害が起こった場合は県や地方自治体が災害対策本部を設置することができますが*4地方自治体でも手に負えないような甚大な被害をもたらす災害の場合は国(内閣府)にも災害対策本部が設置されます*5

国に設置される災害対策本部は,その規模に応じて「特定災害対策本部*6」,「非常災害対策本部」,「緊急災害対策本部」のいずれかです。特定災害対策本部は「死者・行方不明者数十人規模の災害が起こった場合」に,非常災害対策本部は「非常災害が発生した場合」に,緊急災害対策本部は「著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合」に設置されるので,緊急災害対策本部が出されたときは最も被害状況が大きいことになります。これまでに緊急災害対策本部が設置されたのは2011年の東日本大震災のときだけです。

 

今回の能登半島地震では国に特定災害対策本部が設置,その後被害の状況から非常災害対策本部に引き上げられ,今後の地震の対応が話し合われました。

www.yomiuri.co.jp

www.kantei.go.jp

内閣総理大臣である岸田首相が本部長を務め、政府一丸となって災害への対応を行うわけですね(※2021年5月までは非常災害対策本部の本部長は国務大臣が務めたが,法改正がなされ,現在は非常災害対策本部・緊急災害対策本部のいずれにおいても内閣総理大臣が本部長を務める。2021年に新しく設置された特定災害対策本部については国務大臣*7が本部長を務める)。

 

このように,災害が起きたときには様々な機関が情報伝達・共有を行いながら,迅速な対応ができるように組織体制が整備されていることを今回勉強して知ることができました。

2024年の幕開けもなかなか大変ですが,まずは個人個人の防災意識を高めることが,災害被害の規模を縮小させるための第一歩になるはずです。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 日本周辺では,北米プレート,太平洋プレート,フィリピン海プレートユーラシアプレートの4つのプレートが接しており,世界でも地震や火山活動が最も活発な国の一つである。
  • 日本は地震が多い国であるため,個人個人の防災意識を高めることが災害被害の規模を縮小させるためには重要。
  • 地震の種類は大きく分けて海溝型地震と内陸型地震の二つがある。
  • 津波によって1mの浸水があった場合には死亡率はほぼ100%になるという試算もある。
  • 津波注意報は,予想される津波の最大波の高さが高いところで0.2m以上1m以下の場合に,津波警報1mを超え3m以下の場合に,大津波警報3mを超える場合に発表される。
  • 災害が発生したとき(もしくは災害が発生するおそれがあるとき)には,「災害対策本部」という機関が,国または地方自治体に臨時に設置される。甚大な被害をもたらす災害の場合は,国(内閣府)に災害対策本部が設置される。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像や文章などを一部お借りいたしました。

*1:気象庁は警報や注意報を出す場合,「発令」ではなく「発表」という言葉を使うようです

*2:能登半島地震では「人工地震」であるというパワーワードが拡散しましたが,科学的にありえないので,単なるオカルトチックなデマです

*3:警報は原則として気象庁以外の者が発表することが禁じられている。ただし津波に関する警報は特例として市町村長が警報できる場合がある

*4:都道府県知事は「都道府県災害対策本部」を,市町村長は「市町村現地災害対策本部」を置くことができる

*5:災害対策基本法により規定されている;災害対策基本法 | e-Gov法令検索

*6:2021年5月より新しく設置され施行

*7:多くは防災担当大臣